里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

北原みのり おんなの話はありがたい 松本人志さんの件

2024年01月25日 | 事件

「イヤならイヤと言え」性被害の声あげた人を叩く女たちの“被害者フォビア”は胸が痛い 

ERAdot 2024/01/24

 

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は松本人志さんの件で考えた、被害の声をあげた女性を女性が激しく叩くことについて。

*    *  *

 遠い知人の話である。

 今は50代の女性だが、30年以上前には芸能界を目指していた時期があり、実際にテレビや雑誌に出たこともあった。ちょうど売り出し中の頃、同じ番組に出演していた某男性大物芸能人に「食事に行かない?」と誘われたことがあるそうだ。そんなチャンスはめったにないと思い、彼女は「もちろんです!」と答え食事に行った。食事が終わると、今度はその男性に「二人きりにならない?」と言われ、躊躇はしたが、将来につながるかもしれないと思い、誘われるままホテルに行き性交したという。もちろんだからといって彼女の芸能活動に、そのことは全く何の影響も与えず、彼女はしばらくして芸能活動を諦めることになる。

 そんな彼女は今回の松本人志さんを巡る報道に、モヤモヤするのだという。「女にも、下心があったはずだ。被害者ぶるのは、ずるい。イヤならイヤと、その時に言えばいいんだ」と。

 胸の痛い話である。

 性被害の声をあげた人に対し、「目的は何だ?」と疑いの目を向け、「何で今になって騒ぐのだ?」と声をあげた時期を問い、「イヤなら断るべきだった」と行為の責任を問うことなどを「セカンドレイプ」と呼ぶと定着はしてきたけれど、それでも、彼女のように、客観的にみれば性的搾取にあっているとしか思えない女性が、同じような目にあった女性を激しく叩くことを、何と呼ぶのだろう。もしかしたら専門的な言葉があるのではないかと思われるほどに、あまりにもよくある話である。

 女子プロレスラーのジャガー横田さんYouTubeチャンネルを観た。「松本○志は悪くない!!」と動画にテロップをつけ、「(女性が)ヤダって言えばいいじゃん」「お前が断れよ」などと述べた。ジャガーさんは、肩を組んでくる男性ファンには「私は結婚しているので、やめてください」とキッパリ断るのだとも言ってた。このように「私は断れる」と言い切り、「なぜ断れないのか?」と性的被害を訴えた女性を責めるのも、「強い女性」によく見られる傾向だ。

 こういう現象=女が性被害の声をあげた女を叩く現象のことをなんて言うのだろうと考えていたのだが、「被害者フォビア」というのが、ぴったりではないかと思う。フォビアには嫌悪や恐れという意味があるが、被害者になることを恥じて恐れるあまりに、自らが被害者になってもそれを認めることができず、さらに被害を訴える人に対する嫌悪をぶつけてしまう心理状態だ。特に性暴力や性搾取に関して、「被害者フォビア」としか言いようがない女性たちは少なくない。いったい、なぜなのだろう。

 古い話だが、小説家の松浦理英子さんが1992年に「朝日ジャーナル」に寄稿した、「嘲笑せよ、強姦者は女を侮辱できない」というエッセーがある。今となっては忘れられたテキストだが、長い間、日本のフェミニストに読み継がれてきた。

 簡単にまとめれば、“性暴力が女への侮辱だと捉えること自体が性加害者の思うつぼである”だからこそ「レイプなんて何でもない」とレイピストを嘲笑すべき”ということが、「強姦ごとき」というような強い言葉を使い、激しい口調で記されていた。もちろん、性被害者を攻撃する意図はなく、性暴力抗議として書かれたものではあるが、当時、かなり物議を醸したものだ。

 当時、このエッセーを誰よりも評価したのが上野千鶴子さんだった。だからこそ、大学生だった私も、意味わかんなーいと頭を抱えながらも何度も読んだものである。

 上野さんは松浦さんのこの寄稿文を権威ある『新編日本のフェミニズム』(岩波書店2009年)の「セクシュアリティ」巻に収め、「私でなければ誰も採用しなかったと思う。彼女の発言は、空前絶後、追随者がいない」「(いまだに)性暴力に関しては、『性暴力で女は傷つく』っていうポリティカル・コレクトな言説しか、言うことを許されてない」(『毒婦たち』河出書房新社、2013年)と話している。実際、多くの有名どころのフェミニストは、この松浦さんのテキストを肯定的に引用し本を書いたり発言したりしてきたものだ。

冷静になってみれば、なんか昔のフェミニズムって乱暴でしたよね……とため息一つ……というテキストである。まさにこれが「被害者フォビア」なのだとも思う。

「レイプごときで苦しむなんて加害者の思うつぼよ。性加害者を嘲笑しなさい」と言われたところで、被害者には地獄が深まるばかりだ。たぶん、このテキストを知的に読み込んで性暴力問題の言説を解体しましょう〜!というフェミニストの試み自体が、この国で、性暴力問題から性被害当事者の声が置き去りにされてきた現実を表しているのだろう。実際この社会で#MeTooの声をあげ、性暴力問題の正面に立ち、性犯罪刑法を改正するまで社会を変えたのは、権威あるフェミニストたちではなく、市井の女性たち、性被害当事者の声だったことからも明らかだろう。

 性被害者が「心が痛い」と叫び、「性」暴力だからこそつらいのだと怒り、何年後になっても声をあげることを諦めないと思える社会を、私は良い社会だと思う。なぜならば、被害者が「私は被害者である」と声をあげるのは、「加害者」の存在を浮かび上がらせるためだからだ。被害者を嫌悪し、恥と感じ、蔑むような、そんな苦痛から、女たちが自由になればよいのにと思う。私たちは手をつなげるのだと、信じられればよいのに。


あなたの「話はありがたい」。
ほんと、そう思います。

風はピークを過ぎたようですが、雪は朝まで続くようです。


10分に1人 子ども死亡 WHO報告 ガザ即時停戦を

2023年11月12日 | 事件

「しんぶん赤旗」20231112

 【ワシントン=島田峰隆】国連安全保障理事会は10日、公開会合を開き、イスラエルが攻撃を強めるパレスチナ・ガザ地区の医療状況について議論しました。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、病院や救急車への攻撃が続くなか「10分に1人の割合で子どもが死んでいる。ガザの医療は崩壊寸前だ」と述べました。(関連5面)

 テドロス氏は安保理への報告で、10月7日の戦闘開始以来、イスラエル軍がガザの医療施設や車両に250件以上の攻撃を行い、病院の半数は全く機能していない状態だと指摘。医薬品不足で麻酔なしの手術が行われたり、がん、糖尿病、高血圧の治療や妊娠・出産の対応もできなくなったりしています。テドロス氏は「どこであろうと誰であろうとガザは安全ではない」と強調しました。

 テドロス氏は「ガザの民間人は、戦闘に責任がないにもかかわらず私たちの想像が及ばないほど苦しんでいる」と語り、病院や民間人の保護を定めた国際人道法の順守と停戦を要求しました。パレスチナのイスラム組織ハマスに対しては人質の解放を求めました。

 パレスチナ赤新月社のマルワン・ジラニ事務局長は報告で「血だらけの子どもたちの泣き声に耳を傾けてほしい。彼らが一体何をしたというのか。世界はなぜ彼らの命にこれほど無関心なのか」と各国に訴えました。

 ジラニ氏によると、アルクッズ病院には1万4000人が避難していますが、燃料不足で主要な発電機が2日前に停止しました。ジラニ氏は「集中治療室の患者や保育器の赤ちゃんが全員亡くなる危険がある」とイスラエルによる攻撃や封鎖を批判しました。

 ジラニ氏は安保理と国際社会に対し▽効果的な即時停戦を実施し、燃料など人道支援物資を搬入する▽国際人道法を順守し、ガザ全土で医療従事者や民間人を保護する―ことを要求しました。

 

ガザ学校空爆50人死亡か

20231112日【国際】

 【エルサレム=時事】ガザ市で10日、学校が空爆され、AFP通信は病院当局者の話として50人が死亡したと伝えました。大勢の住民や負傷者が避難先としている市最大規模のシファ病院を含む複数の病院も、イスラエル軍に包囲され、攻撃を受けたといいます。イスラエル軍報道官は、シファ病院が被弾したのは「テロ組織がガザから発射した飛翔(ひしょう)体が誤って落ちたためだ」と説明しました。

 イスラエル外務省は10日、ハマスの奇襲などによる死者について、これまでの1400人以上から約1200人に修正しました。ガザ保健当局の集計では、ガザでの犠牲者は子ども4500人以上を含む1万1078人に達しています。

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は10日、ガザの戦闘開始以降で死亡したスタッフが101人に達したと明らかにしました。


声を上げてほしい!
「子供を殺すな!」
「病院を打つな!」
「学校を打つな!」
と。
平和国家・戦争放棄国ニッポン。

降りすぎ、25cmはある。
まだ12日である。
根雪になるのは25日ごろ。
20日ごろをめどに片づけていたが、大いに狂ってしまった。
雪はまだ消えるかもしれないが、仕事がはかどらない。




古賀茂明 「大量虐殺」と呼ばないマスコミ ジャニー氏の行為を「レイプ」と報じないのと同じ愚行だ

2023年11月07日 | 事件

政官財の罪と罰  古賀茂明

AERAdot2023/11/07

 

 ハマスのイスラエル攻撃への報復(イスラエルによれば自衛権の行使)により、ガザ地区を中心にパレスチナ人の大量虐殺が進んでいる。このイスラエルの攻撃について、マスコミは、報復攻撃、テロ掃討、軍事攻撃、軍事作戦、空爆、地上攻撃、地上作戦など、刻々とさまざまな言葉を使って伝えている。しかし、こうした言葉では、ガザで起きていることの本質を正しく伝えることはできない。

 なぜなら、イスラエルの行為は彼らがどのように言い訳しても、ジェノサイド条約第2条に定める「ジェノサイド」に当たるからだ。

 念のため同条約の第1条と第2条を引用しておこう。

第1条

 締約国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを、防止し処罰することを約束する。

第2条

 この条約では、集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた次の行為のいずれをも意味する。

(a)集団構成員を殺すこと。

(b)集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること。

(c)全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。

(d)集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。

(e)集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。

 これを読むと、ジェノサイドの定義は普通の人が想像するよりも広いことに気づく。

 国民的、人種的、民族的または宗教的集団を全部または一部破壊することを目的に行われる集団構成員の殺害はもちろん、肉体的・精神的な危害、さらには肉体的破壊をもたらす生活条件を課すことまで含まれる。イスラエルがやっていることはことごとくこの定義に当てはまる。

 イスラエルは、パレスチナ人をことさら狙っているのではなく、ハマスというテロリストの攻撃からイスラエルの国家・国民を守るための自衛権を行使している戦闘でたまたまパレスチナの民間人が巻き添えになっているだけだと言い訳している。

 しかし、彼らは、民間の建物の下のトンネル内にいるハマス戦闘員を攻撃するのに、空爆や地上からの砲弾による攻撃を行えば、大量のパレスチナの民間人、なかんずく女性や子供たちが殺害されることを理解した上で軍事侵攻を行っている。しかも、彼らの攻撃の後には、すべてが破壊された土地が残るのみで、そこにあった生活インフラは完全になくなり、パレスチナ人が住むことができなくなることもわかっている。

 さらに、パレスチナ人をガザ地区から逃げられないようにしてこうした行為を行っているのだから、なんと言い訳しようとも、パレスチナ人の大量殺戮を、百歩譲って積極的ではないとしても、意図して行っていることは否定できない。

したがって、イスラエルの行為は「ジェノサイド」と言うべきなのだ。

 ハマスのイスラエル民間人に対する攻撃はテロ行為であり、もちろん、国際法違反だが、だからと言って、その報復のためにジェノサイドが正当化されることにはならない。

 マスコミは「停戦」「休戦」という言葉を使っているが、「ジェノサイド停止」という言葉を使った方が、より物事の本質と緊急性が理解されるだろう。

 日本は残念ながらジェノサイド条約を批准していない。だから、ジェノサイドを止めてその犯罪者を処罰する義務を負っていないという議論を見たことがあるが、これは間違いだ。なぜなら、日本は国際刑事裁判所に関するローマ規程に加盟しており、その中で、ジェノサイドは犯罪として定義され、処罰すべしと書かれているからだ。

