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「老害化前に集団自決」発言で考える世代間対立 標的になるのは 貧困の高齢者

2023年03月31日 | 社会・経済

AERAdot 2023/03/31

筆者:渡辺豪

日本の高齢者の就業率は先進国の中で高水準にあり、シニアの人たちの労働力抜きには日本経済は成り立たない状況になっている。農業を支えるのも高齢者だ。

 米イェール大学に在籍する経済学者、成田悠輔さんの「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹をすればいい」との発言が物議を醸した。

高齢者は社会のお荷物なのか。不毛な世代間対立の根を断つ必要がある。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。

* * *

 日本社会では以前から高齢者への風当たりが強い。高齢者が問題を起こせば「老害」という批判が飛び交い、「シルバー民主主義」という用語は選挙のたびに使われている。超高齢社会が顕在化するにつれ、高齢者は「お荷物」あるいは「優遇されている」という認識が浸透しているようにも感じられるが、実際はどうなのだろう。

「公的年金制度が賦課方式によって運用されている以上、そうした議論もあると思います。ただ、優遇されているという話を高齢者一般に当てはめるのは少し無理があるかもしれません。現在、シニアの方々の仕事なしには日本経済は成り立たない状況になっているからです」

 こう話すのは、高齢者の就労に詳しいリクルートワークス研究所の坂本貴志研究員だ。

 日本の高齢者の就業率は主要国の中で韓国に次いで高い水準にある。

「とりわけ65~69歳の過半数、70~74歳の3分の1が働いている日本の状況は特筆すべきものであり、高齢になるとほとんどが働かない欧米主要国とは全く異なります」(坂本さん)

 職種別で見ると、農林漁業で52%、清掃従事者のほぼ4割が65歳以上の高齢者で占められる。ほかにも居住施設・ビルなどの管理人や、輸送、建設、飲食などのサービス業でも2割前後が高齢者で占められている。

 そう言えば、昨年、首都圏の物件を請け負う建設会社を取材した際、社長が「建設の現場は今、本当に若手が少ないんです」と吐露していた。ファッションブランドが軒を連ねる都心の通りを明け方に歩くと、店舗の内外にいるのは高齢の清掃員ばかりで日中とのギャップに戸惑ったこともある。タクシー運転手も高齢者が目立つ。地方では人手不足や高齢化はさらに深刻で、学校や施設の送迎バスの運行や配送などのサービス業も高齢者が不可欠な担い手になっているという。

■人手不足の業界・職種ほど高齢化が進む傾向にある

 少子化が進む日本社会では、もはや高齢者抜きには維持できない職場が増えているのが実情なのだ。だとしても、なぜここまで高齢者の就労が増えているのか。高齢者側には経済的な事情がある、と坂本さんは言う。

「年金支給額も減るなか、働き続けることで受給年齢を遅らせたり、家計の足しにしたりする人が増えています」

 企業側は人手確保が必須。若い人を優先して採用する企業が多いなか、人手不足の業界や職種ほど高齢化が進む傾向にあるという。国が近年、高齢者就労を促す政策を進めているのも、少子化による人手不足や年金支給年齢の引き上げが背景にある。かといって条件の良くない職場を生活の苦しい高齢者に押し付ける構図を定着させるべきではない、と坂本さんは唱える。

「市場原理に委ねていればそれで良いと考えるのは適切ではありません。最低賃金の引き上げなど政策的なバックアップが必要です。高齢の方に無理なく社会に貢献してもらえるようインセンティブ付けを図るとともに、年をとっても働かれている人たちの権利を守っていくことが大切です。日本経済は今、そういう局面にあります」

 2022年の自殺者数は中高年の男性で大幅に増えた。昨年11月までの暫定値では、50代が2604人(前年同期比12・9%増)、80代以上では1425人(同16・8%増)だった。過去の調査では、生活保護を利用している高齢者の自殺リスクが高いとの調査結果も報告されている。生活困窮者の支援活動に取り組む一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事がかつて接した人の中にも、あえて病気を治療せずに「緩慢な死」を選ぶ高齢者がいたという。

「コロナ禍でもリーマン・ショックの時もそうですが、日本経済を支えるど真ん中の世代が生活に困窮している状況に対しては、社会全体としてなんとかしないといけないというコンセンサスを得やすい半面、高齢者の貧困は見過ごされがちなのは否めません」

 物価高騰は生活保護を受けている世帯や、少額の年金で生活している高齢者の暮らしを直撃している。生活保護を利用している70代の女性から「ガス代がかさむため温かいものを食べるのをあきらめた」と聞いて稲葉さんはショックを受けたという。

「団塊の世代は裕福と思われがちですが、生活保護を利用している世帯の過半数が高齢者世帯で、うち9割が単身高齢者です。背景には低年金、無年金の問題があって、景気動向にかかわらず増え続けています」

■シルバー民主主義の批判は格差無視する乱暴な議論

 都内で路上生活をしている人の平均年齢は65歳を超え、70~80代の路上生活者も珍しくない。90代で野宿している人もいるという。

 稲葉さんは、若者の投票率アップを呼び掛けるキャンペーンで「シルバー民主主義」という言葉が用いられることに異議を唱えてきた。有権者人口が多く、投票率も高い高齢者層向けの政策が優先され、若年層の声が政治に反映されにくいことを指す言葉だ。

「子どもの貧困問題に真摯に取り組む人たちも、若者の投票率アップを促すためにあえて『シルバー民主主義』という言葉を使って現状を批判するんですが、当然ながら裕福な高齢者もいれば貧困の高齢者もいて、政策に求めるものは全く違う。同じ世代の中でも貧富の差やジェンダーの格差が大きいことを無視して、世代全体を一括りにして語るのはあまりに乱暴な議論です」

 稲葉さんはこう続ける。

「貧困は世代を問わず拡大しています。今の日本社会で富の再分配がきちんと行われていないことが問題なのに、世代間対立をあおることで論点がずらされてしまうのを懸念しています」

 少子高齢化で日本社会はもう持たないんじゃないか。そんな不安心理に付け入る形で、若者と高齢者を分断していく言説は今に始まったことではない。「老人はみんな死ねばいい」といった発言をする人は昔からいた。ただ、たいていは居酒屋談議や暴言を売りにしているお笑いタレントだった。今回の成田さんの「集団自決」発言に、稲葉さんは強い危機感を抱いたという。

「有名大学の学者が発言することで学問的に裏打ちされた主張であるかのようなイメージが社会に広がることを危惧しています。一見、高齢者全体を批判しているように聞こえますが、医療や福祉が社会全体の負担になっているという言説の中で使われる言葉ですから、実際に標的になっているのは貧困の高齢者です」

 これは「優生思想」につながる発言だと稲葉さんは警鐘を鳴らす。

「今回は高齢者がターゲットですが、次は障害者だったり、生活保護利用者だったり、と際限なく広がっていくでしょう。結局、私たちの社会全体の根幹を崩す議論にしかなりません」

■少子化政策の不備が世代間対立にすり替えられ

 かつて留学していたフランスの年金制度改革の反対運動をめぐる研究の中で、日本国内の世代間対立の根深さに気づかされた、と話すのは科学史や社会思想史が専門の東京大学の隠岐さや香教授だ。

 フランスでは今年に入ってマクロン政権が年金改革法案を発表。1月にはフランス全土で100万人以上が参加する反対デモがあった。とりわけ不評なのは、現在62歳となっている年金支給開始年齢を64歳に引き上げる改革案だ。現地報道で20代とおぼしき男子学生が「今この改革に反対しておかないと、私たちが手に入れてきたさまざまな権利が次々にないがしろにされてしまう」と訴えていた。

 その動画を見た隠岐さんは、「私たちは完全に分断されていた」と悟ったという。日本で厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられると決まった00年当時の自身の経験と重ね、隠岐さんはこう振り返る。

「当時20代だった私は自分の将来への不安で頭がいっぱいで、年金問題には全く無関心でした。実際には高齢者の貧困率が高いことも知らず、『若者は苦しんでいるが、上の世代は恵まれている』という感情すら持っていました」

 日本の高齢者の貧困率は女性が22・8%で男性が16・4%。いずれもOECD(経済協力開発機構)平均を上回る。日本の超高齢化社会は少子化政策の失敗の帰結でもある。

 本来、少子化政策の不備を指摘しなければならないのにもかかわらず、問題の本質が「高齢者優遇」といった世代間対立にすり替えられる状況はなぜ生じたのか。年金問題を「労働者の権利保障の問題」と捉えるフランスでは、シルバー民主主義といった言葉を聞いたことがない、と隠岐さんは言う。

「フランスで年金改革に反対している人たちには、文化的な生活を維持するための労働者の権利は、いったん手放すと政府によってどんどん奪われていくという危機感が背景にあります。しかし、日本では『労働者の権利』という話を持ち出すと、『左翼』とたたかれるような言論空間があります。こうした分断を乗り越え、私たちは世代間対立という奇妙な対立の構図に落とし込められていることに気づくべきです」

 隠岐さんは成田さんの言説について、従来の「男の子的な文化」との親和性を感じるという。

「『有害な男性性』という概念がフェミニズムにあります。男性たち自身が子どもの頃から『男らしく』しなさいと言われて育ち、こうあるべきという規範意識にとらわれた結果、暴力的になったり、弱いものと自分を区別し、かつ相手を支配しないと自分を保てないと感じたりする意識です。そういう自己認識はエリート校など競争的な環境にいた人ほど持ちやすい。成田さんの言葉に肯定的に反応している層が今もそうだとすれば心配です」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2023年4月3日号


80年も生きてきて「死」を選ぶという構図が悲しい。

仏での年金改悪に対する怒りは世代を超え200万人がデモ・ストライキに参加していると言います。その中には高校や大学も参加しています。

午前中の雨でかなり融けました。

せっせと雪割をしていたハウス内はなくなりました。
沼には複数のカモさんが来ました。

よくわからない、見えないけど。
覆っていた氷もあとわずか。

福寿草も出てきました。


コラボバスカフェ再開を 都庁前 市民ら抗議行動

2023年03月30日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」2023年3月30日

 若年女性支援事業を東京都から受託している一般社団法人Colabo(コラボ、仁藤夢乃代表)への妨害が激化し、都がコラボの事業「バスカフェ」の休止などを要請した問題で、市民らは29日、再開を求め、新宿区の都庁脇で抗議行動をしました。

 午後7時すぎ。参加者が掲げる「東京都は少女たちの居場所を守れ」と書かれたプラカードが次々に増えていきました。リレートークでは「バスカフェを開けないまま、もう3週間たっている。少女たちがおなかをすかせていないか、体調を崩していないか」と心配する声もありました。

 バスカフェは、東京・新宿の繁華街に止めたバスを拠点に、10代の少女たちに食料や居場所を提供し、つながりをつくる事業。仁藤代表のSNSによると、29日の再開を目指して都と書面や面談での交渉を続けてきましたが、28日の午後6時すぎに都から改めて「休止」の連絡があったとしています。前回予定だった22日も開催できませんでした。


「事業」を再開できるよう「都」は支援を!

明日、留萌本線営業終了です。
そんなわけで、乗ってきました。
石狩沼田から留萌終点まで。

沼田駅。

ホームに・・・

汽車が来ます。

車内は暑く、温度計は30℃を超えています。
昔ながらの車両は窓が開きます。
誰か開けてくれ~!

開いているように見えますが二重窓の内側です。
終着、留萌に着きました。

沿線には住民が「ありがとう」の横断幕を広げたり、小旗で見送る姿が・・・
この車両は折り返し運転で、すでに駅内は長蛇の列。
丁度お昼なので立ち喰いそばをと思っていたのですが、こちらも長蛇の列。
写真だけ撮って帰ってきました。

明日はラストラン。
さまざまな催しなどが企画されているようです。


宗教票が日本を破壊する!

