【はじめに】
今回と次回は、核兵器の恐ろしい現状について書きます。「憲法9条の遵守と核兵器反対」を呪文の様に毎日唱えておけば、「平和に暮らせる」と考えている方が日本には沢山おられます。 然し、爆心から半径『100km』の生物を皆殺しに出来る核爆弾が製造出来、高さ『500m』の津波を発生させる事が出来る核魚雷の製造技術も確立されていますよ!
本稿を書いていて、「人間は何と愚かなのか!」とツクヅク思いました。 人類は『霊長類』に分類されていますが、おこがましいです! 『阿呆類』か『浅短(せんたん)類』がお似合いの様に思えます。
・・・ 私の核兵器に関連する投稿 ・・・
① 核兵器保有国 (その2) :投稿日;2024年5月18日
② 核兵器保有国 (その1) :投稿日;2024年5月11日
③ 広島の原爆と父 :投稿日;2018年7月21日
【広島と長崎に使用された原爆】
北マリアナ諸島に有るテニアン島を飛び立った『B-29爆撃機』が、およそ2,500kmも離れた広島と長崎に原爆を投下しました。
広島と長崎で民間人が沢山亡くなられましたが、現在は凄まじい威力の核爆弾が多量に蓄積されており、アメリカ、ロシア及び中国が核戦争したらトンデモナイ事になってしまいます。
ソビエト連邦が1961年に実験した『ツァーリ・ボンバ』は、爆発威力を設計値の『1/2』に減らして爆発させましたが、爆心から『半径100km』の人間が『三度の火傷』を負うと言う実験結果になりました。『三度の火傷』になると、速やかに救急救命室に運んで手術しないと助かりません。 広島の惨状から現在の核戦争を想像するのは誤りです!原爆の威力が桁違いに大きいのです!
★ 爆撃機 :B-29 ・・・ガソリンエンジン駆動のプロペラ機で航続距離≒6,300km程しか有りませんでした。爆弾搭載量≒4,500kgで、原爆をヤット1発積める能力しか無かったのです。
★ リトルボーイ :ウラン爆弾 ・・・広島、威力≒15kt
★ ファットマン :プルトニュウム爆弾 ・・・長崎、威力≒20kt
★ リトルボーイ :ウラン≒60kg、全体質量≒4,400kg
★ ファットマン :プルトニュウム合金≒6.2kg、全体質量≒4,672kg
(御参考 :広島と長崎で亡くなった方 )
1945年末までに原爆で亡くなった人の数は、以下の通りです。
★ 広島≒14万人 ・・・広島の原爆死没者名簿には『333,907人』の名前が記載されています。
★ 長崎≒7.4万人 ・・・長崎の原爆死没者名簿には『195,607人』の名前が記載されています。
(余談 :父の被爆) 私の父は、広島で被爆しました。 その悲惨な状況は次のブログに書きました。
投稿日=2018年7月21日 『広島の原爆と父』
(余談 :私とB-29) 1953年に私の故郷・和歌山県龍神村は豪雨で→→殆どの橋が流され→→道は崩壊して→→『陸の孤島』になってしまいました。 アメリカ軍が『B-29』で、何回も飛来して、落下傘を付けた重い救援物資を沢山!沢山!落としてくれました。 B-29が低空飛行したので、その雄姿をハッキリ見る事が出来ました。
【現在の核兵器の恐怖】
アメリカ、ロシア及び中国が保有する核兵器の威力と数は、これらの国が全面的な核戦争をしたら→→殆どの国民が亡くなって→→国土は放射性物質で汚染されてしまうと予想します。
プーチン大統領は、「核兵器は恫喝の道具としては使用出来る」と考えています。 私は国連総会で、「核兵器で恫喝した人間は犯罪者で、国際司法裁判所(ICJ)に訴追出来る」と言う決議をすべきだと考えています。
(核兵器の使用する意味❶ :戦意の喪失)
核爆弾は、兵隊と一緒に(戦場の近くにいる)民間人も殺す兵器です。アメリカが広島と長崎で核爆弾を使用したのは、「民間人を沢山殺したら日本はギブアップするかも?」と考えての事でした。日本軍は広島と長崎の惨状を見ても、ギブアップする考えは無かった様です。 昭和天皇が英断されて停戦しました。