 したがって、日本は、ジェノサイド条約に加盟していなくても、少なくとも道義的には、ジェノサイドを見て見ぬ振りをするわけにはいかないはずだ。

 ところが、日本は、このジェノサイドを止めようとする世界の動きに対して、完全に反対の動きをしている。国連安保理に提出された即時停戦を求める決議案に米英などとともに反対しただけでなく、国連総会では、人道的休戦を求める決議に対して棄権した。この決議案には、121カ国という圧倒的多数が賛成し、反対したのは米国などわずか14カ国だけで、棄権も44カ国にとどまった。米国の同盟国は米国に追随して反対ないし棄権したと思っている人が多いかもしれないが、NATO加盟国のフランス、ベルギー、スペインなどは賛成している。米国の言いなりなどにはならず、独立した判断を示したのである。

 一方の日本は、「総合的判断」というだけで、明確な理由も示さず棄権した。もちろん、世界中が、日本は人権には無関心だと見抜いているし、米国の属国であるということもわかっているから、特に驚いてはいないはずだ。だから日本をことさらに批判する国はない。それをいいことに、日本は単に米国の顔色をうかがいながら行動しているのだ。

 さらに問題なのは、岸田文雄首相に、今回の判断をするにあたって、悩んでいる様子が見えないことだ。なぜ、悩まないのかというと、おそらく、「日本の国民はバカだから、イスラエルとパレスチナの問題など理解できない。とりあえず、アメリカに寄り添う判断を見せていれば特に強い批判の声は出ないだろう」と考えたからではないだろうか。

 確かに、この戦争を見ていて、驚いたことがある。それは、多くの日本人が、パレスチナとイスラエルの歴史を全く知らないように見えたことだ。

 私が中高生だったころ(1970年ごろ)、何で習ったのかは定かではないが、私も私の友人たちも、パレスチナ問題といえば、いつもイスラエルがパレスチナ人に酷いことをしているというイメージで捉えていた。

 当時は、ベトナム戦争が若者の関心の中心になっていたが、そこでは米国が悪者だった。その米国が応援するイスラエルがパレスチナを攻撃しているとなれば、当然悪いのはイスラエルで正義はパレスチナにありということになる。

 しかし、私たちはそれだけではなく、第1次世界大戦の時に、フランスと裏で結託したイギリスにパレスチナ独立という甘い言葉で騙されたパレスチナ人の悲劇や、同じく建国の約束を得ていたイスラエルが、一方的に独立を宣言し、国連の決議などを無視して強引にパレスチナに植民=占領行為を行っていったという経緯も概要だけかもしれないが、理解していたように記憶している。ただし、多くの人はいつの間にか忘れてしまったようだ。

 そうした背景があるので、私が今回のハマスの攻撃を知った時、ハマスはこんな酷いことをするのかと驚いたのはもちろんだが、それと同時に、ここまで追い込んだのは、イスラエルと米国だという考えが条件反射的に頭の中に湧き起こった。

 ハマスの攻撃は許されないにしても、イスラエル「政府」が行っていることは、それ以上に非人道的で許されないことだということを瞬間的に理解できる日本人がどの程度いたのか。いなかったとしたら、それは教育の問題なのだろうか。

 さらに、私にはもう一つ疑問に思うことがある。

 それは、今回の事件が10月7日に突然始まったのではなく、何十年も続いたイスラエルによるパレスチナに対する国際法違反の度重なる虐殺の黒い歴史の中で起きた事件なのだということを、なぜ最初にマスコミが大きく伝えなかったのかということだ。

 やはり、日本政府が米国に無条件に従うことが慣例となってしまったこの10年で、米国に反対する言論を展開することを日本のマスコミが躊躇するようになったのだろうか。

 TBSなどは比較的早く、こうしたニュアンスを伝え始めたが、それでも、ジェノサイドを止めろという強い言葉は出て来ない。それは、危機感がないからであり、多くの場合は、戦争からは何も生まれないとか弱者ばかりが悲惨な目に遭っているとか、憎悪の連鎖を断ち切らなければというようなありきたりのコメントとともに、最後は、「しっかり注視していかなければなりませんね」というようなまとめで終わってしまう。

 ハマスを非難するのはもちろんなんの問題もないが、それ以上に今は、イスラエルが行っているジェノサイドを思い切り非難し、その行動を無条件に止めるべきだということをもっと強調すべきだと思う。

 話は少し脱線するが、こうしたことを考えていた時に思い浮かんだのが、ジャニーズ問題との類似性だ。

ジャニー喜多川の犯罪行為が明確に批判され始めても、その凶悪性を本当には認識できていないため、「性加害」という言葉でマイルドにしか伝えられなかったマスコミの「鈍感さ」。

 今日のイスラエルの行動をジェノサイドという最大の危機であるということが理解できず、イスラエルの「報復攻撃」とか「地上戦」という言葉に置き換えて、強く非難することなく、結果的に傍観しているのと同じことになっているのもまた、マスコミの「鈍感さ」のなせる業なのかなと思ってしまうのである。

 私たち国民も、停戦を早くという言葉は口にしても、「ジェノサイドを止めて!」という緊急性を持った言葉で声を上げるにはまだ至っていないようだ。

 これまで何十年も放置されてきたパレスチナの人々に対して無関心であった私たちは、そのことを謝罪するとともに、今こそ、イスラエル政府のジェノサイドを止めろという声を上げる責任があるのではないだろうか。

 そうした声が大きくならないために、岸田首相はなんの心配も迷いもなく、米国追随外交を呑気に続けられるのだということを私たちは反省しなければならない。

 今ここで、このジェノサイドを止められなければ、それに事実上加担した国の国民の一人として、私たちは、これから先長きにわたって、後ろめたさと悲しみを持って生きなければならなくなるだろう。

 なお、イスラエル「政府」の行為がジェノサイドだとしても、それをユダヤ人一般に対する非難や攻撃に繋げることがないように細心の注意が必要である。このことも大きな声で叫ばなければならない。


「ガザに核」発言も飛び出した。

 「とんでもない話だ。相手を根絶やしにするため、本当に使うかもしれないという怖さがある」。80カ国以上で被爆体験を証言するなどしてきた田中稔子さん(85)=広島市東区=は憤った。

 広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(79)は「発言の根底に、どこかの局面でイスラエルが核兵器を使おうと考えていることがうかがえる」と懸念し、「国際社会が核兵器反対と停戦の声を強く上げる必要がある。被爆国である日本の政府なら積極的に動けるはずだ」と外交努力を求めた。

 イスラエルは核保有を公式には認めていないが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の2022年1月時点の推計では、90発を保有しているとされる。

 


袴田さんの再審 真の自由を早く届けよ

2023年10月28日 | 事件

「東京新聞」社説 2023年10月28日 

 静岡県の強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌(はかまたいわお)さんの再審公判が静岡地裁で始まった。無実の訴えから半世紀。日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない。

 「巌に真の自由をお与えください」。姉のひで子さんは法廷で、こう無罪を訴えた。

 1966年の事件である。2014年に釈放されるまで半世紀近く、死刑囚として身体拘束を受け続けた。拘禁反応とみられる症状で袴田さんは出廷を免除された。再審が始まるまでの長い時間を考えても深刻な人権問題だ。

 今年3月、東京高裁で再審開始が決定されたときは、世界のメディアも速報した。残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている。

 検察はなお、袴田さんの有罪立証をすると冒頭陳述で述べた。しかし、死刑の確定判決の根拠はもはや「血痕の付いた5点の衣類」に限られていよう。この点は東京高裁で既に「袴田さんの着衣であることに合理的な疑いが生じる」と決着がついている。

 死刑判決の根拠とされた衣類は事件から約1年2カ月後に見つかるという不自然さが伴う。同高裁は第三者がみそタンク内に隠した可能性に触れた上で「捜査機関の者による可能性が極めて高い」と証拠の捏造(ねつぞう)にまで言及した。

 制度上は許されているとしても検察はなぜ、あくまで有罪立証にこだわるのか。組織防衛やメンツのためなら、その考え方こそ人権を踏みにじっていよう。衣類の調べはかなり尽くされていて、結局は蒸し返しではないのか。

 戦後の死刑事件で、再審公判が行われた4件はいずれも無罪になっている。今回も無罪が言い渡される公算が大きい。

 しかし、検察が事実認定に異論があるとして再審公判であらゆる証拠を吟味し直せば、審理に月日を費やし、いたずらに長引く。再審ゆえ迅速な裁判こそ必要だ。

 刑事手続きは人権保障を大前提にすべきだ。検察は公益の立場から、もはや袴田さんを救済する側に回るべきではないか。

 欧米では冤罪(えんざい)や誤判をきっかけに再審制度が改められてきた。

 日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている。法務・検察はそのことも自覚すべきである。


これはまさに人権侵害だ。
今度こそ袴田さん姉弟に自由を!
そして検察の責任を問うべきだ。

園のようす。


ガザから託されたメッセージ 日本でも即時停戦求める声

2023年10月19日 | 事件

娘は電話で「ママ、ここから出して!」と泣いた 

2023年10月19日 12時00分
 イスラム組織ハマスが7日にイスラエルへの大規模攻撃を仕掛けてから、10日余りたつ。報復に走るイスラエル軍が、ハマスの拠点であるパレスチナ自治区ガザに地上侵攻する可能性が高まっている。米国のバイデン大統領の18日のイスラエル訪問が侵攻の「お墨付き」になるとの見方もある。暴力の激化に陥っていいのか。緊迫する情勢を受け、日本の支援関係者や研究者らも声を上げ始めた。(岸本拓也、木原育子)

◆ガザ出身女性との15分の通話は…

 イスラエルとハマスの戦闘が続く中、中東で活動する国際NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の広報担当で、エルサレム駐在経験のある並木麻衣さん(38)に13日夕、ガザ出身の友人から悲痛なメッセージが届いた。
ガザ出身の女性からのメッセージ。並木さんが日本語に訳してメモした=並木さん提供

ガザ出身の女性からのメッセージ。並木さんが日本語に訳してメモした=並木さん提供

 「愛する娘は電話の向こう側で『ママ、ここから出して!』と泣き叫んでいました。子どもたちには何の罪もない。私たちは数字じゃない。動物じゃない。人間なんです。でも誰も、私の子どもたちが殺されるのを止めてくれない」
 言葉の主は、並木さんがガザで子どもの栄養失調予防事業に取り組んでいたときに知り合った40代の女性。現在はヨルダンに身を寄せているが、元夫が親権を持つ小学生から高校生の子ども4人がガザで暮らす。並木さんによると、女性は12日に子どもたちと電話で会話できたが、その後は連絡が取れなくなった。
 13日に並木さんが女性と15分ほど通話した際、女性は「私は何もしてあげることができなくて気が狂いそう。子どもたちのそばにいたい。子どもたちと一緒に死ねればよかったのに」と絶望にうちひしがれた様子を見せつつも「私たちの言葉は誰も信じてくれない。でも、あなたたちの言葉なら世界は信じてくれるかもしれない。だから伝えてほしい」とガザの窮状を訴える言葉を託したという。
 並木さんは翌14日、オンラインのシンポジウムで女性のメッセージを伝えた。

 【ガザ出身女性のメッセージ全文】
 木曜日に、奇跡的に子どもたちと電話がつながりました。
 4人の子どものうち、一番上のティーンエージャーの息子は、「ママ、今までのことを許して。ごめんなさい」と泣いていて、一番下の愛する小学生の娘は、電話の向こう側で、「ママ、ここから出して!」と泣き叫んでいました。
 私は何もしてあげることができなくて気が狂いそう。
 こんなことなら、ガザから出なければよかった。子どもたちのそばにいたい。子どもたちと一緒に死ねればよかったのにと思っています。
 どうしてガザはこうなるんでしょうか? 私たちは人間なのに。子どもたちには何の罪もない。ガザの外の人たちと同じ、人間で、母だったり父だったり、先生だったり医者だったりするのに。
 アンマンでニュースを見ていても、絶望します。私たちは数字じゃない。数字で数えられるものじゃないんです。
 動物でもない。人間なんです。
 でも、誰も私たちのそばに立ってくれない。
 こんなに狂ったことが起きているのに。私の子供たちはきっと死んでしまうんです。でも誰も、私の子どもたちが殺されるのを止めてくれない。
 私の子どもたちもまた、数字で数えられるものじゃないのに。
 こんな言葉も、私たちの口から出たら、誰も信じてくれません。
 でもあなたなら、そしてJVC、あなたたちの言葉なら、世界は信じてくれるかもしれない。
 だから伝えてほしいんです。こんなこと言ってごめんなさい。本当にごめんなさい。
 でもいま、私にできることはこれだけなんです。
 ガザに心を寄せるのに、イスラム教徒である必要はないんです。人間であればいいだけ。
 私たちに、権利と自由のある普通の暮らしをください。