2023年03月29日 | 社会・経済
 
統一地方選「都道府県議の300人以上が統一教会と関わりがあり、その8割が自民党」という事実をどう見るか
 
集英社オンライン 2023.03.28
 
 安倍晋三元首相暗殺を機に、統一教会が自民党に深く食い込んでいる実態が明らかになった。すでにこの問題の報道は下火になっているが、宗教社会学者・橋爪大三郎著『日本のカルトと自民党』では、カルトの正体を見極め、もう一度原点に立ち返って政治と宗教の関係を考え直すべきだと説く。数十年にわたって統一教会をはじめカルトの実態を取材し続けてきたジャーナリスト・有田芳生氏と橋爪氏との対談をお届けする。

日本に欠けているカルト教育

有田 橋爪先生とお会いするのは28年ぶりです。1995年3月20日に地下鉄サリン事件が起きて、日本の報道はオウム事件一色になりましたが、そのテレビの仕事で橋爪先生と一度だけ同席する機会がありました。私のように現場をドタバタ回っている人間から見ると、蓄積された学問に基づいての事件分析は非常に印象深かった記憶があります。

橋爪 前回も今回も大きな事件があって、お会いすることがいいのか悪いのか(笑)。でもお話を聞けるチャンスを心待ちにしておりました。

有田 今度の本は、生長の家、日本会議、統一教会についての分析だと伺っていましたが、実はゲラを読んでびっくりいたしました。序論で書かれた「カルト原論」、この内容が素晴らしかった。カルトとは何か、なぜ危険なのか、それが歴史的な検証を含めて非常にわかりやすい文章で端的にまとめられている。31年前の桜田淳子さんなどが参加した合同結婚式のときの統一教会の報道、そして28年前の地下鉄サリン事件の報道、そこから日本の社会は何を学んだのかと今でも強く疑問に思っているんです。オウム事件を機にフランスでは、2001年に反セクト法というカルト問題に対処する法律ができました。それをきっかけにフランスは中学生レベルからカルト教育を学ぶ社会になっていったと思います。

ところが、日本は今もそれがないままに来ている。じゃあ、具体的に日本でのカルト教育にはどういうテキストが必要だろうかと考えたときに、橋爪先生の今回のカルト原論を読んでまさにこれだと思いました。カルトというものをわかりやすく国民に知らしめる。特に若い人たちに知ってもらう。こういう本は私が知る限り皆無に等しかった。この内容こそ中学生レベルから学ばなければいけない。そのためにも学校、図書館、そして各家庭にもぜひ普及してもらって、多くの人に読んでほしいというのが、私の率直な感想です。そのくらい衝撃的でした。

橋爪 大変意義深く受け止めていただいて感謝です。宗教絡みの事件が起きると、日本人はみんな首をすくめてしまうんです。巻き込まれずに通り過ぎればいいやと。なぜかといえば、しっかり信仰を持って、信仰を選んでいる人が少ないからです。宗教と距離を置いて、最初からうさんくさいものだと思っている。これはこれで問題です。事件を起こした宗教とそうでない宗教をきちんと区別して、問題をピックアップするべきなのに、宗教だからいけないという結論で、いい大人が思考停止になってしまう。それは日本のためにも困ったことだし、本人のためにもならない。

それでわかりやすくウイルスに譬えた。ウイルスはどこにでもいて根絶はできないが、その中に伝染性が高く害毒をもたらすウイルスがいる。それがカルトである。その悪さをする部分を何とかすればいい。ワクチンもあるし、いろいろな対処法がある。宗教も同じだということです。

 
橋爪大三郎氏
橋爪大三郎氏© 集英社オンライン 提供

有田 はい。しかし日本の場合、ワクチンどころか何も対処策が講じられていない。オウム事件をきっかけに、確かに宗教法人法の一部は改正されましたが、創価学会をはじめ既成の宗教団体の強い反発にあって、結果的に新しい法律的な進展はほとんどなかった。今回も、統一教会問題で、昨年末に被害者救済法という新しい法律ができましたが、やはり創価学会の方々の反発もあって、ほとんど効果のない中途半端なものになっています。

犯罪以外、宗教は法律で取り締まれない

橋爪 問題を起こす宗教が出てきたときにどうすればいいか。法に触れて犯罪行為を行っていれば、それは検察、司法の問題です。既に存在する法律を根拠にして、外形的にこれが違法だ、あれは犯罪だとやるしかない。でも、カルトはそういうふうに対応できるものだろうか。

役人は、刑法ではなく別の法律によって変な宗教を取り締まろうという発想になりがちですが、これは間違い。変な宗教に対しては、それを見つけて、拒否して、社会から排除するのは、健全な良識を持った市民の常識。これが正しい対処の方法です。一方で、人間には信仰の自由がありますから、「ちょっと変わっていても私はいいと思うので信じます」という人がいても止めることは難しいし、止めなくていいと思う。犯罪にならないなら、少し変な宗教を信じるのは自由の範囲です。その変さを社会が認識して、一握りの人にとどまっていれば、実害はそんなにない。

私が問題だと思うのは、役人が法律で何とかしてくれるんじゃないかと、普通の市民はぼんやりして、態度をはっきりさせないでもいいと思っている点です。だから態度をはっきりさせるために、この本を書いた。奇妙な宗教の奇妙な点はここですよと具体的に言う。統一教会はここが変です、日本会議はここが変ですと指摘すれば、態度が決まりますね。病原性の高いウイルスに対しては、普通の市民が見識をもって見極め、はっきり拒絶する態度を取る。まずはそれが必要です。

有田 なるほど。オウム事件のあと、大江健三郎さんが『宙返り』という小説を書いたのですが、その中に、ユダヤ教のメシアの話がありました。その人が宙返り、つまり転向してイスラム教徒になるわけですが、そこまで変節すれば信者たちは逃げてしまうだろうと思っていたら、イスラム教としてトルコからアジアへと広がっていったと大江さんが書いていらした。今の先生のお話を聞いて、人間の心に関わる問題というのは、法律で抑えることができないということがひとつの私の感想でした。

もうひとつ頭に浮かんだのは、安倍晋三元首相銃撃事件を起こした山上徹也被告のお母様のことです。テレビのコメンテーター、弁護士の中に、お母さんそんな宗教はもう脱会しなさいと言う人たちがいるんです。もちろん統一教会には霊感商法とか問題はありますが、そのお母様は、自分の夫が自殺をし、さらには長男が病気を患って、心の救いを求めて入信したわけで、犯罪に加担しなければそのこと自体は自由だと思うんです。ですから、他者がその信仰をやめろというのは、私にはとても違和感がありました。

橋爪 寄附をし過ぎたわけでしょう。もし寄附を強制しているとすれば、それは教団の問題であって、お母様の問題ではない。だから、何も言えないというのが日本国憲法の考え方だと思います。

創価学会-公明党の関係は憲法違反ではないのか

有田 その日本国憲法とのつながりで、創価学会と公明党の問題をどう考えるかをお聞きしたい。政教一致で創価学会を国教化するのは当然憲法違反であるという認識はありますが、政教分離という原則の中で、宗教活動がどこまで政治に関わっていいのか。これは統一教会問題での講演でものすごく頻繁に質問されることです。

橋爪 宗教団体と政府、特に選挙の関係は重要なこととして本にも書きました。選挙とは、国民、市民が政治的な意思決定を表明するほぼ唯一の機会で、主権者である国民の権利、そして義務です。その市民の投票の原則は、一人一人が自分の良心と見識と理性をもって、立候補している候補者の中でこの人がよいと思った人に投票する。無記名秘密投票なので、結果責任は問われない。しかし、投票の結果は全部自分に返ってきますから、最善の努力を尽くして、個別に投票するというのが正しいのです。これがゆるがせになったら、民主主義のミの字がもうない。

そこで、団体として組織票が存在してよいのかどうか。存在してよいのは職能に関するもの。医師とか農民とか漁業組合とかの業界団体、そういう人たちが選挙のときに利害を表明し、この候補に投票しようと申し合わせる。こういうことをしても民主主義はゆがまないのです。民主主義は市民社会の様々な利害や矛盾をいかに調整するかということですから、有権者が利害に基づいて投票するのは当然のことです。

じゃあ、何がいけないかというと、政治的な利害や政治的な決定に全く関係のない団体というのを使うのがよくない。今回のことで言うと、宗教団体です。宗教というのは、個々人が信仰を持ち、その信仰を深め合うために団体をつくっている。よい政治を望むのは自由ですが、宗教団体が政治をしてはいけない。それをすればもう宗教団体ではない。宗教団体が特定の候補者を応援したり投票することを指示したりすれば、それは即、民主主義にもとることになる。

共産党はどうか。共産党は政党です。だから、この候補者に投票しましょうと活動するのはいいと思います。共産党は政党だからです。でも、創価学会は政党じゃない。創価学会が政党をつくって、政治に関与している。これは共産党と似ているようですが、違うと思います。宗教団体が公明党をつくったという点が問題なのです。もしアメリカでこのようなことがあれば大スキャンダルですし、どこの国でも問題ですよ。

有田 すっきりして、よくわかりました。創価学会だけではなく、去年の参議院選挙では、統一教会が自民党の安倍晋三さんの秘書官をやっていた人に組織として票を集中したり、野党で言うと、立憲民主党を立正佼成会が組織として応援するという歴史がずっと続いてきています。そういうことは問題だと理解してよろしいわけですね。アメリカではスキャンダルになるということですが、何か法的な対処策はあるんですか。

橋爪 法律以前の問題で、それは市民の常識だと思います。でも、ここ数十年、福音派とかクリスチャンナショナリズムが出てきてから、その原則が少し揺らいでいます。共和党保守派に宗教組織票が投じられたり、ちょっと妙なことになっています。宗教がだんだん都市部で退潮していく中で、私たちは見捨てられている、アメリカが間違った方向に行っていると考える教会の人々が増えてきて、あたかも教会が組織した運動が特定候補を応援するような現象が出てきているんです。

有田 アメリカでも政教分離の原則が揺らいでいるんですね。日本では、もっと深刻です。創価学会や、ほかの宗教団体に対して、日本でどういうことをこれから進めていくことが必要だとお考えでしょうか。

橋爪 まず、創価学会には反省してもらって、公明党は少なくとも国会に代表を送らないようにする。昔、公明党が解散したとき、地方政治レベルでは実質公明党のままけれど、中央では新進党と合体して表に出ないというやり方を取りましたね。あの線でよいのです。大体、公明党は最初に参議院に進出したときに、衆議院じゃないからいいんだと言っていたはずですよ。参議院は良識の府で、そこに宗教代表がいるのは国民の健全な良識を反映している証だというようなことを言っていたんですから。

有田 そうです。公明党が1955年にはじめて政治に出てきたときは、地方議会でしたからね。その翌年に参議院選挙に出て当選して、そこからどんどん衆議院にまで進出していったことが問題点だということはよくわかります。

橋爪 だから、公明党、創価学会には見識や一貫した方針があるわけではない。そのときそのときに言い抜けをして、事実問題として政治勢力になってしまおうという考え方だったと疑われるわけですね。もしそうなら、日本の民主主義にとって大変よろしくない。

統一教会より深刻な日本会議の影響力

有田 もうひとつ、今度は日本会議のことを伺いたい。本の中でも指摘されていますが、日本会議が出している新憲法大綱と、安倍元首相が提唱していた自民党の憲法改正案がそっくりだということ。緊急事態条項や、家族保護条項の追加、憲法9条の見直しなど、安倍さんの考え方と日本会議の方針がぴったり一致しているんですね。私は長いこと統一教会を取材してきましたが、統一教会が日本の政治を動かしているという見方は過大評価だと思っています。むしろこの憲法改正案を見る限り、日本会議のほうが政治的な影響力は強いと思うのですが、いかがでしょうか。

 
有田芳生氏
有田芳生氏© 集英社オンライン 提供

橋爪 集票力、政治への影響力ということで言えば、一頃の日本会議のほうがずっと大きかったと思います。日本会議は、谷口雅春という宗教家が創始した生長の家が母体なのですが、復憲論、つまり帝国憲法に復帰しましょうというのが谷口さんの考え方。その谷口さんが引退して、政治運動の実務部隊が生長の家の事務局を原点にしたグループ、集票構造を作った。それが日本会議です。そこで反発を招きやすい「復憲」ではなく、改憲として、復憲案に近いことをバラバラと箇条で提案していく。このやり方が安倍さんの考えとぴったり一致したのだと思います。

有田 私もそう思います。第一次安倍政権で新しい教育基本法ができて、第10条に家庭教育というものが入った。それをてこにして、2012年12月に、熊本県が初めて家庭教育支援条例を制定し、さらに鹿児島、静岡でも同様の条例ができて全国各地に広がっていきました。だけど、その実態を調べてみると、この条例の創案者は、国際勝共連合の熊本県本部の責任者なんですよ。彼らは前から家庭教育支援条例をつくって、各家庭に道徳の時間をつくろうなどと提唱していた。そこだけを見ると、統一教会がすごい力で日本の政治を変えているように見えますが、私はそれを過大評価だと言っているんです。もともと生長の家のメンバーの高橋史朗さんなどは、1970年代から統一教会系の機関誌にも常連執筆者として出ていて、統一教会の提唱はその受け売りだと私は見ています。

