時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

サウジアラビアのイエメン空爆による死者数が8000人を超す

2016-01-22 00:00:55 | 中東
ウクライナ政府の同国民に対して行った爆撃・殺害も「国際社会」
(正確には西側が覇権を握る国際政治の場)では殆ど取り上げられることがなかったが、
サウジのイエメン侵攻も同じく、10ヶ月以上に渡り、殆ど無視に近い形で扱われている。

国際人権団体アムネスティは同国の死刑や弾圧には抗議しているが、
同国のイエメンにおける民間人殺害に対しては何らアクションを行おうとしない。


アムネスティのホームページを見ると、サウジアラビアに対する
緊急行動(深刻な人権侵害にさらされている「特定の個人」を救うための、緊急アクション。
メールや手紙、Faxなどを使用して、政府関係者などに人権侵害を止めるよう要請を行う)には、
イエメンの空爆に対して抗議するものが一つもない

ウクライナ軍の空爆に対しても、非難どころか支持していたわけで、
この辺りに、イギリスやアメリカに本部がある「人権団体」の限界を感じてしまう。
(それは日本の平和団体にも言えることだが……)


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サウジアラビア主導の連合軍のイエメン攻撃による死者数が、8000人以上に達しました。

アルアーラムチャンネルによりますと、
サウジ連合のイエメンに対する犯罪を監視する民間団体の調整役は、
20日水曜、この連合軍が昨年3月26日からイエメン攻撃を開始してから10ヶ月の間に、
この攻撃で8251人が死亡し、1万6015人が負傷したと発表しました。

この調整役はまた、死亡者のうち、2236人は子供で、1752人は女性だとしました。

さらに、サウジアラビアはまた、この攻撃の開始から、
242の病院や医療施設、数百の橋、140の発電所を破壊したと強調しました。

この調整役は、イエメン国内では230万人が難民となっていると述べました。
この民間団体は、侵略者の犯罪に対し、国連が沈黙していることを批判しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61685-
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2011年の中東における一連の騒乱を「アラブの春」と称して讃えていた知識人たちは、
サウジアラビアに対しては、どういう態度を取っているのだろう?

岩波新書の『サウジアラビア』や『イスラーム主義とはなにか』などを読むと、
サウジアラビアは保守派に牛耳られる一方で、進歩派の動きも活発な国である印象を受けるが、
実際は次のような有様である。随分と楽観的な評価を下しているのではないだろうか?


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サウジアラビア東部で、市民が
同国のサウード政権の弾圧政策の継続に抗議し、デモ集会を行いました。

ファールス通信によりますと、サウジアラビア東部のアワーミヤで
人々が20日水曜夜、「剣に対する血の勝利」をスローガンにデモ集会を行い、
サウード政権の犯罪政策の継続に抗議しました。

サウジアラビアのシーア派の指導者ナムル師(ニムル師)の処刑に対する
東部の人々の抗議が高まったことを受け、サウード政権はこの地域で厳戒態勢を敷いています。

サウード政権は今月2日、同国のシーア派の指導者ナムル師を処刑しましたが、
この措置は、世界各地特に、イスラム世界に抗議の波を引き起こしています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61674-
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サウジアラビアの懲罰制度
-「ダーイシュ(IS)」との違いはあるのか?


サウジアラビアでシーア派宗教指導者ニムル師が処刑された。

これは多くの国で大規模な抗議を引き起こし、
再びサウジアラビアの残酷な懲罰制度に国際社会の注目を集めた。

ロシアのサイト「レンタ・ルー」には、
サウジアラビアの最も恐ろしい処罰に関する簡潔な説明が掲載された。

サウジアラビアでは婚外性交渉、あるいは婚外性交渉のほのめかし、
無神論、イスラム教から他宗教への改宗、同性愛、魔術、賭博などは犯罪とされており、
1000回の鞭打ち、禁錮10年、または斬首刑となる可能性がある。

