歴史作家 智本光隆「雪欠片―ユキノカケラ―」

歴史作家 智本光隆のブログです。

祈念―がんばろう東北―

桜の花に癒され、地震の爪あとに涙し・・・しかしながら確実に仙台の街は復興しております。1歩づつではございますが、前進していきたいと思っております―8年前、被災地からこの言葉をいただきました。今年もまた、春がめぐって来ました。今も苦しい生活を送られている方々に、お見舞いを申し上げます。本当に1日も早い復旧、復興がなされますよう、尽力して行きたいと思っております。

豊臣蒼天録秘話第8回―千姫1―

2012-12-13 23:43:10 | 豊臣蒼天録
さて、女性陣行こうか(w
おそらく、歴群でもっとも女子が出るであろう智本作品。
毎回、主人公周りの人間をチョイスして出してます。
逆に考えれば『関ヶ原群雄伝』の楠木と三好の娘以外、とくに意外なチョイスはない気もしますが・・・
さて、今回は千姫と淀の方、そして五郎八姫。


豊臣秀頼の正室・千姫ですが・・・もう、秀頼との関係は今更、
自分が書くこと無いほどに小説、ドラマ、舞台等々で、出尽くすくらい取り上げられてますが。
逆に大阪の陣を扱った作品で、千姫がまったく出て来ない、出て来ても空気な作品を知らない(w
あと、単純に徳川方につく話も、ちょっと心当たりない・・・


史実のこの両者は仲睦まじかったという話から、疎遠まで諸説はあるわけですが、
歴群の場合、多くの場合が純粋に秀頼を慕って苦悩する・・・ということ多いです。


今作の場合、従来の大阪の陣ものよりも下の年齢(15歳)ってこともあり、
「天真爛漫 純粋無垢」な千姫ということにして見ました。
「ほわーとしていて、頭弱そうな・・・」と突っ込み入ったが、さておき、、、
忠輝との関係は某有名作でもありましたが、
これは担当A田氏が「忠輝のキャラ付けをもうちょっと・・・たとえば、千姫へのシスコン属性強めるとか!」
と言ったことに起因してます。
・・・なんか、歴史作家らしくない打ち合わせしてないだろか(汗


後悔をひとつ・・・1巻序章にて、千姫に懐中時計を持たせ忘れたことですね。
今でもやや後悔(w
なお、「当時に懐中時計ってあったの?」とはよく聞かれましたが、
高松宮家下賜の有栖川宮家の懐中時計が、1500年代作といわれています。


あとは、3巻の淀の方の自害、そして大坂城炎上の場面、、、
あれ、最初は誘拐されるのは千姫の予定で。だからこそ、坂崎出羽守が出ているので(w
それを阻止しようとして、淀の方が死ぬ予定でした・・・が。
それだと色々、ストーリー的におかしくなるので、変更して行き・・・現行の形になったわけです。
よく読むとセリフなんかに、微妙に旧設定の名残が残ってたりしますね。
淀の方の死と直で関係ないですが、責任感じて泣いたり・・・とか。
あと、なんか流れで刃振り回して戦ってますが、多少やりすぎだった・・・かな(w

豊臣蒼天録秘話第7回―大谷吉治2―

2012-11-06 23:17:17 | 豊臣蒼天録
「のぼうの城」の公開はじまったようで。
いつ見に行こうか。。。


さて、吉治についてちょい補足を。
今作、『関ヶ原群雄伝』で使う予定だったエピソード、形を変えてけっこう使用しています。
こう書きますと『関ヶ原群雄伝』が打ち切りかなんか見たいですが、あれは3巻予定の完結です。
あくまで、作者的に続けるとしたら・・・の意味。


書いたかも知れませんが、ラストシーンの秀頼が忠輝、五郎八姫、それに千姫と豊国廟に詣でて、
そして鴨川に太刀を投じる場面・・・あれは元々、吉治・・・というか、大谷吉勝に考えた場面です。
合戦の終結後、琵琶湖畔に立つ父・吉継の墓所を幸村、安岐、それに辰子と参り、
そして琵琶湖に太刀を報じる・・・と。
吉治と幸村は結局、どっちにもいる訳ですが。


でも、結果的にですが乱世を鎮めるのは、秀吉の後継者である秀頼の役割であり、
この役は、秀頼にこそ相応しかったような気がします。
作者的には6巻をかけて、『関ヶ原群雄伝』開始当初に考えたラストに辿りつけ、
けっこう満足しています。
「蒼天の国」という終章タイトルも、最初に考えたものです。


いずれにせよ、大谷吉治(吉勝)という人間の物語は、これで完結しました。
うちの母曰く、「あの粗忽者っぽいのが、よくここまで」だそうです。
あと、辰子(三成三女)とくっついて良かったという声、ネット上で見た(w


