時事解説「ディストピア」

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『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』書評その2(徹底批判!池上彰)

2014-12-08 20:18:17 | マスコミ批判
前回、私は日朝対談の骨子を挙げて、
拉致問題と経済制裁だけが懸案だったのではないことを指摘し、
この対談では経済支援のことなど全く触れられていないにも関わらず、
「北朝鮮は日本から金を『ふんだくる』算段だ」と謎解釈をした池上氏を批判した。


経済制裁を解くと、日本からふんだくった金でミサイルを作るから
絶対に駄目だという相手国への敵視と軽視を前提に持論を展開する池上彰。
(それ以前に経済制裁を解くと日本の資産が収奪されるという理屈自体が意味不明)


彼の語り口は
北朝鮮に物資を送っても軍隊の維持のために使われるから、
支援などもってのほかと主張する右翼の言説とそっくり同じである。



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対北人道的支援団体達の支援事業が漂流している中、
今度は対北支援物資が軍隊に転用されているというような報道が出た。


これは政府の対北人道的支援物資の搬出承認に影響を与え得るという点で注目される。
だが、政府と支援団体関係者達は一様に「荒唐無稽だ」という立場だ。



北の内部消息通を主に引用報道する日本の「アジアプレス」は
去る27日に「平壌の貿易商」という人物とのインタビューを報道した。


「平壌の貿易商」は石丸次郎「アジアプレス」代表と去る25日の通話で、
平壌市江東郡の軍商管理所所長が去る5月に銃殺されたと伝えた。

「アジアプレス」は「軍商管理所」について「人民武力部傘下所属機関」で、
朝鮮の各地域に駐屯する部隊軍人の為の商店に生活必需品を調達するのが主な目的だが、
原料基地(農場・生活品工場)はもちろん、地域特性に合うよう
軍人の後方物資調達の為の外貨稼ぎにも手を付けると紹介した。

そして東西海岸地域と北部国境地域に位置する軍商管理所は
海産物と山菜・鉱石など中国との合法的な貿易にも参加していると伝えた。

「平壌の貿易商」は「韓国から送った支援物資が南浦港に入ったものの、
それを軍商管理所でこっそり譲ってもらう為に所長が南浦に行った」とし
「この内容を口外して秘密を漏らした嫌疑で処刑された」と語った。


銃殺嫌疑は「支援物資が軍隊に渡った事を韓国側に漏らした」かどで、
彼は「南浦港に入って来た韓国貨物船に乗船出来るのはこの所長だけで、
漏洩者を追跡した模様」だと伝えた。


これは対北人道的支援民間団体の支援物資が
衰弱者層ではなく軍隊に転用されたという事であり、
「支援物資軍隊転用」論争を触発させようとしているのではないかという疑惑が出て来る。


政府支援団体「話にもならない。呆れた」


該当報道に対し、支援団体関係者達は
言葉が出ない。呆れた」という反応と共に、
「平壌の貿易商」という人の発言には「穴」が多いという指摘だ。



ある関係者は「南浦港に物資が入る事が時折ある。」としながら
「だからと言って南浦港に入った物資を軍関係者一人が
 秘密裏に譲ってもらう事は出来ない。そんな構造ではない」と指摘した。


彼は「対北支援物資は南北間で協議を経なければならない。
そして物資を数の変動なくそのままもらったという確認証を発行しなければならない」
として「政府方針によってモニタリングが強化され、
一つ一つ北側が受け取る物資を南側関係者達が確認せねばならない」と語った。


他の関係者も「粉ミルクが入っていて、
イチゴの苗が入っているのに、それをどうやって軍隊で転用出来るのか」として
「軍商管理所がどんな所か聞いた事もない。軍隊が持っていく事は絶対に不可能だ」と語った。

統一部関係者は「銃殺を北側が公開しない以上、確認する事も出来ない」とし
「人道支援物資は一つ一つ全て写真に撮って確認するなど、モニタリングが相当に強化された。
軍隊に入るというのは話にもならない。荒唐無稽だ」と明らかにした。

統一部によれば、昨年仁川と平沢港と出発、
中国大連港を経て北側の南浦港に入った支援物資は昨年18件、
銃殺されたという時点である5月まで総3件だ。だが、韓国の貨物船は
「5.24措置」のせいで「平壌の貿易商」が言ったようには南浦港には入れず、
中国船籍貨物船を利用する。

ここに軍商管理所所長銃殺嫌疑である
「支援物資が軍隊に渡った事を韓国側に漏らした」という点にも「穴」があるという指摘だ。


ある支援団体関係者は「そんな内容を南側に漏らしたとするならば、
南側関係者達に会っていたという事」だとし「銃殺された所長が
誰かは知らないが、北側の人間が南側の人間に会うのは不可能だ」と語った。