◆ガザの被害「これまでと次元が違う」

 イスラエルによる地上侵攻が秒読みと言われる中、JVCエルサレム事務所駐在員の大澤みずほさん(39)はガザの市民生活に懸念を深めている。
 「パンはまだ売っている店もあるようだが、全体的に水や食料が本当に不足している。『2〜3日、水を飲んでいない』と言う人もいた。退避勧告が出て多くのガザ市民が南部へと逃げているが、親戚の家に70人もの人が身を寄せているケースもある」
 大澤さんはガザの住民や支援活動の協力者から、SNSを通じて情報を集める。電気は止まり、ネットも遮断され、連絡もだんだんと取りづらくなっている。SNSにメッセージを送っても「既読」とならないことも増えてきた。
17日、パレスチナ自治区ガザで爆発した病院から別の病院に運ばれた負傷者ら(AP)

17日、パレスチナ自治区ガザで爆発した病院から別の病院に運ばれた負傷者ら(AP)

 ガザにはこれまで何度も空爆はあったが、「これまでとは次元が違う」と大澤さん。本来空爆が許されない病院や学校も攻撃されており、「ガザ全土で安全なところがない。人々は精神的に限界を迎えている」と危機感を表し、続ける。
 「もともとパレスチナの人たちは何十年も抑圧され、世界から見放されていると感じていた。今回のハマスの攻撃は許されないことだが、イスラエル側の報復を支持する国際社会の動きを見て、ガザの人々はますます孤立感を強めている」

◆罪のない220万市民をテロ組織と同一視しないで

 パレスチナとイスラエル双方の市民の犠牲がこれ以上増えないよう、JVCやピースウィンズ・ジャパン(PWJ)など、パレスチナ支援に関わる日本のNGO4団体は一刻も早い停戦を求めている。11日には日本政府も停戦に向けた外交努力を尽くすよう求める要請文を外務省に提出した。
PWJパレスチナ駐在員として9月までガザを訪れていた矢加部真怜さんは12日のオンライン会見で「ハマスの攻撃は許されない。だが、ガザにいる220万人の罪のない市民を、テロ組織と同一視して殺してはならない」と訴えた。
 JVCの今井高樹代表理事は「具体的に行動しないと攻撃は止まらない。当事者や国連安保理、アラブ諸国などが歩調を合わせて調停に乗り出すよう、日本は踏み込んだ働きかけをしてほしい」と要望した。
17日、パレスチナ自治区ガザで病院が爆発した後、別の病院に到着した負傷したパレスチナ人の子どもら(AP)

17日、パレスチナ自治区ガザで病院が爆発した後、別の病院に到着した負傷したパレスチナ人の子どもら(AP)

 ここに来て、各国の動きは慌ただしい。
 バイデン米大統領はX(旧ツイッター)で「連帯を示すため」と表明し、18日にイスラエルを訪れた。
 当初はヨルダンでパレスチナ自治政府のアッバス議長らと会談する予定だったが、17日にガザの病院で爆発があったことを受けて延期。人道危機回避につながる道筋は見えない。
 日本政府はハマスとイスラエル双方に暴力行為の自制を呼びかけた。ただ、ハマスのイスラエル攻撃については、欧米と同じ歩調で「テロ」と非難している。

◆中東研究者「テロ強調し抑圧の歴史抜け落ちている」

 緊張感が高まる中、日本の中東研究者らも17日、緊急アピールを発表した。「市民の立場から暴力の激化と人道的危機の深刻化を深く憂慮する」とし、即時停戦や国際人道法の順守、対話と交渉を通じた解決に全力を尽くすことを17人の連名で日本政府に求めた。
 発表に合わせて研究者らが開いたオンライン会見では、最近の言説でハマスの「テロ」が強調され、イスラエルによるパレスチナ人抑圧の歴史が抜け落ちる傾向を危ぶむ声が相次いだ。
 日本女子大の臼杵うすきあきら教授(中東研究)は「ハマスの攻撃は問題」としつつ「今のイスラエルによるガザの包囲は非常にまずい。一市民として許せない」と大きな犠牲を強いるイスラエルの報復を非難した。
 早稲田大大学院の岡真理教授(パレスチナ問題)は「『暴力の連鎖』と報じられるが、暴力の根源に何があったのか、歴史的根源を無視して、暴力の連鎖と言うこと自体が暴力だ」となげかけた。
 一橋大の鵜飼哲名誉教授(フランス文学・思想)も、昨年イスラエル軍によって220人以上のパレスチナ人が殺された状況に言及。「10月7日以前から(イスラエルの)攻撃があったということを間違えてはいけない」と指摘した。
 国連安保理の非常任理事国で、伝統的に中東の国々と友好関係を持つ日本だからこそ、戦火を鎮める役割を求める声も続いた。
 法政大の奈良本英佑名誉教授(中東近現代史)は「イギリスや米国など、中国を除く常任理事国はパレスチナ問題を起こした歴史的責任がある。そこから距離を置き、戦火をあおることはやめてと言えるのが日本の立場だ」と説いた。
 お茶の水女子大の三浦徹名誉教授(アラブ・イスラム史)も1948年のイスラエル建国の歴史を振り返り、「パレスチナから見れば対立が生じた始まりだが、私たちを含めて是正することができず、見て見ぬふりをしてきた」と訴えた。緊急アピールの文面に、あえて「ハマス」「イスラエル」の言葉に触れなかった理由について「『皆にとっての問題』として考えていくためだ」と語気を強めた。

◆デスクメモ

 「歯向かってきたのでせん滅する。そうした行動を抑止する国際秩序が存在しない」。イスラエルやロシアの強硬路線を念頭に、研究者の1人が会見で憂えた。確かに国際社会は有効な策を打ち出せていない。だからこそ声を上げるのは価値がある。無関心は状況を悪化させるだけだ。(北)

戦争を許してはいけない。
日本政府もこの立場を明確にする必要がある。

頑張るアジサイの花。


(渡辺一枝)「子ども脱被ばく裁判」傍聴記

2023年09月23日 | 事件

「司法が憲法を守り、行政を正す判断をしなければ、日本の未来はありません」

マガジン9 2023年9月20日

  By 渡辺一枝 マガジン9 (maga9.jp)

 

 731日は、仙台高裁で「子ども脱被ばく裁判控訴審」第7回口頭弁論期日でした。

 裁判の開廷前に弁護士会館で学習会を持ち、田辺保雄弁護士から「国連特別報告者の訪日調査について」をお聞きしました。その後、光前幸一弁護士が今回の「第7回控訴審の争点について」を話されました。

 仙台高裁前でスタンディングでのアピールをしてから、裁判所に入りました。

 今回の裁判傍聴報告、開廷前の学習会についても、また閉廷後の報告集会についてもきちんとはご報告できませんが、提訴の日からずっと、先頭に立って闘ってきた原告代表の今野寿美雄さんの意見陳述に、思いが溢れています。ぜひお読みください。

※この裁判については、第45回 、第50回 、第53回などをお読みください。

◎原告意見陳述:今野寿美雄

 控訴人を代表しまして、意見陳述をします。

 

 忌々しい原発事故から12年、国や県の情報隠蔽、避難の権利や選択の問題を取り上げたこの裁判提訴から8年が経ちました。

 しかし、国や県は、自分たちの過ちを認めず、なんの反省もないまま、次の原発事故に向かって突き進んでいるようにしか思えません。

 福島地裁、仙台高裁の判決は、国や県の言い訳を丸呑みし、現状にお墨付きを与えるだけで、「裁判所が子どもたちを護ってやるぞ!」という気概は、どこにも感じることができませんでした。

 昨年、原発避難民の人権状況調査に来られ、福島にも足を延ばして下さった国連人権理事会の特別報告者セシリア・ヒメネスダマリーさんは、この5月に、私たちが問題にしてきた国や県の事故情報の隠蔽等の問題について、次のような勧告を日本の政府にされました。

 「震災当初、SPEEDI放出データ公表の失敗、避難区域を正当化する情報の欠如、事態の深刻さを軽視する試みは、市民が十分な情報を得た上で避難を決定することを妨げ、放射線に関する政府の情報に対する信頼を損なった」

 「政府が放射線に関して住民を安心させるための情報ではなく、中立的な科学的情報を提供するよう勧告をするとともに、空間放射線量のモニタリングと公表を継続し、これを土壌放射線量にも拡大するよう勧告する。国民の信頼を回復するために、当局は市民の懸念に耳を傾け、それに応える努力を拡大し、市民のフィードバックに基づいて情報提供を調整しなければならない」

 外国の人には、日本のおかしさがはっきりと見え、はっきり言ってくれているのです。

 原発事故当時、福島県内に住んでいた18歳以下の子どもから、わかっているだけでも、300人を超える小児甲状腺がんが発症しています。

 しかし、国も県も、放射線とは関係ないと言って、この現実を放置し、加害者は護るが、被害者を護らない政策をとっています。

 追加実効線量年20mSvでの避難区域の指定解除、県外にやむを得ず避難した人に対する住宅支援の打ち切り、被ばくの強要等の重大な人権侵害が堂々と行われています。

 誰が、こんな国にしたのでしょう。

 これまでの判決は、これらの人権侵害を助長していることになります。法の番人である裁判所が憲法を活かそうとしないのでは司法は死んだと言わざるをえません。

 三権分立ならぬ三権連立、寄せ鍋状態です。せめて、国連のセシリア・ヒメネスダマリーさんの認識をもって、はっきり、日本の現状を叱ってください。

 今、司法が憲法を守り、行政を正す判断をしなければ、日本の未来はありません。

 日本でも、「子ども基本法」がようやく成立し、今年の4月から施行されました。しかし、子ども達は子ども達だけでは自分を護れません。

 子ども達を護るのは、私たち大人の責任、義務です。

 子ども達を護りたいと思うのは全ての親が思う当たり前のことです。

 当たり前の日常を子ども達にプレゼントしたいのです。

 裁判所には、私たちの期待する判断をしていただきたいと切に願いまして、意見陳述とします。

 ご清聴ありがとうございました。

*****

 閉廷後は仙台弁護士会館で報告集会がありましたが、私はこれに参加できずに帰宅しました。

わたなべ・いちえ19451月、ハルピン生まれ。19873月まで東京近郊の保育園で保育士として働き、退職後は旧満洲各地に残留邦人を訪ね、またチベット、モンゴルへの旅を重ね作家活動に入る。20118月から毎月福島に通い、被災現地と被災者を訪ねている。著書に『自転車いっぱい花かごにして』『時計のない保育園』『王様の耳はロバの耳』『桜を恋う人』『ハルビン回帰行』『チベットを馬で行く』『私と同じ黒い目のひと』『消されゆくチベット』『聞き書き南相馬』『ふくしま 人のものがたり』他多数。写真集『風の馬』『ツァンパで朝食を』『チベット 祈りの色相、暮らしの色彩』、絵本『こぶたがずんずん』(長新太との共著)など


 今、「司法」が機能しない。あらゆる分野で邪魔をしている。一番の任務は「憲法の番人」のはず。


森友文書判決 「不開示」で真相隠すな

2023年09月22日 | 事件

「東京新聞」社説 2023922日 

 学校法人森友学園を巡る文書不開示決定の取り消しを求めた裁判で、大阪地裁は国の対応を「適法」とした。公文書改ざんの真相を闇に埋もれさせる判決だ。文書「不開示」は決して許されない。

 国有地の約8億円の値引きから始まった森友問題。財務省の報告書には改ざんの指揮系統などに関する記載はなく、開示された「赤木ファイル」には黒塗り部分が約400カ所もあった。肝心な部分は隠されて不明のままだ。

 裁判は、財務省の公文書改ざんにより自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さんの妻雅子さんが、その実態を明らかにしようと起こした。財務省側が検察に任意提出した関連文書を国が「不開示」と決定したため、その取り消しを求めて争った。

 しかし大阪地裁判決は「請求棄却」だった。「事件の捜査における手法や対象などが推知される恐れがある」などと指摘し、国側の不開示判断は妥当と判断した。

 確かに情報公開法は、犯罪捜査など公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす場合には「不開示」と規定している。だが、これは例外規定であり、森友文書がこれに該当するかは大いに疑問がある。

 佐川宣寿元国税庁長官ら財務省幹部は刑事告発されたが、検察は全員を不起訴とし捜査は終結している。文書を公開しても捜査に影響しないのは明白だ。「将来の捜査に支障が及ぶ恐れ」という、あいまいな概念を持ち出すのは詭弁(きべん)と考える。情報公開法の原則は「公開」である。

 情報公開法と公文書管理法は両輪となって、行政が公正かどうか監視する仕組みのはずだ。国民がどんな手段を使っても真相にたどり着けない状況を、司法までもが追認すれば、行政監視のこれらの法律は骨抜きにされてしまう。

 雅子さんが国に損害賠償を求めた訴訟では、国が請求を全面的に受け入れる「認諾」をして裁判は終了した。権力による事実の隠蔽(いんぺい)そのものだ。

 公文書改ざんは、安倍晋三元首相が「私や妻が関わっていれば総理も国会議員も辞める」と国会答弁した後に始まったとされる。政権内でどんな意思決定があったのか。それを明らかにすることは国民の「知る権利」に直結する。

 国会をも欺いた、国家権力による公文書改ざんという横暴を見逃すわけにはいかない。


これらのなかにも人権侵犯が多数鬱積している。人間の尊厳を!


