『 赤富士 』 河津 米子さん 撮影
この年をとると言うことだけは、望まなくとも誰にでも公平に、金があっても無くても、
何もしてない、何も考えていなくても、ただぼうっと生きているだけでも、あまねく皆に
やってくる。
生きている限り動物の宿命というものだ。うちのインコのミーちゃんですら、家に来たて
の1年半前の写真と今を比べると、やはり変わっているのが分かる。
我々は、晩年になって身も心もいささかぼんやりしてくると、それまでの過去の生き様には
関係なく、金持ちも貧乏も、どんな偉い人もそうでない人も、不幸だったと思っても幸だった
と思っていても、病気だらけだとしても頑健で病知らずだったとしても、もうここまで来れば、
皆それなりに一生懸命生きてきたわけで,そこに人との違いはもはや無くなるのではないかと思う。
人間の栄華なんて、うたかたの夢であるし、病苦も又今生きていると言うことの前では、ある意味
で夢幻の現象だったとも言えるし、そんな心境になれるのが老境の良さではあるまいか。
一寸負け惜しみか詭弁の様な気もするけれど。
肉体的には確かに衰えてくる。これも個人差はあるとはいうものの、長い一生で捉えればそれ程の
大差はない。
精神的な衰えも、これもやむを得ないことだが、朦朧の境地も、苦痛も悲しみもなく、ひょっと
すると楽なのかも知れない。
これからもますます心身共にハンディを背負って行くのだろうが、それを恐れず泰然として自然の
摂理であるとして受け止め、笑って過ごそうではないか。
今現在の心境では、そんな事は出来そうもない気がするが、その時になれば、一寸分からないけれど、出来そうな気もしないではないのである。