なおサウジアラビアの司法制度は西側のものとは著しく異なっているが、
「ダーイシュ(IS、イスラム国)」とは驚くほど似ている。

証人が、有罪あるいは無罪を主張する場合は、しばしばただ宣誓するだけで証拠がなくてもよく、
弁護士は不必要な贅沢と考えられることも多く、未成年者や精神障害者にも死刑が執行され、
判決が言い渡される際に、サウジアラビア国民と外国人の間に一切差はない。

鞭打ちは、サウジアラビアでは最も一般的な刑罰だ。
厳格な規定は一切なく、シャリーア裁判所の裁判官が、鞭打ちの回数を決める。
過去最高の鞭打ちは、エジプト人のムハマンド・アリ・サイード被告に言い渡された4000回。

またサウジアラビアでは公開処刑として、斬首も執行されている。
公開処刑には大勢の人が集まる。通常、死刑執行後、遺体は教育目的のために、
はりつけにして公開される。これも「ダーイシュ(IS)」の行動を髣髴させる。

これら全てのサウジアラビアの特異性は、西側で当然の抗議を呼んでいる。

欧州や他の文明国の市民たちは、「道徳的配慮を強調する米国と英国は、
死刑執行数が多いことを理由にイランを『悪の枢軸』とみなしているのに、
なぜシャリーア裁判所がより厳しい判決を言い渡しているサウジアラビアのことは
見ないふりをしているのか?」という質問をよく投げかけている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/life/20160120/1462777.html#ixzz3xtVqIXp5
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本当に「文明国の市民」は非難を行っているのだろうか?
私の知る限り、日本でイランを非難する本はあるが、サウジを非難する本はない。
 (イランやシリア、北朝鮮などの亡命者が自国の体制を批判する本は
  向こうでもベストセラーになり、時々日本でも翻訳されているが)


サウジアラビアの処刑方法がダーイシュと酷似しているのは当たり前で、
同国の国教であり、宗教的権威であるワッハーブ派が国外に設立した宗教学校から
アルカイダやダーイシュなどのテロ組織に入団する人間が輩出され、ダーイシュに限って言えば、
占領区域において、学校機関にサウジの教科書を使用するよう強要しているのである。


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世界各地、とくにアラブ諸国からISISに加わる人々の動機の一つは、宗教的なものです。

ワッハーブ派の影響を受け、ワッハーブ派の学校で教育を受けてきた人々は、
タクフィール主義のテロ組織に加わる多くの潜在的な可能性を有しています。

これらの学校は、公正を追求し、人間を形成するイスラムの崇高な教えとは
何の関係もない事柄を子供たちに教えています。

こうした学校で教えられる事柄は、
イスラムの他の宗派の信者たちに対する憎しみや嫌悪を抱かせるものです。

ワッハーブ派は、サウジアラビアのオイルマネーを投じ、
イスラム諸国やイスラム教徒を少数派とする西側の社会で大規模なプロパガンダを展開し、
イスラム教徒を仲間に引き入れようとしています。

彼らは学校や様々な形の宗教施設を設立し、
イスラム教徒の若者たちをワッハーブ派の思想に引き込もうとしています。

一般に、社会の貧しい階層に属する若者たちがそれに引き込まれ、ISISに加わっています。

http://japanese.irib.ir/component/k2/item/53370-%E3%8
2%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%95%99%E3%81%8
8%E3%81%A8isis%E3%81%AE%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84

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歴史的文脈からワッハーブ派は過激派ではないと語る研究者もいるが、
現実にはワッハーブ派の教えを受けて急進化する人間が多くいるのだから、
これをイスラム原理主義の一種として認めることに何ら問題はあるまい。


加えて、サウジはシリアからダーイシュの戦闘員を迎え入れイエメンに侵攻している。
(http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151028/1087672.html)


客観的に観て、サウジとダーイシュは蜜月の関係であるように思う。

両者とも支配圏の内外の人間に対して連日のように攻撃を行っており、
イランや中国、キューバ、北朝鮮等の非欧米国が人権侵害国家だとしても、サウジには遠く及ぶまい。

にも関わらず、上記の国の内政にはやたらと干渉したがる国や知識人の多くが
サウジのイエメン侵攻について特に何もしないのは奇妙なことである。


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