他の関係者も「所長という人が南の人に会って そんな話をしたというなら、
人道支援関係者達に会ったという事だが、そんな話は聞いた事がない」とし
「それとその人が誰なのか知らなくても、軍人身分であれ何であれ、
対南事業をする人でもないのに韓国人に会うのは難しい」と指摘した。



すなわち、対北支援物資モニタリング強化で軍隊転用可能性は非常に低く、
銃殺された軍商管理所所長が対南事業関係者でもない以上は
「支援物資軍隊転用」を南側人士に漏らす事も出来ないという事だ。



該当報道は「支援物資軍隊転用」の噂を量産しようという意図に見られ、
対北人道的支援事業が蹉跌を来たすのではないかという憂慮が出て来る。


支援団体関係者達は「十分に確認されない報道のせいで、
それでなくとも十分に進行する事が出来ない支援事業が
軍隊転用論争に包まれるのではないか心配」だと声をそろえて憂慮した。


これに統一部関係者は「全く影響は受けない。問題ない。
物資搬出承認は徹底して検証が成され、モニタリングも強化されたので
そのような報道は気にしない」と一蹴した。

http://roodevil.blog.shinobi.jp/Date/20141205/1/

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上で批判されているように、実際には支援物資が軍事転用されることなどないのに、
「関係者の言葉では」とさも真実めかして報道しているのが現在の日本の言論状況だ。


ここには、外交の基本である相手国への信頼など一かけらもない。


会談にせよ何にせよ、話し合いというのは、
向こうが約束を守るという信頼を前提にして成り立っている。



平和主義というのは自己の偏見を克服する所から始まると思うのだが、
池上の場合、逆に典型的な偏見を前提にして外交を語っているところがある。



そして、この態度は北朝鮮と友好関係を結ぶ、
少なくとも拉致問題を解決するために対話の機会を増やそうとするのではなく、
北朝鮮の悪印象を散布し、自国の差別や軍拡を助長させる団体と同じものである。


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久しぶりにアジアプレス関係ででかいのが一発来た。

アジアプレスが北朝鮮報道で嘘を言いふらすのは今に始まった事ではない
(と言うか、ほぼ100%デマと言っていいくらいな)のだが、
統一ニュースの紙面でここまでこっ酷くそのデマっぷりが指摘されている分、
今回のがどれだけとんでもない大嘘かが良く分かるだろう。


これは例によって
「北朝鮮への支援物資が軍隊に転用されている!」という、
日本や韓国の反北朝鮮勢力定番の風説だ。


筆者も今まで多くの日本人と話して経験した事だが、
朝鮮民主主義人民共和国への人道支援の話をすると
「えー、だって募金や物資送ったって軍隊やお偉方に横取りされるでしょ」
と言われるのが非常に多い。「そうじゃない、以前に日本から
行った米だって全部数えて点検して送られたんだ」と指摘しても
なかなか信じてもらえない事がほとんどだった


「北に支援しても軍に横取りされて、困ってる人達に届かない」

この大嘘の為にどれだけの在日が苦闘し、実際に現地の困窮層が苦しんできたか。


「ジャーナリスト」を称しながらロクに調査もせず
怪しげな伝聞情報ばかり垂れ流しては、
苦境にある人々を追い討ちかけるように
苦しめ続けたアジアプレスや石丸次郎こそ
人道・人権に反する大逆の輩ではないのか。



それでいて石丸は別の場所では
「隣人が苦しいときにこそ手をさしのべて」
などとうそぶくのだから、この男はどれだけ偽善と二枚舌の権化なのか。


その人道支援を「軍隊に横取りされる」という嘘で
必死に妨害してきた最大級のA級戦犯が石丸次郎当人なのである。

http://roodevil.blog.shinobi.jp/Date/20141205/1/

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批判の矛先こそ石丸次郎氏に向けられているが、
まったく同じことが池上彰にも言える。


「国民が腹を空かせているのに幹部はたらふく飯を食っている」と言っておきながら、
 国民の腹を膨らませるために必要な経済成長を邪魔しようとする池上彰。


俺は北朝鮮が嫌いだから、経済制裁はそのままにしろー!と言えばいいのに、
自分は平和を愛する穏健派なんだよとハッタリをかましながら語るその様は、
何というか……それがインテリジェンス(知識人)だと言うならば、
そんなもの増えないに越したことはないなと思えてしまう。


ー追記ー

池上や佐藤の「祝い金が目当てなのだ」という言説について補足。



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2014.4.7

現在、行われている対話の起点は、2002年9月に発表された朝・日平壌宣言だ。

第1項に「双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、
国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、
そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした」とある。

第2項では「過去の植民地支配」に対する日本側の「
痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」が表明されている。


その後、朝日間の政府間協議が断続的に行われてきた。

平壌宣言という一里塚が築かれたにもかかわらず、
国交が結ばれない非正常な状態が、さらに10年以上、続いている。


これまで両国は、中断されていた協議を再開する際、
「平壌宣言に従い不幸な過去を清算し、懸案問題を解決するために
双方の関心事項』を議論する」というコンセンサスを図るのが常であった。