戦争で民間人を殺害する事は『ジュネーブ条約と第1及び第2追加議定書』で禁止されています。 『ジュネーブ条約』が出来たのは戦後の1949年です。日本は1953年にサインしましたが、アメリカは『第1及び第2追加議定書』にはサインしていません。 ロシア、中国、北朝鮮はサインしています。
ロシアがウクライナで小威力の核爆弾を使用したら、ウクライナ人は降伏するでしょうか? 欧米諸国の支援が続く限り、ウクライナ人は一層必死になって戦うと私は予想します。欧米諸国は、今まで以上に武器/弾薬を送るでしょう! フランス等がウクライナに軍隊を派遣する可能性が有ります。
核兵器を保有する国が、持たない国に核爆弾を投下したら→→日本の様に戦意を喪失して降伏すると単純に考えるのは誤りだと私は思います。
(核兵器の使用する意味❷ :戦争の抑止)
第二次世界大戦後、アメリカとソビエト連邦は必死になって「核爆弾の開発」と「運搬手段の開発」に取り組みました。そして、沢山の核兵器を保有する様になりました。現時点で、アメリカとロシアが核戦争をしたら→→両国は壊滅的な損害を被り→→大都市の住民の大半は生き残れないと思います。
核大国のアメリカ、ロシア、中国は直接戦争が出来なくなっていいます。大国間の直接戦争を防止する手段としては、核兵器は有意義です。
(余談 :キューバ危機) 1962年にソビエト連邦がキューバに核ミサイルを搬入しようとしました。ケネディ大統領は断固とした態度で、この問題に対処しました。 当時、米ソの核戦力の差は、圧倒的にアメリカの方が優位でした。フルシチョフ書記が折れて→→核ミサイルの搬入を諦めたので→→事なきを得ました。 その後、ソビエト連邦は一層核兵器の開発と蓄積に励む様になったのだと思います。
(核兵器の使用する意味❸ :局所的核攻撃)
軽量小型で威力を調節出来る核爆弾が開発されました。 この核爆弾は、限定された目標を叩く事を想定して開発されたと言われていますが、ウクライナの様に核を持たず、核の傘を差し掛けてもらっていない国に使用したら→→全面的な核戦争にはならないでしょう! 然し、核を持っていないNATO加盟国に、威力の小さい核を使用しても→→段々エスカレートして→→全面的核戦争に突入する可能性が高いと予想します。
経済的に豊かな核兵器を保有しない国は、核兵器を持つ国と同盟して→→核の傘を差し掛けて貰う必要性が高まって来ている様に思えます。
(核兵器の使用する意味❹ :恫喝)
プーチン大統領は、核兵器を持っていないウクライナに「核攻撃するぞ!」と頻りに恫喝しています。 「ロシアは国連の常任理事国ですから、世界の平和に貢献する義務が有る」と私は思っていますが、ウクライナに侵攻して、更に核兵器で恫喝するトンデモナイ国ですね!
核兵器を恫喝の道具に使用する事を絶対に認めてはいけません。 ロシアがウクライナ戦争で勝利したら→→別の獲物を探して→→襲い掛かるでしょう! 日本に「北海道をよこせ! 然(さ)もなくば、核兵器を使用するぞ!」と威嚇してくる恐れが有ります。
【核爆弾の種類】
ウラン爆弾を製造する為には『ウラン235』を90%以上に濃縮する必要が有ります。『プルトニュウム239』は天然には殆ど存在しませんが、原子炉でウランを燃やすと、生成します。 広島はウラン爆弾で長崎はプルトニュウム爆弾でしたが、この2種類の核爆弾は(製造コストが高いので)直ぐに製造され無くなりました。
ウラン爆弾とプルトニュウム爆弾の大型化には限界があり、広島と長崎で使用された原爆の『10倍』が最大だと言われています。戦後直ぐにアメリカとソビエト連邦は大威力化が可能な水素爆弾(核融合爆弾)の開発競争に突入しました。
1952年に、アメリカが液体の重水素と三重水素を用いた水素爆弾の実験をしました。 出力が『10.4Mt(=10,400kt)』も有りましたが、爆弾の質量が65トンも有り、実用化は出来ませんでした。
