『 富士吉田浅間神社 』
森川 雅昭さん 撮影
ゴルバチョフ元ソビエト連邦大統領が、91才で亡くなったと報じられた。
ソ連としては珍しい人で、強権主義に反対し、法治主義を唱え、ソ連邦を解体し、
ドイツの統一に貢献し、冷戦を解消、核拡散防止を進め、抑圧した近隣諸国を開放
したという大英雄であり大政治家といえるだろう。
私の好きな世界の政治家の1人である。
残念なことに、昔の体制に戻ってしまった現在のロシアでは、「ソ連を崩壊させた」
『西洋かぶれ』と評価は低いが、ああいう社会の中で成し遂げた功績は、人間の勇気と
高潔さとが光っている。
そうした偉大さと共に、私はこの人に勝手に特異な親しみを感じているのだ。
というのはサラリーマン時代に、恥ずかしながら夜の新橋の町を酔って歩いていて道路工事中
の一寸した穴に転んで額に傷を作ってしまった。それが折から来日中だった同氏の額のアザと
酷似していて、なかなか消えなかった為にゴルバチョフにそっくりだ(傷だけだろうが)と、
かなり長い間言われたものだ。
そんな事もあってか一層、彼に対する親近感を感じた様な気がする。
それにしても同氏の数ヶ月前のTV映像をみたが、その姿には愕然、驚きそして哀しくなった。
体、顔は不様に太り、目はすっかり精気が消えて、瞼は腫れて垂れ下がり、頬や顎も垂れ下がって
いたのだ。あの往年の、知的な端正で、柔和な面影はすっかり様変わりをしていた。
そこには老醜という言葉しかなかった。
しかし最後まで現在のロシアの体制を案じ憂いていたというのが救いだった。
額のアザだけは昔のままだった。
私の心にはあの昔のゴルバチョフ氏の姿が永遠に残っているから良いけれど、彼の死と同じ位に、
老化という現実が悲しくショックだった。