みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。
メールで相談がありました。
基本的なことですので、ここで回答いたしましょう。
「地震保険の保険料が2×4は半額(来秋から)との記事がありました。
在来工法と2×4工法ではそんなにも耐震性に差があるのでしょうか?
清水さんは在来工法、2×4工法いずれもOKとのことですが、
工法は地形や地盤、2階・3階建てといった特徴によって決めるのですか?
それとも予算でしょうか?
また、外壁が軽量気泡コンクリート(ALC)の木造建物は保険料が上がるそうです。
インターネットで調べたのですが、理由がわかりません・・・
普通に使用されている物と印象を受けましたが、
なぜ保険料が上がるのでしょうか?」
という内容です。
まず、在来工法と2×4工法に耐震性の差があるのかどうかですが、
最後まで読んで頂くことを前提に結論を最初にお話しますと、
保険屋さんの立場で考えれば、当然、差があります。
一般的な2階建ての木造住宅は、阪神大震災を経た今でも、
建築確認申請で筋交いの書類提出をしなくていいのです。ノーチェックです。
ですから、正しい知識がなくても感覚だけで設計できてしまう危険性がある
ということです。
そのため、最近でも新築建売で数百棟という大量な戸数の耐震壁量の不足が
一度に指摘されました。完成後です。でも、氷山の一角かもしれません。
ノーチェックですから、ユーザーの要望を短絡的に解決するため、
南側はできるだけ大きな窓で明るく、あっちもこっちも窓で、
1階リビングを大きくして開放的にという構造面を犠牲にした
安易な間取りができてしまうのです。
その結果として、耐震性が犠牲にされているのです。
テレビの大改造、劇的ビフォーアフターでも、
ほとんどそうだったですよね?
私が匠として設計と監理をした住宅は番組始まって以来、
初めて壁が増えたとディレクターに言われました。
ついでに、耐震補強についての説明や字幕スーパーを
出してもらったのも、私が初めてだということでした。
では、2×4工法はどうでしょうか?
2×4工法を日本に輸入し、許可したとき、耐震性を含めて
さまざまな制約を付けました。
その制約を守ると、何でもできてしまう在来工法と比べると
耐震性が良くなります。
建築基準法の耐震面の基準とは関係なく、
その前の時点で構造やプラン上の制約があるのです。
よく言われている、線と面での違いはどうでしょう。
正確な説明や内容は別にして、この点でも面の方が有利です。
日本においては、制約がなくて自由に造れてしまう在来工法と
制約があってその中で造っている2×4工法、どちらが地震に強いかというと
一般的には、あくまで一般的にはですが、制約のある2×4工法です。
カナダでも2×4工法をたくさん観ました。
カナダの2×4工法は耐震面での制約が少な過ぎて、
日本ではOKになりませんし、あれなら日本の在来工法と比べても
同程度以下だろうという建物はたくさんありました。
あちらは、それほど大きな地震が来ないから、それでいいのでしょう。
保険屋さんが心配で、在来工法の地震保険を2×4工法と比べて
高くする理由がお分かりでしょうか?
一般的に構造面よりユーザーの希望プラン重視で造られやすい在来工法が、
日本ではたくさん造られているのですから、統計学で保険料を決めると
高くなるのは、当たり前でしょう。
ですが、阪神大震災以降、2×4工法の耐震性の面で良い点は、
既に在来工法に充分取り入れています。構造用面材や水平面の剛床などの
考え方です。
この考え方に、平面状のバランスと、上下階のバランス、耐震壁の連続性、
耐震壁のブロック別、耐力壁の加算や基礎、地盤の強化を行えば、
耐震性に違いはでませんし、どちらが強いとはいえません。
そこまで考えて、設計をしている人が少ないだけの話です。
ミタス一級建築士事務所で言えば、そこまで考えて設計と監理をしています。
プランや地盤にもよりますが、むしろ在来工法の方が、必要であれば
さらに実質的な耐震強度を上げることが可能だと思います。
かなりのレベルですので、一般的には気にすることはないと思います。
この理由は、保有水平耐力という考え方と在来工法と2×4工法の違いを
良く理解している専門家にしか説明できないので、ここではカットします。
同じ壁倍率でも、在来工法と2×4工法では、実は根本的な考え方の部分で
異なっています。
ミタス一級建築士事務所では、
通常の2階建てであれば、指定がなければ在来工法を選択します。
地下室などが付けば、2×4工法で外壁は2×6を使って設計します。
その他、ご質問のようにプランの特徴により工法の変更を提案します。
指定があればどの工法も行いますが、それぞれのメリットと
デメリットを、お話して納得して頂いて最終決定しています。
ではなぜ、2階建てであれば在来工法を選択するのかというと、
対応できる工務店や職人が断然多いことと、
将来的な改築にも構造的にかなり対応しやすいからです。
大工さんも私の感覚ですが、
2×4工法の方がすぐに一人前の大工さんに成れるがゆえに、
現場での造作を頼んだり、難しい加工を頼んだりしにくい大工さんの
割合が多くなってしまうからです。
大工さんによっては、年輩の方でも造り付けや現場加工ができない
大工さんもいます。
我々のような設計事務所の面倒な設計では、
それだとお互いに非常に苦労しますし、断念することもあります。
ローコストや海外のデザイン性を売りにした2×4工法に、
かなりクレームが多いという印象を受けていますが、
その理由には、職人さんへの単価やレベルの差があるような気がしています。
また、設計監理の面でおいても在来工法の方がチェックしやすい
ということがあります。
といっても、この工法でなければならないと決め付けているわけではありません。
何事にも必ずメリット、デメリットがあります。
価格交渉でも、2×4工法の方が安いといわれていますが、
実際は、交渉選択の工務店が限られる2×4工法より
在来工法の方がメリットがある気がしています。
また、ALC版の木造住宅の保険料があがるということですが、
地震保険は火災保険と一体が条件です。
今までALC版の木造住宅は、火災保険も地震保険も安かったようです。
その安かった地震保険の部分を上げるという意味だと、メールから私は理解しました。
ALC版の木造住宅が地震に強いという理由は、ALC版とは関係の無い
ところで決まります。ですから本来、地震保険が安くなる理由はありませんね。
敢えてあげれば、地震時の火災には強いということが、あるでしょう。
そういったことを含めて、今までは安かったのだろうと推定しました。
この保険の部分は、すべて私の推定です。
真相は保険屋さんに聞かないとわかりません。
さて、今回に関係して
昨日、私の不在時に、現在設計監理している建物についての耐震性について
大丈夫だろうかと心配しているような、お電話を頂いたようです。
理由は、フラット35の申し込みをしていて、耐震性の部分での申請を
しなかったからです。
結論から申し上げますと、
フラット35の求めている耐震性能や
性能表示制度の最高ランクである耐震等級3のレベルにあるかどうかいという、
低いレベルでの設計や監理は、ミタス一級建築士事務所ではしていません。
この方の新築の例では、性能表示制度では耐震等級3までしかありませんが、
もしそれ以上の等級があると仮定すると、計算上は耐震等級5になるレベルです。
これについては、既にかなり長くなっているので、
理由を含めて明日かあさっての次のブログでお話しましょう。
横浜市 設計監理
ALL contentsCopyright R 2008 mitasu