【はじめに】
日本の電力政策には重大な問題が有ります。❶電気料金が高い、❷夏季と冬季に電気が不足する恐れが有る、❸電気自動車(EV)が普及する様になると電気が不足する、❹古い火力発電所は廃棄されるが、新設は少ない、❺台風や地震の災害が発生した場合の対策など。
これらの問題について、2回に分けて投稿します。 今回は、主要国の電気料金と発電量について書きます。
【電気料金の国際比較】
先進6カ国の2019年の電気料金を以下に示します。出典は資源エネルギー庁のホームページ『日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』です。
各国とも、家庭用よりも産業用の方が安く設定されています。アメリカの電気料金は非常に安いです。 (アメリカの電気料金に税金が掛かるのか?は不明です。)
日本の電力会社が「発電/供給に必要だと主張するコスト(本体価格)」は、6カ国中で最も高いです。
ウクライナ戦争が勃発して、原油や天然ガスの価格が大幅に上昇しているので、今年(2022年)から各国の電気料金は大幅にアップすると予想します。 2020年、フランスは原子力発電で67.4%の電力を得ていたので、ウクライナ戦争の影響は少ない様に思えますが、原子力発電所のメンテナンス費用がアップしてきたので、ウクライナ戦争以前からフランスでは電気料金が上昇しています。
・・・ 家庭用電気料金 ・・・2019年
★ 日本 :25.4米セント/kWh(内税金=8.7%)・・・本体価格=23.1米セント/kWh
★ アメリカ :13.0米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :23.4米セント/kWh(内税金=4.7%)
★ フランス :19.9米セント/kWh(内税金=35.2%)
★ ドイツ :33.4米セント/kWh(内税金=53.3%)・・・本体価格=15.6米セント/kWh
★ イタリア :25.6米セント/kWh(内税金=27.3%)
・・・ 産業用電気料金 ・・・2019年
★ 日本 :16.4米セント/kWh(内税金=1.8%)・・・本体価格=16.1米セント/kWh
★ アメリカ :6.8米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :14.7米セント/kWh(内税金=5.4%)
★ フランス :11.8米セント/kWh(内税金=20.3%)
★ ドイツ :14.6米セント/kWh(内税金=50.7%)・・・本体価格=7.2米セント/kWh
★ イタリア :18.5米セント/kWh(内税金=37.8%)
【韓国との比較】
韓国の電力会社は、半官半民の『韓国電力公社』一社しか有りません。(国が株式の51%を握っています。) 韓国の歴代政府は、昔から採算を度外視して、政策的に電気料金を安く設定してきました。その為に、韓国電力公社は巨額の累積赤字を抱えています。
兎にも角にも、韓国の電気料金は日本よりも大幅に安いのです。 詳細は、次で検索してみて下さい。
HANKYOREH(ハンギョレ):『韓国の電気料金、原発大国フランスの半額と安い理由は』・・・2021年12月15日
最近、円安とウオン安が続いているので、両国の電気料金は上昇すると思われます。文政権では「脱原発」政策でしたが、尹大統領は原発を再稼働させる様です。
日経新聞の2022年10月12日付け『韓国「安い電気」に転機 資源高・通貨安で17.9%上昇』のデーターで日本と韓国の電気料金を比較してみました。
★ 日本の家庭用 :25.5米セント/kWh
★ 韓国の家庭用 :10.5米セント/kWh
★ 日本の産業用 :16.3米セント/kWh
★ 韓国の産業用 : 9.4米セント/kWh
【発電量と用途別の国際比較】
各国の発電量と用途の割合を比較すると、色々な事が分かると思います。
❶ 中国の発電量は、2015年の時点で既にアメリカの『1.29倍』になっています。 電力の用途で見ると、中国は異常に工業用が多く、逆にアメリカは少ないです。 従って、中国が多量の工業製品を製造している事が分かります。正に、『世界の工場』になっているのです。
・・・ アメリカと中国の工業で使用される電気 ・・・2015年
アメリカ :(37,808億kWh)✕0.21≒ 9,940億kWh
中国 :(48,768億kWh)✕0.66≒32,190億kWh
❷ 内需依存型の国(アメリカ、日本、フランス、イギリス)は電力消費の工業用の割合が低く、逆に外需依存型の国(中国、韓国、ドイツ)は工業用の割合が高くなっています。