吉治は公儀奉行となり、名実ともに父吉継や、石田三成の跡を継ぎました。
豊臣恩顧の大名はほとんど死んだので、かなりやりたいことやれます。
そのために、吉治が見殺しにしたんじゃないかという程に(w
彼の一連の物語はこれにて終了です。
今後、仮に智本作品に大谷吉治(吉勝)が出ても、別設定になる・・・はずです。


ああ、それとですね。これは時々、ちょこちょこと突っ込まれていることですが・・・


Q.『関ヶ原群雄伝』で吉勝ってなんか、出生の秘密あるっぽかったよね?
A.はい、すみませんありました!でも、出す前に物語が終わりました!!



一応、『豊臣蒼天録』ではその設定、リセットになってはいるんですが。
(だから、身体的特徴をカットしてある・・・と)
・・・一応、今後使うかも知れないので伏せておこう。別設定になると言って舌の根も乾いていない(w
やっぱり、デビュー作の主人公には愛着ありますね。

豊臣蒼天録秘話第6回―大谷吉治1―

2012-10-30 00:57:06 | 豊臣蒼天録
さて、この人とは随分と長い付き合いになったな(w
大谷大学は智本光隆のデビュー作『関ヶ原群雄伝』の主人公です。
その時は、大谷吉勝という名前で出しました。


『豊臣蒼天録』は当然の事ですが、『関ヶ原群雄伝』の続きではありません。
時系列的にはまったく別の物語です。
根本的に違う設定も、随所にあります。
真田幸村の母方が宇田氏から、菊亭卿だったり・・・
ですが、「関ヶ原群雄伝がどこかの部分で分岐して、史実に近い形で関ヶ原の合戦を迎えた。
そして、西軍は敗れた」
そんな感じが、常に頭の中にありました。
そう言った意味では、『関ヶ原群雄伝』の吉勝と、『豊臣蒼天録』の吉治は同一人物になります。


1巻の吉治が太刀を秀頼へと渡す場面は、完全に「主役引き継ぎ」のシーンですね。
それでも、当初は「別人格」を自分で意識しようと思い、名前も変えたのですが・・・
いや、話が進むと完全に同じ人に(w
途中から「まあ、いいや」と思って書いてました。


問題は一度は主役を張ったわけで、「随所随所で、妙に目立つこと」でした。
「おい、お前はもう主役じゃない!」と突っ込み、幾つか場面は削ってますが・・・
やっぱり、デビュー作の主人公なだけに、作者も思い入れがあります。
担当氏に、「普通、幸村がもっと目立ちますよね?」と言われた・・・


実は大谷大学、『関ヶ原群雄伝』の時は、秀頼とはあまり接点がありません。
秀頼の小姓は弟の木下頼継(豊臣蒼天録の時点ではすでに死去)の設定でした。
吉勝が心底より主君と思っていたのは、太閤秀吉の他には織田秀信(三法師)でしたし。
ですが、どちらも「豊臣家にもっとも忠実な男」にはなっているかも思います。
このあたり、吉治は大谷吉継の子ですが、
「石田三成の後継者」的なポジションで描いたのは、両作の共通点でした。


なお、『関ヶ原群雄伝』で設定されていた、身体的特徴など(オッドアイ、左利き、左目を触る癖・・・)は、
今作では全部外しています。
・・・が、一ヶ所だけ左利きに戻した場所あります。割と重要な場面です。
あの時、作者の中では完全に吉勝と吉治がつながりました(w

豊臣蒼天録秘話第5回―松平忠輝2―

2012-10-01 22:53:38 | 豊臣蒼天録
さてと今作、ひとつの軸になったのは「豊臣秀頼と松平忠輝の関係」です。
智本作品、主役ともうひとりの関係が、
物語の軸に据えられていることは珍しくなく、、、
『関ヶ原群雄伝』は大谷吉勝と小早川秀秋。
『本能寺将星録』は蒲生氏郷・・・と言いたいところですが、細川忠興と珠子ですね。
前者は幼馴染で、後者の鬼蛇は言わずもがなの夫婦な訳ですが。


さて、それでは秀頼と忠輝は?
この2人を語る時、避けては通れない名作があるのはよくよく知っております。
それを、漫画化した作品も名作です。
この作品において、2人は「親友」でした。
『豊臣蒼天録』の場合、「ライバル」という感じで組み立てて見ました。
そして、両者がそれぞれ相手に、ある種の「コンプレックス」を抱いていると。
この「ライバル関係」の強調は、
担当氏の「もっと、秀頼が忠輝にライバル意識持つとか・・・」
から生まれたような気がします。
(忠輝の出した「結論」は、物語開始時点から決めてありました)