1953年、ソビエト連邦が重水素を固体の『重水素化リチウム』にした画期的な水素爆弾の実験に成功しました。 アメリカもこの方式に切り替えて開発を続けました。
核爆発で中性子が発生しますが、普通の核爆弾の場合は中性子の発生を少なくする工夫が施されています。 中性子が多量に人間に振り注ぐと死亡します。 中性子は金属やコンクリートも透過するので、中性子を多量に発生する核爆弾(中性子爆弾)を爆発させたら建物の中に隠れている人間も殺戮出来ます。 アメリカとソビエト連邦は、『中性子爆弾』の開発をしました。
中性子爆弾には放射性物質の『トリチウム(三重水素)』が必要ですが、トリチウムの半減期は『12.3年』と短い為に、保管している中性子爆弾にトリチウムの補充又は交換が必要になります。 結局、この問題の為に米ロ共に中性子爆弾は配備していないのだと思います。
★ ウラン爆弾 :広島に投下された。 TNT火薬15キロトン ウランを90%以上に濃縮
★ プルトニュウム爆弾 :長崎に投下された。 TNT火薬20キロトン
★ 水素爆弾 :核融合爆弾 ・・・1952年にアメリカが実験した。
★ 乾式水素爆 :1953年にソビエト連邦が実験に成功しました。
★ 中性子爆弾 :小威力の人間だけを殺す爆弾を開発する狙いで、アメリカとソビエト連邦は中性子爆弾の実験をしましたが、配備はされませんでした。
(豆知識 :水素の同位体) 自然界の水素(H)には、普通の水素(軽水素)、重水素及び放射性物質の三重水素が存在します。 重水素は水を電気分解する等の方法で製造されています。
★ 軽水素 :自然界に存在する水素の『99%以上』は軽水素です。
★ 重水素
★ 三重水素(トリチウム) :自然界に微量に存在する。 ・・・放射性物質で半減期≒12.32年
【核爆弾の小型軽量化と大威力化→→小威力化】
広島と長崎に投下された原爆は質量が約『4,500kg』も有りましたが、現在では『戦術核爆弾』に分類される小さな威力しか有りませんでした。アメリカとソビエト連邦は、安価に製造出来る乾式水素爆の技術を開発して→→小型軽量化と大威力化の開発を進めました。
1961年、ソビエト連邦が超!超!大威力の核爆弾『ツァーリ・ボンバ』を実験しました。ツァーリ・ボンバの設計値の威力は『100Mt』でしたが、余りにも大きいので『50Mt』にして実験しました。『50Mt』は広島に投下された原爆の『3,300倍』もの威力です。実験に使用されたツァーリ・ボンバは、質量が27トン、直径が2m、長さが8mでした。 (爆撃機から投下して爆発させました。)
アメリカは小型軽量で、使用前に威力を調節出来る核原爆(B61とB83)を開発しました。「ロシアが、このタイプの核爆弾を保有しているか?」は分かりませんが、広島の3倍程度の威力を持つ小型の原爆は持っている様です。
『B61』の質量は、広島で使用された原爆の『7%』程しか有りませんが、威力は『0.02~23倍』です。小型軽量なので、F-16やB-35A戦闘機に搭載可能です。
・・・ アメリカの威力調節可能原爆 ・・・
★ B61シリーズ :配備開始は1966年、威力≒0.3kt~340kt、質量≒324kg ・・・戦闘機に搭載
★ B83 :配備開始は1983年、威力≒80kt~1,200kt、質量≒1,089kg ・・・爆撃機に搭載
【戦略と戦術核兵器】
1972年に米ソ間で締結された『核軍縮条約(ABM条約)』では、射程距離が『500km以上』の核弾道ミサイルを『戦略核兵器』と定義していました。 (ABM条約は2002年に破棄されました。)
最近マスコミが、(時々ですが)戦略核兵器と戦術核兵器と言う言葉を使用しますが、定義は曖昧です。 私の理解している用語の定義を下に書いておきます。
★ 戦略核兵器 :アメリカ、ロシア、中国が直接戦争をする場合に用いる事を想定して製造された大威力の核兵器。