橋爪 統一教会と生長の家、日本会議は、別系統ですから関係がないと言えば関係ないです。でも、戦術面で一致できるところはあって、もしかすると共同戦線を組んだのかもしれない。社青同と中核派みたいな感じですか。政治の世界は、一致できるところは一致して合同したほうがパワーが強くなるので、そういう論理は働くと思います。

有田 1985年当時、天皇奉祝運動が活発に行われているときに、この間お亡くなりになった一水会の鈴木邦男さんなどが、国際勝共連合、統一教会は愛国団体ではない、非常に極端な韓国ナショナリズムなのだと厳しく批判して、右翼団体の人たちが、天皇奉祝運動から勝共連合を追い出したことがありました。けれどこの30年間、ほとんど統一教会に対する監視の目がなくなっていたことで、最近ではまた統一教会の古参信者が、堂々と演説している。そういう意味で、この統一教会と日本会議、生長の家との政治的な関係など、先生の今度の本で理解が広がってくれれば、統一教会への監視の目もより強化されていくのかなと思います。

統一地方選挙を前にはっきりさせるべきこと

橋爪 統一教会の政治力を過大評価することはないという点は、おっしゃるとおりだと思いますが、その危険性を看過してはならないですよ。

統一教会は、ウイルスで言えば、生長の家や日本会議よりも毒性がずっと強いんです。ひとつは、メシアが現にいるという考え方です。メシアは政治権力より上にいるものです。統一教会の言い方だと、イエス・キリストがメシアとしてもう一回韓国人に生まれて、神の王国を地上で建設するという話でしょう。

有田 はい、信者はみんなそう信じています。

橋爪 つまり、信者は神ではなく、彼に従わなきゃいけない。これはもう普通のキリスト教ではなく、完全な権威主義的体制になるはずです。

聖書に即して言うと、神は完全ではない。神は世界の設計図を95%までアレンジするけれど、最後の5%は人間の努力だと言っている。つまり、人間のできることを最大限やっても、最後は神のおぼしめしで、努力してもうまくいかないことはあるし、努力しなくてもうまくいくことはある。これがキリスト教の普通の考え方です。

ところが統一教会に言わせると、うまくいかないのはサタンの罪に侵されているあなたが悪いということになる。その罪をあがなうには、どうすればいいか。うそをついてもいいから偽募金でお金を集めなさい、相手をだましてもいいから霊感商法でお金を集めなさい、ただ働きでも代議士の事務所に行って選挙を手伝いなさいなんですよ。そうやって根こそぎに人々のエネルギーとお金と資源、ありとあらゆるものを動員できる。

こうやってかき集めたエネルギーが、落ち目でエネルギー不足の自民党にとても役に立っている。この持ちつ持たれつです。取りあえずは、統一教会から自民党への一方的贈与です。一方的贈与は、贈与された側に義務感を生むんです。その借りをつくったお返しとして、講演したりメッセージを送ったりと、その団体に協力して信者を集めたり、教勢の拡大に手を貸している。私に言わせれば、統一教会は反社会的集団ですよ。

中には、何を間違えたか、政策協定まで個人的に結んでいる代議士もいる。これは国が乗っ取られる一歩手前とは言わないが、三歩か四歩手前ですよ。それなのに何の警戒もなしに危険な宗教団体と付き合っている。それが今の日本の政権与党です。これがどれだけ危険なことか、みなさんは理解しているんだろうかと、声を大にして言いたい。

 
<宗教票が日本を破壊する!>統一地方選「都道府県議の300人以上が統一教会と関わりがあり、その8割が自民党」という事実をどう見るか
<宗教票が日本を破壊する!>統一地方選「都道府県議の300人以上が統一教会と関わりがあり、その8割が自民党」という事実をどう見るか© 集英社オンライン 提供

有田 全く同感です。しかも、4月には統一地方選挙が全国で行われます。共同通信の調査では、昨年の11月の段階で、都道府県議の334人が統一教会と関わりがあって、その8割が自民党なんですよ。岸田文雄総理も、野党の追及があっても、建前的な答弁ばかりで、自民党の東京都連なんかは、候補者が多過ぎて調べようがないとか、神奈川県連も統一教会とは縁を切るという確認書を書かせてはいても、非常に及び腰なんですね。それだけ断ち切れない関係がもうできていると私は思っていますが。

橋爪 多分そうでしょう。ではどうするか。国会に責任があるのは、民主主義の原則からして理の当然のことですから、国会に対して市民が声を上げる。マスメディアが声を上げる。機会あるごとに声を上げる。そういうものなんだと思う国民が少しずつ増える。これがまず第一です。

有田 私もいろいろと働きかけてみます。

橋爪 お願いします。今度の選挙で何人立候補するか知りませんが、全員にマスメディアから、あなたは統一教会と関係ありますか、関係あるとしたら何と何かと聞く。関係ないと答えたら、もし当選した後でその事実が明らかになった場合は責任取れますかと、そういう質問状を作る。これを新聞社が個別にやると大変だから、理想的には、新聞協会が各社連名で統一の質問状を選挙前に作成して、立候補届出と同時に候補者全員に送るべきです。

有田 いい案だと思います。当選後に関係が明らかになったときは、約束通り責任を取ってもらう。

橋爪 過去のことは何食わぬ顔をしてしらばっくれても、今後は危ないから関係を断つしかない、リスクが大き過ぎると自民党議員が思えば、目的は果たせる。そうして市民もメディアも全力で日本の民主主義を守る。反社会的カルトに対するには、それしかないと思います。

構成=宮内千和子 写真=三好妙心(橋爪氏)、有田氏提供

*統一教会(世界基督教統一神霊協会)は、現在は、世界平和統一家庭連合と名前を変えています。新聞などは「旧統一教会」と表記しますが、本稿では歴史を尊重して、統一教会(Unification Church) と呼ぶことにします。


長い記事で・・・
統一地方選「都道府県議の300人以上が統一教会と関わりがあり」です。
見過ごすわけにはいきません。
「ヤシの実作戦」統一地方選2023 | ヤシノミ作戦 (yashino.me)
なども参考にしていただければ、と思います。


日本の高等教育費に向けた提言を発表 〜将来進学を希望する全ての高校生に希望を

2023年03月28日 | 生活

若者のミカタ〜ブラックバイト世代の君たちへ

大内裕和(武蔵大学人文学部教授)

Imidas連載コラム 2023/03/28

 入試シーズンもヤマ場を越え、新年度が近づいています。進学先が決まった皆さんは期待に胸を膨らませる一方、入学金や新生活の準備などさまざまにお金がかかる時期でもあり、そのことで悩んでいる人も少なくないでしょう。

 2023年3月8日、私は労働者福祉中央協議会(中央労福協)と共に、文部科学省の記者クラブで「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減へ向けての政策提言」、および「奨学金に関するアンケート調査の結果」について発表を行いました。というのも私は、高等教育にかかる費用負担の軽減に向けた中央労福協の取り組み「教育費負担軽減へ向けての研究会」で主査を任されているのです。

 中央労福協は15年度から奨学金問題を重点課題に位置づけ、さまざまな団体や関係者と連携し、世論喚起や政策・制度の改善に取り組んできました。その結果、17年度に給付型奨学金が創設され、20年度にスタートした「大学等における修学の支援に関する法律(大学等修学支援法)」では低所得者を対象に授業料減免や給付型奨学金が拡充されました。そこで、支援対象のさらなる拡大や教育費の負担軽減を目指し、支援法施行4年の見直し時期(23~24年)に大きな社会運動ができるよう準備を進めており、そのための政策提言が求められたのです。

 私が発表した「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減へ向けての政策提言」は7つの提言からなりますが、いずれも前提に社会的背景を論じているのが特徴です。その中でも「高等教育進学率80%時代にふさわしい教育費負担へ」という点が、今回の提言の重要なポイントです。

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 これまで高等教育の議論は、進学する人の割合を前提になされることが多かったと思います。実際、大学・短大への進学率は05年以降、最近まで50%台で推移していました。しかし、ここで「高等教育への進学率=約50%」と考えると大きな誤解が生じます。なぜなら、高校生が進学するのは大学と短大だけではないからです。

 高校生の進学先として4年制大学の次に大きな割合を占めているのは、専門学校(1976年に新たな学校制度として創設された専修学校のうち、後期中等教育の修了者を対象とする専門課程を置く教育機関)です。近年、専門学校への進学率は短大を大きく上回り、2021年度には24%にも達しています。

 専門学校も高等教育に入るの? と疑問に思う人もいるかも知れません。確かに以前は高等教育は大学を中心として捉えるのが一般的でした。しかし、専門学校をはじめとする非大学型の教育機関の増加につれて、中等教育(日本の場合は中学・高校)以後の多様な教育機関における「中等後教育」(post-secondary education)を、高等教育と呼ぶようになりました。先述した大学等修学支援法でも支援対象は「大学・短大・高等専門学校・専門学校に通う低所得世帯の学生」であり、これらの点から本提言でも専門学校は高等教育の一つとしています。

 とはいえ、大学・短大へ進学する約50%を高等教育進学率と捉え、それ以外は就職するものと勘違いしている人も少なくありません。今回の提言をまとめるうえで、さまざまな団体にヒアリングを行った際にも、そのような認識の人が多数いました。実際には高校卒業後に就職する人の割合は、21年には15.7%と2割を大きく下回っています。

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 こうした誤解は、多くの問題を生じさせます。高等教育の公的予算を増額させて学費を下げたり、給付型奨学金制度を拡充させたりといった提案をすると、「中学から高校へはほぼ全員が進学するけれど、高校から大学や短大へは進学しない人も大勢いるから、高等教育に税金を投入することは不公平を助長する」という意見をよく聞きます。しかし、そう主張する人の多くは、いまだに高卒生の半数は高等教育へ進学せず就職していると考えているのではないでしょうか。22年度の大学・短大への進学率は60.4%、専門学校を合わせた進学率は83.8%で、就職へ進む人は全体の2割未満という数字を知っていれば、「不公平を助長する」との考えは出てこないように思います。

 高等教育の進学率に対する誤解は、学費の議論にも影響します。例えば、高等教育への進学者がいる家庭の経済状況を議論の前提として示すのに、世帯収入の平均値や中央値が多く用いられます。この手法は約50%の大学・短大進学者のみを対象に捉えるなら、それなりの正当性があります。高校から大学や短大へ進学する人の出身世帯を見ると経済的に豊かな場合が多く、そういった家庭ばかりなら世帯収入の平均値や中央値を前提に学費の議論をするのは一定の合理性があるからです。

 しかし22年度の高等教育進学率83.8%を考えれば、世帯収入の平均値や中央値を学費議論の前提にするには大きな問題があることがおわかりでしょう。今の格差社会において8割以上が進学しているということは、中には世帯収入の平均値や中央値を大きく下回る、経済的に豊かでない世帯の出身者も多数いることが明らかだからです。

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 そこで先の「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減へ向けての政策提言」は、高等教育進学率80%時代を正面から見据えて作成しました。以下にご紹介しましょう。

提言1「大学・短大・専門学校の授業料を現在の半額とする」

 まず第一に挙げたのが、大学・短大・専門学校の授業料引き下げです。今の時代においては、平均所得未満の世帯出身者も多数、高等教育に進学しています。その状況を考えれば、現在の高等教育の私費負担が重過ぎることは明らかです。提言のポイントは、高等教育においても対象を限定しない「普遍主義的支援」の導入を訴えていることです。

 これまでの高等教育への公的支援は、奨学金制度であれ修学支援制度であれ、いずれも支援対象に限定(選別)条件が付されてきました。この「選別主義的支援」は、支援される人々と支援されない人々との分断を必然的に生み出してしまうという問題を抱えています。対して、普遍主義はすべての人を対象に支援を行いますから、人々の間に分断をもたらしません。

 日本学生支援機構の「令和2年度 学生生活調査結果」によると、奨学金を利用している学生の割合は大学(昼間部)で49.6%、短期大学(昼間部)で56.9%となっています。また、同「令和2年度 専修学校生生活調査結果」によると、専門学校生では56.6%となっています。高等教育を受ける学生の約半数が奨学金を利用していることから、学費に困っているのが経済的に豊かでない世帯の出身者に限られていないのは明らかです。こうした状況では、支援対象を経済的に豊かでない世帯の出身者に限定する選別主義よりも、普遍主義的支援の方が有効です。

 さらに政府は12年に、高校・大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約(13条2項b、c)の適用留保を撤回し、そのことを国連に通告しており、高等教育費の漸進的無償化は国際公約となっています。「大学・短大・専門学校の授業料を半額とする」ことは、高等教育無償化への大きな一歩となります。