・・・ 発電量と用途 ・・・2015年
★ 日本 :発電量≒ 9,492億kWh、家庭≒28%、工業≒32%、オフィス等≒40%
★ 韓国 ;発電量≒ 4,953億kWh、家庭≒13%、工業≒53%、オフィス等≒34%
★ アメリカ :発電量≒37,808億kWh、家庭≒37%、工業≒21%、オフィス等≒42%
★ カナダ :発電量≒ 5,031億kWh、家庭≒34%、工業≒33%、オフィス等≒33%
★ イギリス :発電量≒ 3,029億kWh、家庭≒36%、工業≒30%、オフィス等≒34%
★ フランス :発電量≒ 4,249億kWh、家庭≒36%、工業≒25%、オフィス等≒39%
★ ドイツ :発電量≒ 5,147億kWh、家庭≒25%、工業≒44%、オフィス等≒31%
★ イタリア :発電量≒ 2,875億kWh、家庭≒23%、工業≒39%、オフィス等≒38%
★ 中国 :発電量≒48,768億kWh、家庭≒15%、工業≒66%、オフィス等≒19%
★ インド :発電量≒10,269億kWh、家庭≒24%、工業≒44%、オフィス等≒32%
★ ロシア :発電量≒ 7,263億kWh、家庭≒20%、工業≒45%、オフィス等≒35%
出典 :一般社団法人・海外電力調査会;主要国の消費電力量の部門別構成(2015年)
(余談 :ロシアの工業力) ウクライナ戦争で、最近、「ロシアは新しい兵器を製造出来ないために、トンデモナク古い兵器を持ち出してきている」と言う報道が有りました。半導体や工作機械を国産しておらず、経済制裁で輸入が難しくなった事が主な原因の様です。 ロシアの発電量は、アメリカの『19%』日本の『77%』しか有りません。この点からも、ロシアは通常兵器で欧米諸国と戦争する国力が無いのは明らかです。
(余談 :原子力発電) 原子力発電は、『悪』だと言う考え方が多くの国に広がり、日本を含む欧米諸国では新設抑制、廃止の政策を進めてきました。 然し、ウクライナ戦争の勃発で各国は考え方を修正しています。 一方、中国は原子力発電の割合が非常に少なく、今後、原子力発電所を沢山新設すると予想します。日本政府も、より安全な原子力発電所の新設を真面目に検討すべきだと考えます。
日本の電力政策には重大な問題が有ります。❶電気料金が高い、❷夏季と冬季に電気が不足する恐れが有る、❸電気自動車(EV)が普及する様になると電気が不足する、❹古い火力発電所は廃棄されるが、新設は少ない、❺台風や地震の災害が発生した場合の対策など。
これらの問題について、2回に分けて投稿します。 今回は、主要国の電気料金と発電量について書きます。
【電気料金の国際比較】
先進6カ国の2019年の電気料金を以下に示します。出典は資源エネルギー庁のホームページ『日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』です。
各国とも、家庭用よりも産業用の方が安く設定されています。アメリカの電気料金は非常に安いです。 (アメリカの電気料金に税金が掛かるのか?は不明です。)
日本の電力会社が「発電/供給に必要だと主張するコスト(本体価格)」は、6カ国中で最も高いです。
ウクライナ戦争が勃発して、原油や天然ガスの価格が大幅に上昇しているので、今年(2022年)から各国の電気料金は大幅にアップすると予想します。 2020年、フランスは原子力発電で67.4%の電力を得ていたので、ウクライナ戦争の影響は少ない様に思えますが、原子力発電所のメンテナンス費用がアップしてきたので、ウクライナ戦争以前からフランスでは電気料金が上昇しています。
・・・ 家庭用電気料金 ・・・2019年
★ 日本 :25.4米セント/kWh(内税金=8.7%)・・・本体価格=23.1米セント/kWh
★ アメリカ :13.0米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :23.4米セント/kWh(内税金=4.7%)
★ フランス :19.9米セント/kWh(内税金=35.2%)
★ ドイツ :33.4米セント/kWh(内税金=53.3%)・・・本体価格=15.6米セント/kWh
★ イタリア :25.6米セント/kWh(内税金=27.3%)
・・・ 産業用電気料金 ・・・2019年
★ 日本 :16.4米セント/kWh(内税金=1.8%)・・・本体価格=16.1米セント/kWh
★ アメリカ :6.8米セント/kWh(内税金=0%?)
