ある大学の調理室。
講義が始まる前、ぐつぐつと柑橘を似る香りが漂っている。
「あれ、誰が居るよ。」
岡田蛍という女子学生が調理室をのぞき込んだ。
「柑橘と言うことはマーマレードを煮込んでいるのだな」
もう一人立芝ヒカルという女子学生は
「レモンだといいんだけれども・・。」
とつぶやいた。
「あ、横さん・・・。」
蛍が言う。
「お二人とも気付きましたか。」
横手淡雪は聞き慣れた声に表情を変えずに調理器具を動かしている。
「ああ。ふーん夏みかんか」
ヒカルが、鍋の近くによって柑橘を手に取った。
「夏みかんに何か記憶があるの?」
蛍がヒカルの目を見た。
「母方の実家は広島市内だけれども、直ぐ近くに岩国があるんだ。
そこでよく夏みかんを見てね。」
ヒカルは、ごつごつして且つ、酸っぱい其れを思い出しながら
答えた。
「これをくれた人の出身が山口の人みたいで。」
淡雪はさらっと答えた。
ヒカルと蛍はああとシテ手を打った。
「山口か。でも柑橘って煮すぎないほうがおいしいと思うけれども」
蛍が言う。
「私の父方でも母方でも柑橘は良く使うけれども、あんまり
煮すぎないな。皮の味が残っていた方が良い。」
ヒカルが言う。彼女の出身は松山である。父方も愛媛県の方に
多い人間である。
淡雪は黙って頷いた。
大量に存在した夏みかんがマーマレードになっていく。
つづく
講義が始まる前、ぐつぐつと柑橘を似る香りが漂っている。
「あれ、誰が居るよ。」
岡田蛍という女子学生が調理室をのぞき込んだ。
「柑橘と言うことはマーマレードを煮込んでいるのだな」
もう一人立芝ヒカルという女子学生は
「レモンだといいんだけれども・・。」
とつぶやいた。
「あ、横さん・・・。」
蛍が言う。
「お二人とも気付きましたか。」
横手淡雪は聞き慣れた声に表情を変えずに調理器具を動かしている。
「ああ。ふーん夏みかんか」
ヒカルが、鍋の近くによって柑橘を手に取った。
「夏みかんに何か記憶があるの?」
蛍がヒカルの目を見た。
「母方の実家は広島市内だけれども、直ぐ近くに岩国があるんだ。
そこでよく夏みかんを見てね。」
ヒカルは、ごつごつして且つ、酸っぱい其れを思い出しながら
答えた。
「これをくれた人の出身が山口の人みたいで。」
淡雪はさらっと答えた。
ヒカルと蛍はああとシテ手を打った。
「山口か。でも柑橘って煮すぎないほうがおいしいと思うけれども」
蛍が言う。
「私の父方でも母方でも柑橘は良く使うけれども、あんまり
煮すぎないな。皮の味が残っていた方が良い。」
ヒカルが言う。彼女の出身は松山である。父方も愛媛県の方に
多い人間である。
淡雪は黙って頷いた。
大量に存在した夏みかんがマーマレードになっていく。
つづく