提言2「大学等修学支援法の対象者を中間所得層まで拡大する。支援対象の上限を現在の標準世帯(4人世帯)年収380万円から、標準世帯(4人世帯)年収600万円まで拡大する。支援対象の年齢制限は撤廃し、すべての年齢を対象とする」

 次は大学等修学支援法の支援対象を拡大する提言です。同法は支援対象を厳しく限定する選別主義に基づいているため、その改善を目指す内容だといえます。

 提言1で普遍主義の重要性を主張し、そのうえで「選別主義の改善」を提言していることには疑問を感じるかもしれません。が、それはこの提言が近い将来に実現可能な政策案を打ち出していることと関係があります。

 確かに、すべての高等教育の学費を無償化することが最終目標ですから、普遍主義を徹底するのが理想的です。しかし、高等教育については政府が長らく「受益者負担の論理」を掲げて予算を抑制し、授業料をはじめとする学費が上昇し続けてきました。給付型奨学金や大学等修学支援法で、ようやく一部の低所得世帯出身の学生への支援が実現したのが現状です。政府によって押しつけられた高等教育の「受益者負担の論理」は、一般の人々にもかなり浸透しています。「経済的に豊かな世帯の出身者は自分で何とかできるのだから、支援をする必要はない」と考えている人も少なくありません。

 そんな状況下で、高等教育の無償化に向けて普遍主義を今すぐ徹底することは困難です。大学等修学支援法を中間所得層まで拡大することによって、高等教育の学費が公的に支えられることの価値を認識する人々を増やしていくステップを踏むことが、将来の高等教育無償化実現へ向けて重要なことだと考えます。この提言2の「選別主義の改善」は提言1の「普遍主義的支援」とセットで提案されていますから、全体としては分断を生み出さない工夫もしています。

 支援対象を標準世帯(4人世帯)年収600万円まで拡大することの根拠は、本連載「生活保護世帯の大学進学はなぜ反対される?」ですでに論じました。家族3人暮らしで子ども1人を大学に通わせるには、どんなに生活水準を落としても年間約600万円必要です。言い換えれば、年収600万円の世帯が大学生1人を養うと、生活保護なみの暮らししかできないことを意味します。この状況を考えれば、年収600万円世帯まで支援を拡大することは必要でしょう。

◆◆

 この提言1と2に加え、提言3〜5は奨学金制度の改善、提言6と7は職業訓練への公的支援の充実をうたっています。詳しくは中央労福協のプレスリリース「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減に向けて 中央労福協の研究会が政策提言を発表」をぜひお読みください。

 3月8日の文科省記者クラブでの記者会見はテレビ、新聞など数多くのメディアで報道され大きな注目を集めました。それは、高等教育の学費や奨学金への社会的関心が、これまで以上に高まっていることを意味しています。「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減へ向けての政策提言」は、高等教育進学率80%時代において、すべての若者が安心して学べることを目指した提言です。この提言を1人でも多くの人に知っていただき、実現へ向けて努力を開始したいと考えています。


高等教育の負担軽減は「少子化対策」上も、極めて重要な課題である。
それ以前に経済的理由により「学ぶ権利」を放棄しなくてもいい社会を実現したい。

やや寒いがいい天気になった。

雪割作業が続く。

もう一台の駐車スペース確保。

所々、土が見えてきた。


雨宮処凛がゆく! アベノミクス、「新時代の日本的経営」、今さら失敗と言われても……。

2023年03月27日 | 社会・経済

マガジン9 2023年3月22日

 

 「今になって“反省してる”とか言われても手遅れなんだけど……」

 3月なかば、東京新聞の記事に思わずそう呟いた。

 その記事とは、「『賃金上がらず予想外』アベノミクス指南役・浜田宏一氏証言 トリクルダウン起こせず…『望ましくない方向』」

 記事は「アベノミクスの指南役」だったという浜田氏のインタビュー。

 当時、内閣府参与だった氏は政策の開始当初「アベノミクスはトリクルダウン」と強調していたという。しかし、大企業や富裕層が儲かっても、一向に下に「滴り落ちる」ことはなかったのは周知の通りだ。

 このような現実について、浜田氏は「ツケが川下(の中小企業や労働者)に回った」とし、「賃金がほとんど増えないで、雇用だけが増えることに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。望ましくない方向に行っている」と語っている。それだけではない。あれほどトリクルダウンと言っていたのに、「最近の私は、アベノミクスをトリクルダウンではなかったと思っている」と言い訳なのか転向なのか自己保身なのかとにかく今になって手のひらを返し、「これまでトリクルダウンのようなことをやっていると誤解していた。反省している」と述べている。

 いやいやいや!! 87歳で米エール大学名誉教授である浜田氏にとっては「間違えちゃった、てへ」で済ませられることだろうが、その失敗の尻拭いをさせられるのは間違いなく庶民である。そしてその尻拭いは時に、人生を台無しにしながらなされるという残酷さをはらんでいる。

 もうひとつ、最近やはり東京新聞を読んで心から憤慨することがあった。

 それは「非正規雇用の活用を30年前に提言したら…『今ほど増えるとは』 労組側『やっぱりこうなった』」

 この記事が扱うのは、日経連の「新時代の日本的経営」

 今から28年前の1995年に発表されたこの報告書は、労働者派遣法と並んでこの国の雇用破壊の元凶と言われている。

 内容はと言うと、これからは働く人を3つに分けましょうという提言だ。

 ひとつ目は正社員にあたる「長期蓄積能力活用型」。幹部候補生みたいなもの。

 次は高度な専門職である「高度専門能力活用型」。むっちゃスキルを持ったスペシャリストというイメージ。

 そして最後が「雇用柔軟型」。聞こえはいいが、当初から「死なない程度の低賃金の使い捨て労働力を増やすつもりか」と批判されてきた。

 バブル崩壊から数年後に出されたこの報告書により、不安定雇用はどんどん拡大。2004年には製造業派遣も解禁され、95年には1001万人、雇用者の20.9%だった非正規は、22年には2101万人と倍増。非正規雇用率は今や4割に迫る勢いだ。

 不安定雇用の問題は2000年代に入り「偽装請負」や「違法派遣」として注目され、またグッドウィルやフルキャスト(懐かしい…)など日雇い派遣の現場での「データ装備費」などが大きな批判に晒された。07年には「ネットカフェ難民」という形で広い層にホームレス化が起きていることが知られ、08年にはリーマンショックを受けてこの国にも「派遣切り」の嵐が吹き荒れる。年末を前に多くの人が寮を追い出され、職も住まいも所持金も失った人たちの受け皿として、日比谷公園に「年越し派遣村」が出現。505人が極寒の野外テントで命をつないだ。

 あれから、15年。非正規で働く人はとっくに2000万人を突破し、そこにコロナ禍が直撃して3年、というのが現在だ。

 「コロナで派遣の仕事を切られて寮を追い出された」「製造業派遣で10年以上日本各地を転々としてきたが、コロナで工場が止まり、契約を切られて路上生活になった」

 支援団体には、日々こんなSOSが寄せられる。世代としては多いのは20〜40代。コロナ禍の3年で、私も所属する「新型コロナ災害緊急アクション」に寄せられたメールは約2000件。そのほとんどが非正規で働く人からだ。この3年、労働者派遣法の、そして「新時代の日本的経営」の破壊力をまざまざと見せつけられてきたというのが私の実感である。

 さて、東京新聞には、そんな「新時代の日本的経営」をまとめた日経連元常務理事の成瀬健生氏(89歳)のインタビューが掲載されていたのだが、非正規雇用の拡大について「今ほど増えるとは思わなかった」などと語っており、憤慨のあまり血管がブチ切れそうになったのだった。

 成瀬氏によると、当時の非正規は高齢者や主婦、学生が中心で、「増えても雇用者の20〜25%」と考えていたという。しかし、前述したように現在は4割近くまで増大。それだけではない。学生や主婦が中心だった時代と違い、今や非正規の多くが、自らが家計の柱。

 また、成瀬氏は、景気が回復すれば経営者は非正規を正規として雇用すると思っていたというが、それがどれほど甘い見通しだったかはこの現実を見れば周知の通りだ。

 そうして言い訳のように「私が日経連でお付き合いした経営者はもっと人間を大事にしていた。今はお金だけためて人間を育てることを忘れてしまった」と語るが、一度「非正規」という旨味を覚えた企業がそれを手放すはずなどないことは子どもだってわかるのではないだろうか。

 そんな「新時代の日本的経営」から28年。

 日本は先進国で唯一賃金の上がらない国となり、数年前には韓国にも抜かれた。

 21年の平均賃金を見てみると、正社員508万円に対して正社員以外198万円(国税庁)。ちなみに20年までは正規・非正規という分け方だったのだが、なぜか21年から「正社員以外」という区分になり、その途端、「正社員以外」の平均賃金は対前年比で12.1%増となった。こういう小手先のことで「上がってる感」でも出したいのだろうか?

 前年、20年の平均賃金は、正規で496万円、非正規で176万円。性別で分けると男性非正規は228万円なのに対し、女性非正規は153万円。月収にすれば13万円以下。地域によっては生活保護を下回る額だ。そんな非正規女性は21年の労働力調査によると1413万人。そのうち夫がいる女性は6割弱。4割強がシングルマザーなどの世帯主や単身女性だ。

 国は「異次元の少子化対策」などと言っているが、雇用破壊第一世代のロスジェネからすると、まずは安定雇用を増やすことがいちばんの近道である。

 「失われた30年」は、「新時代の日本的経営」とほぼ同時に始まった。その30年と20〜50歳くらいまでが丸かぶりする私たちロスジェネ。私もあと2年で50歳。そう思うと、なんだか取り返しのつかないような気持ちが襲ってくる。

 89歳の成瀬氏と87歳の浜田氏に、この思いは少しでも届くだろうか。超成功者であり超エリートであるあなたたちが間違いを認めても、もうすべては手遅れなのだ。

 そう思うと、なんだか泣きたくなってくる。


今朝はうっすらと雪化粧。

フキノトウを刻んで沼に放す。
カモが来て食べてるようだ。

だいぶ解けてはきたが寒い。
日中も雪がチラついていた。

熱いコーヒーを。


校則から気候危機まで 若者が街角で政治家らを質問攻め 東京・下北沢で「選挙小屋」開催 26日も

2023年03月26日 | 社会・経済

「東京新聞」2023年3月26日 

政党ブースの前で政治家の話を聞く若者たち=いずれも25日、東京都世田谷区で

 統一地方選を前に、若者に政治を身近に感じてもらおうと若者らのグループが企画した「民主主義ユースフェスティバル2023」が25日、東京・下北沢の「下北線路街 空き地」で始まった。冷たい雨の降る中、若者が次々訪れ、北欧で選挙前に登場する「選挙小屋」をモデルにした各党のブースを見て回り、政治家らに熱心に質問。「直接話せて良かった」「違いが分かった」などと手応えを感じていた。イベントは26日も開かれる。(加藤益丈)

◆9政党が参加「あちこちでやってほしい」

 主催グループがモデルにした北欧の国々では、選挙小屋は選挙1カ月前から主要駅前などに登場し、市民が政治家らと顔を合わせ、気軽に政治を語り合う空間として定着している。今回のイベントには、9つの政党が参加。各党のブースでは政治家やスタッフが来場者からの質問に答えたり、パンフレットを配って政策を説明したりした。

 「温暖化を止めるための政策を聞いた」と話すのは、温暖化阻止を訴える運動をしている高校2年、二本木葦智(よしとも)さん(17)=東京都荒川区。「気候危機について考えていないと思っていた党が、意外と考えていることが分かった」と笑顔を浮かべ「選挙権がない自分が政治と関われる、こうした場は大事」と付け加えた。

各政党のブースの前でスタッフらの話を聞く有権者たち

 各党のパンフレットでいっぱいになったかばんを持っていた三鷹市の中学3年豊田英杜(えいと)さん(15)は「校則の中には疑問に思うものもあり、各党に考えを聞いた。若者のための政策に積極的な党と、そうでない党があると分かったのは収穫」と明かした。

 神奈川県大磯町、高校2年生吉川蓮(れん)さん(17)は「5党くらいのブースを回り政治を身近に感じることはできたが、直接話をした政治家は一人だったので、明日も行くつもり」と話した。