ジャニーズとの取引やめないテレビ各局に告ぐ「今すぐジャニ担を廃止せよ」

2023年09月11日 | 事件

TVプロデューサーが提言

 

弁護士ドットコムニュース9/11(月)

 

ジャニーズ事務所は9月7日の記者会見で、藤島ジュリー景子氏が故ジャニー喜多川氏によるタレントへの性加害を認めて謝罪した。タレント引退を発表した東山紀之氏が新社長となった。

事務所がようやく性加害を認めたことを受けて、テレビ各局はジャニーズとの取引について声明を出したが、取引を「止める」と明言した局は現在のところない。

考えてみてほしい。今いったん仕事がなくなるのと、今後ずっと人権侵害状態が続くのと、タレントたちにとってどっちが不幸な状況だろうか。

筆者は正直言って、ジャニーズとテレビ各局の双方が「まともな企業」になるまで取引停止するべきではないかと思っている。(テレビプロデューサー・鎮目博道)

⚫傍若無人な商売をしてきたジャニーズは今さら変われるのか?

ジャニーズは根本的な改革をし、生まれ変わるのだという。しかし、主要な取引先であるテレビとの関係が続いたままでは、ジャニーズに改革への強いモチベーションは働きにくい。

テレビ局側の声明によれば、その理屈は「タレントは被害者で罪はない」といったところだ。だが、「罪のないタレント」がかわいそうだというなら、その期間は事務所ではなく、タレントに直接ギャラを支払うなどの方法もありえる。

これからジャニーズの問題を考えるときに、「ジャニー氏による性加害」にあまりに限定しすぎると正しい理解を妨げるはずだ。問題はそれだけではないからだ。

おぞましい児童への性虐待が認められたジャニー氏はすでに故人であり、今後再発することはない。被害者に誠意を持って粛々とジャニーズが謝罪し、補償をしていくしかない。

しかし、それに加えて考えなければならないのは、現在の所属タレントが新たに人権侵害に遭ってはならないし、さらに言えば、他の事務所に所属するタレントたちも人権侵害に遭ってはならないということだ。

誤解を恐れずに言えば、ジャニーズはこれまで、通常の商慣習上のルールでは許されるはずのないような"滅茶苦茶な商売"をしてきた。

テレビ局などの取引先に対して、そのタレントパワーを背景に、自分たちの意のままに強引な条件で取引をおこない、番組内容からキャスティングまで口を挟み、競合する芸能事務所を妨害したのみならず、報道機関の記者にまで無茶なクレームをつけるなど、まさに傍若無人な振る舞いをしてきた。

SMAPの元メンバー3人の番組起用が明らかに少なくなったことをめぐり、公正取引委員会がジャニーズに注意したこともあった。

このような事務所のタレントに人権が保障されるだろうか? 他の事務所のタレントにも人権蹂躙をしないだろうか? 私は今のままでは非常に怪しいと見ている。

東山社長は9月7日の会見で「テレビ局はジャニーズに忖度する必要はない」「辞めたタレントや競合グループの邪魔もしない」という考えを示した。だが、現場で動くジャニーズの社員は本当にこれまでの振る舞いを変えるのか。

タレントである東山社長にどこまで現場が見えているか疑問だし、経験のない経営者としての手腕にも疑問が残る。本来ならば、芸能とは無関係の業界から経営のプロを連れてきて「社会通念上許されないことはすべてダメ」とハッキリ明言するくらいの改革がされなければ、ジャニーズは変わらないというのは、厳しすぎるだろうか。

今すぐ求められるテレビ側の改革、報道内容にまで口出す「ジャニ担」からまず廃止せよ

変わらなければならないのは、テレビ局も同じだ。今回各局はもっともらしく「人権侵害が起こらないようにします」のようなコメントを出しているが、その中で具体的に何をするのか、なにひとつ約束されていない。残念ながら、この程度の何も中身のないコメントを出すようでは、きっと「ジャニーズへの忖度」は続くだろう。

なぜテレビ各局の報道部門が「忖度して何もジャニーズのことを報じてこなかったか」というと、その大きな原因のひとつは「ジャニ担」という制度があったからだ。

テレビ局に限らず多くのメディアにはジャニーズ事務所との窓口として設けられた「ジャニ担」がいる。

「ジャニ担以外はジャニーズに触れてはならない」という暗黙の了解のもと、「ジャニ担」から「それはやめておいてくれ」と言われれば、報道の現場は悔しい思いをしながらも局の利益・商売を考えてジャニ担の言うことに従い、沈黙した。

横並びの競争の中で、他局よりも不利に扱われたくないという心理の中、ジャニ担という「ジャニーズの御用聞き」の言いなりになったのは、報道機関として恥ずべきことだ。

ジャニ担が存在し続けて、「報道よりも金を稼いでくる制作現場が偉い」という空気を改められなければ、今後も何も変わらない。

そして、ジャニーズ以外にも、タレントへの性加害の噂があったり、タレントの人権を侵害してそうな事務所はもっとあるはずだと、テレビマンとしては考えざるを得ない。

まずテレビ局が取り組むべきは、少なくともジャニ担を廃止することだ。そして、人権侵害の可能性がある事務所と取引しないために、取引先の調査部署を設置すること。調査部署には制作担当部署よりも強い権限を持たせるような具体的な改革案を作成し発表するべきではないか。

  • 「人権侵害事務所」との取引停止をテレビ局に言い渡す「第三者機関」設置を

ただ、残念ながら、テレビ局が「人気者がいる事務所の言うことはなんでも聞き、都合の悪いことには目をつぶる」という体質から完全に抜け出すのは難しいと思う。

そのため、ジャニーズもそれ以外のタレントも、人権侵害を受けた場合に告発できるような第三者機関も設けるべきではないかと思う。

民放連などの業界団体の下に置いてもいいし、タレントによる組合のような団体を新設してそこに設置してもいいだろう。タレントから人権侵害の告発を受けて調査し、人権侵害が認められた事務所との取引を各局に禁止する権限を持つくらいの第三者機関を作らなければ、立場の弱いタレントたちへの人権侵害はなくならないのではないかと思う。

これまで日本の芸能事務所やテレビ局は、タレントをあまりにも「道具」として扱いすぎてきた。「人気さえあればそれでいい。結果が出ればそれでいい」という考え方を改め、「人間」としてきちんと権利を守るのだ、という姿勢に変わるには、今が絶好の機会だ。

今こそ徹底的にテレビ局と芸能事務所のあり方を根本的に改革するべきだ。それをせずに、「ジャニーズとの取引は変わらず継続する」などと言い続けるテレビ局は、もはや誰からの信頼も得ることはできないだろう。

弁護士ドットコムニュース編集部


まともなTV局を取り戻す試金石となるだろう。

 


松野官房長官が発言 朝鮮人虐殺「事実関係を把握できる記録ない」

2023年09月03日 | 事件

誤り。防衛省も「文書保管」を認める国会答弁

関東大震災の直後に起きた朝鮮人虐殺について、松野博一官房長官が「政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と発言。ファクトチェックしました。
 
 

松野博一官房長官が8月30日の記者会見で、関東大震災の直後に起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と発言した。だが、これは誤りだ。

内閣府が事務局を務める中央防災会議に設置された「災害教訓の継承に関する専門調査会」が、2009年に取りまとめた関東大震災に関する報告書の中に、朝鮮人虐殺に関する記載が存在する

松野氏の発言について、ハフポスト日本版はファクトチェックした。

記者会見での発言は?

まず、松野氏の発言を振り返る。

「当時被災地ではデマが広がり、多くの朝鮮人が軍、警察、自警団によって虐殺されたと伝えられています。政府として朝鮮人虐殺をどう受け止め、何を反省点としているのか、併せて現在の日本社会における在日コリアンを含むマイノリティに対するヘイトスピーチやヘイトクライムをどう捉えているのかお尋ねします」と問うた。

これに対して、松野氏は「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります」と述べ、受け止めや反省点について回答しなかった。

後半のヘイトスピーチやヘイトクライムに関する質問に対し、松野氏は「特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、ましてそのような動機で行われる暴力や犯罪はいかなる社会においても許されないと考えています」との見解を示した。

続く質問で、この記者は「朝鮮人虐殺の事実そのものを否定する言説が出回っている」ことを踏まえ、政府が事実関係の調査や実態を明らかにする考えはあるかと尋ねた。

松野氏は「先ほども申し上げましたとおり、政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります」と、同じ見解を繰り返した。

「殺傷事件の中心は朝鮮人への迫害」専門調査会の報告書

会見での記者の質問の趣旨は、「政府として朝鮮人虐殺をどう受け止め、何を反省点としているのか」ということだ。これを踏まえると、松野氏の発言は「朝鮮人虐殺の事実関係を把握できる記録が政府内に見当たらない」という意味になるが、それは誤りだ。

少なくとも、内閣府が事務局を務める中央防災会議に設置された「災害教訓の継承に関する専門調査会」は、2009年3月に取りまとめた関東大震災に関する報告書(1923 関東大震災 第2編)の中で、震災直後の殺傷事件で中心をなしたのは朝鮮人への迫害であり、流言がそのきっかけになった、と明記している。

<既に見てきたように、関東大震災時には、官憲、被災者や周辺住民による殺傷行為が多数発生した。武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった。殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人も少なからず被害にあった。加害者の形態は官憲によるものから官憲が保護している被害者を官憲の抵抗を排除して民間人が殺害したものまで多様である>(第4章2節)

<自然災害がこれほどの規模で人為的な殺傷行為を誘発した例は日本の災害史上、他に確認できず、大規模災害時に発生した最悪の事態として、今後の防災活動においても念頭に置く必要がある>(同)

報告書の206ページには、「官庁記録による殺傷事件被害死者数」の表も掲載されている。当時の司法省の報告書に掲載された起訴事件の被害者数は、朝鮮人233人、日本人58人、中国人は3人。「警察・民間人共同」の加害者による朝鮮人の犠牲者数は約215人と記されている。(このうち約200人は中国人だったとの説もあるとの注釈もある)

「官庁記録による殺傷事件被害死者数」

同誌「第5章 治安保持」には、流言の拡散を背景に「(民衆が)朝鮮人に対して猛烈な迫害を加え、勢いが過激になり、ついに殺傷した」ことが記録されている。「朝鮮人が井戸に毒薬を投入した」、「朝鮮人が放火や略奪をし、婦女に暴行した」など、警察が覚知した流言も記載されている。

中央防災会議は、内閣総理大臣をはじめとする全閣僚や公共機関の代表、学識経験者で構成する。

内務省の電信文、防衛省が保管

関東大震災直後の朝鮮人虐殺に関する公文書の存在を、防衛省も認めている。

2023年6月の参議院法務委員会では、社民党の福島瑞穂議員が、関東大震災の後に当時の内務省警保局長から全国の地方長官宛てに送付された電信文(1923年9月3日付)を示した上で、防衛省が保管しているか否かを問うた。

電信文は、朝鮮人による放火や爆弾所持といった流言を内務省が事実とみなし、取り締まりを全国に求める内容だった。

防衛省の安藤敦史・防衛政策局次長は福島議員の質問に対し、この文書を同省の防衛研究所戦史研究センターで保管していることを認めた。

このように、少なくとも一般に公開されている内閣府の調査会の報告書にも、大震災後の殺傷事件では「虐殺という表現が妥当する例」が多く、朝鮮人の犠牲者が最も多かったことが記されている。

