今日のイギリスは
またまた遅くなってしまったが、フランスの感想を少し。
やっぱりスペインよりはずっと寒かった。イギリス南東部よりも寒いかもしれない。でも、木々にはまだ茶色や黄色の葉が残っていて、風景は冬と言うよりは秋という感じ。ナルボンヌで、海岸沿いの高速道路からボルドーに向けて内陸部に入る高速道路に進路を変えると、しばらくピレネー山脈に平行して走ることになるのだが、雪に覆われた山々が太陽を受けて輝いているのが美しかった。やっぱり日差しは冬だ。
フランス人の不動産屋ファブリスの紹介で、イギリス人のご夫婦が経営するベッド・アンド・ブレックファーストに3泊ほどした。小さな村なのだが、2軒もレストランがある。もっとも、客はわたしたちだけという夜もあった。こんな小さな村でどうやって、2軒のレストランが生計を立てていけるのか不思議だ。
フランスのレストランと言うと、4コースのセットメニューを2時間かけて食べるというパターンしかないようである。この日は昼間ファブリスに連れて行ってもらった店で、たっぷりランチを取ったので(昼間のセットメニューは10ユーロ(約1400円)から13ユーロと安くて絶対にお得だ)、夜は軽く済ませたかったのだが、軽い食事を取れる店というのがなかなか無い。結局、40キロほど車を走らせて、バッファロー・グリルというアメリカ料理のチェーン店でハンバーガーとスペアリブを食べる。とても感じのよいフランス人青年が英語で世話してくれた。
フランス人にとって食べるということはとても重要なことのようだ。フランス滞在2日目、、ファブリスが付き添ってくれて、目的の銀行口座開設と購入する家の再訪に出かけた。英語を話すフランス人の銀行員をファブリスが紹介してくれ、問題なく銀行口座を開設することができた(フランス人もスペイン人以上に書類が好きだ。その大量の書類の1ページずつに頭文字をサインしないといけない。大仕事である)。一つ目的を達成すると、時刻は正午。ファブリスがそわそわし始める。「そろそろお昼の時間かな?」夫は家を見たくてたまらないので、家を見てからということになる。家に行き、写真を取ったりするが、だんだんファブリスが不安そうになってくるのがわかる。昼食が心配なのだ。1時近くなり、もう一度午後に来るということにして家を出て、ファブリスの行きつけの店に行く。
仕事の合間に食事を取る人たちでごった返しているのだが、そこはさすがにフランス。きちんとセットされたテーブルについて、4コースのセットメニューである。作業着姿の人たちのテーブルには、赤ワインのボトルまでのっている。2時になると、レストランは途端に静かになる。「みんな2時までに食事を済ませたいから、昼食時は地獄のような忙しさよ」とウェートレスが文句を言っていたが、そんなに急ぐのなら4コースの料理なんか食べなければいいのに。ファブリスが言うには、スーパーマーケットの中にあるレストランは、ちゃんとした料理を出すが、45分くらいで食事を済ませられるということで、迅速サービスのレストランもあるらしい。が、それでも45分である。日本の立ち食いそば屋など見たら、フランス人は腰を抜かすかもしれない。
「今日はちょっと食事を作る気がしないから、軽く外食で済ませちゃお」という気分のとき、フランスの主婦はいったいどうするのであろう。料理が嫌いなわたしは、これからの生活に不安を覚えるのだった。そのたびに4コース料理を食べるのは疲れる。しかも、残すと不機嫌になるのだ。夫の助けを借りてなんとかチーズまでは残さずに済んだが、最後のデザートはさすがに食べきれず皿に残したら、ウェートレスに「マダーム!!」と言っておこられた。
フランス人はフランス料理が一番だと思っているから、フランス料理以外のレストランがあまりない。それがフランスの問題点だとファブリスが言う。これはわたしも10月にフランスを旅行したときに気がついた。スペインのペドロランド近辺では、石を投げれば安い中華料理店に当たるのだが、このとき、フランスではたった1軒しか見かけなかった。経済面でも、フランスではあまり外食はできない。フランス料理の店のセットメニューは、24ユーロ(約3300円)からと夜になると途端に高くなる。あるレストランでは、ワイン1瓶20ユーロも取られた。
ファブリスによると、20キロほど離れた町に中華兼ベトナム料理の店が1軒あるそうだ。そこに昨夜行って、最近その店で始めた日本料理を食べてみたとのこと。わさびって本当にうまく名づけたものだ、「わぁっーーーさっびー」というくらい辛かったとたいへん感心してた。辛味ってフランス料理にはない味覚だものね。