基本的に妄想は自分の頭の中で楽しむもんで、オープンに披露したくないんだけど(笑)
今月発売のWUを見てると、どうしても妄想が暴走するのを止められない
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「ちょっと短く切りすぎたかなあ」
むき出しになった首筋を、冷気を含んだ秋風がちょっかいを出すようになぶっていく。
私は手にしていた白いニットのストールを無防備な首に緩く巻きつけた。
特別な理由は何もなかった。
ずっと長く伸ばしていた髪を思いきって切ったのは、失恋したわけじゃない。
ただの気まぐれ。
この前見たファッション誌で、髪をショートにしたモデルがカッコイイと思ったからかも。
テレビでもショートヘアのアイドルや女性タレントをよく見かけるようになったし。
もしかしてショートがこれからの流行り?と思ったからかも。
まあ、どちらにしても大した理由じゃないんだけど。
でも…
彼はどう思うかな?
私の長い癖っ毛を指でクルクル丸めては面白がってた彼は。
今日は久しぶりのお休みだっていうのに、彼は昨日の夜から明け方までずっとオンラインゲームで遊んでた。
ゲームに夢中になってる時の、子供みたいに無邪気な彼の横顔を見てるのは好きなんだけど。
「ねえ、私もう寝るけど…」
「ああ、ええよ」
声は優しいけど、こっちに顔も向けてくれない。
ま、手強そうなモンスターと対戦中だから仕方ないか。
明日どうする?って相談したかったけど、楽しんでるとこを邪魔しちゃ悪いと思って、私はそのまま布団の中にもぐり込んだ。
今回は彼のオフに合わせて、わざわざ有給休暇を取ったから、2人でどこか遊びに行きたいなって考えてたんだけど。
まあ明日の朝考えればいっか…
朝、太陽が昇る頃、ベッドのスプリングが軋む振動で目が覚めた。
私を起こさないよう気を使って、そーっと布団の中に入ってくる彼の気配を背中で感じた。
まさか。
今の今までゲームしてたん?
しばらくすると彼の寝息が聞こえてきた。
いつもなら愛しくてたまらないその寝息が、今はなんだか腹立たしい。
30分、1時間?どれくらい経っただろうか。
私はおさまらない苛々した気持ちを抱えてベッドから出た。
そして、私が起きたことにもまったく気づかない彼を残して一人で外へ出た。
近くのカフェでモーニングセットを食べて、行きつけの美容院に電話した。
そっか。
髪を切ったのは、せっかくのお休みを不意にした彼へのあてつけだったのか。
そして、どうやら髪と一緒に今朝までのもやもやとした怒りも切り捨ててきたらしい。
早く彼に会いたい。
美容院の帰り道、最近オープンしたばかりのセレクトショップで、彼が気に入ってくれそうな秋服を買った。
彼が気に入ってくれそうな。
そう、それが私の基準だったのに。
短くなった髪に手を伸ばした。
肩から揺れていた長い髪はもうない。
微かな後悔を覚えながら、雲一つない秋空の下を、彼の待つ部屋へと私は急いで戻った。
「ただいま」
部屋は静かだった。
彼が起きた気配はない。
音をたてないように、寝室のドアをそっと開けた。
締めきったカーテンの隙間から午後の日差しが部屋の中に細く差し込んでいる。
ベッドの中で彼はまだ眠っていた。
天使のような寝顔をもっと近くで見たくて、私は足音をしのばせながら彼に近づいて傍らにしゃがみこんだ。
温かな部屋のぬくもり。
穏やかな彼の寝顔、そして静かな寝息。
あまりに愛おしくて優しい時間。
胸が熱くなって、彼の髪にそっと指を寄せた。
「ゴメンね」
思わず口をついて出てしまった。
彼に何を謝っているのか、自分でもわからないまま。
「ん・・・」
物憂げな声とともに、彼が身じろぎして薄く目を開けた。
その瞳に私が映っている。
「・・・帰ったん?」
「出かけたの知ってたの?」
「さっき一度起きたから。なんか食おう思ったら、おまえおらんし」
「あー・・・うん、起こしちゃ悪いかな思って」
「どこ行くとかメモくらい残しといて」
「ゴメン」
「・・・あれ?」
ようやく気がついたらしい。
「・・・切ったん?」
「うん。驚いた?」
「なんやさっきから、なんかヘンやヘンや思ってたら」
「なにヘンって?切らんほうがよかった?」
「いや・・・別にええと思うけど」
「そう?」
「・・・てか、なんで切ったん?」
「なんでだと思う?」
「知らんわ、そんなん」
自分以外の人の気持ちなんてわかるわけないやろ、と言って彼は私の視線を避けて天井を見上げた。
「・・・なあ、俺と別れよう、とか思った?」
彼の意外な変化球に私の方が動揺した。
「え・・・な、んで・・・?」
「もう、こんな自分のことしか考えてへんような男とは一緒にいられんわーて思ってんとちゃうの?」
呟くように尋ねる低い声といつにない真剣な表情に、知らず鼓動が速くなる。
私がいない間、この人はそんなこと考えてたの?
極度な人見知りで人一倍シャイな彼が、外でどれだけ努力してトップに上って行こうと頑張っているか。
わかっているはずなのに、仕事以外のことで余計な心配をさせてしまった自分に腹が立つ。
彼の気持ちを考えると心が痛い。
ベッドの上に腰かけて、彼の顔を上から覗き込んだ。
「なに?」
私は余計なことを言わずにいようと思った。
きっと何を言っても、それは彼の問いに対する答えにならないだろうと思ったから。
「お腹空いてる?お昼何か食べた?」
「・・・なんや、急に」
でも、彼の顔に笑顔が戻った。
私はこの人の笑顔が本当に好き。
「さっき言うたやろ、なんか食べよう思ったのに、おまえいないから・・・」
「わかった、じゃ、なんか作るね」
立ちあがった私の手を、彼の手が優しくつかんで引き寄せる。
「ええって。なんもいらん」
彼のぬくもり。
彼の匂い。
肌を通して伝わる彼の胸の鼓動。
そうだね、たしかになにもいらない。
彼の大きくて繊細な指が私の短くなった髪を優しくかきあげる。
「もうしばらくポニーテールできへんな」
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いやいや楽しいですね~
妄想ムキャ
しげさんとの妄想はなぜか「お笑い」になってしまうのに、この方との妄想は、こう、なんというか、アダルトなというか、甘口な方に向いてしまいます。
ただ、しげさんの場合、こういうシチュエーションがどうしても浮かんでこないんだよね
まあ、また気が向いたら、妄想劇場書いてみたいと思います。