さらに、関東大震災後の朝鮮人虐殺に関する公文書は存在し、政府も保管していることを認めている。

よって、「政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」とする松野氏の記者会見での発言は誤りだ。

◼️ファクトチェック記事のレーティングについて


ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。

また、これまでハフポスト日本版が実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。
    国民にウソを言う政権には退場してもらうしかない。
  • 車を買い替えた。
    あとどのくらい乗れるかわからないし、5.6年も乗れればいいだろうということで、今のジムニーと同じ中古車にした。色はベージュだそうで、今までの黒よりまし。オートマになってしまった。TVまで付いてた。

中島岳志 関東大震災から100年 集団化の暴力省みる

2023年09月01日 | 事件

「東京新聞」<論壇時評>2023年9月1日

 一九二三年九月一日に起きた関東大震災から百年を迎える。関東大震災では、建物の倒壊や火災、津波などで多くの犠牲者が出たが、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という根拠なき流言を信じた日本人による朝鮮人虐殺も相次いだ。

 ウェブ版「東京新聞」(八月十八日)に掲載された外村大(東京大学教授)のインタビュー(「関東大震災の朝鮮人虐殺にどう向き合うか 東大・外村教授に聞く」)では、虐殺が起きた歴史的背景が論じられている。

 近代日本は、日清戦争・日露戦争を戦った。この両戦争は、いずれも朝鮮半島の利権をめぐるもので、勝利をおさめた日本は朝鮮に対する支配を進めていった。その過程で、日本に抵抗する朝鮮人の民衆蜂起が起き、日本はそれを「暴徒」と見なして弾圧してきた。「朝鮮に対しては、一貫して自分たちに従うものだという態度で接して」きた。

 三・一運動をはじめとする独立運動に対しても、日本は「非論理的な暴徒の動き」と見なし、やがて朝鮮人によるテロ事件などが起きると、「朝鮮人=危ない人」というイメージが流布していった。関東大震災が起きた大正期には、朝鮮人が働く場所を求めて東京に流入してきていた。そのような中で、「自分たちの生活圏に、危険な人が入ってきている」という印象を抱いた人々は、震災時のデマが引き金となって、虐殺に及んでいった。

 映画監督で作家の森達也は、九月に公開が予定されている映画「福田村事件」で監督を務めた。福田村事件は、関東大震災から五日後、千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)で、香川県から来ていた薬売り行商人十五名が自警団に襲われ、幼児や妊婦を含む九名が殺された事件である。行商人たちが讃岐弁で会話していたことから、朝鮮人と疑われたとされている。

 森は「マガジン9」(八月九日)のインタビュー(「森達也さんに聞いた 負の歴史に向き合わなければ、また同じ過ちを繰り返す――映画『福田村事件』」)で、この映画を製作した動機を語っている。森は、地下鉄サリン事件後のオウム真理教を内部から撮影した「A」「A2」で知られる。森が衝撃を受けたのは、「世間では悪魔のように言われていた信者たちの一人ひとりは、驚くほど穏やかでやさしく、ごく普通の善良な人々」であることだった。それ以来、「なぜ普通の市民がこれほど残虐な殺人者になれるのか、ずっと考えて」きたという。

 日常では良き家庭人である人が、何かのきっかけで一転して人の命を殺(あや)める。森いわく「人間は善良なままに、凶悪な行いができる生きもの」である。

 森が注目するのは、「集団心理」である。人間は一人では生きることができない。常に集団を形成し、互いに協力することで生き延びてきた。しかし、「群れ」には副作用がある。「同調圧力」が起動すると、人々は集団の空気にのみ込まれ、行動がエスカレートしてしまう。個人としてのモラルや判断能力がきかなくなり、時に残虐なことを行ってしまう。「『私』『僕』といった一人称単数の主語を失い、『われわれ』『国家』などの集合代名詞に置き換わると、人はやさしいままで、限りなく残虐になれるのです」

 森は、この映画の中で加害者側をしっかりと描くことに重点を置いたという。被害者側に立つことで観客の感情移入を促すと、加害者側が「モンスター化」してしまう。重要なのは、映画をみる私たちが、集団心理の中で個を失い、残虐な行為に及んでしまう可能性を見つめることである。加害者を私たちからかけ離れた犯罪者としてみるのではなく、集団化の中で残虐行為にのみ込まれていく群集の中に、自己を見いだすことが迫られている。

 インターネット上のSNSでは、特定の人物に対する誹謗(ひぼう)中傷が起こり、時に死にまで追い込んでしまうことがある。匿名性が担保されている場合には、言葉はより過激になり、集団心理が働くと、攻撃性がさらに加速する。

 関東大震災から百年後の世界は、集団化の暴力から抜け出せているのだろうか。我々(われわれ)の現在が、歴史から問い返されている。 (なかじま・たけし=東京工業大教授)

【関連記事】関東大震災の朝鮮人虐殺にどう向き合うか 東大・外村教授に聞く「事実として語り継ぐ」 小池知事の追悼文不送付は…


ブログの不具合が長期に及んでいる。
いまだ不十分な感じがする。
リアクションボタンの数字がなかなか出てこないなど。


数百人以上が被害 Jr.へ生殺与奪の権

2023年08月31日 | 事件

ジャニー氏性加害 報告書から見る

「しんぶん赤旗」2023年8月31日

メディアの沈黙で隠蔽体質強化

 ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性加害問題を調査した「再発防止特別チーム」が公表した調査報告書には、被害のなまなましい実態が記されていました。夢を持った少年たちが苦しめられた背景に何があったのか。報告書から見えてきたものは―。(小林圭子)

 「口腔性交をされ、性経験もなかったので体が硬直したが、これがジャニーズJr.(以下Jr.)としての洗礼だと思った(中学2年頃)」「『YOUはソロでデビューさせるから』と言われ、直接陰部を触られた(中学2年時)」「体や性器を触られ口腔性交された。翌日、1万円を渡された(中学3年時)」。ヒアリングでの被害者の声です。

 ジャニー氏は自宅や合宿所といった“密室”で、当時小学生から高校生まで(多くは中学生)の未成年者に対し、性加害を繰り返していました。性加害は1950年代から2010年代半ばまで確認されており、「少なく見積もっても数百人の被害者がいる」という複数の証言が得られたとしています。

 Jr.の間では「ジャニー氏から性加害を受ければ優遇され、拒めば冷遇されるという認識が広がっていた」といいます。被害を周りに相談できずうつ病になる人も。フラッシュバックや自殺願望、性依存症など加害の影響が多く出されています。

「無制約の専権」

 ジャニー氏は、Jr.の誰をどのように売り出すかというプロデュースについて、ほぼ「無制約の専権」を有し、採用からデビューなどまで「Jr.の生殺与奪の権を握る」絶対的な立場にありました。

 一方、事務所は採用時に契約を締結するなどはなく、Jr.の顔も人数も正確に把握していなかったというずさんな管理でした。Jr.が接するおとなは基本的にジャニー氏と振付師、マネジャーのみという状況だったといいます。

 事務所スタッフに被害を訴えても「デビューしたければ我慢するしかない」と言われた被害者も。報告書は「事務所は何らの対応もしないどころか、むしろ辛抱させるしかないと考えていたふしがある」と指摘し、「被害拡大を招いた大きな要因となった」としています。

強い批判出れば

 ジャニー氏の性加害について、1965年ごろに訴訟が起こされたり、過去にいくつかの週刊誌が報じたりしたものの、マスメディアが正面から取り上げなかったことは、「極めて不自然な対応」だと言及しています。

 ジャニーズ事務所が日本でトップのエンターテインメント企業であり、ジャニー氏の性加害を報道すれば、所属タレントを自社のテレビ番組や雑誌に起用できなくなるのではないかという危惧から、性加害の報道を控えていたのではないかと指摘。「マスメディアの沈黙」により、事務所が性加害の実態を調査するなど自浄能力を発揮することもなく「隠蔽(いんぺい)体質を強化していった」と断じています。

 会見(29日)で調査チーム座長の林真琴弁護士はこう指摘しました。「マスメディアから強い批判が出ていれば、ジャニーズ事務所も対応をかえたかもしれない」

 

⁂    ⁂     ⁂

 

ジャニーズ性加害問題何をいまさら? テレビ各局“手のひら返し”の茶番「癒着はまごうことなき事実」

日刊ゲンダイ 2023/08/31 

 ジャニーズ性加害問題を巡る「再発防止特別チーム」の提言を受け、テレビ各局が、ジャニーズ事務所に対する過去の報道姿勢について反省のコメントを発表している。報告書では、この問題に対する「マスメディアの沈黙」が被害拡大につながり、さらに多くの被害者を出すことになったと断罪。2000年初頭のジャニーズ事務所と文芸春秋の裁判についても、「訴訟結果さえまともに報道されていないようであり、報道機関としてのマスメディアとしては極めて不自然な対応をしてきたと考えられる」とある。

 29日までに、テレビ各局はほぼ横並びでコメントを発表した。

「『マスメディアが正面から取り上げてこなかった』などの指摘を重く受け止め、性加害などの人権侵害は、あってはならないという姿勢で報道してまいります」(日本テレビ)、「報告書に記されたマスメディアの過去の報道に関するご指摘を真摯に受け止めております。性加害が決して許されないことは当然です。当社としてもあらゆる人権侵害を防ぐべく対処していく所存です」(フジテレビ)などと発表。TBS、テレビ朝日、テレビ東京もほぼ同じ内容で、“指摘を真摯に受け止め”“人権重視に努める”のオンパレードだ。

 

 NHKに至っては

「性暴力について『決して許されるものではない』という毅然とした態度でこれまで臨んできたところであり、今後もその姿勢にいささかの変更もありません」

とこれまでのズブズブの関係はなかったかのように開き直りとも取れるコメントである。

「癒着はまごうことなき事実」

 先日の国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の会見でも、来日した専門家は「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事に加担した」と非難し“人権デュー・デリジェンス”の必要性を訴えていた。

 かつて裁判の契機となった、1999年の「週刊文春」の“ジャニーズホモセクハラキャンペーン”取材で、中心メンバーのひとりだったジャーナリストの二田一比古氏はこう話す。

「正直、何をいまさらと思わざるを得ませんね。なんであの時、やらなかったのかと。大手マスコミが自粛と忖度でジャニーズ事務所と癒着してきたのはまごうことなき事実です。テレビ局と同時に、御用メディアと化していたスポーツ新聞なども声明を出してもいいんじゃないですか。それと“反省”するのはいいですが、今後、具体的にどうしていくのかがわからない。取引先のトップが詐欺事件などの重大な犯罪に手を染めていたとして、それでもその企業と取引を続けるのですか、と。業界全体の体質改善を望みます」

 今まで性加害の存在を知っていながら放置してきた大メディアの今さらながらの“声明”には、鼻白むばかりである。


ひどい!

