『恋する惑星』(原題:重慶森林)は、1994年の香港映画。監督・脚本はウォン・カーウァイ。
“雑踏ですれ違う見知らぬ人々の中に将来の恋人がいるかもしれない”
香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル・重慶大厦を舞台に二組の男女のすれ違う恋模様を同時進行の二部構成で描く。
≪エピソード1:警官223号(金城武)。金髪女(ブリジット・リン)。
“その時 彼女との距離は0.1ミリ 57時間後 僕は彼女に恋をした“
エイプリルフールに五年間付き合った恋人のメイに振られた警官223号。
彼はメイの好物だったパイナップル缶をドカ食いしたり、アドレス帳に載っている女の子の番号に次々と電話を掛けたりといった奇行に奔る。メイとの待ち合わせに使っていた飲食店『ミッドナイト・エクスプレス』の店主にまで、からかい半分心配され、店の女の子を紹介すると言われてしまった。
パスワードは「一万年 愛す」―――何度確認しても、メイからのメッセージはない。
誕生日の前日の深夜、223号はバーで金髪の鬘を被った女に声をかける。誰でも良かった。メイを諦めることにしたので、次に店に入ってきた女に恋をしようと決めたのだ。
良い予感がした。しかし、女は逃亡中のドラッグ・ディーラーだった…。≫
≪エピソード2:警官663号(トニー・レオン)。店員フェイ(フェイ・ウォン)。
“その時 2人の距離は0.1ミリ 6時間後 彼女は別の男に恋をした”
スチュワーデスの恋人とのすれ違いが続く警官663号。
そんな663号が立ち寄る飲食店『ミッドナイト・エクスプレス』の店員フェイは、彼に恋をしていた。フェイは、663号の住所を調べ、鍵を入手し、彼の留守中に少しずつ彼の部屋にある物を自分好みの物と交換していった。
663号は自分の部屋の変化に気がつかない。勿論、フェイの気持ちにも気がつかない。一見代わり映えのない毎日が続いているかのようだったが…。≫
無節操なナンパやストーカーなど、見せ方によってはちょっとお下劣になりそうな設定をみずみずしい恋物語に仕立てている。
独特の透明感に満ちた色彩。手ぶれのきつい長回し。灯に彩られた猥雑な路地と狭く薄暗い室内。そこで稼ぎ、暮らす生き生きとした人々。鏡や窓、水槽越しにきらめく風景。映像を効果的に彩るBGM。一つ一つのパーツは陳腐だけど、組み合わせ方が上手い。
トニー・レオンが演じる警官663号がキュート。
ハンサムなのにポヤーンとしていて、隙だらけ。好奇心に乏しいところが、彼の敗因。そんなんだからフラれるんだよって思うけど、こんな人の方が一緒にいて楽なのでは?
幻のように儚い街を二組の男女が漂う。
警官二人に名前がなく、番号で呼ばれているのも非日常的。恋するためにだけ設けられた舞台で繰り広げられる男女のすれ違いには、何の教訓もなければ感動もないのだけど、恋に力瘤を入れるのは陳腐というもの。理解なんて空しい、人は変わるから。好みだって一日で変わる。あまり欲張らずに、フワフワした多幸感さえ味わえれば、それで良しなのではないだろうか。そうすれば、偶には、一夜限りの恋が忘れ得ぬものになり、爽快な気持ちで朝ぼらけを迎えることが出来ない訳でもないのだから。
“雑踏ですれ違う見知らぬ人々の中に将来の恋人がいるかもしれない”
香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル・重慶大厦を舞台に二組の男女のすれ違う恋模様を同時進行の二部構成で描く。
≪エピソード1:警官223号(金城武)。金髪女(ブリジット・リン)。
“その時 彼女との距離は0.1ミリ 57時間後 僕は彼女に恋をした“
エイプリルフールに五年間付き合った恋人のメイに振られた警官223号。
彼はメイの好物だったパイナップル缶をドカ食いしたり、アドレス帳に載っている女の子の番号に次々と電話を掛けたりといった奇行に奔る。メイとの待ち合わせに使っていた飲食店『ミッドナイト・エクスプレス』の店主にまで、からかい半分心配され、店の女の子を紹介すると言われてしまった。
パスワードは「一万年 愛す」―――何度確認しても、メイからのメッセージはない。
誕生日の前日の深夜、223号はバーで金髪の鬘を被った女に声をかける。誰でも良かった。メイを諦めることにしたので、次に店に入ってきた女に恋をしようと決めたのだ。
良い予感がした。しかし、女は逃亡中のドラッグ・ディーラーだった…。≫
≪エピソード2:警官663号(トニー・レオン)。店員フェイ(フェイ・ウォン)。
“その時 2人の距離は0.1ミリ 6時間後 彼女は別の男に恋をした”
スチュワーデスの恋人とのすれ違いが続く警官663号。
そんな663号が立ち寄る飲食店『ミッドナイト・エクスプレス』の店員フェイは、彼に恋をしていた。フェイは、663号の住所を調べ、鍵を入手し、彼の留守中に少しずつ彼の部屋にある物を自分好みの物と交換していった。
663号は自分の部屋の変化に気がつかない。勿論、フェイの気持ちにも気がつかない。一見代わり映えのない毎日が続いているかのようだったが…。≫
無節操なナンパやストーカーなど、見せ方によってはちょっとお下劣になりそうな設定をみずみずしい恋物語に仕立てている。
独特の透明感に満ちた色彩。手ぶれのきつい長回し。灯に彩られた猥雑な路地と狭く薄暗い室内。そこで稼ぎ、暮らす生き生きとした人々。鏡や窓、水槽越しにきらめく風景。映像を効果的に彩るBGM。一つ一つのパーツは陳腐だけど、組み合わせ方が上手い。
トニー・レオンが演じる警官663号がキュート。
ハンサムなのにポヤーンとしていて、隙だらけ。好奇心に乏しいところが、彼の敗因。そんなんだからフラれるんだよって思うけど、こんな人の方が一緒にいて楽なのでは?
幻のように儚い街を二組の男女が漂う。
警官二人に名前がなく、番号で呼ばれているのも非日常的。恋するためにだけ設けられた舞台で繰り広げられる男女のすれ違いには、何の教訓もなければ感動もないのだけど、恋に力瘤を入れるのは陳腐というもの。理解なんて空しい、人は変わるから。好みだって一日で変わる。あまり欲張らずに、フワフワした多幸感さえ味わえれば、それで良しなのではないだろうか。そうすれば、偶には、一夜限りの恋が忘れ得ぬものになり、爽快な気持ちで朝ぼらけを迎えることが出来ない訳でもないのだから。