  一方、参加したある衆院議員は「街頭で政策を訴えると一方通行になりがち。フラットな目線で話をし、意見を聞けた。あちこちでやってほしい」と話した。

◆社会課題を語り合える仲間を見つけて

トークセッションをする気候活動家の小野りりあんさん(左)とデプトカンパニー代表のeriさん

 選挙小屋近くのステージでは、社会課題の解決に取り組む若手活動家らが意見を交わすトークイベントも開かれた。

 「若者のアクティビストはどうしたらもっと増えるか」をテーマにしたトークイベントでは、モデルで気候活動家の小野りりあんさんが「持続的に若い人がチャレンジしようと思う場所づくりが大切」、デザイナーのeriさんは「デモなどで社会課題を語り合える仲間を見つけてほしい」と話した。

 主催メンバーの一般社団法人「日本若者協議会」代表理事の室橋祐貴さん(34)は「雨にもかかわらず多くの若者が来てくれた。今後も開きたい。他の団体にも広がり、こうした風景が当たり前になると良いと思う」と手応えを語った。

 26日も午前11時から午後8時までイベントは開かれる。トークイベントは「生徒の声を尊重する学校に生まれ変わるためには」「住民に開かれた行政とは」など4つのテーマで行われ、夜は音楽ライブもある。


社会を変えるのは若者達です。

昼過ぎから☂です。
今夜遅くから雪に変わり明朝まで⛄マークです。


コラボへの委託料「過払いない」 なのにバス中止

2023年03月25日 | 社会・経済

東京都委託事業めぐり 女性支援活動 続く妨害

「しんぶん赤旗」2023年3月25日

 虐待や性被害に遭う若年女性に寄り添い活動してきた一般社団法人Colabo(コラボ、仁藤夢乃代表)。東京都からの委託事業について、都による調査結果でも「委託料に過払いはない」「返還請求は行わなかった」と明記されました。にもかかわらず、「公金不正」というデマや妨害が続きます。都からは事業の休止を求められ、22日の「バスカフェ」は実施できませんでした。再開に向け、都側との折衝が続いています。経緯をまとめます。(取材班)

再開に向け 都と折衝続く

 バスカフェに対する直接の妨害が激化したのは昨年末ごろから。ネット上の「コラボに公金不正がある」などとするデマだけでなく、▽バスカフェを訪れて怒鳴る▽利用する少女らを撮影しようとする―などの行為が始まりました。

 2月初め以降、コラボの活動を守ろうと有志の女性たち20~30人がバス周辺に「女の壁」をつくり、妨害者を追い払うようになります。これと並行して、コラボと仁藤さんの弁護団が東京地裁に、妨害者の中心人物の男性に対する接近禁止などの仮処分命令を申し立てました。

 その後も妨害は強まり、3月8日にはこれまでにない人数にスタッフが囲まれる事態に発展。弁護団はその様子を逐一、地裁に報告しました。

 東京地裁は3月14日付で仮処分決定を発出。この男性に▽バスカフェ開催日に半径600メートル内への事実上の立ち入り禁止▽コラボ事務所への立ち入りやスタッフへの面会強要の禁止―などを命じました。男性だけでなく「第三者に」これらの行為を「させてはならない」ともしました。

 しかし都はコラボ側に17日付の文書で▽万全の安全対策▽それが難しければ事業の休止か、場所や方法の変更―を求めたのです。

 「都は妨害に屈しないで」「中止要請を撤回して」。バスカフェが開催予定だった22日、都庁脇で開かれた抗議のスタンディングで参加者が声を上げました。仁藤さんは「地裁の仮処分決定は『バスカフェ開催日』と明示している。開催しないと効力が出ない」と訴えました。

 都は先の「休止要請」を撤回せず、この日のバスカフェは中止されました。コラボは「あきらめず、開催に向けて都側と交渉を続ける」としています。

至近距離で撮影、つきまとい

 これまでで最も妨害が激しかった3月8日の様子を振り返ります。

 この日も、バスカフェ開催前から少女らの列ができました。午後8時すぎ、仁藤さんとスタッフ2人がアウトリーチへ。ところが出発して間もなく、バスから数百メートルの地点まで来たとき、妨害を繰り返してきた男性が仁藤さんに気付き、駆け寄ります。

 仁藤さんは、スタッフに逃げるよう指示。あっという間に男性5人ほどが「不当会計」などと、ネット上に今も広がるデマを叫びながら仁藤さんを囲みスマホで撮影します。

 仁藤さんが助けを求めた警察官は、腕組みをしたまま。男性らはさらに肩と肩がぶつかるほどまで近づき、仁藤さんに触れようとする場面も。

 「やめて。来ないで」―。仁藤さんが訴えても、男性らはやめません。それどころか、その場にいた男性たちが次々加わり仁藤さんに付きまといます。

 男性らがバスカフェに来ると少女たちが安心して利用できなくなってしまうため、仁藤さんはバスに戻ることができません。

 そこに、この間コラボの活動を守ろうと集まった女性たちがバスから駆け付けました。男性たちは女性たちを至近距離で撮影し、「税金返せ」などと怒鳴ります。

 女性たちの反論の声も重なり、その場は騒然となりました。男性たちが追いかけてこないのを確認し、女性たちは一度その場を引き揚げました。

 しかし、1時間もたたないうちにその男性たちはバスカフェを訪れます。撮影をやめるよう注意しても男性たちは立ち止まり動画を配信。警察官が来てから、男性たちは渋々立ち去りました。

民事・刑事両面 法的措置を検討

 コラボと仁藤さんの弁護団の中川卓弁護士の話 このような妨害は、民事上の不法行為として損害賠償の対象となり得ます。

 妨害する男性らは、毎回のようにバスカフェに現れ、暴言を吐き、デマを叫びます。撮影されたり執拗(しつよう)につきまとわれたりする被害もあり、何人ものスタッフがその対応に追われます。警察には一から経緯を説明しなければならず、何十分も時間を取られ、本来の事業ができません。

 コラボは10代の少女を中心に支援をしています。男性らが押し寄せることにより、本来支援が必要な少女らの足が遠のいてしまいます。

 これらは刑法で言うと威力業務妨害罪、名誉毀損(きそん)罪などにあたり得ます。東京都迷惑防止条例5条の2の適用も考えられます。

 弁護団は、民事・刑事の両面で法的措置を検討しています。

 バスカフェとアウトリーチ活動 コラボは東京・新宿の繁華街に止めたバスの周囲で、テントを張って食料品や携帯電話の充電、日用品などを10代の少女に無償で提供する「バスカフェ」を展開してきました。また、虐待などで帰る場所のない少女が買春などの性搾取にからめとられるのを防ぐため、バスを拠点にスタッフが夜の街を歩いて出会い、つながりをつくる「アウトリーチ」も続けています。


彼らの目的は、言わずもがな。
活動を中止させるのではなく保証するために妨害者を排除することだ。

雪割。

畑には20cmの雪。

昨日1羽のカモが来ていました。

室内では君主蘭が・・・


さらばお代官様

2023年03月24日 | 社会・経済

袴田事件特別抗告断念が切り開いた日本の近代化

初の女性検事総長に期待される幼年期からの脱皮

JBpress 2023.3.24(金)

伊東 乾

 

 2023年3月20日、オウム真理教「地下鉄サリン事件」から28年目のこの日、日本の刑事司法の歴史に残る大きな「決断」が下されました。

「袴田事件」検察が「特別抗告」断念。

 この決定が持つ歴史的な意味は、どれだけ強調してもし切れません。

 皆さん、特に40年、50年と生きてきた大人の皆さんであれば、いままでの人生で一度や二度は、目も当てられない理不尽な建前で押しつぶされる人を見てきた経験があるのではないでしょうか?

 日本には、極めて残念なことですが「お代官さま」の前に「ひれ伏す」メンタリティ、江戸時代もかくやという非人権の極みのような心性が、21世紀の現在も残っています。

 暴れん坊将軍や天下の副将軍・水戸光圀公などに大衆人気があり、そうした「権威」が発動し、日頃は人々を無理やりひれ伏させている悪代官やら、その代官と「おぬしも悪よの」などと酒を酌み交わす「越後屋」などの政商が、一斉に黄門様などの前にひれ伏すのを観るのが大好き。

 そういう「権威の無謬性」を信じ込みたいという、度し難い封建根性をしっかり抱え込み続けている、その「日本病」が、やっと快癒に近づくかもしれない。

 それくらい歴史的な意味を持っているのが、袴田事件の再審開始決定に対する検察による特別抗告断念という判断なのです。

 敬愛する先輩である郷原信郎さんも強調しておられる今回の検察「断念」、少し違う角度から切り口を見せてみたいと思います。

「無謬性」を誇りたい土俗根性

 21世紀のグローバル社会、知的セクターがすべて共通して持っている基盤は「自分自身を疑う」「可謬性」の自覚を持つことにほかなりません。

 これには歴史があります。

 西欧社会はギリシャ・ローマの古代からソクラテスによる「汝自身を疑え」という格率以来、自らを疑う知性の伝統があります。

 加えて中世以降の西欧はキリスト教道徳を価値判断の中心においていますから、人間はすべて「罪」をもって生まれてきた、容易に誤った行動を取る存在に過ぎず、18世紀以降の社会契約説、近代法制も、すべての基本は「人間は誤りうる存在」という認識が基本になっている。

 法制度の基礎を巡るこうした問題は、刑法の團藤重光先生と6~7年にわたって深い議論を共有させていただきました。

(詳細にご興味の方は 團藤重光+伊東乾「反骨のコツ」などをご参照ください)

 とりわけ「死刑」を巡る議論では、ソクラテスの20世紀版とでもいうべきオーストリア=英国の哲学者「カール・ポパー」の「可謬主義」を背景に「裁判所の判決も、誤審を原理的に避けることができない」として「死刑廃止論」を展開されました。

 しかし、およそ團藤先生の生前、日本国内では受け入れる土壌がありませんでした。

「お上」は正しくお代官さまは無謬で、権威は絶対の正義で誤りなどあり得ない。「悪い奴は懲らしめればよく、死刑判決でも何でも、一度出したものは面子にかけて頑迷に固執し続けるのが正解」。

 こういう本音が日本の至るところにあった。

 率直に記しますが、東京大学も自らの「無謬性神話」に凝り固まった、救いようのない愚行を繰り返し続けてきました。

 2015年に五神眞さんが総長に就任して、それ以前とは大きく変わり、本当にまともなことが増えました。

 その詳細は今はまだ記しませんが、しかるべき時がくれば公開されることもあるでしょう。

 無謬性を誇りたい土俗信奉、これを固守させている大きな理由の一つは、これまた無謬をもってよしとする「役人のコトナカレ主義」、いわば宦官根性とでもいうべき前近代的な本音にほかなりません。

 どこかで愚にもつかない「役人による公文書の捏造」とかいう、あり得ない話がまだ続いている様子ですが、お役人にとっては「無謬」つまり瑕疵がないことが、つつがなく出世して行く第一条件ですから、書類の中に誤記などあってはならない。

 まして改竄、捏造などということは、それを強要された人が精神を崩壊させ、自ら命を絶つほどに「あるわけがない」事態であること、私も官学教授業四半世紀で、やまのようにケーススタディを見てきました。

 今回の「検察による袴田事件特別抗告断念」は、要するに「警察による組織ぐるみの証拠捏造があった」と裁判所が認定し、それに対して検察が異議を唱えず、司法判断の前に膝を折る、屈するという、我が国司法史上、かつてない事態が起き始めている歴史的事態になっているのです。

袴田事件で警察は何をしでかしたのか?

