5/8-9 中村浩子 And then 第3話
浩子が銀座のデパートから出てきたとき、信号待ちをしている人たちに
何気なく目をやった。
なにか見た顔があった。
あれ、昇さんじゃない。 近寄って声をかけようと思ったけど
彼は一人ではなかった。
相手は男だし、仕事関係の人?、同僚?と思いながら
ついて行った。
大きな帽子をかぶっているし、サングラスも。
この服だって彼は見たことないし。
2人は1つのビルに入った。
エレベーターに乗った。
浩子も後に続いた。
エレベーターの階数の名前をいると8階からはホテルだった。
12階にレストラン街がある。
浩子は12階を押した。
昇と連れはホテルで降りた。
12階で降りて、また乗った。
8階で降りてみた。
フロントに行くと、フロントの男がお休みですか? と聞いた。
ああそういう使い方もできるんだと思いながら
いえ、パンフレットをくださいと頼んだ。
浩子はその日見たことを誰にも何も言わなかった。
姉の夫は同性愛者?
姉は小柄できゃしゃで、胸なんかも品祖で
でも顔は浩子なんかよりはるかに整っていた。
親のいいところだけを集めた顔と言ったところ。
浩子は姉より15cm以上大きかった。
大柄と言えばいいのか?
胸なんかも姉が牛みたいと意地悪を言ったほど
豊かだった。
高校くらいの姉妹喧嘩で浩子は姉によく
ペチャパイと言ったものだ。
昇は女って感じの女は好きじゃなかった。
敬子はいつまでも少女の感じで、昇はこの人ならと
思って何度目かの見合いで交際を申し込んだ女性だった。
敬子にとって男とは・・・・
敬子は大学のころ恋した男がいた。
その男と交際し出して、ベッドをともにした。
男は初ベッドで敬子の体を見て、落胆した。
でもやさしいと言うか、うまく逃げるためというか
「学生だし、妊娠でもするといけないから」という口実で
もう二度と寝ようとは言わなかった。
その後、何度かデイトはしたけど男は消えるように去った。
その後敬子の男歴は白紙だった。
交際相手がいつのまにかいなくなったことも
それほど悲しいとか失恋とも思わなかった。
見合いの相手と結婚することになっても
敬子の中に性欲なんか生まれていなかったから
初日のあと、数週間ご無沙汰でも敬子は不満もなかった。
昇は時々思い出したように敬子に触ったけれど
必ずしも子づくりに励むこともなかった。
兄、敬治は父によると父の祖父似だそうで。
顔は写真でしかわからないけど父の祖父が当時役人だったように
公務員になることを中学頃から考えるような男だった。
でも彼の恋愛経験はリッチだった。
父の祖父似の女好きなのかもしれない。
父の祖父の名は敬治郎だった。
上二人に祖父の名から敬を使ったけど
浩子が生まれたとき、母は私が名前を付けると言って
大好きだった祖母の名、浩子をそのままつけた。