薄羽蜉蝣(うすばかげろう)をはじめてみた日、兄さんが言った
「ただ一日だけの命なんだ」
私がその命を陽炎(かげろう)とみえるようになったのは、
15才をすんでいた。
薄羽蜉蝣は、華奢なトンボだと思っていたから。
降るのを我慢している空の下で
幼稚園をやめたあたしは
独りでガラスのおはじきをしている
コンパネ製の縁台は、家族の誰かのベッドだった
飛ばなきゃ登れないほど高いベッドだったはずなのに
飛ばなくても登れるようになっていた
キャンディーみたいなおはじきを 縁台で弾いて
芝生に落ちたのを 宝探しのようにもう一度みつけて
えっちらおっちらと縁台を登り降りしていた
母さんが、オヤツに水盥(たらい)で冷やしたトマトをくれた
赤いトマトを食べながら おはじきを見てた
おはじきのほうが美味しそうだったから…
空気は蒸して暑かった
トマトの二口目をかじろうとした時、
私のトマトに蝶々がとまった。
私は、そおっとそおっと蝶々といっしょにトマトを食べた
三口目で 蝶々はヒラヒラとトマトから離れたけれど
縁台にとまってオヤツを食べ終わるまでいてくれた
母さんは、大きなお腹を撫ぜながら
窓の向こうで全部見てた
こんな魔法みたいなオヤツの時間を見ててくれたんだ
それを知って〈倍〉嬉しかった。
この時、次は薄羽蜉蝣といっしょにトマトを食べたいなと思った
なぜかな…
(君がカモミールの羽をふるわすからさ、飛んでっちゃう前に…思い出したよ…)
text:2019 yahooーblogのEちゃん家で…Ari Nakamura
「ただ一日だけの命なんだ」
私がその命を陽炎(かげろう)とみえるようになったのは、
15才をすんでいた。
薄羽蜉蝣は、華奢なトンボだと思っていたから。
降るのを我慢している空の下で
幼稚園をやめたあたしは
独りでガラスのおはじきをしている
コンパネ製の縁台は、家族の誰かのベッドだった
飛ばなきゃ登れないほど高いベッドだったはずなのに
飛ばなくても登れるようになっていた
キャンディーみたいなおはじきを 縁台で弾いて
芝生に落ちたのを 宝探しのようにもう一度みつけて
えっちらおっちらと縁台を登り降りしていた
母さんが、オヤツに水盥(たらい)で冷やしたトマトをくれた
赤いトマトを食べながら おはじきを見てた
おはじきのほうが美味しそうだったから…
空気は蒸して暑かった
トマトの二口目をかじろうとした時、
私のトマトに蝶々がとまった。
私は、そおっとそおっと蝶々といっしょにトマトを食べた
三口目で 蝶々はヒラヒラとトマトから離れたけれど
縁台にとまってオヤツを食べ終わるまでいてくれた
母さんは、大きなお腹を撫ぜながら
窓の向こうで全部見てた
こんな魔法みたいなオヤツの時間を見ててくれたんだ
それを知って〈倍〉嬉しかった。
この時、次は薄羽蜉蝣といっしょにトマトを食べたいなと思った
なぜかな…
(君がカモミールの羽をふるわすからさ、飛んでっちゃう前に…思い出したよ…)
text:2019 yahooーblogのEちゃん家で…Ari Nakamura