★ 戦術核兵器 :局地戦争で用いる事を想定した、小威力の核兵器。
【ウランの濃縮】
ウランは海水中にも微量に存在していますが、まだ海水中のウランは利用されていません。ウランはマントルには存在し無いと考えられています。 地殻のウランが局在する場所(鉱山)から掘り出した鉱石を粉砕して→→化学処理を繰り返し→→二酸化ウラン(UO2)→→四弗化ウラン(UF4)→→六弗化ウラン(UF6)にします。
原子炉には種々の方式が有りますが、『黒鉛炉』と『重水炉』は天然ウランを燃料として使用します。 日本の原子炉は『軽水炉』ですが、軽水炉では六弗化ウランを使用しています。
下に示す様に、用途によってウラン235の濃度を高める必要が有ります。 六弗化ウランの沸点が『56.5 ℃』と比較的低温のため、気体の状態の六弗化ウランを遠心分離機に入れてウラン235の濃度を高めています。 ウランの濃縮には、超高速で多数の遠心分離機を動かす必要が有り、多量の電力が必要になります。
原子炉の燃料棒は、10年間隔で交換されますが、原子力空母や原子力潜水艦のウラン燃料は『30年間』使用出来る量を、最初から原子炉の中に入れています。 燃料が切れたら→→艦も寿命になったと考えるのです。(換言すると、原子力空母や原子力潜水艦ではウラン燃料の補給/交換は行われません。)
ウラン爆弾では、ウラン235の濃度を『90%以上』に高める必要が有りますが、膨大なコストが掛かるので、ウラン爆弾は殆ど製造されませんでした。
・・・ 天然ウラン ・・・
★ ウラン238 :自然界の濃度:99.2742 % (半減期≒44.7億年)
★ ウラン235 :自然界の濃度: 0.7204% (半減期≒7.07億年)
★ ウラン234 :自然界の濃度: 0.0054% (半減期≒25万年)
★ その他のウランの同位体 :自然界に存在するのは極!極!微量
・・・ 用途によるウラン235の濃縮 ・・・
❶ 原子力発電所用 :ウラン235の濃度;3%~5% ・・・軽水炉の場合
❷ 原子力空母や潜水艦用:ウラン235の濃度;93%~97%
❸ ウラン爆弾用 :ウラン235の濃度;最低20%、通常は90%以上
今回と次回は、核兵器の恐ろしい現状について書きます。「憲法9条の遵守と核兵器反対」を呪文の様に毎日唱えておけば、「平和に暮らせる」と考えている方が日本には沢山おられます。 然し、爆心から半径『100km』の生物を皆殺しに出来る核爆弾が製造出来、高さ『500m』の津波を発生させる事が出来る核魚雷の製造技術も確立されていますよ!
本稿を書いていて、「人間は何と愚かなのか!」とツクヅク思いました。 人類は『霊長類』に分類されていますが、おこがましいです! 『阿呆類』か『浅短(せんたん)類』がお似合いの様に思えます。
・・・ 私の核兵器に関連する投稿 ・・・
① 核兵器保有国 (その2) :投稿日;2024年5月18日
② 核兵器保有国 (その1) :投稿日;2024年5月11日
③ 広島の原爆と父 :投稿日;2018年7月21日
【広島と長崎に使用された原爆】
北マリアナ諸島に有るテニアン島を飛び立った『B-29爆撃機』が、およそ2,500kmも離れた広島と長崎に原爆を投下しました。
広島と長崎で民間人が沢山亡くなられましたが、現在は凄まじい威力の核爆弾が多量に蓄積されており、アメリカ、ロシア及び中国が核戦争したらトンデモナイ事になってしまいます。
ソビエト連邦が1961年に実験した『ツァーリ・ボンバ』は、爆発威力を設計値の『1/2』に減らして爆発させましたが、爆心から『半径100km』の人間が『三度の火傷』を負うと言う実験結果になりました。『三度の火傷』になると、速やかに救急救命室に運んで手術しないと助かりません。 広島の惨状から現在の核戦争を想像するのは誤りです!原爆の威力が桁違いに大きいのです!