これは1巻時点では、秀頼のほうが一方的に持っている感じです。
今、読み返すと序章の忠輝は、なんか余裕のある感じのキャラですね。。。
これ、実は1巻ラストから2巻スタート時点である程度、解消されてしまっています。
吉治のセリフにあった通りで、秀頼が井伊直孝の首を取ったので焦っている・・・と。
実のところ、秀頼はその後は別のことで悩んでいます(w
忠輝のほうは豊臣軍内での己の立場に苦しむので、ちょっと浮いていて空回りです。
まあ・・・このあたり、
担当A田氏曰く、「浮いていることが彼のポジション」ですね。
なんか、鬼っ子というか、苦労人?のような感じさえしてました(w


でも、物語を終始、引っ張ってくれたのは忠輝の存在です。
特に3巻、最終巻の前半で主役がずっと気絶しているという、
おそらく歴群の歴史にないであろう状況でした(w
最終的に忠輝は一度、秀頼を認めて兜を脱ぎかけますが、
秀頼の方が「盟友」関係に引っ張り上げました。
その過程で、「野風の笛」を真っ二つにしてしまいましたが(w
そして忠輝自身、追い求め続けた父・家康とみずから決別し、
秀頼とともにこの国を担って行く決意をします。


終章において忠輝は関東に大領を得ています。
それは一種、豊臣政権が直接的に介入しない土地でもあります。
そこで、忠輝がどんな君主になるのか・・・
史実の彼が政治的な足跡を残していない以上、作者が知る術もありません。
まあ・・・当面は徳川残党の処理で大変でしょうが・・・そこは幸村もいるので。
大久保長安がいなくなるので、すごく大変そうですが。
おそらく、秀頼より長命を誇る彼ですので、
伊達政宗から煽られつつ、関東経営に腐心して行くでしょう。


あるいはこの国に危機が訪れれば、その時は真っ先に「将軍」として立つでしょう。
秀頼は太刀を捨てましたが、何かの時に武器を取るのも忠輝の役割なのですから。
なんかやっぱ、損な役回りのような気がする。。。
あとは、五郎八姫と富める時も、貧しい時も共に(w

豊臣蒼天録秘話第4回―松平忠輝1―

2012-09-24 21:52:06 | 豊臣蒼天録
さて、次は松平忠輝について。
『関ヶ原群雄伝』との最大の違いは、忠輝の存在と言えます。
歴群では関ヶ原の合戦後~大阪の陣を描いた作品は多々あったと思いますが、
忠輝の出番はというと、そんなにはないかな・・・とは。
担当氏にも「新鮮で良い」と言われたかな?


はい、白状します!
実はこの忠輝、作者の「勘違い」がまず生み出しました。
二条城会見の時に人質役で、大坂城に入っていたと完全に思い込んでました。
12歳の時に秀忠の名代で大坂城に来たのを、間違えて覚えていたな・・・
「大坂城にいるんだから、このまま豊臣方にしてしまえ!」的なプロット作ってから、
人質は義直、頼宣だと気がつきました。
忠輝が代わりに立候補(w して、大坂城に入っているのが、ちょっと強引ですね。


で・・・忠輝といえば、避けては通れないのは父・徳川家康との関係。
家康に出生時から嫌われた、その後も冷遇されていた・・・
史実では大坂夏の陣後に改易、臨終の席にも呼ばれなかったと言います。


・・・何故、そこまで嫌われ、改易されたのか?
これは結構、諸説が入り混じっています。
容貌が見にくかったから(あ、すみません。この容姿、本作中はざっくり無視でしたw)
大坂夏の陣がらみ・・・
そして、義父・伊達政宗との関係・・・
作中の理由は忠輝の「資質」から来るものだとしています。
実際のところ、母親(茶阿局)は石田三成系の人間とも見られるので、
そのあたりも関係しているのかな・・・と思ったりもしています。


本作では秀頼と共に、忠輝の成長でもありました。
秀頼の成長は作者の意図したところですが、忠輝に関しては「勝手に成長してくれた」という面が強く(w
父家康に愛されず、それ故に反乱し、それを乗り越えて秀頼と共に歩み出す・・・と。
当初から漠然とこのイメージはあったものの、書く内に固まってきたような感じがします。
それなので、1巻の冒頭を読むと、ちょっとキャラに違和感あったりしますが(w
それと、2巻の235ページの「金扇」の大馬印を仰ぎ見る忠輝(と幸村)!!
これ、作者のイメージそのものです。三好先生、ありがとうございます。


ひとつ、忠輝で悔いが残るとしたら、、、
幼い頃の家康との初体面シーンを、描写する隙間がなかったことですね。
作中、結城秀康が無理やり合わせたことになっているのですが。
いっそ、このブログで書こうかな(w