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特別にCoccoが好きというわけじゃないのに、
どうしても観たいと思ったのは、
ニュース番組で観たCoccoが印象にあったから。
言葉は不器用だけど、
真っ直ぐに想いを伝えようとする彼女が。
ステージ衣装からむき出しの腕の細さに、
関節がくっきりと浮き上がるその細さに心がざわめいた。
あのショットだけで解ってしまうのは、
近い闇を抱えているからなのかもしれない。
Coccoは歌う。
笑いながら、泣きながら、ステージで歌う。
整理できない気持ちも、楽しい気持ちも、歌になるんだって。
そういう風に生まれてしまった人。
感覚だけで歌っているのではなくて、
考えて、ジャッジして、選んで、
全て自分で決めてその重さを引き受けている。
六ヶ所村に行ったきっかけのファンレター。
「手紙はみんな『助けて』『助けて』って書いてある。
でも、青森の女はひと言も書いてなかった」
『助けて』と書いたその手紙が、
大好きなCoccoを沈める重石になってしまうことに気がつけない人がいて、
『助けて』を書かないで「青森が好き」と書くことで
Coccoを六ヶ所にまで向かわせる人がいる。
「沖縄の新聞は沖縄が主語だから、沖縄のことばかりで
青森でも同じように(国の政策の為に)ツライ思いをしている人がるなんて、知らなかった。知らなくてごめん」
知ってしまったら、知らないことには出来なくて、
自分の出来ることをめいっぱいやろうとする姿に、
胸が痛くなる。
米軍基地の移転予定地の鉄条網にCoccoと皆が結び付けた色とりどりのリボン。
「もっともっさりなると思ったのに、全然足りない・・・」
ステージではすごく存在感があったのに、相手がでかすぎる・・・。
砂浜に穴を掘ってファンからの手紙を焼くCoccoの姿は、
お弔いをしているようにしか見えない。
最後には、
青森の女からの手紙さえ焼いてしまう。
スクリーンの中ではいっぱい笑っているCoccoもいて、
沖縄の風景もあって、
なのに、ぷつんと画面が消えた後には、
皆がすぐに立ち上がれない空気の映画館。
「大丈夫。とは言えないけれど、大丈夫でありますようにとは思える」
大切な言葉をもらいました。