歴史作家 智本光隆「雪欠片―ユキノカケラ―」

歴史作家 智本光隆のブログです。

祈念―がんばろう東北―

桜の花に癒され、地震の爪あとに涙し・・・しかしながら確実に仙台の街は復興しております。1歩づつではございますが、前進していきたいと思っております―8年前、被災地からこの言葉をいただきました。今年もまた、春がめぐって来ました。今も苦しい生活を送られている方々に、お見舞いを申し上げます。本当に1日も早い復旧、復興がなされますよう、尽力して行きたいと思っております。

豊臣蒼天録秘話第3回―豊臣秀頼3―

2012-09-17 00:09:52 | 豊臣蒼天録
そして、最終巻と相成りまして・・・
ラストはもう、「秀頼覚醒」の巻ですね。
「目覚めたら別人」とか、かなり突っ込まれました(w
当初案ですと、高台院を義治なんかが連れて来て、
秀頼の覚醒を促す・・・みたいな流れで考えていました。
でも、それだと周りくどくなるのと、とてもページ数が足りないので、現行とあいなりまして。


お陰で1巻、2巻・・・特に2巻の高台院がらみの伏線ぽいの、ざっくり捨て去られていますが(w
でも、これで良かったかなと思います。母が死に、大阪城は焼けています。
この2つは秀頼を閉じ込めておく鎖と檻・・・そういう描写のある作品は多いです。
本作では淀の方は死を持ってして秀頼に独り立ちを促し、
帰るべき大坂城は焼け落ちて、秀頼成長の糧となった。。。


思えばこの『豊臣蒼天録』で死んだ豊臣方は加藤清正、大野治長にしろ、
そして福島正則らもすべて、秀頼を「天下人」とするための捨て石になった・・・ということでした。
本作の場合、それに秀頼が応えて成長してくれたのだと思います。


さて、最後に終章での世界観について。
質問も寄せられていましたが、どこの大名がどこに行ったのやら(w
もっと時間があれば・・・じっくり考えると楽しそうでですが、
残念ながら作者も大まかにしか考えてません。
多分、どう考えても「そうなるか?」ってことにしかならない気がしています。


ただ、豊臣家のこれからの利益は米ではなく、海外との交易で賄うというのが、根本にあるのは確かです。
なので、徳川家のように広大な直轄地を有してはいないでしょう。
(ただ、関ヶ原以前の二百万石は取り戻していますよ?)
ラストで関白を辞めてしまったので、それは或いは混乱の種かも知れませんが。
でも、秀頼にはあの「視点」に立って欲しかったので、ああなりました。
智仁親王が皇位に就けたのか、菊亭晴季は権力を握れたのかは・・・
ほら、秀頼も随分と「悪党」になったし(w
そのあたり、大谷義治がさっくりと処理したと思います(待


義治といえば、あのラストシーン。
あれは実は、『関ヶ原群雄伝』をあと2巻くらい書いたら、終章に使う予定でした。
義治が琵琶湖に鐘切の太刀を捨てる・・・
・・・『関ヶ原群雄伝』は「俺たちの戦いはこれからだ!」的に終わってますが、
別に打ち切りとかじゃないですよ?仮に書くしたら・・・の話。
実はあの話、没になった序章に「異国の雨」というのがありました。
それと対になって「蒼天の国」というのが、実は当初から頭の中にありました。
ある意味あのラストは、「シリーズ6巻」の幕引きであったのかも知れません。


でも、終わってみれば豊臣秀頼が太刀を捨てるのが、一番相応しかったように思います。
天下統一した彼の寿命がこの先、どれだけあるのかは分かりません。
でも、秀頼の戦いこそ「これから」だと思います。
彼の生まれ持った使命は戦場に立つことではなく、この国を「自由の国」とすることにあるのですから。



晩夏に咲く向日葵。そして、蒼天。

豊臣蒼天録秘話第2回―豊臣秀頼2―

2012-09-11 02:55:57 | 豊臣蒼天録
さて、それで2巻に突入して、まず思ったことは、、、
「すごい、動かしにくいな」でした。


とにかく、これは当たり前なんですが、秀頼は完全に「総大将」の位置なので、
逆に主体的に行動させるのが難しいというか。。。
過去の作品が大谷吉勝に細川忠興・・・どっちもフットワーク軽かったので。
ふらふら上田までいったり、愛宕山登ったりと(w
活躍の場面が創りにくい・・・その時の意外な壁でした。
まかり間違っても、槍を振り回して暴れるタイプではないし。
そのあたりもあり、「総大将の苦悩と重圧」を掘り下げよう、となりました。
総大将に必ずしも、都合よく動いてくれませんからね、豊臣軍。
半分くらい、原因は忠輝だけど(w


