時事解説「ディストピア」

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宜野湾市長選、本当に大敗したのか?

2016-01-26 00:54:45 | 軍拡
沖縄の宜野湾市長選は、県内移設派の現職市長がそのまま続投になる形で終わった。
これを新聞社は「大敗した」とか「大差をつけて」という風に表現するのだが、それはどうだろう?


票数を比較すると(100の位で四捨五入)、今回の選挙では
2万8000票と2万2000票、つまり6000票の差となるが、沖縄県知事選では
26万票と36万1000票、すなわち10万1000票の差をつけて翁長市が勝利した。 

票差だけを言えば、知事選のほうが圧勝だったと言える。
もちろん、これは単純な数字の比較なので全投票数の何割が現職派だったのかなど、
多角的に分析する必要があるが、そういうことすらせずに「大敗」と書かれると釈然としない。

沖縄の占拠は、ここ数年、県外移設派の人間が軒並み当選し、
自民派の人間はことごとく落選している。その中の現職続投なので新聞社もホッとしたのだろうか。

沖縄問題にかけては琉球新報社などの県内のメディアと
県外のメディアとの間には大きな隔たりがあると指摘されている。

県内移設をそれとなく支持する全国紙にとって今回の勝利は喜ばしいのか、
早速、「今後の翁長氏は苦戦を強いられる」とか「オール沖縄はまやかし」といった主張を
それとなく行っていて、ずいぶん大げさな言葉で攻撃するものだなと呆れている。

忘れてもらいたくないのが、宜野湾市の市内に普天間基地があるということだ。
宜野湾市からすれば、自分たちの町から消えてくれるならどこでもいいわけで、
今回、市長に投票した人物も、決して自分たちの町にそのまま基地があっても良いと
考えていたわけではない。むしろ、一刻も早く移転してほしいからこそ妥協したとも言える。

こういう点を忘れて、あたかも沖縄県には基地を抱えてもよいと思っている人間が
大勢いるのだとでも言いたげに今回の結果を評価するのは合法詐欺以外の何者でもないだろう。

とはいえ、2年前の名護市長選では県外移設派の稲嶺氏が当選したが、その差は4000票だった。
衆院選でも案外、県外移設派と県内移設派の票数はそれほど差がなかったと記憶している。

とすると、オール沖縄といっても、実際にはギリギリのラインで勝利していたと言えなくもない。
慢心していたとは言わないが、県外派の今後のいっそうの努力と反省が求められるだろう。

その上で、これから、あえて彼らの考えについて1つだけ批判を行いたいと思う。

県外移設派の中には、国外移設を目指す人間と国内移設を目指す人間の二種類が存在するが、
そのうち、最近、大勢となっているのが後者であり、彼らは本土への移設を主張している。

大変申し訳ないのだが、本土移設派の連中は国際政治のことが全然わかっていないと思う。



日本の仮想敵国である北朝鮮と中国は、在日・在韓米軍基地にグルリと囲まれている。
つまり、東京なり北海道なりに移設したところで、両国が日米韓から受ける脅威に変わりはない。

北朝鮮は公式に、仮に米朝で戦争が起きた場合に、日韓にある米軍基地を攻撃すると言っている。
とすると、仮に本土移設が可能となったとしても、
その場合、ミサイルが来る場所が沖縄から沖縄以外のどこかになるだけで、
本質的な部分を思えば、県内移設だろうと本土移設だろうと大した違いはない。

要するに、沖縄基地問題とは、安保条約および在日米軍の是非、周辺諸国との関係改善、
さらにはアジア一帯からの米軍撤退や不戦地域の創設など、もっと大きな視点から問う必要がある。


一言で言えば、
アジアにおけるアメリカの脅威をどうするか
という問題である。


このことを考えている人間というのは案外、少ないのではないだろうか?

アジアからアメリカ軍を追い出す一環として沖縄基地問題を考えているのであれば、
当然ながら、在韓米軍基地の問題にも関心が高いはずであるし、
米韓政府による北朝鮮に対する武力威嚇に対して毅然とNoの意識を示すはずである。

ところが、実際には右翼と一緒になって北朝鮮のほうが悪いと非難している。

これは、私に言わせれば、かなり矛盾した行為だ。

前々から言っているが、日本政府は中国や北朝鮮の脅威を口実に
米軍基地を確保しようとしている
し、米韓両軍は核弾頭が搭載可能の
戦闘機や原子力潜水艦を多数従えて、北朝鮮を先制攻撃する訓練を毎年、行っている

北朝鮮は、この行為をやめさえすれば、核開発を中断すると宣言してもいるし、常にアメリカとの
平和条約の締結を提言してもいる
これらを一切無視して、米韓は制裁や威嚇を行っている。

客観的に見れば、相手を攻撃したがっているのは米韓である。

彼らが自分たちの軍拡や威嚇行為を正当化する際に利用しているのが
「中国の脅威」「北朝鮮の脅威」なのだから、当然、左翼は
「中国や北朝鮮はアメリカが言うほど危険な国ではない」ことを説明しなければならない。

ところが、日本国内では北朝鮮や中国の政府は悪で、現地の民衆のためにも
この国を「民主化」しなければならないという意見を右翼も左翼も共有している。


一方では「北朝鮮は危険だ!中国は危険だ!」と語る左翼が
他方では「米軍基地反対!9条遵守!」と叫んでいる様子を見て右翼が
「なぜ自国を守る行為を邪魔するのか」と憤るのは当たり前ではないだろうか?

「対話による解決を」と語る左翼もいるが、ほとんどの右翼は
「それでは甘い」と考えているわけで、代案になりそうもない。反対意見としては弱すぎる。

こういう矛盾を抱えながら運動しているわけだから、
究極の部分で基地容認派や改憲派の意見を否定しきれていない弱さを持っている。

ズルズルと日本が軍拡に向かっているのは、多くの要因があるはずだが、
少なくともその1つとして、左翼の意見に納得できない中立派の市民がいることが挙げられよう。

彼らを説得するには、やはり「北朝鮮や中国は危険ではない」「だから基地は必要ない」
「不戦条約の締結と経済支援で双方の安全は保障できる」と説明しなければならない。

その作業を経ずして、
護憲派や基地反対派の言動に強力な説得力を持たせるのは難しいのではないだろうか?と思う。


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