 ここで袴田事件と問題になるポイントについて、簡単に振り返っておきましょう。

 袴田事件は1966年6月30日、静岡県清水市で発生した強盗殺人放火事件で、味噌製造会社の重役一家4人が殺害、自宅に放火されるという凶悪事件です。

 被告人として起訴された元プロボクサー、袴田巌氏(1936-)の名をとって「袴田事件」と呼ばれています。

 公判では一貫して無罪を主張。1980年の最高裁判決で死刑が確定したものの、30年以上にわたって再審請求が繰り返され、2014年に静岡地裁が死刑ならびに勾留を停止、47年ぶりに東京拘置所から釈放されました。

 検察が今回下した「特別抗告断念」の判断は、事件から1年も経過してから、被告人が勤務していた味噌製造会社の味噌樽の中から発見された「犯行時に着ていた血の付いた衣類」などの証拠が、まるごと警察の捏造したものである可能性が「極めて高い」とした東京高裁部総括判事・大善文雄裁判長の画期的な判断を検察が追認した。

 つまり、「お上は何があっても正しく」「権威は無謬、検察は絶対の正義」という従来の建前論が音を立てて崩れ、「1960年代の警察は組織ぐるみで証拠の捏造などしていても、何の不思議もない」と、検察自らも初めて認めたという、本当に画期的な判断になっているわけです。

「冤罪づくりで出世」の悪循環

 事実、1966~67年にかけての袴田事件取り調べは言語道断な非人権的なものでした。

 何しろ炎天下に1日12時間、最長では17時間連続して行われ、また排泄の自由など尊厳を奪われ、取調室に便器が持ち込まれて、捜査官の目の前で用便させるといった人間の尊厳を踏みにじる形で調書が採られたことが伝えられます。

 睡眠を与えずフラフラの状態で、拘留期限の3日前になって「自白」させたことになっていますが、強要した自白調書はあまりにもめちゃくちゃなので、一審判決でも証拠採用されていません。

 こうした手法は、確信犯で冤罪を作り続けたとして悪名高い静岡県警の警察官、紅林麻雄に由来するものと考えられています。

 紅林は戦前、戦時中から「冤罪づくり」で出世し続けた警官で、真犯人から賄賂を受け取って冤罪を捏造していた疑惑も今日では知られるとんでもない人物だったようです。

 その紅林自身は今から60年前、1963年に死んでいますが、死後の66年に発生した袴田事件でも、静岡ではその手法が踏襲され続け、冤罪がでっち上げられた可能性が高い。

 袴田事件に関しては、裁判官の立場からも良心の呵責からなされた告白があります。

 袴田事件一審死刑判決に左陪席判事として加わった熊本典道裁判官は、袴田無罪の心証を持ちながら、雰囲気に流され、裁判長と右陪席判事の説得にも失敗、死刑判決に名を連ねました。

 しかし、良心の呵責から2007年、生涯の守秘義務を破って「合議体の分裂」の内幕を公表します。

 実際、死刑の判決文でありながら、熊本判事が起草した一審判決には、警察による証拠捏造が透けて見える捜査状況への異例の強い非難が記されています。引用してみましょう。

 ・・・その後、公判の途中、犯罪後一年余も経て、「犯行時着用していた衣類」が、捜査当時発布されていた捜索令状に記載されていた「捜索場所」から、しかも、捜査官の捜査活動とは全く無関係に発見されるという事態を招来したのであった。

 このような本件捜査のあり方は、「実体真実の発見」という見地からはむろん、「適正手続の保障」という見地からも、厳しく批判され、反省されなければならない。本件のごとき事態が二度とくり返されないことを希念する余り敢えてここに付言する。

 

 これを今回、大善文雄裁判長が法廷としてハッキリ認めたわけですが、それに57年というとんでもない時間が必要だった。

 大善裁判長は1986年任官ですから、袴田事件の最高裁判決が確定した6年後に新人判事として任官した人が、東京高裁で責任を持つ立場になって初めて「お代官様」無謬の構造を正面から否定することができた。

 そしてこの判断に対して検察が「初めて」疑義を呈さなかった。

「何が何でも検察が絶対の正義」という幼稚でくだらない無謬性の主張を初めてしなかった。

「幼年期の終わり」に差し掛かっている希望が持たれているわけです。

初の「女性検事総長」に寄せられる期待

 どうして検察はこのような判断を下したか?

 その一因として、2023年1月10日に女性として初めて東京高検検事長に就任した畝本直美検事長の判断があった可能性が考えられています。

 原田明夫~林真琴~と続く、前近代体質から検察を脱皮させる良心的な傾向が大きく実を結びつつあるのを感じます。

 男は面子にこだわり、恥の文化に凝り固まってウソでも強弁でも何でもしてしまう、もろく弱い生き物と思います。

 概して男の嫉妬は女性のそれよりはるかにメメしく、陰湿で後を引きやすい。私も男ですので、いろいろ含め、そう思います。

 これに対して女性は是々非々がはっきりする傾向が強い。

 ペケならペケでむしろあっさりしている。恋愛からの離別などでも、いつまでもズルズルしているのはメメしい男で、女性はぺキッとヒビが入ると、ハイそれまでよ、とあっさりしているケースの方がよほど多い気がします。

 そういう「メメしい男社会」の虚勢文化としての権威主義、お上の「無謬性」が、封建後進国メンタリティの日本でも、ようやく覆されつつあるということなのでしょう。

 畝本検事長は女性初の検事総長に就任するとみられており、ここで本格的に「お代官様」の無謬性という、幼稚な封建心性から日本が本格的に卒業する本当の入り口に立つことができそうです。

 期待しないわけにはいきません。


期待したいところですが、連合会長の悪例もあり、見守りたいところです。

以前コメントに

「郷に入りては・・・」「長いものには・・・」これではいつまでも変りませんね。「お上のやること・・・」ですから。

と書いた。

まさに、日本人の封建的、前近代的な本音があったのですね。

もう一つ注目すべき記事。ベトナム実習生の「遺棄罪」無罪判決が出ました。

 

マスコミ関係者たちとの食事会が効いた?岸田内閣「支持率上昇」の奇々怪界

2023年03月23日 | 社会・経済

まぐまぐニュース2023.03.23 191 by 『きっこのメルマガ』

先週末に行われたマスコミ各社の調査で、軒並み支持率アップとなった岸田政権。高市早苗氏の「捏造文書問題」を始め、下がる要素こそあれすべてのメディアで支持が増加しているというこの結果、果たして何がどう作用した結果なのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、人気ラジオ番組にリスナーから寄せられた、岸田政権への厳しい意見を紹介。「オカルティック」とも言うべき支持率上昇のカラクリ解明を試みています。

不思議なオカルト現象?岸田内閣支持率アップのカラクリはあるのか

3月19日(日)の夜、新聞各紙は先週末に実施した全国世論調査の結果をWEBで報じました。媒体によって設問の内容や表現に違いがありますが、一番分かりやすい「内閣支持率」を見てみると、すべてのメディアで「支持」が増加し、「不支持」が減少しているのです。「下がることはあっても上がることなどありえない」と思っていた岸田内閣の支持率が好転するなんて、まるでオカルト現象です。

しかし、毎日新聞では、支持が2月の前回調査の26%から7ポイント上昇して33%、不支持が64%から5ポイント低下して59%と、好転しました。朝日新聞も支持が前回の35%から5ポイント上昇して40%、不支持は53%から3ポイント低下して50%、こちらも好転しています。読売新聞は、支持は前回の41%から42%へと1ポイントだけ上がった「ほぼ横ばい状態」ですが、不支持は47%から43%へと4ポイントも好転しました。

自民党の広報メディアと言われている産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が合同で実施した世論調査に至っては、支持が前回調査から5.3ポイント増の45.9%、不支持が4.9ポイント減の47.7%と、もはや国民の2人に1人が岸田内閣を支持しているという驚愕の結果でした。

それでも、今のところすべての媒体で支持より不支持のほうが多いですが、読売新聞と産経新聞は支持と不支持が拮抗しています。このまま行けば、来月の調査で支持と不支持が逆転し、4月の全国統一地方選挙の後半に、自民党への追い風となるかもしれませんし、そういうシナリオがすでに作られているのかもしれません。

しかし、この不思議なオカルト現象に驚いたのは、あたしだけではありませんでした。翌20日(月)、早朝6時30分からのTBSラジオ『森本毅郎 スタンバイ!』では、パーソナリティーの森本毅郎さんと月曜コメンテーターの時事通信社の山田惠資(けいすけ)さんが、この新聞各紙の世論調査の結果に疑問の目を向けました。そして、リスナーの意見をメールで募集する「トークファイル」では、次の質問が投げ掛けられました。

「週末に行なわれた毎日、朝日、読売新聞の世論調査で岸田内閣の支持率はそれぞれ上がりました。そこで伺います。あなたの今の岸田内閣の評価は、上がってますか?下がってますか?変わりませんか?」

「トークファイル」は、7時20分頃にその日の質問を出し、1時間後の8時20分から番組終了の8時30分までのラスト10分、集まったメールの中から何通かが読み上げられます。放送から1週間後の27日まではラジコのタイムフリーで聴くことができますが、貴重な意見が多いので、今回は文字起こししてみました。ぜひ、お読みください。

防衛費に原発…岸田内閣が議論無しで勝手に決めたこと

森本毅郎さん「この番組で支持率調査を行なったわけではありませんが、『上がった』というコメントは、およそ5%しかない。『下がった』が60%、『変わらない』が35%、新聞の世論調査とは傾向がまったく違います。それではご紹介しましょう」

千葉県市川市の森川かなこさん(54歳)「(支持率は)低空飛行のままです。上昇気流に乗っているとは思えませんね。何においてもリーダーシップを発揮していない。すべて曖昧にしているのが許せません。高市大臣の件にしても『本当のことをつまびらかにしなさい』と言い渡して、官僚を呼んで国会で証言させたらいいじゃないですか?そんな状況で防衛費だけアップ。こんな首相は支持できませんね」

文京区の奈良さん(57歳)「私の岸田内閣の評価は下がってますよ。5段階通信簿で2ですね。まず内閣の一員の高市大臣です。あの捏造発言はまずいですね。あの啖呵の切り方、国民感情を逆撫でです。あと経済政策ダメダメです。生活が苦しい、給料が上がらない、どうにかしてくださいよ」

埼玉県の匿名さん(70代 女性)「上がりません。上がりようがありません。確かに最近、日韓首脳会談が行なわれましたが、それ以前に、戦後日本の大転換となる敵基地攻撃能力の容認、震災後の大転換となる老朽化原発の積極活用など、あまりにも大きなものを国民の議論なく進めました。あとから振り返って総括されることになるでしょう」

千葉県市原市の匿名さん(44歳 男性)「評価は変わってませんね。正直、何かした感じがありません。先日、男性の育児休暇取得率について、2025年度に50%、2030年度に85%に引き上げると表明しましたが、岸田さん、きっとあなたはその時は総理じゃないですよね?信用できませんよ」

埼玉県新座市の匿名さん(61歳 男性)「私、まったく上がってませんね。岸田さん、何かしましたか?『やりましたよ、メディアの社長さんたちとお食事会』って、そこで『支持率の報道よろしくね』ってお願いしたんじゃないですか?森本さん、誘われる側にならないでくださいよ?」

森本毅郎さん「ははは!これ、時事通信の首相動静を見るとね、やっぱり、日比谷のフランス料理店で、メディアの方たちと食事は確かにしていらっしゃいますが、安心してください。私が誘われることは、120%、いや、1,200%ありませんから(笑)」

埼玉県ふじみ野市の宮園さん(66歳 女性)「支持率上昇と聞いてびっくりです。何かやってくれましたっけ?子育て予算は『異次元』と勇ましい言葉をぶち揚げたものの尻すぼみ。防衛費はそれこそ『異次元』なのに、詳しい説明を求めても答えが見えない。官僚がシナリオを作って放送法の解釈を変えて行くというやり方を知ると、国会でのやり取りは『芝居なのか?』と思ってしまいます」

武蔵野市の匿名さん(40代 女性)「下がりましたよ。LGBTへの理解を目指す法案では、自民党は『差別を禁止する』という文言に反発して、未だに成立の見通しが立っていません。『差別禁止』に反対するということは『差別に賛成』ということですよ。これが岸田内閣、岸田総裁の自民党です。低空飛行で下げ止まったままの評価ですが、これをきっかけに、また下がりました」

あの「スシロー」も。首相と会食したマスコミ関係者たち

…というわけで、放送で読まれたメールは16通ですが、すべて書き起こしたら原稿が長くなり過ぎてしまったので、重複するような内容のものは割愛し、計7通を紹介しました。それから、埼玉県新座市の匿名さんのメールにある「メディアの社長さんたちとお食事会」というのは、正しくは「マスコミ関係者」ですね。3月14日の「首相動静」には次のように記されています。

午後6時25分、東京・日比谷公園のフランス料理店「日比谷パレス」着。山田孝男毎日新聞社特別編集委員、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、芹川洋一日本経済新聞社論説フェロー、島田敏男NHK放送文化研究所エグゼクティブ・リード、粕谷賢之日本テレビ取締役常務執行役員、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と会食。午後8時25分、同所発。

ここで問題なのは、岸田首相は昨年の参院選直後の7月15日にも、まったく同じこの6人のメンバーで、同じフランス料理店で会食していることです。安倍晋三元首相が演説中に銃撃されて死亡したのが7月8日、参院選の投開票が7月10日、このような状況で、わずか数日後にマスコミ関係者との親睦のための会食を行なうなんて、普通は考えられません。

来日する他国の首脳との会食など、政治的に極めて重要な予定は変更できないとしても、マスコミ関係者との親睦のための会食であれば、通常はキャンセルするケースです。しかし岸田首相は、予定通りに会食したのです。これは「マスコミ関係者と会食する必要があった」、つまり、安倍元首相の事件をどのように報じさせるか、マスコミ各社に根回ししておく必要があったからではないでしょうか?