一人や二人、数人というレベルではない。
数百人の子どもたちだ。

「権力」をかさに・・・

NHKがひどい。

もう一つの記事も紹介しておこう。
わたしは、竹内まりやの歌が好きでよく聞いていたが・・・・

松尾潔氏、山下達郎から離れるファンに呼びかけ「お考えを改める旨を表明したら…」

日刊スポーツ 2023.08.30

音楽プロデューサー松尾潔氏(55)が30日までにX(旧ツイッター)を更新。自身と“因縁”のあるシンガー・ソングライター山下達郎(70)と竹内まりや(68)夫妻のファンに向け、メッセージをつづった。

松尾氏は、ジャニーズ事務所がジャニー喜多川前社長(19年に死去)の性加害問題をめぐり、同事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」(座長・林真琴前検事総長)が作成した、同事務所のガバナンス上の問題点の把握及び再発防止策の策定・提言に関する調査報告書を公表したことに言及。「再発防止特別チームの会見を受けて、山下達郎・竹内まりやご夫妻を責めたてる旨をぼくに訴えてくる方が多くて困惑しています」と明かし、「きっとおふたりとも会見内容に胸を痛めておられると思いますし、お考えを改めて正式に声明をお出しになるはずです。それまでは非難を控えて来週のサンソンを待ちませんか」と呼びかけた。

続く投稿では、「誤解を恐れずにあえて言いますが、山下達郎・竹内まりやご夫妻がお考えを改める旨を表明したら、先月以来おふたりの音楽から遠ざかっている長年のファンのみなさんも、どうか彼らを再び迎え入れて欲しいのです」との思いをつづり、「音楽が備えている自由の精神とは、本来そういうものでしょう?」と理解を求めた。

松尾氏は7月、15年間在籍した芸能事務所スマイルカンパニーとの契約が終了したことをXで報告し、「私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及したのが理由です。私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です」と理由を明かして物議をかもした。

その後、山下は冠ラジオ番組「山下達郎のサンデー・ソングブック」(日曜午後2時)の番組内で、ジャニーズ事務所との関係について「自分は、あくまでいち作曲家、楽曲の提供者」とした上で、「ジャニーズ事務所の内部事情など全く、あずかり知らぬこと。ましては性加害の事実について、私が知る術は全くありません」と話した。松尾氏は山下の発言を「残念」とした上で、「絶大な影響力のあるカリスマミュージシャンに、子供たちが不幸にも性犯罪や性暴力の被害者になった時、『声を上げてもムダ』と諦めずにすむ社会を一緒に目指しましょうよ、とご提案しているのです」と、自らの思いを訴えていた。

 


きっこのメルマガ 中国にダダ漏れ。最高機密網への侵入を数カ月も放置した防衛省「昭和の戸締り」状態

2023年08月17日 | 事件

まぐまぐニュース!2023.08.17

 by 『きっこのメルマガ』

 かねてから脆弱性が指摘されてきた日本の情報セキュリティ。そんなウィークポイントを中国が見過ごすはずもなく、つい先日、ワシントン・ポスト紙に掲載された記事は驚愕に値するものでした。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、防衛省の最高機密網が数カ月に渡り中国にハッキングされていた事実を伝える記事を取り上げ、その深刻度を解説。さらに日本のIT技術の「周回遅れぶり」を指摘するとともに、マイナ保険証が中国の次なるターゲットになることは確実と断言しています。

今も絶賛ダダ漏れ中。中国にハッキングされ放題、防衛省の最高機密網

 日本ではほとんどスルーされていますが、米紙ワシントン・ポストは現地時間の8月7日、日本にとって驚くべきニュースを報じました。3年前の2020年、中国が日本の防衛省の最高機密網を何カ月にもわたってハッキングしていた、というニュースです。日本でも新聞各紙が簡単な内容を報じましたが、日本人の多くがこのニュースをスルーしたため、続報は伝えられず、1週間も経たずに「過ぎ去ったニュース」になってしまいました。

しかし、あたしはとても気になったので、すぐにワシントン・ポストの元記事を読んでみました。「China hacked Japan’s sensitive defense networks, officials say(中国が日本の防衛機密ネットワークをハッキングしていたと当局者が伝えた)」という見出しで、ワシントン・ポストの国家安全保障担当記者のエレン・ナカシマ氏の署名記事でした。彼女はこれまでに、複数回のピューリッツァー賞やジェラルドローブ賞などを受賞している国家安全保障の専門家です。

で、その記事の内容ですが、当事のNSA(アメリカ国家安全保障局)の12人の担当者のうち3人からの証言として、「中国人民解放軍のハッカーグループが日本の防衛省のネットワークを完全にハッキングしていて、少なくとも2020年から2021年にかけて数カ月間、もっとも重要性の高い最高機密網にアクセスしていた」というものでした。

ま、ここまではいいのです…って、もちろん、いいわけありませんが、ここまではともかくとして、問題はこの先なのです。引き続きワシントン・ポストの記事によると、この問題が確認された2020年秋、日本のセキュリティシステムのあまりの脆弱さに驚いたアメリカ政府は、このまま日本に任せていたら大変なことになると思い、NSA長官で米国サイバー軍司令官のポール・ナカソネ氏と、ホワイトハウスのマシュー・ポッティンガー国家安全保障副補佐官を日本へ送ったのです。

まず、当事の日本とアメリカの状況を説明しておきますが、どちらも大変な時期でした。2020年9月、日本では安倍晋三首相が突然の辞任を発表し、後継者選びの自民党総裁選で菅義偉官房長官が選ばれました。一方、アメリカは大統領選の真っ最中で、2カ月後の11月、現職の共和党のドナルド・トランプ大統領を、民主党のジョー・バイデン氏が破りました。しかし、トランプ大統領は「投票はインチキだ」と大騒ぎし、あちこちの州で訴訟を起こしました。それでも、バイデン氏が翌年1月20日の就任式を迎えるまでは、トランプ氏が大統領なのです。

つまり、日本は「安倍政権から菅政権に変わった後」であり、アメリカは「大統領選ではバイデンが勝ったが、翌年1月20日の就任式まではトランプが大統領」という微妙な時期だったのです。アメリカ政府は、トランプ政権からバイデン政権への移行を進めていました。国家安全保障に関しても、それまでのトランプ政権下で国家安全保障を担当していた高官らから、次のバイデン政権で国家安全保障を担当するジェイク・サリバン氏へと引き継ぎが進められていました。

米国サイバー軍の支援提供を拒否した岸信夫防衛相

 すると、トランプ政権が隠蔽していた様々な情報が出て来たのですが、その中に重要性の高い「ハッキング情報」が含まれていたのです。その1つが「ロシアのハッカーグループによるアメリカの国防総省のネットワークへの侵入」であり、もう1つが「中国のハッカーグループによる日本の防衛省のネットワークへの侵入」でした。アメリカの国防総省のネットワークへのハッキングは、それなりにセキュリティ対策が施されていたため、大事にはなっていませんでした。

しかし、日本の防衛省のネットワークへのハッキングは、もっとも重要性の高い最高機密網にまで侵入されていた上、当時の安倍政権の河野太郎防衛相は、何の対策も取らずに何カ月間も放置していたのです。防衛省の最高機密網には、アメリカと共同で行なっている軍事計画の詳細なども含まれているので、これはアメリカにとっても大変な問題です。そのため、アメリカは自国のことで手一杯なのに、それでも無理をして、NSAのナカソネ長官とホワイトハウスのポッティンガー副補佐官を日本へ送ったのです。

エレン・ナカシマ氏の元記事には「日本の防衛相」としか書かれていませんが、安倍政権から菅政権へ移行した直後の防衛相ですから、これは安倍晋三元首相の実弟の岸信夫氏ということになります。で、元記事を読むと、ポール・ナカソネ長官に同行したNSAの高官の証言として、ナカソネ長官からブリーフィングを受けた岸信夫防衛相は、中国人のハッカーグループによるハッキングの事実を知らされ、「たいへん驚いていた」とのこと。

この問題を担当したNSAの高官の1人は、「日本の防衛省のネットワークのもっとも重要性の高い最高機密網が、何カ月も前から中国人民解放軍のハッカーグループのマルウェアによってハッキングされており、多くの最高機密が漏洩し続けていた可能性が高い」と述べました。つまり、何カ月も前から防衛省の最高機密網がハッキングされ、重要な情報がダダ漏れになっていたのに、防衛省も担当大臣も誰1人として気づいていなかったということです。

ハッキングには、相手のシステムの脆弱性をついて侵入し、ウイルスを仕掛けたりプログラムを書き変えてシステムを破壊するサイバー攻撃だけでなく、「こっそりとデータを盗み見るスパイ活動」があります。この時は、後者だったので気づかなかったようです。しかし、部外者が正規でない方法で最深部にまで侵入していた上、その状態が何カ月も続いていたのですから、マトモな監視システムであれば、速攻でブロックして排除していたはずです。

そして、この「防衛省も担当大臣も誰1人として気づいていなかった」という状況に愕然としたナカソネ長官は、中国のハッカーグループによる強力なマルウェアシステムを一掃するために、米国サイバー軍の支援を提供すると申し出ました。それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…というわけで、岸信夫防衛相はコトの重大さが理解できなかったのか、それとも、菅義偉首相から何らかの指示があったのか、このありがたい申し出を「拒否した」のです。そして、「国内の民間のセキュリティ会社に対応させるので問題ない」として、ナカソネ長官らを引き取らせたのです。

日本のサイバーセキュリティ対策の司令塔からもデータ漏洩

 で、これがどうなったのかと言えば、他国の防衛省のネットワークの最深部にまで侵入できるプロ中のプロと、IT後進国である日本の民間のセキュリティ会社では、経験値も実力も雲泥の差があります。ナカソネ長官の申し出を受けて、米国サイバー軍に任せておけば数日で解決したものが、右も左も分からない日本の民間企業が対応したため、1カ月が過ぎても、2カ月が過ぎても、年が明けても中国のマルウェアを排除することができず、結局、岸防衛相がハッキングの事実を知ってから排除するまでに数カ月も掛かってしまったのです。

日本の防衛省のネットワークを監視し続けているNSAによると、来日して岸防衛相にブリーフィングしてから1年後の2021年秋の時点でも、「防衛省のシステムの脆弱性はほとんど改善されていない」とのこと。ですから、日本の防衛省の最高機密網は、今も中国に絶賛ダダ漏れ中なのです。

さて、話は変わって、2週間ほど前の8月4日のこと、日本のサイバーセキュリティ対策の司令塔である「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」は、外部からの不正アクセスによって、5,000通ものメールやメールアドレスなどが漏洩した可能性があると発表しました。侵入したのは中国のハッカーグループである可能性が高いとも報じられました…って、はぁ?なんで「漏洩した」じゃなくて「漏洩した可能性がある」なのですか?なんで「中国のハッカーグループである」じゃなくて「中国のハッカーグループである可能性が高い」なのですか?

結局、データが漏洩したのかどうかもハッキリとは分からない。侵入したのが誰なのかもハッキリとは分からない。これが、日本のサイバーセキュリティ対策の司令塔だと言うのですから、情けなくて溜息も出ません。しかし、韓国にも周回遅れ、中国には10周くらい先を行かれている日本のIT技術ですから、こういうハッキングは日常的に「起こって当然」なのです。昭和前期の日本では、玄関に鍵も掛けずに出かける人が多かったと言いますが、今の日本のIT技術は、昭和前期の民家と戸締りと同レベルなのです。

何しろ、他国から指摘されるまで、防衛省の最高機密網が中国にハッキングされていたことにも気づかなかった国ですからね。21世紀にもなって、本当に恥ずかしいです。そして、こんなセキュリティーゆるゆるで危機感ゼロの国で国民番号と保険証を一体化したら、その結果も見えているでしょう。中国では多くのハッカーが日本人をターゲットにしていますから、次に狙われるのは間違いなく「マイナ保険証」ということになります。

(『きっこのメルマガ』2023年8月16日号より一部抜粋・文中敬称略)


いくら「軍事費」を増強しても、使い物にならない中古兵器をいくら手に入れても、また「最高軍事機密」がダダ洩れでは戦わずに・・・、でしょう。「戦う気概」誰に持てっていうのでしょう?

経済同友会の代表幹事であるサントリーホールディングスの新浪剛史社長は「マイナンバーカードについてはいろいろと不手際があったことはその通りだ」としながらも、「絶対に後戻りせず、しっかり進めてほしい」「ミスが起きたからやめよう、後戻りしようとやっていたら、世界から1周も2周も遅れていると言われる日本のデジタル社会化は、もう遅れを取り戻すことができなくなる」と発言。(2023.08.05「リテラ」記事より)

哀れ!
すでに1周2周のの問題ではない。
「致命傷」なのだ。

昼頃から台風の影響が出てきた。風台風であるが空模様はしばしば晴れ間。こうなればハウスの風通しを最大良くしなければならない。

インゲン豆倒れるかな?


仁藤夢乃-風俗で妊娠し、路上で出産した女性を追い詰めたもの

2023年08月08日 | 事件

バカなフリして生きるのやめた

仁藤夢乃(社会活動家)

 Imidas連載コラム2023/08/08

 

 風俗店に勤める女性が客との間で妊娠し、子どもを遺棄したというニュースが報じられた。こうした事件は後を絶たず、女性を責める声ばかりが大きくなっている。中には路上で出産せざるを得ないまでの状況に、女性たちを追い詰めたのは誰か? 風俗で子ども妊娠するとはどういうことなのか?

赤ちゃん遺体遺棄事件の裏にあったのは?