★ イギリス :14.7米セント/kWh(内税金=5.4%)
★ フランス :11.8米セント/kWh(内税金=20.3%)
★ ドイツ :14.6米セント/kWh(内税金=50.7%)・・・本体価格=7.2米セント/kWh
★ イタリア :18.5米セント/kWh(内税金=37.8%)
【韓国との比較】
韓国の電力会社は、半官半民の『韓国電力公社』一社しか有りません。(国が株式の51%を握っています。) 韓国の歴代政府は、昔から採算を度外視して、政策的に電気料金を安く設定してきました。その為に、韓国電力公社は巨額の累積赤字を抱えています。
兎にも角にも、韓国の電気料金は日本よりも大幅に安いのです。 詳細は、次で検索してみて下さい。
HANKYOREH(ハンギョレ):『韓国の電気料金、原発大国フランスの半額と安い理由は』・・・2021年12月15日
最近、円安とウオン安が続いているので、両国の電気料金は上昇すると思われます。文政権では「脱原発」政策でしたが、尹大統領は原発を再稼働させる様です。
日経新聞の2022年10月12日付け『韓国「安い電気」に転機 資源高・通貨安で17.9%上昇』のデーターで日本と韓国の電気料金を比較してみました。
★ 日本の家庭用 :25.5米セント/kWh
★ 韓国の家庭用 :10.5米セント/kWh
★ 日本の産業用 :16.3米セント/kWh
★ 韓国の産業用 : 9.4米セント/kWh
【発電量と用途別の国際比較】
各国の発電量と用途の割合を比較すると、色々な事が分かると思います。
❶ 中国の発電量は、2015年の時点で既にアメリカの『1.29倍』になっています。 電力の用途で見ると、中国は異常に工業用が多く、逆にアメリカは少ないです。 従って、中国が多量の工業製品を製造している事が分かります。正に、『世界の工場』になっているのです。
・・・ アメリカと中国の工業で使用される電気 ・・・2015年
アメリカ :(37,808億kWh)✕0.21≒ 9,940億kWh
中国 :(48,768億kWh)✕0.66≒32,190億kWh
❷ 内需依存型の国(アメリカ、日本、フランス、イギリス)は電力消費の工業用の割合が低く、逆に外需依存型の国(中国、韓国、ドイツ)は工業用の割合が高くなっています。
・・・ 発電量と用途 ・・・2015年
★ 日本 :発電量≒ 9,492億kWh、家庭≒28%、工業≒32%、オフィス等≒40%
★ 韓国 ;発電量≒ 4,953億kWh、家庭≒13%、工業≒53%、オフィス等≒34%
★ アメリカ :発電量≒37,808億kWh、家庭≒37%、工業≒21%、オフィス等≒42%
★ カナダ :発電量≒ 5,031億kWh、家庭≒34%、工業≒33%、オフィス等≒33%
★ イギリス :発電量≒ 3,029億kWh、家庭≒36%、工業≒30%、オフィス等≒34%
★ フランス :発電量≒ 4,249億kWh、家庭≒36%、工業≒25%、オフィス等≒39%
★ ドイツ :発電量≒ 5,147億kWh、家庭≒25%、工業≒44%、オフィス等≒31%
★ イタリア :発電量≒ 2,875億kWh、家庭≒23%、工業≒39%、オフィス等≒38%
★ 中国 :発電量≒48,768億kWh、家庭≒15%、工業≒66%、オフィス等≒19%
★ インド :発電量≒10,269億kWh、家庭≒24%、工業≒44%、オフィス等≒32%
★ ロシア :発電量≒ 7,263億kWh、家庭≒20%、工業≒45%、オフィス等≒35%
出典 :一般社団法人・海外電力調査会;主要国の消費電力量の部門別構成(2015年)
(余談 :ロシアの工業力) ウクライナ戦争で、最近、「ロシアは新しい兵器を製造出来ないために、トンデモナク古い兵器を持ち出してきている」と言う報道が有りました。半導体や工作機械を国産しておらず、経済制裁で輸入が難しくなった事が主な原因の様です。 ロシアの発電量は、アメリカの『19%』日本の『77%』しか有りません。この点からも、ロシアは通常兵器で欧米諸国と戦争する国力が無いのは明らかです。
(余談 :原子力発電) 原子力発電は、『悪』だと言う考え方が多くの国に広がり、日本を含む欧米諸国では新設抑制、廃止の政策を進めてきました。 然し、ウクライナ戦争の勃発で各国は考え方を修正しています。 一方、中国は原子力発電の割合が非常に少なく、今後、原子力発電所を沢山新設すると予想します。日本政府も、より安全な原子力発電所の新設を真面目に検討すべきだと考えます。