各分類の特徴と例
- 一類感染症:最も重要で緊急性が高い。 例:エボラ出血熱、ペスト。
- 二類感染症:重要度が高いが一類に比べるとやや緊急性は低い。 例:結核、日本脳炎。
- 三類感染症:地域社会における拡散を防ぐための管理が必要。 例:百日咳、麻疹。
- 四類感染症:主に動物から人への感染が懸念される。 例:狂犬病。
- 五類感染症:報告の義務は緩和されている。 例:インフルエンザ。
エムポックスとは? どのように感染が広がるのか!!
世界保健機関(WHO)は14日、アフリカの一部地域で発生しているエムポックスのアウトブレイク(大流行)について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
エムポックスはかつては「サル痘」と呼ばれ、伝染力が非常に高い。今回のアウトブレイクはコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)で最初に発生し、少なくとも450人が死亡した。
エムポックスの症状は?
エムポックスは、天然痘と同じ種類のウイルスによって発症するが、天然痘と比べて危険性はかなり低い。
元々は動物からヒトに感染したが、現在はヒト同士で感染する。
初期には発熱、頭痛、腫れ、背中の痛み、筋肉痛といった症状が起こる。
熱が下がり始めると、皮膚病変(発疹)が出てくる。通常は顔から始まり、他の部位へと広がっていく。最も多いのは手のひらや、かかとだという。
発疹は時に、猛烈なかゆみと痛みを引き起こすこともある。
さまざまな段階を経て、最終的にはかさぶたとなり、はがれ落ちる。
かさぶたの痕が残る場合もある。
感染は自然に治ることもあり、14〜21日間ほど持続する。
しかし死に至るケースもあり、特に小さな子供を含む感染リスクの高いグループにとって危険が高い。
重篤な場合には、全身、特に口や目、性器に皮膚病変が生じることがある。
現在、感染が確認されているのは?
これらの地域では、毎年数千人が感染し、数百人が死亡している。特に、15歳未満の子どもが特に多く被害を受けている。
現在、主にDRCと近隣諸国で、複数のアウトブレイクが同時発生している。
ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、ケニアでも症例が見つかったほか、15日にはスウェーデンで初めて、アフリカ大陸以外での感染者が確認された。
エムポックスウイルスには大きく分けてクレード1(コンゴ盆地系統群)とクレード2(西アフリカ系統群)の2種類がある。
現在、アウトブレイクが発生しているのは、より危険度の高いクレード1で、中には成人よりも子供に影響力のある派生型もあるという。
また、昨年にエムポックスに感染した人々の多くが、クレード1bと呼ばれる比較的新しく、従来より危険なエムポックスを発症していることも懸念されている。
専門家によると、クレード1bについてはまだ解明されていないが、伝染力が高く、より深刻な症状を引き起こしている可能性があるという。
アフリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、2024年初頭から7月末までの間に1万4500件以上のエムポックス感染があり、450人以上が死亡したという。
2023年の同時期と比較すると、症例数は160%、死亡者は19%、それそれ増加した。
エムポックスについては、2022年にもWHOが感染拡大について緊急事態を宣言したが、この時は比較的症状の軽いクレード2によるものだった。
この時には、欧州やアジアの国々を含む、通常このウイルスを目にすることのない100近くの国々に広がったが、感染リスクの高い集団へのワクチン接種によって、封じ込めに成功した。
感染経路は?
エムポックスは、感染者との濃厚接触で広がる。
これには性行為や皮膚同士の接触、近い距離での会話や呼吸などが含まれる。
エムポックス・ウイルスは、皮膚の傷や呼吸器、目、鼻、口から体内に侵入する。
また、寝具や衣類、タオルなど、ウイルスに汚染された物に触れることでも感染する。
サル、ネズミ、リスなどの感染動物との密接な接触も感染経路の一つだ。
2022年のアウトブレイクでは、ウイルスはほとんどが性的接触によって広がった。
DRCでの現在の流行は、性的接触やその他の密接な接触によって引き起こされている。
このウイルスは、幼い子どもを含む、感染リスクの高いコミュニティーでも発見されている。
感染リスクが高いのはどんな人か
感染した大人同士の性的接触は、感染者が増加している理由の一つと考えられている。
専門家らは、誰が最も危険にさらされているかを理解するため、状況を調査している。
幼い子どもは、特に被害を受けやすいグループに入る可能性がある。
免疫系が発達途上であることに加え、この地域の多くの子どもたちは栄養状態が悪く、病気を撃退するのが難しいためだという。
子どもたちは遊び方や互いへの接触が密接なため、リスクが高いのではないかと指摘する専門家もいる。
過去に天然痘ワクチンを接種した人の一部は、エムポックスについても免疫を持っている可能性がある。
しかし、40年以上前に集団接種が終了しているため、現在の子供たちにはこうした保護もない。
他にも、免疫力が低下している人はこの病気にかかりやすく、妊娠中の女性はよりリスクが高いことが懸念される。