 2023年7月21日、愛知県常滑市で今年4月にマンションの共用トイレ内で出産した赤ちゃんの遺体を実家の庭に埋めた罪に問われた29歳の女性に対し、名古屋地方裁判所が有罪判決を言い渡した。

 報道によると、法廷の中で裁判官は「風俗店で避妊をせずに妊娠したうえ、出産後周囲に相談もしていない。短絡的な犯行と指摘せざるを得ず、酌むべき事情はない」と指摘。他にも「遺体をタオルに包んだだけで、ごく浅い穴を掘って埋めた行為はみずから産んだ赤ちゃんを弔う気持ちがない」(裁判官)、「無責任で、悪質というほかない」(検察官)といった意見もあったという。

 しかし、それらはあまりにも彼女が置かれた状況に理解がない言葉だと言わざるを得ない。被告人の女性は大学を出て保育士をしていたが、人間関係のもつれから退職。その後は風俗店で働くようになった。避妊せずに性行為をすることもあり、そうするうちに妊娠したという。彼女は一人暮らしで、メンズ地下アイドル(メン地下)に月100万円貢いでいたとの情報もあり、5~6年前からいわゆる「推し」の応援に金を使い、自らは携帯代や光熱費すら払えず、家の電気を止められたことが何度もあった。一人暮らしをしていた場所も、その「推し」の活動場所の近くだったようだ。

 メンズ地下アイドルらは、ホストクラブの従業員のように女性たちに色恋営業(本気で恋愛しているように思い込ませて女性に金を使わせる手法)をかけて金を使わせたうえ、中には一人のファンにCDを1000枚購入させたり、チェキ撮影会などの名目で利益を上げたりすることもある。そんなメン地下が色恋営業で女性に近づき、親元や友だちから引き離して近くに住まわせること、将来一緒に暮らそうなどと言って期待させておいて、風俗店などでより多くの金を稼いでくるように働きかけることはよくある話だ。

女性から金を巻き上げる「メンズコンカフェ」

 さらにメンズ地下アイドルのマネジメント事務所は、JKビジネスの規制後に登場した「コンカフェ」(コンセプトカフェ : 特定のコンセプトに合わせた衣装や内装で、女性従業員が飲食以外のサービスも提供する店)や風俗店とつながっていることが少なくない。なぜなら少女や女性に所属のメン地下に貢がせたり、「メンズコンカフェ」(メン地下たちがホスト役をつとめるコンセプトカフェ)で多額の金を使わせたりしたうえで、コンカフェや風俗店を紹介して彼女らを働かせるというのが新たな性搾取の手口の一つだからである。

 23年4月、東京・新宿歌舞伎町にあるメンズコンカフェの従業員の男が、風俗営業法違反で逮捕された。男は18歳の少女2人に声をかけてつながり、一人の少女は性売買で稼いだ9カ月分の売り上げ約50万円を、もう一人の少女は約5カ月間で30万円のシャンパンを含む約33万円をこの店で使わされていた。この店は21年7月にオープン以降、月々1000万円ほどの売り上げがあり、警察はそのうち8割程度を20歳未満への酒類提供などによるものとみている。

 5月に摘発された歌舞伎町の別の店では、16歳の女子高校生を2度にわたって午後10時以降に入店させ、1本40万円のシャンパンを頼ませるなどして、約85万円を請求したことで店長や従業員が逮捕された。

 また、1月にはメンズ地下アイドルの男2人が警視庁に逮捕される事件もあった。彼らはそれぞれのファンだという2人の17歳少女に対し、18歳未満と知りつつわいせつな行為をした疑いをもたれている。被害は複数回にわたり、少女2人はどちらも自分が「推す」容疑者に恋愛感情を抱き、「推し活」としてグッズ購入などに約50万円、約300万円を使ったと報じられている。

 このように少女たちへの性加害に対して、警察も少しずつ動くようになってはいる。とはいえ中学生の少女がメンズコンカフェで50万円を使わされ、その支払いのため性売買させられていた事件でも店の男は「少女と性行為をした罪」でしか起訴されず、未成年者と知りつつ多額の金を使わせたり、色恋営業で詐欺を働いたり、性売買に誘導したりということでは捕まえられていない。少女たちが体を売ったり、大金を使うことも「彼女たちが自分の意思でやったこと」と責任のがれができる構造を、メン地下やコンカフェ経営者、性売買業者らが作っているのだ。

 今回の事件においても、当のメンズ地下アイドルやその所属事務所が警察から事情聴取を受けた。しかし、特に問題にはならなかったとのことである。

お金がないと彼との関係を維持できない

 常滑市の事件で被告人の女性は妊娠に気づかず、「毎年夏バテするので、今回も夏バテかなと思っていた」と供述したという。妊娠に気づくこともできない状態だった彼女が、共用トイレの中で一人きりで出産した。どれだけ怖く、孤独だったか想像するだけで胸が痛む。

 そうして生まれた赤ちゃんは死産だった。捜査関係者によると、赤ちゃんの体重は2000~2500gと新生児の平均体重より軽く、早産だった可能性もあったという。「生理が来ないな」と思った時に、いち早く病院へ行けていたら女性は産む/産まないの選択ができ、赤ちゃんも亡くならずに済んだ可能性もある。でも彼女には病院へ行けるだけの金も、健康保険証もなかったという。

 法廷での「誰かに連絡しようとは思いませんでしたか?」との問いに、「自分の中でも何が起こっているか分からず、携帯料金も支払えていなくて、連絡できる状況ではありませんでした」と答えた彼女。病院を受診することもできず、相談できる人もいない中、突然の出産で死産となってしまった。彼女は死体遺棄で有罪となり、決して赤ちゃんを殺害したわけではないけれど、ネット上では「子どもを殺した」と誹謗中傷されている。

 当時の生活状況について、「自分の趣味にお金を使い、電気やガスも止まっていた」とも答えている。そうした彼女の金銭感覚を責める声も多く上がっているが、その前に背景にも目を向ける必要がある。

 ホストやメン地下などに色恋営業をかけられ、「キミのことが好き」「大事だよ」などと騙される中で、女性が「お金を使わないと彼との関係を維持できない」「もっと頑張らないと彼に嫌われてしまう」と考えたり、その男性を応援することだけが自分の生きがいのように感じたりすることはよくある。彼女についても、自分の生活より「推し」の男に金を使うことを最優先しなければという思考になっていたのかもしれない。

 本人は「趣味」と言ったとしても、本当にそうなのだろうか? ホストクラブやメン地下、メンズコンカフェなどでの散財を「推し活」「趣味」とメディアも報じることで、少女や女性たちに「趣味だから」「好きでやっていることだから」と納得させ、自己責任を内面化して性売買に自ら向かうよう誘導する。これは、洗脳による搾取の手口でもある。

彼女は「流されて」犯行におよんだのか?

 虐待があったり、頼れる家族がいなかったり、生活費がなかったり、とさまざまな事情を抱えて性売買せざるを得ない状況にある女性は多くいる。そして、性売買に染まると「癒しが必要だ」とホストクラブやメンズコンカフェに誘われる機会も多くなる。性売買に関わっていなくても、初めは「お金を使わなくていいから」「初回は1000円だけだから」などと、街やSNSで業者の男たちが女性に声をかけてくる。

 そこで女性に借金を背負わせたり、男性を応援するのに金が必要だと思わせたりしていく。彼女らはより多くの金を性売買で稼げるようにと美容整形や豊胸を勧められ、さらに借金がふくらんでいく。すると今度は闇金業者や買春者らが、借金の返済や生活苦に乗じて近づき、「お金を貸す」と言って見返りにさらなる性売買を行わせる。

 やがて電気やガスが止まり、家賃滞納で住居も失うと、「うちに住めばよい」と言って住まいを提供して逃げられなくする。そうして返済が滞ると、「家族や友人にばらすぞ」などと暴力や言葉で脅しをかけ取り立てる。中には障害を持っていたり、貧困や虐待などを背景に、性売買するしか選択肢がない女性もたくさんいる。

 再び常滑市の事件に話を戻すと、彼女は死児を出産した後、マンションの自室に戻り赤ちゃんの遺体を浴室に置いたという。「現実を受け止めきれず、視界に入れたくないと思った。見えなくなればどこでも良かった」と供述している。その後、母親に相談しようと実家へと向かったが、家族と顔を合わせたら「怒られるのでは……」と思って話せなかったという。そもそも相談できる人がどこにもなかったから、ここまできてしまったのだ。

 彼女は赤ちゃんを実家の花壇に埋める際、くるんでいたタオルを取ることができず、顔も見られず、「私でごめんね……育ててあげられなくてごめんね……」と罪悪感を覚えたという。直視できないというのは、その現実の重さを感じていたからではないだろうか。

 裁判官は「出産した時、自分の部屋に戻った時、実家に行った時……やり直す機会はいくらでもあった。目の前の現実を見たくない気持ちは分からなくもないが、流されすぎではないか」「心配なのはこれから。また状況に流されて楽な方を選んでしまうのではないか?」と問いかけたという。

 私は、彼女が「流された」「楽な方を選んだ」とは思えない。彼女は一人で耐えること、自分だけで問題解決することを選ばされた。それしか選択肢がなく、ずっと一人で抱えてきたのではないか。女性を貧困に陥らせて、一人ぼっちにさせて性売買に追いやり、心身を傷つけて、今回のように犯罪者にする。そういう社会構造がこの国にはある。むしろ何も考えていないのは、彼女を妊娠させた男だが、その責任が問われることはない。

女性を妊娠させ、孤立させた社会の闇

 性売買をする女性たちは、毎日複数の男性たちからレイプされ続けるような状況の中で生きている。金にものを言わせた性行為は、一番簡単な支配方法なので、買春者はここぞとばかりに無理な要求をつきつける。「生」(コンドームなどを使わない性交)や「中出し」(生挿入のまま膣内射精すること)などはその典型例だ。

 裁判官は「風俗店で避妊をせずに妊娠した」と言う。しかし性売買の現場を見ると、妊娠経験のない人のほうが少ないのではないかと思うほど、中絶や妊娠出産を繰り返している女性は多い。それも1度や2度ではない――といううこともよくある。

 性売買によって妊娠しても、誰にも相談できずにいる女性は多い。経済的な理由で病院にも行けない。そうして妊娠したことを受け止められないまま、路上で出産に至る女性が多いことも私たちは知っている。妊娠について正しい知識を教わる機会のないまま性搾取されていたり、避妊薬が買えなくて悩んでいたりする、そんな女性たちに「ピルをやるから中出しさせろ」と言ってレイプする男性もいるが、彼女たちはむしろそのことに感謝してしまうほど孤立している。

 出産したての赤ちゃんを施設に預け、路上に戻って来て性売買をしている女性と出会うこともある。借金があるから、家賃を払わないといけないから、男に渡さないといけないから、それしか自分にはできることがないから――と、すぐに戻ってくる。男たちも気にしないどころか、妊婦風俗や母乳風俗で働かせる。お腹の大きい妊婦をレイプしたり、母乳を飲んだり、それすら売り物になるのが今の日本社会だ。

 確かに日本社会は、売春防止法でいわゆる「本番行為」を禁止している。しかしそれは建前であり、たくさんの女性が性売買で妊娠している。買春者のほうも、責任を問われないことを知っているから「生」「中出し」をする。スカウトなどの斡旋者や斡旋業者の責任も問われない。勝手に女性が「本番」をしたのだと言い逃れし、自分たちは知らなかったと被害者面できるようになっている。

 それを警察も司法もわかっていて、女性だけが批判されたり処罰されたりすることが繰り返されている。売春防止法の「勧誘罪」でも、捕まるのは常に女性だけである。私はある警察官から「警察は女性を捕まえることしかできない。だから、あなたたち支援者の活動に頼るしかない」と、はっきり言われたこともある。

 そうして、似たような事件は今も全国で繰り返し起きている。

 23年1月、大阪市で住居不定・風俗店従業員の33歳の女が、路上で出産した女児の遺体をかばんに入れてコインロッカーに遺棄したとして逮捕、起訴された。彼女はビジネスホテルを転々としつつ毎月約35万円の給料をホストクラブで使い、交際していたホストにも借金があった。これまでに死産を含めて12回出産し、子どもを施設に預けているが、今回は家がなく保険証も切れていて病院に行けなかったという。

 札幌でも、風俗店で妊娠した女性が子どもを遺棄する事件があった。この女性は22年5月に札幌市内のホテルで赤ちゃんを出産し、直後に湯を張った浴槽に沈めて窒息死させたうえ、遺体をクーラーボックスに入れてコインロッカーに放置。殺人と死体遺棄の罪に問われ、懲役5年の実刑判決が出た。彼女の弁護団は「風俗店で男性客に無理やり性行為をされ妊娠。生まれた赤ちゃんを目の当たりにして混乱し、極度に疲弊した状態で、自分をコントロールする能力が低下していた」「ADHDグレーゾーンなどの被告の知的能力の影響で誰にも相談できずにいた」と主張しているそうだ。

 これ以上、こうした悲劇を繰り返さないためには、性売買に関わる女性に自己責任を押し付けるのではなく、背景にある性搾取の構造を理解して、それらを変えるよう行動することである。まずは買春者や業者を処罰する法律などを整備し、性売買せざるを得ない状況にある女性たちにそこから抜け出すための具体的な選択肢を提示して、関係を作り、支えることが必要だ。


Colaboの活動がどうゆうものであるのかが理解いただけるのではないだろうか。


日本の「家族」に何が? 

