花の名前・木の名前・名前の由来

草花や木についている名前の由来。誰が付けたか分からないけど、知って納得のもの、「?」のもの、いろいろあって、面白い。

クズ(葛)/クズカズラ(葛蔓)・葛の葉狐と安倍晴明

2011年08月19日 | 草花・植物

「クズ」マメ科クズ属葛の花のUP
秋の七草の 3番目の花。
萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝がほの花    万葉集巻1538番

「クズ」の名前の由来は、大和国吉野の国栖の人々が、クズ粉を朝廷に献上したり、売り歩いていたことからと言われています。
国栖の蔓→国栖蔓→国栖(くず)となり、「葛」の漢字をあてたようです。

若芽、葉、花を山菜として食べることも出来、地方名として「カンネ(茎を噛むと甘い)、ウマノボタモチ、ウマノオコワ」など、美味しそうな名前で呼べれています。葉は家畜の飼料として利用されます。

葛のつるは蔓細工に用いたり、布(葛布)に織って利用されます。私も蔓を利用して外で使う篭やリースを作ったりしいます。
民芸織物として、掛川葛布(静岡)が有名です。

葛の根から収穫される澱粉は「クズ粉」の原材料として利用されてきましたが、本物の葛粉は手間がかかり高価なので、安価なものは「ジャガイモデンプン」が代用されています。

葛の根も花も葉も薬用になります。葛根湯などに配合されるなど、生薬としての多用されているようです。

このように用途の広い「クズ」ですが、野山に乱暴に繁茂している姿を見ると、「山殺し」にならないかと、心配になる時があります。

実際にアメリカでは日本から帰化した「クズ」が大繁茂して、問題になったニュースもありました。しかしアメリカでは飼料として高く評価され、堤防の土留め植物としても使われています。
この強靭さで中国砂漠や、フィリピンの火山を緑化しようとする動きも、ニュースで見た記憶があります。
人間の勝手な立場から言うと、「害草」でもあり「益草」でもある「クズ」。
童話「葛の葉狐」が、親子の切ない愛情と、美しい葛の花と綺麗な女性の姿が結びついて、「害草」と言い切ることはできません。

 葛の葉狐 kuzunohagitune 

昔、村上天皇の時代、摂津の国(今の大阪府阿倍野区)に安部保名(あべのやすな)という武士が住んでいました。 
ある年の美しい秋、和泉の国の信田の明神へ出かけた時のことです。
悪右衛門と大勢の侍に追われた若い狐が、助けを求めて保名のもとにうずくまりました。
保名は狐をかくまいましたが、侍たちと切りあいになり、命を取られかけた時、お寺の和尚に化けた狐が保名の命を救ってくれました。傷を負った保名が森の中をさ迷っていたら、、きれいな清水のほとりに住む乙女が、助けてくれました。
たった一人で森に住んでいた娘の名前は「葛の葉」。葛の葉の介抱で、傷は癒えましたが、保名はそのままその家に住むようになりました。
やがて一人の男の子が生まれました。名前は童子丸。
保名は畑仕事、葛の葉は機織りをして、楽しく平和に暮らしていました。

子どもが7歳になった秋、機織りの手を休め、庭の菊を眺めていた時のことです。
白い美しい香りの菊を見て、寂しい気持ちになったその日、機織りに疲れて、狐の姿のまま、うとうとした時、童子丸が帰ってきました。
「狐の姿を見られたからには、もうこのままここで一緒に暮らすわけにはいかない。」
死ぬほどつらく悲しく思った葛の葉でしたが

          恋しくば 訪ね来てみよ 和泉なる しのだのもりの  うらみ葛の葉

と書いて家を離れました。
悲しんだ童子丸と保名は、信田の森へ母をたずねました。そこには母は見えず、葉葛の葉が茂るばかり。
子供は泣きました。その泣き声を聞いて現れたのは、狐の姿に戻った葛の葉狐でした。
葛の葉狐は「何時までも一緒居たいけれど、それはできない。形見にこれをあげるので、私を忘れないでいて下さい」と、水晶のような玉を保名に渡しました。
「この玉は天地のことも、人間界のことも、残らず目に見るように知ることができます。玉を耳に当てれば、鳥獣の言葉も、草木や石ころの言葉も分かります。この宝もので、子どもを日本一賢い人にして下さい」と言い、闇の中に姿を消しました。
童子は賢く成長し、やがてその宝ものを使って、誰も治せなかった天使の病気を治しました。
天子は童子丸の手柄をたたえ、「清明」という名を授け、陰陽頭(おんみょうのかみ)に取り立てました。
後に清を晴に変え「安部晴明」となり高名な陰陽師として後世まで名前が残ることになりました。



歩道に繁茂する葛  
歩道に繁茂するくずと、街路樹を絞殺しそうな葛 2011.08.17 仙台市

    葛の実と花           原発廃炉に向けて

 

 

 

 

 

 



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