◇秀頼と「関ヶ原」

もうひとつ、これは描きたいなと思ったのが、「関ヶ原の合戦と秀頼」ですね。
関ヶ原の合戦の際に東軍についた大名を前にして、秀頼がどのような感情を抱くのか。
こういうのって、歴群ではあんまりやらないですよね?
それで秀頼に「どうして十一年前、徳川へと着いたのか?」と、福島正則にぶつけさせて見ました。
本作の秀頼は関ヶ原の合戦において、自分が無力であったことを悔やんでいるので。
これ、大谷吉治の与えたトラウマっぽいんですが(w
このあたり、序章の前になる大坂城の描写なんかできれば、もう少し深まったのですが・・・


いずれにしても2巻は、秀頼の行動が「最悪の結末」を生むということなります。
実は作者は、これまでの作品で主人公側を全面敗北させたことがなかったです。
歴群は2巻は「主人公側の敗北」が多いかもですが、
『関ヶ原群雄伝』は敗北っぽいけど、木曽川は勝っていますし。
『本能寺将星録』に至っては、連戦連勝で終わってました(w


◇そして、出生の秘密は・・・

そしてもうひとつ、1巻から匂わせてありましたが、「秀頼出生の秘密」
これは・・・色々な作品で、或いは研究者が散々に取り上げているネタですが。
最近も記事が出ていましたね。淀の方は肥前名護屋に行っていないとか・・・


作者はちなみに、高校の頃にクラスメイトにこれ聞かれました。豊臣秀頼って、秀吉の子なのと?
で、その時の答えは、、、
「違うと思う。でも、テストに出たら秀吉って答えないと、×だと思うよ」ピシャ!!(ドア閉める音)
・・・うわぁーすげーやな奴だな、今思うと(w


そんな少年の日は、まったく別にして、、、
プロット段階では、高台院を登場させて・・・みたいな流れも考えていましたが、
本作では「秀吉の天下を継承する、意思と覚悟のある者」それが唯一、豊臣秀頼であるとしました。
そして、それに秀頼自身も納得した・・・という形です。
なので、実は作者としても未定です(待
ただ、秀頼自身が苦悩して戦い、そして太閤秀吉の後継者としての自覚を持ち、
皆に認められる存在となった・・・それが描けたかな、とは思います。

・・・ひとつだけ。石田三成が父ではないですよ(w

電子書籍版『豊臣蒼天録 3』 そして、栄光の戦士がまたひとり・・・

2012-08-28 22:45:55 | 豊臣蒼天録
すみません、うっかりと告知を忘れておりました。


                    

             『豊臣蒼天録3 争乱の京都』 電子書籍版が好評発売中です!!



学研電子ストアWeb http://ebook.gakken.jp/gstore/index.html


その他、セブンネットショッピング、ソニーReader Store 等でもご利用いただけます。
ひとまず、そのお報せを!!



横浜98年V戦士、広島の石井琢朗選手が引退を発表されました。
石井選手、24年間の現役生活、お疲れ様でした。
まだ、終わってはないですね。広島はCS出場の可能性ありますし。


一番の思い出に「横浜での優勝」を上げていただき、胸に詰まるものがあります。
実際に引退された時に、まだつらつら書くと思いますが(w
エラーで延長→涙のサヨナラヒットなど、思い返すと切りがない・・・
これで、大洋→ベイスターズ元年の選手も三浦、谷繁、そしてDバックスの斎藤隆になったのかな。
叶わないことですが波留選手との1、2番を、
そして進藤選手との三遊間コンビを、もう一度見たいです。


長い間、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました!
明日の星を掴めよ、石井その手で!!



智本光隆

豊臣蒼天録秘話第1回―豊臣秀頼1―

2012-08-18 20:46:46 | 豊臣蒼天録
編集部は特にお盆休みでもなく、
毎日出勤しているそうな・・・
いや、大変な失礼を!!


さて、それはそれとして(w
『本能寺将星録』の時と同じ感じで、登場人物についてつらつらしたいと思います。
しばし、おつき合いのほどを。


◇成長する主人公、豊臣秀頼


さて、それで初回は主人公の秀頼様から。
主人公が豊臣秀頼に決定されたのは、
担当A田氏が「そうでなければいっそ、秀頼でやってみるかですよね」と言ったのが、
そもそもの始まり・・・これは前に書きました。
実はその数分前に、こんなやり取りもありました。


担当「なんか、違った形の主人公にして見ません?」
智本「違った形?」
担当「ほら、智本さんの主人公って、基本的に何でもできるオールマイティーな感じじゃないですか?
   だから今回は変えて・・・たとえば無骨で槍一筋に生きるとか、『のぼうの城』みたいな感じとか・・・」
智本「・・・いや、オールマイティーに描いている自覚、まったくないんですけど(汗 」



・・・と、こんな感じだったか!?
軽くショックでしたけどね(w 
大谷吉勝については、特にそんな感じはないと思うんですが。
多分、問題はこの時は直近だった『本能寺将星録』の細川忠興公!
某所に「細川忠興無双!!」と突っ込まれましたからね、あの話。
槍持ったら最強、羽柴秀吉、黒田官兵衛相手に策謀で負けなし、前関白を脅す、嫁は美人・・・
いや・・・これ上下巻で終わらせる都合上、仕方ない気もするんすけど。。。
元々、主人公を「万能人間」にするの、好きじゃないんですけど、どうしてこうなった!?