エムポックス感染者との密接な接触を避け、ウイルスが地域内に存在する場合は石けんと水で手を洗うことが推奨されている。
また、エムポックスにかかった人は、病変がすべて消えるまで隔離するべきだという。
WHOは、回復後12週間は、性行為をする際には予防のためにコンドームを使用すべきだと指導している。
ワクチンはあるのか
ワクチンは存在するが、通常はリスクのある人や感染者と密接に接触した人しか接種できない。
現在、必要な人すべてにワクチンが行き渡るだけの十分な資金がないことが、大きな懸念となっている。
WHOは先に、製薬メーカーに対し、たとえワクチンが正式に承認されていなくても、緊急用としてエムポックス・ワクチンを提供するよう要請した。
アフリカCDCが、大陸全体に公衆衛生上の緊急事態を宣言したことで、各国政府は対応策を調整しやすくなり、感染地域への医薬品や援助の流入が増加する可能性が期待されている。
一方で、世界的な取り組みがなければ、現在の流行がアフリカ大陸を超えて拡大することが懸念される。
アフリカを中心に感染が広がるエムポックス(サル痘)への対応として、日本のワクチンに注目が集まっている。
子どもへの接種は、世界でも日本製しか対応できないためだ。
【もっと詳しく】エムポックス感染現地ルポ 「双子を産んで母は死んだ」
コンゴ民主共和国の首都キンシャサにある病院のエムポックス病棟。9月末に訪ねると、乳児から11歳までの子どもたち多数がベッドに横たわっていた。
全身の発疹に苦しむインガ・ロコレさん(11)は「かゆくて痛くて耐えられない」と話した。
世界保健機関(WHO)は8月半ば、感染拡大を受け「緊急事態」を宣言した。
WHOによると、今年に入ってコンゴでは、エムポックス(感染疑いを含む)で計838人が死亡。
ユニセフ(国連児童基金)によると、8割以上が子どもだ。
現地で調査をする仏ボルドー大・公衆衛生研究所の平井亜由子医師(感染症・疫学)は「子どもは栄養失調やマラリアとの重複感染で重症化しやすい。現地の医師らは日本のワクチンを待ち望んでいる」と説明する。
9月18日、日本の外務省とコンゴ政府の間でワクチン支援の取り決めがなされた。
ユニセフ現地事務所のプロスパー・ジギムデ医師は「感染症が地球規模の問題となる今、ここでエムポックスを食い止めることは日本人にとっても重要だ」と訴える。
エムポックス感染現地ルポ 急増する子どもの患者と日本への期待
2歳半の女の子は布にくるまれ、震えていた。発疹は頭からつま先まで、からだじゅうに広がる。細い腕からは点滴用のチューブが伸びていた。9月末、アフリカ中部コンゴ民主共和国の首都キンシャサの病院で、感染が拡大するエムポックス(サル痘)患者の病棟を取材した。
不織布の防護服をまとい、二重にゴム手袋をして念入りに消毒する。気温は30度を超え、防護服の中では、サウナに入っているかのように汗が噴き出す。取材では、案内してくれたクマクマ・ノリス医師(34)の指示に従って安全対策をとったが、「感染を防ぐため、病室では何にも触れないでください」と念押しされた。
新型コロナウイルスと異なり、エムポックスは主に体液や血液に触れることで感染する。短時間の飛沫(ひまつ)感染の可能性は低いとされる。だが、重症化や死亡の事例が相次いでおり、リスクを最小限にするためにも感染対策の徹底は欠かせない。
病室にエアコンはない。薄いマットを敷いたベッドの片隅に、2歳半のビュティ・ヤマちゃんは横たわっていた。母親のンテナ・ナオミさん(25)によると、約3週間前にのどの痛みを訴え、高熱にうなされ始めた。
病院に駆け込み、注射を打った。だが、症状は治まらず、発疹が広がった。「ママ、体が痛いよ」と訴える声は次第に弱々しくなった。もだえて苦しみ、やがて泣くこともできなくなった。
幸い、危険な状態は脱し、快方に向かっているという。ナオミさんは「回復できたのはめぐまれていたと思う。周りには、病院に来られずに亡くなる人たちもいる」と話した。
子どもに広がる感染 日本に高まる期待
エムポックス(サル痘)、なぜ再び緊急事態宣言?
ウイルスによる感染症「エムポックス(サル痘)」がアフリカで急拡大し、世界保健機関(WHO)は8月14日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。エムポックスに対する緊急事態宣言は、2022年7月~23年5月にも発出されていました。
ただ、今回はウイルスの系統や感染した人の層が前回と異なっています。
現時点で分かっていることをまとめました。新たな情報が明らかになるのに合わせ、随時更新します。
A エムポックスはかつてサル痘と呼ばれ、1970年に現在のコンゴ民主共和国で初めて感染者が見つかった。
以来、同国を中心に、アフリカ大陸の中央から西の地域で流行してきた。元々の感染源はげっ歯類などの野生動物とされる。
原因となるエムポックスウイルスに感染すると、5~21日の潜伏期間の後、発疹や発熱、倦怠(けんたい)感やリンパ節の腫れなどが現れる。
2~4週間ほどで自然に治ることが多いが、重症化することがある。新生児、子供、妊婦、エイズなど疾患による免疫不全の人は、重症化や死亡のリスクが高くなる。
エムポックスウイルスは大きく二つの系統に分けられる。コンゴ民主共和国などの中央アフリカで確認されているⅠ系統と、西アフリカで確認されているⅡ系統だ。
Ⅰ系統はⅡ系統より重症化しやすいとされ、過去の流行では罹患(りかん)した人の最大10%が死亡した。