「彰、おめぇさんは淡雪と幼稚園から高校まで一緒だったようだな。」
佳奈がぶしつけな質問をした。
彰は少々考えたような顔をしながら
「そうそう。4歳の時に鳥海山麓から秋田市内に引っ越してきた。
淡雪のお父さんが私の父親に手配してくれてね。その当時よく男の子に意地悪されていた
淡雪を助けてね・・・。」
彰は顔をこわばりながら久留美と話している淡雪を見ていた。
「あいつはあまりそのときのこといいたくねぇやな。」
佳奈はまた話しているふたりを見た。
「淡雪の通っている高校って秋田市内でも進学校だとあいつから上京したての頃に
聞いた。お前さんも・・・。」
彰は佳奈の質問に頷いた。
「ええと・・・。鹿児島県内で言えば鶴丸か玉龍といった所だなぁ。」
半ば独白である。秋田の人間に分かるわけがない。
「ここまで私も彼女と同じ学校に通いたかったのは、彼女に近づきたかった。
でも、高校に入ってから、少しスキマが入るようになって・・・。」
彼女は今に至る経緯をずっと考えていた。
「あいつとやり直したいか?」
佳奈は彰に聞いてみた。
「やりなおしたい。でも・・・。」
彰は顔を俯向かせた。
「私もな、関東に上京して神奈川のアパートでルームシェアをして彼女と住んで居るんだが、
ただ、一つ屋根の下で寝ているだけで・・・。所でお前さんは関東のどこに住んで居るんだ。」
秋田駅から、淡雪の実家に至る道でかかってきた電話の内容を佳奈は思いだしていた。
「立川だよ。立川の女子体育大学。」
一瞬考えて・・・。
「私の住んでいる家からだと、京急で横浜駅まででてハマ線で八王子まで行って、そこから中央線だ。」
これまでのルートを足りない頭を総動員して考えていた。
「今度、関東に帰ったら、神奈川のアパートに行ってみたい・・・。」
彰はふとつぶやいた。
「私も立川に足を運んでみるか・・・。」
佳奈もつぶやく。