2023年08月05日 | 事件

“札幌遺体切断事件”の衝撃 家庭内で噴出する猟奇的で残虐な事件

AERAdot 2023/08/02

北原みのり

 

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、家庭で起きる猟奇的な「家族の事件」について。

 

 女友だちが青ざめてこんな話をしてくれた。

 元カレの妻、という人からある日LINEにメッセージが入っていた。元カレのアカウントからである。

「○○の妻です。あなたのことは○○から聞いてます」

 あまりに怖くてすぐにブロックしたそうだが、それでも不安が募っているという。彼女がその男と恋愛関係にあったのはもう何年も前、男が結婚する前のことだ。ところが男が半年前に結婚してから、週に数度のペースで男からLINEが送られてくるようになった。内容はほぼ全て、妻にフライパンで殴られている、後頭部を蹴られている、ナイフを突きつけられている、炎天下のベランダに出されている、食事を与えられない……という虐待の記録である。1度はナイフを突きつける妻の手を払ったところ「骨が折れた」と大騒ぎになり(折れていなかった)、警察に通報されたこともあったという。

 どこまでが本当のことかは分からないが、朗らかで誰にも優しく(そしてとても優柔不断)、人気者の男だったはずが突然会社を辞めたり、昔からの人間関係を次々に切ったりするなど、悪い方向に変化して結婚生活に問題があるのは明らかだった。もちろん彼女は友人として「結婚を終わらせるしかない」とアドバイスをし続けたのだが、その度に彼は「彼女は間違っていない。彼女は可哀想なんだ。お前みたいな強い女には分からない。彼女は1人では生きられない。可哀想なんだ」とだいぶ失礼な方法で妻をかばい、「それは虐待だよ、逃げるしかないんだよ」とこちらが言い立てるほど、妻からの洗脳が深まり固定化していく……というような状況だったという。

「友だちとも家族とも縁が切れてる状態だから、何年後とかに、○○区の民家で白骨死体が発見とかいうニュースにならないか、心配なんですよね」

 いつか生死に関わる事件に発展してしまうのではないかと不安だが、何もできることもないですよね……と彼女は言った。

 事件の多くは家庭内で起きている。

 性暴力の多くも家庭内で起きている。

 家族というのは、底なしに暴力的になれるものだということを私たちは様々な事件から知ってはいるはずだが、それにしても、最近の日本で起きている「家族の事件」というものは、もはや乱世の世、羅生門ばりの凄まじさを見せているようにすら思う。

 6歳の子を母親や叔父ら家族4人が殺し、スーツケースで遺棄したとされる神戸の事件は、加害者の残虐性が際立っていて言葉を失うあまりだったが、感想を述べることすらためらわれるレベルで想像の限界を超える猟奇・残虐・暴力性の高い事件が家庭内で噴出している。

 また今年3月には、大津地裁で、57歳の女性が同居中の25歳男性に食事を与えず、大やけどを負わせるなどして死亡させた事件の判決があった。共犯者は21歳の彼女自身の息子で、殺されたのは女性のボーイフレンドだったという。彼女には他にも別の3人の同居男性に対する傷害罪もある。口に食パンを詰め込み窒息させるなどして、脳に障害が残ったという記録もある。私はこの事件が気になって、加害者の実家があった広島まで行くなど個人的に調べていたのだけれど、これほどの猟奇的な事件ですらワイドショーや全国紙が深く掘り下げないほど、今の日本はこんな猟奇的で残虐な家族内事件に溢れているということなのかもしれない。

 歌舞伎役者の猿之助被告の両親に対する自殺幇助罪についても事件の解明が待たれる……と、一応「定型」の言葉を使ってみるが、「事件の解明が待たれる」などということなどあるのだろうか……とどこかで諦めるしかないのが、家族内事件である。家族関係があるからこそ、日常を共にする家族だからこそ加速化される暴力。狂気を含み、猟奇的ともいえるあまりに内省的な思考は、なぜ家族内で熟成されてしまうのだろうか……ということを社会が思考しなければ、このような家庭内の事件はなくなることはないのかもしれない。

 家族内事件、その極めつきが、今、世間をにぎわしている「木原事件」と「札幌首狩り家族事件」だろう。どちらも「週刊文春」のタイトルから取ったものだけれど、文春の身も蓋もないタイトルには目が離せない。「首狩り家族」の文字を見たときは目を疑ったが、殺人の送り迎えをするような父親、切った首を自宅に持ち帰ったことを認識していたという母親など、いったいここに至るまでにどのような会話が、どのようになされていたのか想像を絶するものがある。ただこの事件、単純な「猟奇」というよりは、男性から暴行を受けたという話が一部報じられている。もし事実だとするならば、精神科医であり、患者から信頼されていたという父親が、医療にも法にも頼らず、つまり一切の公助を頼らず、家族だけで、つまり究極の自助で解決をしようとした点が、時代を象徴するようにも感じられる。なぜそこまで絶望できたのか、極端の選択を選ぶまでに何があったのか。

 また木原官房副長官の妻の前夫の死にまつわる事件=文春によれば「木原事件」は、週を重ねるごとに、記者自身も想定していた域を超えた凄まじい内容になっている。自殺として処理された前夫の事件に「事件性がある」と再調査が行われた際、妻が重要参考人として警察に呼ばれたこと、結果的に「事件性がない」と警察庁長官が発表したが、そのことに「自殺を示す証拠はない」「事件性がある」と真っ向から反論をはじめた元捜査員の登場など、目が離せない状況だ。現職の官房副長官が「巻き込まれた」事件が今後どのように発展するのか分からないが、これも結局は家族の話である。家族の話であり、男女の話であり、合理的な判断や理屈を超えた「家族の事件」である。

 すごい時代を生きていると思う。結婚は愛の象徴のように語られ、家族愛こそが正義・善であるかのようにうたわれ、敵は家族の外にあるかのように喧伝される社会で、家族の中で起きる殺意、暴行、虐待はエスカレートしているようだ。何年に1度起きるか起きないか、日本中が注目するレベルの衝撃度の高い猟奇的な事件がここまで続くと、これはもう「日本社会」の問題でしかない。日本の家族に何が起きているのか。それこそ、「真相の解明が待たれる」。


ワールドカップ女子サッカー決勝トーナメント、日本対ノールウェー戦が今まさに行われている。がんばれ!見たいけどテレビなし。勝ちました!!ベスト8です。この時間、誰も訪問者なしですか・・・

急に寒くなった。今日も22℃止まり。


雨宮処凛がゆく!15年前、なぜ船は沈んだのか〜

2023年08月04日 | 事件

『黒い海 船は突然、深海へ消えた』

 マガジン9 
   第644回:15年前、なぜ船は沈んだのか〜『黒い海 船は突然、深海へ消えた』の巻(雨宮処凛) | マガジン9 (maga9.jp)

 重度障害の当事者である市川沙央さんが小説ハンチバックで芥川賞を受賞したことが大きな注目を集めているが(まだ読んでない。読みたい)、この5月に第54回大宅壮一ノンフィクション賞を、そして7月に本田靖春ノンフィクション賞を受賞した『黒い海 船は突然、深海へ消えた』がすごい。

 著者は伊澤理江さんで本作がデビュー作。しかし、デビュー作とは信じがたいほど丹念な調査報道によって未解決事件の闇を少しずつ暴いていく。

 本書が取り上げるのは、2008年に起きたある海難事故。

 太平洋上で碇泊中の中型漁船が、突如として沈没。17人もが命を落としたのだ。が、現場は「沈みようがない状況」だったという。

 犠牲者の数から言っても大事故。しかし、あなたはこの事故を覚えているだろうか。リーマンショックや秋葉原無差別殺傷事件、そして年末には年越し派遣村のあった年に起きた事件を、私はまったく覚えていなかった。いや、覚えていないどころか、最初から知らなかったのだろう。一報を耳にした記憶もないのだ。

 この、「多くの人の記憶にない」ということも、奇妙な事故の重要なキーワードである。

 事故が起きたのは、千葉県銚子市沖の洋上。犬吠埼から東へ約350キロという太平洋の真っ只中。

 2008年6月23日。この日、第58寿和丸は「パラ泊」中だった。「パラ泊」とはパラシュート・アンカーを使った漂泊のことで、船体は安定し、安全性が高いものだという。この日の波は高かったものの海はさほど荒れていたわけではなく、20人の船員たちは束の間の休息を楽しんでいた。

 しかし、午後1時を過ぎた頃、右舷に「ドスン」という衝撃が走る。7〜8秒おいて「ドスッ」「バキッ」という二度目の衝撃。波で傾いたのであれば、傾きは間もなく戻るそうだ。が、船体は戻ることなく急激に傾き、2度の衝撃からわずか1〜2分で転覆。

 海に投げ出された者もいれば、船内に残された者もいた。

 20人のうち、助かったのはわずか3人。その時、船のどこにいたかというわずかな違いが生死を分ける結果となった。船とともに沈まずとも、海に投げ出されては長くは持たない。偶然、浮きなどにつかまり、小型ボートに辿り着いた3人だけが奇跡的に助かった。現場からは4人の遺体が回収され、行方不明者は13人。船は深海5000メートルに沈んだ。

 それから、3年。やっと公表された調査報告書に、生存者や関係者は大いなる違和感を抱いたという。

 事故原因が「大波」によるものだとされていたからだ。

 しかし、波が原因で、これほど急激に船が沈むことはないという。また、生存者たちは誰もが「2度の衝撃」をはっきり覚え、証言していた。しかし、報告書ではそれが重視されることはなかった。

 何より重要だったのは、生存者たちだけでなく、救助にあたった僚船(同じ船団の船)の乗組員も目撃した「大量の黒い油」だ。

 海に投げ出された生存者は、溺れかけながら油の混じった海水を飲み、髪も体も油まみれだったという。なんとか小型ボートに乗り、ボートにあったタオルで顔や体を拭くと、布は油で真っ黒になったそうだ。

 それだけではない。僚船で救助にあたった乗組員は、海に浮いている数人を引き上げたが、海は油で真っ黒。引き上げた人たちの体も油まみれで、滑ってしょうがないことから4人がかりで引き上げたという。すぐに人工呼吸などをしたが、息を吹き返すことはなかった。

 しかし、報告書では油の量はほんのわずかなものとされているのだ。

 著者がこの件を知ったのは、偶然のことだった。別の取材をする中でたまたま耳にしたのだ。しかし、まるで何かに導かれるかのように猛然と取材を進めていく。

 なぜ、いつ漁を再開してもおかしくない状況の船が水深5000メートルに転覆したのか。135トン、全長48メートルの船体をひっくり返すような波や風ではなく、沈みようがない状況だったのに、なぜ悲劇は起きたのか。

 事故を調べていくうちに、第58寿和丸と同様の「謎の事故」は、世界各地で起きていることがわかってくる。しかし、取材すればするほどに著者の前にはさまざまな壁が立ちはだかる。なぜなら、それは軍事機密に触れることだからだ。

 詳しくは本書を読んでほしいが、読んでいて思い出したのは、この事故の7年前である2001年に起きた愛媛県立宇和島水産高校の漁業実習船「えひめ丸」の事故だ

 本書にも、この事故についての記述が登場する。

 ハワイ近海の太平洋上を航海中に、船体に轟いた2度の衝撃。そこから沈没まで、わずか5分。乗組員35人のうち、助かったのは26人。8人の遺体が船内から見つかり、一人は現在も行方不明。

 えひめ丸乗組員の命を奪ったのは、海中から急浮上してきた米国海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」だった。事故当時、海面には油が漂い、救命ボートに逃れた生徒や船員らも油で汚れていたという。

 「資料を読み込めば読み込むほど、沈没に至る状況が第58寿和丸とそっくりだ。新たな取材の扉が開いたような気がした。そして、膨大な資料をさらに精読し、私は確信を持ち始めた」

 著者はこのように書いている。

 ひとつの漁船事故から浮かび上がる、海を舞台にした各国の壮絶な覇権争い。

 15年前の事故が今、問い直されている。


1985年 ( 昭和 60年) 8月12日の日航ジャンボ機123便事件を思い出させる。もうじき38年である。これも「軍事機密」のひとつとしてあやふやにされているのだろう。

今日は朝から雨の予報であったのだが、7時からの雨が8時になり、10時になり14時になり、今16時、雨音を立てて降ってきたので安堵している。