嵐は夜がいい。
被害が出ない程度に強い嵐がいい。
すると恐怖とスリルが増す。
明け方晴れた空、湿っぽい空気、
まだ時々残る強い風。
庭には杉の葉が散乱している。
杉の葉は嵐のおみやげ。
庭の片隅に積み上げておく。
そして乾いたら七輪の焚き付けに使う。
やっぱり焚き付けには紙よりも杉の葉がいい。
マッチで火をつけると最初はくすぶり、
そのうちぱっと火が点き、そしてめらめらと音を立てて燃え上がる。
その瞬間が何とも言えぬ快感だ。
やっぱり火をつけるのは着火ライターよりもマッチがいい。
それも徳用サイズの「マッチ」でなく「燐寸」と書いているのがいい。
軸が紙の飲み屋のマッチはなんともよろしくない。
とはいえ、雨上がりの日などは湿っててマッチが点きにくく、何本も損することになる。
そのためさすがに最近は着火ライターを使うようになった。
まったく堕落したものだと思いつつもこればかりはしょうがない。
田舎暮らしを始めたころは、何を血迷ったか、縄文・弥生人のごとく、木をすり合わせて火をつけようと努力したことがある。
しかしこれはさすがに失敗した。
そして最低限の文明は受け入れねば、と大いに反省した。
ともあれ強い嵐は被害もなくお土産の杉の葉だけを残して過ぎ去った。