★ 爆撃機 :B-29 ・・・ガソリンエンジン駆動のプロペラ機で航続距離≒6,300km程しか有りませんでした。爆弾搭載量≒4,500kgで、原爆をヤット1発積める能力しか無かったのです。
★ リトルボーイ :ウラン爆弾 ・・・広島、威力≒15kt
★ ファットマン :プルトニュウム爆弾 ・・・長崎、威力≒20kt
★ リトルボーイ :ウラン≒60kg、全体質量≒4,400kg
★ ファットマン :プルトニュウム合金≒6.2kg、全体質量≒4,672kg
(御参考 :広島と長崎で亡くなった方 )
1945年末までに原爆で亡くなった人の数は、以下の通りです。
★ 広島≒14万人 ・・・広島の原爆死没者名簿には『333,907人』の名前が記載されています。
★ 長崎≒7.4万人 ・・・長崎の原爆死没者名簿には『195,607人』の名前が記載されています。
(余談 :父の被爆) 私の父は、広島で被爆しました。 その悲惨な状況は次のブログに書きました。
投稿日=2018年7月21日 『広島の原爆と父』
(余談 :私とB-29) 1953年に私の故郷・和歌山県龍神村は豪雨で→→殆どの橋が流され→→道は崩壊して→→『陸の孤島』になってしまいました。 アメリカ軍が『B-29』で、何回も飛来して、落下傘を付けた重い救援物資を沢山!沢山!落としてくれました。 B-29が低空飛行したので、その雄姿をハッキリ見る事が出来ました。
【現在の核兵器の恐怖】
アメリカ、ロシア及び中国が保有する核兵器の威力と数は、これらの国が全面的な核戦争をしたら→→殆どの国民が亡くなって→→国土は放射性物質で汚染されてしまうと予想します。
プーチン大統領は、「核兵器は恫喝の道具としては使用出来る」と考えています。 私は国連総会で、「核兵器で恫喝した人間は犯罪者で、国際司法裁判所(ICJ)に訴追出来る」と言う決議をすべきだと考えています。
(核兵器の使用する意味❶ :戦意の喪失)
核爆弾は、兵隊と一緒に(戦場の近くにいる)民間人も殺す兵器です。アメリカが広島と長崎で核爆弾を使用したのは、「民間人を沢山殺したら日本はギブアップするかも?」と考えての事でした。日本軍は広島と長崎の惨状を見ても、ギブアップする考えは無かった様です。 昭和天皇が英断されて停戦しました。
戦争で民間人を殺害する事は『ジュネーブ条約と第1及び第2追加議定書』で禁止されています。 『ジュネーブ条約』が出来たのは戦後の1949年です。日本は1953年にサインしましたが、アメリカは『第1及び第2追加議定書』にはサインしていません。 ロシア、中国、北朝鮮はサインしています。
ロシアがウクライナで小威力の核爆弾を使用したら、ウクライナ人は降伏するでしょうか? 欧米諸国の支援が続く限り、ウクライナ人は一層必死になって戦うと私は予想します。欧米諸国は、今まで以上に武器/弾薬を送るでしょう! フランス等がウクライナに軍隊を派遣する可能性が有ります。
核兵器を保有する国が、持たない国に核爆弾を投下したら→→日本の様に戦意を喪失して降伏すると単純に考えるのは誤りだと私は思います。
(核兵器の使用する意味❷ :戦争の抑止)
第二次世界大戦後、アメリカとソビエト連邦は必死になって「核爆弾の開発」と「運搬手段の開発」に取り組みました。そして、沢山の核兵器を保有する様になりました。現時点で、アメリカとロシアが核戦争をしたら→→両国は壊滅的な損害を被り→→大都市の住民の大半は生き残れないと思います。
核大国のアメリカ、ロシア、中国は直接戦争が出来なくなっていいます。大国間の直接戦争を防止する手段としては、核兵器は有意義です。
(余談 :キューバ危機) 1962年にソビエト連邦がキューバに核ミサイルを搬入しようとしました。ケネディ大統領は断固とした態度で、この問題に対処しました。 当時、米ソの核戦力の差は、圧倒的にアメリカの方が優位でした。フルシチョフ書記が折れて→→核ミサイルの搬入を諦めたので→→事なきを得ました。 その後、ソビエト連邦は一層核兵器の開発と蓄積に励む様になったのだと思います。
(核兵器の使用する意味❸ :局所的核攻撃)
軽量小型で威力を調節出来る核爆弾が開発されました。 この核爆弾は、限定された目標を叩く事を想定して開発されたと言われていますが、ウクライナの様に核を持たず、核の傘を差し掛けてもらっていない国に使用したら→→全面的な核戦争にはならないでしょう! 然し、核を持っていないNATO加盟国に、威力の小さい核を使用しても→→段々エスカレートして→→全面的核戦争に突入する可能性が高いと予想します。
経済的に豊かな核兵器を保有しない国は、核兵器を持つ国と同盟して→→核の傘を差し掛けて貰う必要性が高まって来ている様に思えます。
(核兵器の使用する意味❹ :恫喝)
プーチン大統領は、核兵器を持っていないウクライナに「核攻撃するぞ!」と頻りに恫喝しています。 「ロシアは国連の常任理事国ですから、世界の平和に貢献する義務が有る」と私は思っていますが、ウクライナに侵攻して、更に核兵器で恫喝するトンデモナイ国ですね!
