オキザリス。
母が知人から鉢植えを、もらってきたことがある。
そのときの私は、まだ園芸に何の興味も示さず、
ただ「オキザリス」という不思議な名前だけが妙に心に残っていた。
私の中に、
祖母に連れられて出掛けた佐渡の旅行から帰ると、
部屋から父親とその荷物が全て消えていたあの日のことがいつまでも残っている。
消そうにも消せない。
それが4歳のとき。
そのあと、やはり祖母に連れられた東京は新宿の駅の雑踏の中。
祖母と、その弟はウィンドーショッピングに夢中になっていた。
そして間もなく小2になる私の手が離れたのに気付かずにいた。
気が付くと私は知らない男の人の傍にいた。
幸いだったのは、その人が悪い心を持った人ではなかったこと。
そして、そこには泣きながら私の手を固く握る祖母の手があったこと。
間のことは何も覚えていない。
ただ人ごみの中、迷子になってたぶん泣いていた私を、
誰かが安全なところへ連れて行ってくれたか。
駅員さんが見つけてくれたか、そんなところだったのだろう。
それから、
きっと信じられるのは自分だけというさみしい子になってしまった。
どんなに大切な人でも私を残して去っていく。
この手が握られていても、
いつの間にか離していなくなるかもしれない。
そんなことを常々、考えるようになってしまった。
たぶん、
それがトラウマというものなのだろう。
オキザリスという植物の名前を数年前、初めて知った。
母は咲き誇る花を1年見ただけで、
あとは放置していたのだろう。
いつの間にか、どこにいったのか。オキザリスの姿は見えなくなった。
カタバミ科だという、その植物の名前だけが私の中に残った。
その時、他にもう一鉢もらってきたものがあって。
それが、いったいなんだったのか。
何という花の名前だったのか、いくら考えても思い出せない。
ただ確か、この鉢だったようなという記憶だけが残っている。
その鉢は裏庭の片隅に土の入ったまま投げられていて、
その鉢を使おうとして庭に土を空けると。
そこから球根状の根っこと、
ひょろひょろと頼りなげな茎と葉が転がり落ちた。
それが何本かある。
これは、なんなんだろう。
あの時、貰ってきた鉢に植えられていたのだろうか。
母に聞いても「さあ??」の一言で、さっぱり的を得ない。
もしかしたら雑草かも、しれない。
でも、なんだか、
「生きてるよ」「ここにいるよ」って声が聞こえるようで。
そんなはず、ないんだけど。
捨て置けなくて、
他の鉢と一緒に植え替えをしてみた。
育つんだろうか。
咲くんだろうか。
その前に、お前は誰なの。
雑草かもしれない、でも。
なんとなく、こうしちゃうと愛着が湧いてくるものだよね。
***********
今朝、
陰うつな気分で突き動かされるように足を向けた花屋。
花屋からも、
「ここだよ」「こっちだよ」って声が聞こえて(くるようで)。
その場から、しばし動けなくなる。
朝の花屋は、それぞれに忙しそうで。
誰も私の存在に気にも留めない。
世の中なんて、そんなもんだよねと思いながら。
これ以上ないくらい見倒して、
また二人連れ帰ってきてしまった。
母の仕事中に、こっそり植え替えて隅に置いて黙っておいたが。
帰ってくるなり見つかってしまった。
アンタは、大きな子供ですか。
===========
◆ベンケイソウ科 クラッスラ属 『ゴーラム』◆
◆キク科 セネキオ属 『万宝』◆
母が知人から鉢植えを、もらってきたことがある。
そのときの私は、まだ園芸に何の興味も示さず、
ただ「オキザリス」という不思議な名前だけが妙に心に残っていた。
私の中に、
祖母に連れられて出掛けた佐渡の旅行から帰ると、
部屋から父親とその荷物が全て消えていたあの日のことがいつまでも残っている。
消そうにも消せない。
それが4歳のとき。
そのあと、やはり祖母に連れられた東京は新宿の駅の雑踏の中。
祖母と、その弟はウィンドーショッピングに夢中になっていた。
そして間もなく小2になる私の手が離れたのに気付かずにいた。
気が付くと私は知らない男の人の傍にいた。
幸いだったのは、その人が悪い心を持った人ではなかったこと。
そして、そこには泣きながら私の手を固く握る祖母の手があったこと。
間のことは何も覚えていない。
ただ人ごみの中、迷子になってたぶん泣いていた私を、
誰かが安全なところへ連れて行ってくれたか。
駅員さんが見つけてくれたか、そんなところだったのだろう。
それから、
きっと信じられるのは自分だけというさみしい子になってしまった。
どんなに大切な人でも私を残して去っていく。
この手が握られていても、
いつの間にか離していなくなるかもしれない。
そんなことを常々、考えるようになってしまった。
たぶん、
それがトラウマというものなのだろう。
オキザリスという植物の名前を数年前、初めて知った。
母は咲き誇る花を1年見ただけで、
あとは放置していたのだろう。
いつの間にか、どこにいったのか。オキザリスの姿は見えなくなった。
カタバミ科だという、その植物の名前だけが私の中に残った。
その時、他にもう一鉢もらってきたものがあって。
それが、いったいなんだったのか。
何という花の名前だったのか、いくら考えても思い出せない。
ただ確か、この鉢だったようなという記憶だけが残っている。
その鉢は裏庭の片隅に土の入ったまま投げられていて、
その鉢を使おうとして庭に土を空けると。
そこから球根状の根っこと、
ひょろひょろと頼りなげな茎と葉が転がり落ちた。
それが何本かある。
これは、なんなんだろう。
あの時、貰ってきた鉢に植えられていたのだろうか。
母に聞いても「さあ??」の一言で、さっぱり的を得ない。
もしかしたら雑草かも、しれない。
でも、なんだか、
「生きてるよ」「ここにいるよ」って声が聞こえるようで。
そんなはず、ないんだけど。
捨て置けなくて、
他の鉢と一緒に植え替えをしてみた。
育つんだろうか。
咲くんだろうか。
その前に、お前は誰なの。
雑草かもしれない、でも。
なんとなく、こうしちゃうと愛着が湧いてくるものだよね。
***********
今朝、
陰うつな気分で突き動かされるように足を向けた花屋。
花屋からも、
「ここだよ」「こっちだよ」って声が聞こえて(くるようで)。
その場から、しばし動けなくなる。
朝の花屋は、それぞれに忙しそうで。
誰も私の存在に気にも留めない。
世の中なんて、そんなもんだよねと思いながら。
これ以上ないくらい見倒して、
また二人連れ帰ってきてしまった。
母の仕事中に、こっそり植え替えて隅に置いて黙っておいたが。
帰ってくるなり見つかってしまった。
アンタは、大きな子供ですか。
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◆ベンケイソウ科 クラッスラ属 『ゴーラム』◆
◆キク科 セネキオ属 『万宝』◆
やるせなすになっちゃったね(苦笑い)