
国の進化の度合いというのは、お役所仕事の多さに反比例すると思う。
イギリスから持ってきた車をスペインで登録し、スペインのナンバープレートを取得するための手続きをしている。もっぱら夫が走り回っているのであるが、その複雑なこと。
この車は、もともとは日本から輸入されたもので、イギリスのパジェロ専門の中古車店で買った(ちなみに、イギリスでは、日本から輸入したパジェロのほうが、ヨーロッパで生産されたイギリス仕様のショーグンより多いのだそうだ)。まず、左側通行用のヘッドライトや霧灯(これは日本から輸入されたときにはなかったので、イギリスで付けられたもの)を右側通行のスペインの道路用に変えないといけない。
おまけにこの車は後部座席と後部ウィンドーがスモークガラスになっているので、規定の量の光を通すかどうか検査をしてもらい、証明書を得ないといけないのだ。結局、後部ウィンドーは、元の黒のフィルムを取り除き、新しい黒いフィルムを装着しないといけないことになった。夫は、前のほうがずっと後ろが見やすかったと嘆いている。検査・後部ウィンドーの変更・証明書発行で、150ユーロ(21,000円)也。
準備を整えて、車検工場に行く。イギリス同様、スペインでも毎年車検が義務付けられているのだが、これは登録時の車検ということで、毎年恒例のものより厳しいらしい。が、排気ガスの点検もなければ、警笛を鳴らしてみてチェックするでもない。ヘッドライトの照射角度すら確認しなかったそうだ。整備士が興味を持っていたのは、車より必要書類がそろっているかどうかのほうだったとのこと。
この車検が90ユーロ(13,000円)で、その前手続きに当たるエンジニアの報告書が80ユーロ(11,000円)だった。ちなみにエンジニアの報告書については、ミニ車検のようなものを車検工場でしてもらい、その結果を車検工場の人がアリカンテ(50キロほど離れた都市)まで持っていって、判子を押してもらうということで、取得に2日間かかった。
さらに、市役所に行って日本の住民票に当たるものを取ってこないといけない。それから、パスポートのコピーに市役所の判子を押してもらわないといけないそうなのだが、これはわれわれの所轄の市役所ではやってくれないので、20キロほど離れた町の町役場に行かないといけないそうなのだ(???)。
この後、アリカンテの陸運局に行って、車両登録の手続きとやはりアリカンテの税務署で輸入税の納税があるわけだが、これは代行サービスに頼むことにした。イギリスで輸出許可証を取ってきたので、輸入税は免れるらしいが、車両登録手続き・ナンバープレートの発行に575ユーロ(約80,000円)、代行サービスに200ユーロ(28,000円)かかる。
この陸運局だが、1人うるさい係員がいるらしくて、その人は可能な限り避けろという警告がクチコミで広がっているようだ。もしこの人に当たってしまったら、書類を彼のお気に入りの順番にそろえておくようにという指示まで出回っている。
スペインでは運がものを言うことが多い。同じことをするにも、たまたま厳しい係員に当たったら、出直すしかない。が、やる気のない係員か融通の利く親切な係員に当たったら、もうけもの。また、その日の彼らの気分というのも大いに影響すると思う。出掛けに奥さんと喧嘩してきたりすると、翌日出直したほうが早いかもしれない。
こうして1つのことを成し遂げるのに、多くの人と多くの判子が関わってくるわけだ。お役所仕事を増やすことによって、より多くのスペイン人に儲けさせようという、国を挙げての陰謀なのかもしれない。より多くの人が関われば、それだけ汚職や収賄の余地も出てくる。後進国ほど、書類と判子の数は多くなる。