核兵器を恫喝の道具に使用する事を絶対に認めてはいけません。 ロシアがウクライナ戦争で勝利したら→→別の獲物を探して→→襲い掛かるでしょう! 日本に「北海道をよこせ! 然(さ)もなくば、核兵器を使用するぞ!」と威嚇してくる恐れが有ります。
【核爆弾の種類】
ウラン爆弾を製造する為には『ウラン235』を90%以上に濃縮する必要が有ります。『プルトニュウム239』は天然には殆ど存在しませんが、原子炉でウランを燃やすと、生成します。 広島はウラン爆弾で長崎はプルトニュウム爆弾でしたが、この2種類の核爆弾は(製造コストが高いので)直ぐに製造され無くなりました。
ウラン爆弾とプルトニュウム爆弾の大型化には限界があり、広島と長崎で使用された原爆の『10倍』が最大だと言われています。戦後直ぐにアメリカとソビエト連邦は大威力化が可能な水素爆弾(核融合爆弾)の開発競争に突入しました。
1952年に、アメリカが液体の重水素と三重水素を用いた水素爆弾の実験をしました。 出力が『10.4Mt(=10,400kt)』も有りましたが、爆弾の質量が65トンも有り、実用化は出来ませんでした。
1953年、ソビエト連邦が重水素を固体の『重水素化リチウム』にした画期的な水素爆弾の実験に成功しました。 アメリカもこの方式に切り替えて開発を続けました。
核爆発で中性子が発生しますが、普通の核爆弾の場合は中性子の発生を少なくする工夫が施されています。 中性子が多量に人間に振り注ぐと死亡します。 中性子は金属やコンクリートも透過するので、中性子を多量に発生する核爆弾(中性子爆弾)を爆発させたら建物の中に隠れている人間も殺戮出来ます。 アメリカとソビエト連邦は、『中性子爆弾』の開発をしました。
中性子爆弾には放射性物質の『トリチウム(三重水素)』が必要ですが、トリチウムの半減期は『12.3年』と短い為に、保管している中性子爆弾にトリチウムの補充又は交換が必要になります。 結局、この問題の為に米ロ共に中性子爆弾は配備していないのだと思います。
★ ウラン爆弾 :広島に投下された。 TNT火薬15キロトン ウランを90%以上に濃縮
★ プルトニュウム爆弾 :長崎に投下された。 TNT火薬20キロトン
★ 水素爆弾 :核融合爆弾 ・・・1952年にアメリカが実験した。
★ 乾式水素爆 :1953年にソビエト連邦が実験に成功しました。
★ 中性子爆弾 :小威力の人間だけを殺す爆弾を開発する狙いで、アメリカとソビエト連邦は中性子爆弾の実験をしましたが、配備はされませんでした。
(豆知識 :水素の同位体) 自然界の水素(H)には、普通の水素(軽水素)、重水素及び放射性物質の三重水素が存在します。 重水素は水を電気分解する等の方法で製造されています。
★ 軽水素 :自然界に存在する水素の『99%以上』は軽水素です。
★ 重水素
★ 三重水素(トリチウム) :自然界に微量に存在する。 ・・・放射性物質で半減期≒12.32年
【核爆弾の小型軽量化と大威力化→→小威力化】
広島と長崎に投下された原爆は質量が約『4,500kg』も有りましたが、現在では『戦術核爆弾』に分類される小さな威力しか有りませんでした。アメリカとソビエト連邦は、安価に製造出来る乾式水素爆の技術を開発して→→小型軽量化と大威力化の開発を進めました。
1961年、ソビエト連邦が超!超!大威力の核爆弾『ツァーリ・ボンバ』を実験しました。ツァーリ・ボンバの設計値の威力は『100Mt』でしたが、余りにも大きいので『50Mt』にして実験しました。『50Mt』は広島に投下された原爆の『3,300倍』もの威力です。実験に使用されたツァーリ・ボンバは、質量が27トン、直径が2m、長さが8mでした。 (爆撃機から投下して爆発させました。)