そして今回も、昨年とまったく同じ6人のメンバーと同じ店で会食し、その4日後の全国世論調査では軒並み「内閣支持率」がアップ!『森本毅郎 スタンバイ!』で取り上げられた国民のナマの声とは正反対の結果となったのです。もしかしたら、日比谷のフランス料理店でのマスコミ関係者たちとの会食が、こうした不思議な超常現象を生み出している原因なのかもしれませんね(笑)。


また札幌へ行ってきました。
遅くなりました。

わたしも、このニュースに触れた時「まさか!」でした。
「改ざん」「捏造」お手の物。
困ったもんだ。

 


3月22日は「世界水の日」。「驚くほど軌道から外れたまま」のSDGs6。私たちはハチドリになれるか。

2023年03月22日 | 自然・農業・環境問題

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

YAHOO!3ニュース(個人) 3/17(金) 

「安全な水とトイレを世界中に」を達成するには、これまでの4倍の成果が必要

 「世界水の日」である3月22日からUN 2023 Water Conference(世界水会議)が国連本部で開かれる。水問題をアジェンダにした大きな会議の開催は50年ぶりのことだ。

 2015年、世界は「2030アジェンダ」の一環として、持続可能な開発目標(SDG)6にコミットした。 SDGs6には「安全な水とトイレを世界中に」という目標が掲げられているが、進捗は遅れている。

 ユニセフとWHOによってまとめられた報告書(『家庭の水と衛生の前進2000-2020』)によれば、世界では約20億人が、安全に管理された飲み水を使用できておらず、このうち約1億2,200万人は、湖や河川、用水路などの未処理の水を飲んでいる。

 また、およそ36億人が安全に管理された衛生施設(トイレ)を使用できない状況にあり、このうち約4億9,400万人は道ばたや草むらなど、屋外で排泄を行っている。

 開発途上国では長時間かけて水汲みにいくこともある。こうした生活の中では、当然ながら満足な教育を受けることができず、やがて大人になっても貧困から抜け出せないという悪循環に陥る。

 また、清潔なトイレの不足が、若い女性たちが学校に通いにくい原因ともなっている。国や地域によっては、夜間に用を足すために外出することで誘拐等の被害に遭うケースもある。

 このようにSDGs6の進捗は遅れており、UN 2023 Water ConferenceのWebサイトには「驚くほど軌道から外れたまま」と表現されている。2030年までに「安全な水とトイレを世界中に」を達成するには「これまでの4倍の成果を上げなくてはならない」とされる。

先進国でも広がる水への懸念

 水問題が起きるのは開発途上国ばかりではない。

 干ばつの続く米国ではセクター間の水の争奪戦が懸念されている。コロラド川流域ではここ数年、水の供給量が減り続け、都市と農村、企業と農場、環境保護団体と土地所有者などのあいだで水をめぐる争いが発生している。

 また、水不足を補うため、目には見えない地下水の利用が急増している。コロラド川流域の帯水層はすでに深刻な状況に陥っている。地下水の枯渇の約半分は灌漑が原因だ。農業は最も多くの水を使う産業で、全世界で利用できる淡水の7割以上が灌漑によって消費されている。

 昨年は記録的な高温と干ばつが欧州でも発生した。ノルウェーのバナクでは北極圏としては異例の32.5度を記録。フランス、スペイン、ドイツ、オランダなどで気温が40度近くになり、47度を記録したポルトガルでは1000人以上の死者が出た。欧州委員会は8月、「過去500年で最悪の干ばつに直面している」と指摘している。

 7月の欧州の熱波に関する記者会見では、WMOのペッテリ・ターラス事務局長が「われわれは大気に大量の温室効果ガスを送り込んだ。まるで運動選手の能力を高めるドーピングのようだ」と述べ、地球温暖化が熱波の強度や頻度の増加につながっていることを警告した。

 地球温暖化で気温が上昇すると、蒸発する水の量、空気中や地表に含まれる水の量が変わり、雨や雪の降り方が変わる。これが気候変動であり、干ばつや洪水という形で私たちの生活に影響を与えるのだ。

「いままでどおり」では持続は難しい

「世界水の日」には毎年テーマが掲げられるが、今年のテーマは"Be the Change You Want to See in the World."

 直訳すると「見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい」

 冒頭に置かれたBeには「なる」とか「ある」という意味があるから、一時的なアクションに止まるのではなく、「変化を自ら体現する存在になろう」と呼びかけているのだろう。

「世の中に変化を求めるなら、あなた自身がその変化そのものになるのですよ」という意味だろう。

「すべての人が安全な水を得られる世界を望むなら、あなた自身がそうした存在になるのですよ」

「豪雨災害で命を落とす人のいない世界を望むなら、あなた自身がそうした存在になるのですよ」

 一人ひとりが自分の問題として考え、自分のふるまいを変えていく必要があるというメッセージなのだろう。

ハチドリのひとしずく

 今回の会議のシンボルにはハチドリが採用されている。このハチドリは、ペルーのケチュア族に端を発する物語「ハチドリのひとしずく」に登場する。この物語は、国連のWebサイトで以下のように紹介されている。

https://www.unwater.org/bethechange/

 訳してみると以下のようになるだろうか。

 ある日のこと、森で火事が発生しました。

 動物たちはみんな命からがら逃げ出しました。動物たちは火のそばで、恐怖と悲しみを感じながら炎を見ていました。

 そんな彼らの頭上で、一羽のハチドリが何度も何度も火のそばを飛んでいました。

 大きな動物たちは、ハチドリに「いったい何をしているの?」とたずねました。

「火を消すための水をとりに、湖まで飛んでいくんだよ」

 動物たちはハチドリを笑い、「この火は消せないよ!」と言いました。

 ハチドリは「私は自分にできることをしているんだよ」と答えました。

 火事の森は温暖化した地球と考えることもできるだろう。

 危機のなかで、私たちは多くの動物になるか、それもハチドリになるか。

 恐怖と悲しみを感じながら眺めているだけなのか。

 行動する人たちをあざけり笑うだけなのか。

 3月22日の「世界水の日」に向け、考えてみたい。

橋本淳司 水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。


 昨日は、近くの靴屋さんでわたしの靴を買う予定でした。昼まで江部乙の方で仕事をして、昼過ぎ相方さんから電話で、「天気もいいし、子どもたちも今日はみんないるので食べに行こう」となり、急遽札幌へ。孫も来て総勢7人で久しぶりの楽しい食事会となりました。靴も買いました。

さて「水の日」にちなんで白樺樹液採取のセッテング。
雪がまだ固い朝の仕事です。


出生数80万割れ 少子化克服へ覚悟示せ

2023年03月20日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2023年3月18日

 少子化が危機的段階に入った。

 厚生労働省の人口動態統計速報によると二〇二二年に生まれた赤ちゃんの数は七十九万九千七百二十八人。一八九九年の統計開始以来初めて八十万人を下回り、政府の推計より十一年も早い。

 国内に住む外国人などを除き、日本在住の日本人に限れば約七十七万人に落ち込むとみられる。

 少子化を克服するには、若い世代の結婚・出産・子育てを阻んでいる課題と向き合い、将来に希望を持てる社会に変えるため、効果が見込まれるあらゆる政策を講じる政治の覚悟が必要だ。

 岸田文雄首相は十七日、政府が取り組む少子化対策の方向性を示した。具体的な対策のたたき台は三月末までにとりまとめる予定だが、首相の説明はこれまでの考え方の繰り返しにとどまり、どういう社会を目指すのか、最も重要な方針を踏み込んで語らなかった。

 首相は若い人の所得増、社会全体の構造・意識の変化、すべての子育て世帯に切れ目ない支援との三つの理念を表明した。だが、具体策に乏しい。国会の論戦でも、明確な説明を避け続けた。

 児童手当の所得制限撤廃や、倍増を表明した子ども予算額も明示しなかった。これでは少子化への政権の危機感を疑われて当然だ。

 政府が掲げる対策の多くは主に子育て世帯にとどまる。子育て以前に結婚・出産を控える若い世代にとっては、経済的基盤を安定させる雇用対策が優先課題だ。

 首相は若者の所得増を目指すと言うが、今春闘以降も継続的な賃上げが実現しなければ生活を安定させることはできない。政府と経済界はその責任を自覚すべきだ。

 いったん非正規雇用になると抜け出しにくい労働市場の改革にも知恵を絞る必要がある。正社員との待遇格差を是正しつつ、成長産業に転職しやすくする職業訓練の充実などを進めねばならない。

 若い世代が結婚・出産をためらうのは、子育てや教育に費用がかかりすぎることが主な理由だ。

 負担の大きな支出は教育費と住宅費である。子どもを持つか住宅を買うかで悩むような社会では、とても子どもを産み、育てたいと思えないのではないか。

 幼児教育・保育の無償化の拡充や給付型奨学金の充実、低廉な住宅供給など、社会全体で子育てを支える対策を講じ、若い世代の期待に応えたい。

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人口激減、今後20年が「一番きつい」 近未来に起きる「介護難民」「多死社会」

「東京新聞」2023.03.18

 岸田文雄首相は17日の記者会見で、少子化対策に関し「時間との闘い」と強調した。政府が対策に乗り出してから30年。有効な手を打てずに少子化は加速し、昨年の出生数は見込みより11年も早く、統計開始以来初の80万人割れとなった。近未来に人口が激減する社会が到来するのは避けられず、識者は少子化対策とともに、社会機能を維持する対策の必要性を指摘する。(井上峻輔)

◆出生数減、最低100年は止まらない

 「出生数の減少は最低でも100年は止まらない。今から少子化対策を講じても、人口減少が進むことを前提として、社会をどう機能させるかの対策は即座に求められる」

 14日に国会内で開かれた超党派の「人口減少時代を乗り切る戦略を考える議員連盟」(野田聖子会長)の設立総会で、講師に招かれた一般社団法人・人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長は訴えた。

 日本の人口は、2008年の1億2800万人をピークに減少に転じた。22年9月時点で1億2500万人だが、国立社会保障・人口問題研究所が17年に示した将来人口推計によると、標準的なシナリオでは53年に1億人を切り、2110年に5300万人程度と半分以下に落ち込む。

 42年までは、65歳以上の高齢者が増え続ける一方で、15〜64歳の生産人口年齢が急減し「一番きつい20年間」(河合氏)になるという。

 河合氏は、出生数はシナリオより悪い減少幅で推移していると指摘。「このままいけば恐ろしいほど減り、90年後には年間出生数は18万人になってしまう」と危機感を強調し、近未来を「人口激減社会」と表現した。

◆わずか7年後、荷物の35%が配達できない

 人口激減社会では、労働力が減って内需や経済が縮小し、生活サービスや社会保障の量や質が低下する恐れがある。

 例えば介護では、サービスを受けられない「介護難民」が増えかねない。淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「5年後に団塊の世代が80歳を超えると、介護が必要な人が一気に増え、介護人材が不足する」と指摘。年配の職員が引退する一方で人材確保は難しく、孤独死や介護離職が増える可能性があるという。

 物流への影響も大きい。野村総合研究所が1月に公表した推計では、働き方改革を含め運転手不足が深刻化し、わずか7年後の30年に国内で35%の荷物が運べなくなる。研究所の小林一幸氏は「このままでは配達できない日が増え、配達料金も値上がりする地域も出てくるだろう」と語る。

◆識者が警告する「不都合な真実」

 高齢化が進んだ先にあるのが「多死社会」だ。国内の年間死亡者数は21年が約144万人で、推計では39〜40年にピークの168万人に達する。

 横浜市では既に火葬の待ち日数が長期化し、65年に市内の死亡者数が今より3割ほど増えると予想。現在、市内で5カ所目の公営斎場の建設を計画中だが、死亡者数に対応できるのは56年ごろまでだという。

 近い将来の姿が見えているにもかかわらず、これまで政府や国会が十分に対応してきたとは言い難い。超党派議連は議論を本格化させるが、河合氏は「あと数年で東京都の人口も減り始め、東京が経済をけん引するスタイルも通用しなくなる。極めて不都合な真実を正面から受け止めて政策を考えなければならない」と警告している。


 

今、この記事を書いている途中でnerotch9055 さんから緊急のメッセージが届いた。「特別抗告断念」と。声を上げてよかった!