今回の協議再開も同様のプロセスを踏んだはずだ。

拉致問題も「双方の関心事項」のひとつとして議論される。

しかし、協議の最終目的が国交正常化にあるという指針は変わらない。
協議に参加した日本外務省の関係者も、これについて朝鮮側に異論を述べたことはない。


ところが、日本のマスコミが伝える情報だけに接していると、
拉致問題が朝・日間で交わされた議論の全てであるかのような錯覚に陥る。

会談で、朝鮮側の「関心事項」も取り上げられるいう当たり前のことに関心が向かない。
特定の問題にとらわれると「日本の過去清算に基づく国交正常化」という
平壌宣言が示したゴールが見えなくなる。




実際のところ、協議の場で朝鮮側は多くの事案を主張し、要求している。
むしろ拉致問題に固執する日本よりも、提起するテーマの幅は広いといえるだろう。

ところが、首相官邸や外務省の会見、ブリーフに依拠する
日本のマスコミ報道には、これらの事実が欠落している。


平壌宣言発表後も、日本は植民地支配によって生じた一連の問題を
解決するために何ら行動をとらなかった。むしろ朝鮮に対する敵視政策を
「独自制裁」として実行し、総聯と在日朝鮮人に対する弾圧を強めた。


対話と制裁は両立しない。これまで政府間協議の場で朝鮮側は、
国交正常化というゴールを見据え、それが実現する前でも
日本が過去清算に関する措置を講じるべきだと主張してきた。


文字通り、「平壌宣言の精神及び基本原則に従い」、
日本の責務を追及する朝鮮の交渉スタンスは一貫している。


朝鮮側は、過去清算と関連して

◇日本の植民地支配によって朝鮮人民が被った
人的、物的、精神的被害に対する補償

◇在日朝鮮人の地位問題

◇文化財の返還問題

などを取り上げてきた。

在日朝鮮人の存在は、日本の植民地支配に連なる。

朝鮮政府は、在日朝鮮人の問題を「必ず実現すべき過去清算の重要項目」
(外務省関係者)として捉えている。3月30、31日に北京で開かれた会談で、
朝鮮会館の強制競売問題を提起したのは、その延長線上にある。

日本では、対朝鮮外交に関する情報が、
拉致問題をとりまく状況に迎合する形で操作されてきた。

世論操作の典型的手法は、日本の責任回避の合理化だ。

「拉致」と「過去清算」を対置させ、後者を「朝鮮側の懸案」とし、
「拉致問題が解決しなければ、北朝鮮の要求は受けない」と取り引きの論理を持ち出す。

自ら取り組むべき歴史の課題から目を逸らすための、問題のすり替えが行われてきた。


しかし、平壌宣言の精神から外れたレトリックでは、現状は打開できない。

朝鮮側が日本との交渉で過去清算問題を後回しにすることはないからだ。

再開された政府間協議の進展を見る上で重要なポイントである。


http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/47sk-5/

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すなわち、日本の植民地支配の責任もまた議題に上がったわけだが、
佐藤や池上は、この中の「人的、物的、精神的被害に対する補償」を
曲解して、補償金が目当てなのだと論じたのだろう。


だが、日韓基本条約は、そもそも、賠償金を支払いたくない日本政府が
代わりに多額の経済支援を行うことで、チャラにしてくれというものだった。

祝い金は戦後補償をしないという前提のもと送られたものであることを
忘れてはいけない(当時の朴政権も、経済支援のほうを望んでいた)。

他方、記事にも述べてあるように、北朝鮮は
経済支援ではなく補償を望んでいるのであり、
またこれと関連して在日コリアン(特に総連)への弾圧を重要視している。


実際、その後の対談では、金銭の授受は話題に上がらない一方で、
在日コリアンの地位問題は変わらず議論されている。


今年の8月15日の談話においても、朝鮮中央通信は、
「日本当局が去る69年間、日帝の最大被害国である朝鮮に対して
 敵視政策を追求しながら国際的孤立と圧殺を謀り、総聯と在日朝鮮人を弾圧、
 迫害し、過去清算に対する自国の責任を回避した」と指摘した。


「現在、世界の至る所で日本の過去犯罪を再確認し、
 誤った歴史観などを問題視する声が噴出しているが、これも結局、
 日本当局が性奴隷犯罪をはじめ過去の反人倫犯罪を反省せず、
 歴史の真実を否定し、犯罪行為を正当化しようとしたためである」とも非難した。


つまり、北朝鮮が要求する過去の清算とは、単なる金銭の問題ではなく、
現在の日本の右傾化や在日コリアンへの迫害に対して責任を持つことも
含めた、より政治的な懸案である。池上にせよ、佐藤にせよ、
過去の清算→大金が目的と早合点してはいないだろうか?


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