アメリカは小型軽量で、使用前に威力を調節出来る核原爆(B61とB83)を開発しました。「ロシアが、このタイプの核爆弾を保有しているか?」は分かりませんが、広島の3倍程度の威力を持つ小型の原爆は持っている様です。
『B61』の質量は、広島で使用された原爆の『7%』程しか有りませんが、威力は『0.02~23倍』です。小型軽量なので、F-16やB-35A戦闘機に搭載可能です。
・・・ アメリカの威力調節可能原爆 ・・・
★ B61シリーズ :配備開始は1966年、威力≒0.3kt~340kt、質量≒324kg ・・・戦闘機に搭載
★ B83 :配備開始は1983年、威力≒80kt~1,200kt、質量≒1,089kg ・・・爆撃機に搭載
【戦略と戦術核兵器】
1972年に米ソ間で締結された『核軍縮条約(ABM条約)』では、射程距離が『500km以上』の核弾道ミサイルを『戦略核兵器』と定義していました。 (ABM条約は2002年に破棄されました。)
最近マスコミが、(時々ですが)戦略核兵器と戦術核兵器と言う言葉を使用しますが、定義は曖昧です。 私の理解している用語の定義を下に書いておきます。
★ 戦略核兵器 :アメリカ、ロシア、中国が直接戦争をする場合に用いる事を想定して製造された大威力の核兵器。
★ 戦術核兵器 :局地戦争で用いる事を想定した、小威力の核兵器。
【ウランの濃縮】
ウランは海水中にも微量に存在していますが、まだ海水中のウランは利用されていません。ウランはマントルには存在し無いと考えられています。 地殻のウランが局在する場所(鉱山)から掘り出した鉱石を粉砕して→→化学処理を繰り返し→→二酸化ウラン(UO2)→→四弗化ウラン(UF4)→→六弗化ウラン(UF6)にします。
原子炉には種々の方式が有りますが、『黒鉛炉』と『重水炉』は天然ウランを燃料として使用します。 日本の原子炉は『軽水炉』ですが、軽水炉では六弗化ウランを使用しています。
下に示す様に、用途によってウラン235の濃度を高める必要が有ります。 六弗化ウランの沸点が『56.5 ℃』と比較的低温のため、気体の状態の六弗化ウランを遠心分離機に入れてウラン235の濃度を高めています。 ウランの濃縮には、超高速で多数の遠心分離機を動かす必要が有り、多量の電力が必要になります。
原子炉の燃料棒は、10年間隔で交換されますが、原子力空母や原子力潜水艦のウラン燃料は『30年間』使用出来る量を、最初から原子炉の中に入れています。 燃料が切れたら→→艦も寿命になったと考えるのです。(換言すると、原子力空母や原子力潜水艦ではウラン燃料の補給/交換は行われません。)
ウラン爆弾では、ウラン235の濃度を『90%以上』に高める必要が有りますが、膨大なコストが掛かるので、ウラン爆弾は殆ど製造されませんでした。
・・・ 天然ウラン ・・・
★ ウラン238 :自然界の濃度:99.2742 % (半減期≒44.7億年)
★ ウラン235 :自然界の濃度: 0.7204% (半減期≒7.07億年)
★ ウラン234 :自然界の濃度: 0.0054% (半減期≒25万年)
★ その他のウランの同位体 :自然界に存在するのは極!極!微量
・・・ 用途によるウラン235の濃縮 ・・・
❶ 原子力発電所用 :ウラン235の濃度;3%~5% ・・・軽水炉の場合
❷ 原子力空母や潜水艦用:ウラン235の濃度;93%~97%
❸ ウラン爆弾用 :ウラン235の濃度;最低20%、通常は90%以上