青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

柳生武芸帳 夜さくら秘剣

2016-02-19 07:20:53 | 日記
『柳生武芸帳 夜さくら秘剣』は、柳生武芸帳シリーズの第二作。原作・五味康祐、脚色・結束信二、監督・井沢雅彦、撮影・杉田正二。主演は 近衛十四郎。

《柳生本陣の柳生武芸帳浮月の巻が、将軍家指南役の地位をねらう疋田陰流一派の霞の多三郎(品川隆二)によって盗み去られた。
霞一派の千四郎(尾上鯉之助)、多三郎、秋葉信助(立松晃)、原田菊二郎(小田部通麿)、しぐれのお銀(藤田佳子)らは大老土井大炊守(阿部九洲男)と結託し、幕閣の永井信濃守(里見浩太朗)、松平伊豆守(徳大寺伸)の失脚を画策していた。

土井大老は将軍家光(山城新伍)に働きかけ、柳生宗矩(北龍二)に水月の巻を差し出させるよう仕向けた。宗矩は苦肉の策として「嫡男十兵衛(近衛十四郎)が乱心し水月の巻を手に出奔、浮月の巻は柳生の庄にあるので、江戸に取り寄せるまで五日の猶予を与えて欲しい」と返答した。

十兵衛は江戸の巷に紛れ込み、土井大老の出方を待った。
土井は、弓削三太夫(南修)に十兵衛の名を騙らせ、辻斬りをさせた。そのため十兵衛は捕手に追われ、大久保彦左衛門(堺駿二)の屋敷に匿われる。そこに忍び込んできた霞の千四郎を斬り、三太夫との対決を申し入れた。
夜の寛永寺境内で十兵衛は、多三郎と信濃守の妹・清姫(花園ひろみ)の前で三太夫と渡り合ったが、勝負は一時お預けとなった。

翌日、宗矩のもとへ、十兵衛の次弟・又十郎と妹・於きの命を引きかえに水月の巻を渡せという手紙が届けられた。二人は兄を助けようとして、逆に土井大老に捕えられたのだ。
宗矩は要求を拒絶する。十兵衛は浪人・根来角兵衛と名乗り土井大老に近づくが、正体を見破られ、さらに清姫が捕えられるのを目にしながら打つ手がない。

そして、家光に武芸帳を差し出す日が来た。
十兵衛は殿中の法度を犯し、家光に目通り、武芸帳の秘める天下騒乱の因を説き、土井大老の陰謀を告げた。真相を知った家光は、十兵衛に「土井の野心と新陰流を潰さんとする魔剣を切れ」と命じた。そして、信濃守に土井大老邸で夜桜の宴を張るよう手配をさせた…。》

原作は霧の多三郎が主人公だが、このニュー東映版は十兵衛が主人公になっている。十兵衛を演じる近衛十四郎のチャンバラが見どころなのだ。逆手二刀流は時代劇ファンなら必見。通常より長めの刀を使ったキレの良い刀さばきは、娯楽性に特化した豪快さで抜群の見ごたえである。夜桜舞い散る中での華麗な切り合いは、カラーだったらさぞや豪華絢爛だったことであろう。
本作では、大久保彦左衛門がお笑い要員となっているが、私としてはバタバタ五月蠅い大久保よりも、乙女たちが傘を回しながら踊るシーンの合間にふん縛られた又十郎たち三人が神妙な面持ちで正座している姿が差し込まれているのがマヌケで可笑しかった。又十郎の活躍って、土井の懐から落ちた巻物を拾ったことだけだったなぁ…。

とにかく、短い尺においしいところをギュッと詰め込んだバラエティパック的な仕上がりなのだ。作り手が無粋な芸術論や社会風刺などに走ることなく、純粋に観客を楽しませることに集中している良質な娯楽映画なのである。特に教訓は無いので、人生を語るのがお好きな人には、本作はお勧めできない。

娯楽作品としては文句なしの本作であるが、あえて、ちょっとだけ突っ込んでみると――。
十兵衛vs弓削→十兵衛、勝利→十兵衛、土井に巻物を叩きつける→家光、十兵衛に土井を切るよう命じる→大乱闘、という流れなのだが…。
立ち回りが賑やかなのは良いのだけど、いくら将軍自らが許可しているとはいえ、将軍に当たりそうな距離で大人数が刀を振り回して良いのかな?家光を安全な場所に移してからの方が良いのではないのかな?と少し心配になってしまった。まぁ、なし崩し的に乱闘になった方が、緊迫感が出て面白いのでしょうけど…。
何にせよ、誰もが目の前の敵との切り合いに夢中になっていて、家光のことをちゃんと守ってないのは、由々しき問題である。信濃守なんか「上様は私がお守りする」とか言っていたくせに、いざとなると自分のことでいっぱいいっぱい。家光は自分で自分の身を守っていたのだ。というか、途中からは将軍なのに一戦闘員扱いだった。とにかく、いつ家光がバッサリやられてしまうのかと彼の生存確認に忙しく、十兵衛の美しい刀捌きに集中できなかった。

近衛十四郎のチャンバラは流れるような身のこなしが華麗で、あれだけの長い尺を動き回っていてよく息が上がらないなぁと見惚れた。それだけに所々で使用されるニョ~ンとしたワイヤーアクション(?)は、せっかくの流れをぶった切っているだけなので要らなかったなぁ、とやや残念。

ラストの談笑は天下の一大事の直後にも関わらず、大久保が今更のように槍を持って現れたり、十兵衛の嫁取り話になったりと、目の前に死体がゴロゴロ転がっている状態なのにノホホンとした空気。事件が知れ渡らないように後始末する人たちが大変なんじゃないかな?やっぱり「大老急病死」で片づけちゃうのかな?

それから、宴開始直後から庭の植え込みに潜んでいた多三郎とお銀のことは、あえて見逃してやったということで良いのだろうか?この二人、何しに来たのだかさっぱりわからないところが、又十郎に匹敵するマヌケぶりだった。
そんなユルイ締め方も含めて「めでたし、めでたし」と楽しむのが、本作の正しい鑑賞法なのであろう。
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