一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

先月の勉強から…

2008年12月01日 18時32分11秒 | 建築家の日記
▲海外の有名建築家の設計です。

飛び出したスカイラウンジは、地震が来なければ大丈夫でしょうし、
例え来ても計算上は大丈夫なのでしょう。でも、私はこういう設計はしたくないです。

計算上は大丈夫だった、1本足の見るからに不安定な阪神高速道路が
どうなったか、皆さんはご存知ですよね。

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みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

今年の締めくくりとなる12月がスタートしました。


先月末までの1ヶ月の間に、朝から夕方まで合計まる8日間、
都内で大学の先生から構造について勉強させてもらっていました。

木造などや2階建て、3階建てという建物よりは、30メートル以上、
マンションでいえば10階建て以上の建物の考え方が主です。

私はこういう大きな建物の構造設計をする気は、全くありませんが、
構造設計の仕事だけをしている専門家に混じって、学んできました。


建築基準法での構造計算の方法では、阪神大震災などの検証を経て
問題点や矛盾が生じてきていることは、いくつかわかっているのですが、
全面的に改定したくても簡単に改定できない理由があります。


大学の構造専門の先生は、日々研究しているので、最新の考え方や情報が
入ってきます。それらを知りたかったのです。

普段、戸建ての設計をしていると、そういう情報や考え方までは必要ありません
し入ってきません。

しかし、300年住宅や鉄筋コンクリート造の建物で、
「大地震が来ても絶対に倒れない建物に」というリクエストを受けることが
あります。

大自然相手に絶対にというお約束はできないのですが、そういう方には
少なくとも廻りが全部倒れても最後まで残っているという建物を最低限、
目指すつもりで設計します。


しかし、本当に最新の考え方と矛盾せず、正しい考え方をしているのか
どうかも確認したかったですし、

意匠上の設計変更をする場合でも、そういったことを知らないと構造的に
問題がないかどうか判定もできなければ、確信も持てません。



わかりやすい例えでは、

建物の材料の品質や強度が良くなると、構造的には問題が少なくなる気がしますね。

それでも新たな想定外の問題が生じることがあるのです。


鉄骨や鉄筋コンクリート造でも、接合部分の想定外の破壊が
阪神大震災の被害で多く出ました。
その理由が、部材材料の強度や品質が上がったため、
壊れないと想定していたはずの接合部が耐え切れず壊れたのです。

この理由や対策を知って設計や工事監理をしないと、
鉄骨や鉄筋コンクリート造は地震に強いと思われているのですが、
真実ではなくなるのです。阪神大震災ではそうでした。


構造計算というのは、実験を繰り返しデーターを集めて解析し、
近似値や近似方程式を得るという前提でスタートしています。

そのため条件や状況が少し変わっても、想定していなかった状態になることも
あり得ます。

構造計算はあくまで、仮定した前提条件の上での計算でしかありませんし、
その根本的な前提条件とその限界を少しでも理解しておくべきなのです。


大切なのは、

構造計算がどういう考え方でなされているのか、
注意すべき問題点は何なのか、
基準法には規制されていなくてもクリアーすべき事項は何なのか、
望ましい構造計画はどういうものなのか

などを知ったうえで、構造設計をすべきなのです。

構造について正しい知識や洞察力も無いのに、
意匠や見栄えのするプランだけを優先し追求する設計は避けるべきだと思っています。


木造はもちろん、鉄筋コンクリート造でも、鉄骨造でも、コンピューターを使えば
そういうことを知らなくてもどんどん構造計算はできます。

繰り返しますが、計算上はOKでも、本当に強いのかどうかは、
それだけでは実は不明です。

構造を知った上で、もっとアナログ的で基本的な考え方と思考で
チェックをすることが大切です。


構造計算の考え方で、疑問に思うことを先生にいろいろ質問をしてきました。
問題じゃないかと思うことは、やはり問題であったり、問題だと認識してはいるが
それを規制するには…など、いろいろ難しいようです。

鉄筋コンクリート造や鉄骨造で問題では?と感じることは、
やはり木造でも問題です。

また、逆もそうでした。


木造はもちろん、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築基準法の構造計算の方法は、
1981年以来ほとんど変わっていません。

阪神大震災で、あれだけ問題や被害が起こっても簡単には変えられないのです。

現在は、新しい建物に関しては、強制力の無い推奨とか、
補足的な追加チェックを加えることで

問題のないレベルまで引き上げているようです。


以前訪れたカナダのバンクーバーでは、設計を行う建築士に対しては、
日本のように義務と責任はあるけど権限は無い、というのではなく、

義務も責任もある代わりに考えられないくらい権限もありました。

大切なのは、建築基準法では大丈夫だというチェック以外に
専門家として胸を張って構造面は大丈夫といえる設計をしているかどうかだ
と思います。




今年、一番大切な仕事に真剣に取り掛かっています。

10月のオーストリアツアーに続いて、
その後の1ヶ月の間にまる8日間の日を費やすのはスケジュール的に大変でしたが

この仕事を自信をもってやり遂げるためにも、今回の勉強はタイムリーでしたし、
必要なことでした。


ユーザーの皆さんのお陰で、
こうやって時間を割いて学びながら仕事をさせて頂いていること、

そして、私やみなさんを支えてくれているスタッフや工事業者の人に
心から感謝しています。


明日は、戸建ての構造についてメール質問が来ていますので、
このブログで、その質問にお答えする予定です。



P.S
ホームページの10万クリックは、11月28日の夜に私が講習会から
帰ってきて見ると、既に越えていました。最後の2~3日は思ったよりペースが
速かったようです。ありがとうございました!ジャスト10万のカウンターを
見た人はいないようですね…。



横浜市 注文住宅  

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