と・・・その後で主人公が秀頼に正式決定し、そして性格設定された訳ですが・・・
過去、歴群で秀頼主役、もしくは準主役はそこそこあったと思いますが、
目指したところは、「等身大の少年」な感じ。
年齢からすると大谷吉勝(19~20)、細川忠興(20)とほど同じで19歳なんですけど、
16、17あたりをイメージして描きました。
まったく戦争と無縁の高校生くらいが、いきなり戦場の真ん中に放り出されたらどうなる?
しかも、それは自分が原因で起きているわけで(w


かくして序盤の怯える、泣き出す、逃げ出す・・・等々の場面につながっています。
秀頼が格好良く描かれることの多い家康との対面・・・
創作史上、「もっとも情けなかった二条城会見」だったと自負しています、作者は(w
担当氏が「すみません。いい加減に秀頼のぐだぐだが長いんで、サクサク覚醒させて下さい
と言った程です。
まあ・・・しばらく覚醒しませんでしたが(w


あとは、担当氏は「もう少し、世間知らずな坊ちゃん坊ちゃんした感じ」と考えていましたが、
作者の方は「豊臣の後継者として、プライドだけは高い感じ」と、少しズレがあったかも知れません。
1巻に関して言えば大谷義治、真田幸村の立ち位置、役割が結構入れ替わっていたり、
第1章、第4章がほとんど全部、書き直していたりとか・・・
そのせいで、片桐且元などは出番が減ったりとか、
まったく出演がなくなった人も、いたりしました。ヒントとしては、「愛」の人・・・


いずれにしても、歴群で天才少年とか、ただの凡庸とかに描かれることが多い秀頼ですが、
割と好評をいただけたようで、嬉しい限りです。忠興は結構、「嫌な奴」と思われたのでねぇ・・・
あと、1巻の感想として「井伊直孝が可哀想」ってのが、あったとかなかったとか(w

豊臣蒼天録紀行24―お艶ヶ岩―

2012-08-07 00:31:35 | 豊臣蒼天録
さて、前回(前々回かw)で関西の取材地はすべて終わり、
3巻の舞台がほとんど出て来てないのですが、それもまた物語の事情。
・・・作者の都合ともいうが(w
ラストは群馬県の「お艶ヶ岩」です。


全国的にはほとんど無名だとは思いますが、
群馬県前橋の総社には、淀の方(茶々)が大坂夏の陣の後に、
大坂城から逃げ延びて、総社領主の秋元長朝に庇護されたという伝説があります。
秋元公は「天狗岩用水」という用水路をつくり、地元では今なお「名君」とされています。
『関ヶ原群雄伝』の時、名前だけはちょこちょこと出ていました。
家康の使いの役で(w
関ヶ原の合戦後、総社に1万石を得ます。



お艶観音像


淀の方は「大橋の局御縁」とよばれて、総社の地で暮らしましたが、
過去の悲劇に堪えられず、利根川に身を投げたといいます。
・・・と、これが表伝説(w
裏伝説では長朝が淀の方を我がものにしようとし、
気位の高い淀の方に拒まれたために、これを殺して利根川に沈めたとされます。
まあ・・・秋元公は地元の名君なので、裏伝説のほうはあまり採用されませんが。




この岩の上から、淀の方は身を投げたと伝わります。
利根川の流れは歴史上、何度も変わっており当時、この岩は利根川の西(総社側)に位置していたと、
明治元年の大洪水までは、利根川本流の中にあったようです。
現在は公園の中になっています。


この岩は「お艶ヶ岩」と呼ばれるようになり、
お艶観音像はお艶(淀の方)の330年忌に際し、
昭和34年に建立されたものです。
なお、戦前には細谷而楽作の慈光観音像があったということですが、
戦時中に供出されてしまったと。。。



総社には淀の方が乗って来た駕籠や、墓石とされるものもあるとか。
あ、そう言えば未見だ(w
・・・とは言っても、この伝説の信憑性はそんなにありません。
長朝が淀の方をかくまう理由がないですし、大坂夏の陣の頃は70歳ほどです。
長年、そんな感じに思っていたのですが、、、


この仕事をはじめて、知ったことですが、
大谷吉継一族の墓所は伊勢崎市に、石田三成の三女・辰子は大館(尾島町)で晩年を暮らしています。
そして、まったく未見なのですが、沼田市の正行院には石田三成が隠れ住み、
61歳まで生きたとの伝承と、墓があるとのこと。
意外とみんな近距離だなぁ・・・とか、ちょっと思っています(w
豊臣の御霊が、遠く離れた上野の地に眠る・・・のかな?





豊臣蒼天録紀行は、今回でひとまず終了です。
お付き合い頂きまして、感謝です。
えー・・・新作関係の記事はまだ出せないので、しばらくは別企画をやりたいと思います。
もうしばらくの、お付き合いを!


さて、今夜のなでしこはどうなるかな・・・

危ない試合だったが、勝った!
さあ、次は男子だ!!
そして、レスリングの松本隆太郎選手、銅メダル獲得おめでとう!!!