1966年に起きた「袴田事件」を巡り、死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判のやり直しを認めた13日の東京高裁決定について、東京高検は20日、最高裁に特別抗告しないことを発表した。今後、静岡地裁で開かれる再審公判で、無罪が言い渡される公算が大きい。(日本経済新聞)

 さらに、学校教育の問題等、多重的に存在する課題をどうするのかも考えなければならない。児童の不登校や自しが驚異的に増えている現実。それに対する教職員の増員を図らなければならないのに逆の方向に向いてしまった。兵器をかう前にしなければならないことは、多重的に存在する。

スイセンの芽が

氷が融ければまたカモたちが戻ってくる。

 


袴田事件、検察は特別抗告やめよ!

2023年03月19日 | 事件

裁判長経験者も求める再審のルール作り

 「日野町事件」「袴田事件」と、裁判のやり直しを求める著名事件で再審開始決定が相次ぐ中、東京三弁護士会主催のシンポジウム「再審法改正の実現に向けて」が3月18日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で行われた。再審事件に取り組む弁護士が、法律が不備であるために生じる問題を語り、再審請求の手続にきちんとしたルールを作るべきだと訴えたほか、裁判長として再審事件を担当した経験のある元判事が、必要なルールについて意見を述べた。

再審についてのルールがない!

 冒頭、鹿児島県大崎町で原口アヤ子さんが義弟を殺害したとして有罪となり服役した「大崎事件」の弁護団事務局長で、日弁連再審法改正実現本部本部長代行の鴨志田祐美弁護士が基調講演を行った。

 「再審法」とは、刑事訴訟法「第4編 再審」にある19条の条文のこと。再審を行う場合や、管轄の裁判所などが定められているが、再審請求審の手続に関しては、「必要があるとき」に「事実の取調」を行うとしているだけで、具体的な定めが何もない。そのため、審理は裁判官の裁量に任され、その結果、担当裁判官の考え方や能力によって、対応が全く異なる、というのが現状だ。

裁判官の”当たり外れ”で「再審格差」

 鴨志田弁護士は、特に捜査機関側が原審で提出せずに持っている証拠の開示に関するルールがないことを問題視。大崎事件を例に、「同じ事件でありながら、裁判官の”当たり外れ”で開示が遅れるなどの『再審格差』が生じている」と指摘した。

 この事件では、第2次請求審(鹿児島地裁)は、証拠開示のための訴訟指揮を全く行わないまま、再審請求を棄却。ところが、同即時抗告審(福岡高裁宮崎支部)と第3次請求審(鹿児島地裁)では裁判所が検察官に対し証拠開示の勧告を行ったところ、検察は写真のネガなど合計230点もの証拠を開示した。

「再審格差」の実態を語る鴨志田弁護士
「再審格差」の実態を語る鴨志田弁護士

 さらに鴨志田弁護士は、再審開始決定が出ても、検察官が抗告(不服申立て)を繰り返すことが冤罪被害者の救済を妨げている、と強調した

 大崎事件では、これまでに3度の再審開始決定が出ている。特に第3次請求では、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部が続けて再審開始決定を出した。ところが、検察側が特別抗告。最高裁は開始決定を破棄し、弁護側に反論の機会を与えないまま、再審不開始を決定した。そのため、第4次再審請求で1から新たに手続きを始めなければならなくなった。原口さんは現在95歳だ。

検察の「再審妨害」が被害者救済を妨げる

 再審の制度は、まず裁判やり直しを行うかどうかを決める再審請求審があり、そこで再審が決まった後に、やり直しの裁判(再審公判)という2段階となっている。再審が開始されても、検察側は再審公判で有罪の立証をすることが可能であり、無罪判決が出ても上訴できる。

 そのためだろう、かつての検察は、最高裁への特別抗告には抑制的だった。四大死刑再審(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)のうち、検察が特別抗告をしたのは免田事件だけ。しかも、この事件では福岡高裁で初めて再審開始決定が出ており、検察にとっては、特別抗告は初めての不服申立てだった。

 ところが最近の検察は、地裁、高裁と再審開始決定が続いても、平然と特別抗告を行う。確定判決と明らかに矛盾する物証があり、再審公判では検察は求刑すらできなかった、熊本の「松橋事件」でも、再審請求審で熊本地裁、福岡高裁と再審開始が相次いだ後、検察は最高裁に特別抗告した。こうなると、もはや単なる再審開始の引き延ばしとしか言いようがない。

 今年2月、大津地裁に続いて大阪高裁も再審開始を認めた「日野町事件」でも、検察は特別抗告した。静岡地裁が再審開始を決定し、今月13日に差し戻し抗告審の東京高裁が再審開始を認めた「袴田事件」でも、検察は特別抗告するための協議を行っている、と報じられている。

 鴨志田弁護士は、検察官による「再審妨害」が冤罪被害者の救済を妨げている、として、次のように訴えた。

「そもそも再審開始決定自体が認められにくい。その難しさは『針の穴にらくだを通すようなもの』とまで言われている。その開始決定がやっと出ても、検察官が抗告し、審理が長期化している。決定が取り消されれば、新たに新証拠を準備して再審請求の手続きをやり直さなければならず、さらに救済は遅れる。刑事訴訟法では、再審制度は『(有罪の確定判決を)受けた者の利益のため』と書いてあるのに、これでは冤罪被害者は救われない」

裁判所による「ネグレクト」

 基調講演の後に行われたパネルディスカッションでは、「東電女性社員殺害事件」や「名張毒ぶどう酒事件」などの再審事件に取り組んできた神山啓史弁護士も、再審制度のルールがない問題について、具体的に語った。

ルールがないために生じる格差について語る神山弁護士
ルールがないために生じる格差について語る神山弁護士

 たとえば名張事件第10次再審での、裁判所による「ネグレクト」。

「2年間、弁護団がいくら求めても、裁判所は進行協議を入れないところか、会うこともしない。我々は、それに対して記者会見をやって訴えたり、裁判官の忌避を申し立てることしかできない。忌避しても、しばらくすると退けられる。ルールがない、ということは、裁判官によるこういう『棚ざらし』を可能にしている。別の裁判官に代われば、証拠開示が行われることもある。この落差の激しさは、何とかなりませんか

再審事件担当の元裁判長も法改正が必要、と

 シンポジウムに参加した裁判官経験者からも発言があった。

 根本渉・元福岡高裁裁判長(現・弁護士)は、多くの通常事件も抱えている中、急がなければならない事件と時間をかけられる事件などの振り分けて対応していた、と裁判官時代を振り返った。根本氏は、同高裁宮崎支部の裁判長をしていた時に、大崎事件の第3次再審請求を担当した。

「事件の内容、請求人の年齢などから、できるだけ速やかに決定をするのが望ましいと判断し、最優先で対応した。そういう方向性が出れば、(審理は)進んでいく」

 ところが現状ではルールがなく、各裁判官の裁量に任されているために、「裁判官の考えによって進み方が変わるのは、厳然たる事実」と認めた。

「再審格差」が生じる原因などを語る根本渉弁護士
「再審格差」が生じる原因などを語る根本渉弁護士

元裁判長が語る「格差」の原因 

 そのうえで、弁護士から指摘される「格差」の原因として、

裁判官の基本的姿勢。(真相解明や冤罪被害者救済に)裁判所が積極的に関与すべきと考える裁判官だけではなく、それは避けた方がいいと考える裁判官もいるかもしれない

②どれだけの要件を設けるか、という再審開始の基準が裁判官によって違う

③個々の事件の事情が違う

という3点を挙げ、こう述べた。

「①と②によって格差が生じるのは好ましくない。真実発見には、証拠開示が必要になるが、(証拠開示を勧告するかどうかは)裁判官の裁量次第であるうえ、勧告しても検察官が応じるかどうかも分からない。証拠開示について一定のルールをもう置けるのは有益で、法改正は実現すべきだ

 また、静岡地裁裁判長の時に袴田事件の再審開始を決定した村山浩昭・元大阪高裁裁判長(現・弁護士)は、裁判所による「再審格差」について、こう述べた。

「弁護人から『ネグレクト』と思われるような事態は、裁判所への不信を招く。(裁判官は)弁護人と会うのは、ある程度記録を読み込んでからにしたいと考えているうちに、在任中に会えずに終わってしまったようなケースもあるかもしれないが、やはりルールは必要だ

 さらに、検察の不服申立てを認める現行制度の問題点をこう語った。

「最近の検察官は、ほとんど例外なく特別抗告までしている。検察官からすれば、誤った再審開始決定を正す利益があるのかもしれないが、そうだとしても、救済されなければならない人を早く救済する価値とどちらが大事かを考えなければならない。検察官は再審公判でも主張を述べる機会はある。救済が遅れる不利益は大きい。(法改正しないと)長く長く苦しむ方を救えない

再審事件では、何より冤罪被害者救済を急ぐべき、と述べる村山浩昭弁護士
再審事件では、何より冤罪被害者救済を急ぐべき、と述べる村山浩昭弁護士

 袴田事件について、検察が特別抗告を検討していると報じられている点についても考えを述べた。

「特別抗告は憲法違反か判例違反の理由がなければならないが、今回の高裁決定は、最高裁の課題に答えを出しており、特別抗告する理由はないはず。敢えてやるとすれば、(味噌漬け実験の結果を確認した)高裁の裁判官は色が分からなかった、とでも言うしかないのではないか。今回、もし検察側が特別抗告するようなことになれば、検察の抗告は法律で禁止しなければならないという意見がもっと高まるだろう

ルール作りは裁判官にもプラス

 元千葉地裁裁判長で、現在は袴田事件の弁護団の一員である水野智幸弁護士も、パネリストとして発言。裁判官時代には気が付かなかったこととして、「(再審弁護は)最悪の裁判官を想定してやらなければならない」と「再審格差」に触れたうえで、ルールの設定は裁判官にとってもよいはずだ、と述べた。

「証拠開示の制度が(法律で)決まれば、それに従って粛々とやればいいので、裁判官としてはうれしいはずだ」

 袴田事件で検察側が抗告を準備しているという報道には、「再審開始を確定させないために特別抗告を行えば、それは明らかに正義に反している」と語気を強めた。

「法整備を求める声を挙げて」

 最後に、神山弁護士がこう訴えた。

「今日、話題になった(著名な)再審事件だけでなく、全国には再審を求めている事件が他にもたくさんある。無実の人を有罪のままにしておいてはいけない。個々の事件に関心を持つだけでなく、(再審制度についての)法律そのものについても、声を挙げていただきたい」

ジャーナリスト・神奈川大学特任教授

神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。2020年4月から神奈川大学国際日本学部の特任教授を務め、カルト問題やメディア論を教えています。


 このような司法の状況において「死刑制度」そのものへの検討も考えねばなるまい。単なる「冤罪」ではない。証拠が「捏造」され、「陥れ」られたものだ。

いい天気に・・・

フキノトウ

クレソン


値段は3倍でも「平飼い卵」の人気じわり拡大 消費者ニーズの高まり反映 適正価格の議論に一石も

2023年03月18日 | 生活

YAHOO!ニュース(個人)3/18(土) 

<picture></picture>おはよう農園の平飼い鶏舎。奥に止まり木が見える(筆者撮影)

 
 「平飼い卵」の人気がじわじわ広がっている。値段は一般的な卵の2~3倍もするが、高くても「健康な鶏の卵を食べたい」という消費者が増えているためだ。新規参入する養鶏農家や流通業者も相次いでおり、供給も徐々に増えている。鳥インフルエンザなどによる鶏卵価格の高騰がニュースとなる中、「物価の優等生」と言われてきた卵の適正価格をめぐる議論にも一石を投じそうだ。

つついて靴紐を解く

 千葉県我孫子市の平飼い養鶏農家「おはよう農園」を先月、訪ねた。利根川のすぐ近くに立つ掘っ立て小屋のような木造の鶏舎は、広さ約100平方メートル。真冬の陽光が金網の間から差し込み、鶏舎内を明るく照らしていた。ここで300羽の採卵用の鶏が飼われている。同じ鶏舎でも、鶏インフルエンザのニュースによく登場する、何万羽も収容可能な窓のない巨大な倉庫のような鶏舎とは、あまりにも対照的だ。

 農場主の恒川京士さんと鶏舎内に入ると、全身茶色の鶏が首を上下左右にせわしく動かし、「コケッ、コケッ」「ココッ、ココッ」などと鳴きながら、もみ殻を敷き詰めた土の上を歩き回っていた。鶏は何でもつつく習性があるといい、筆者が恒川さんに話を聞いている間も、何羽かが筆者の靴紐の結び目を熱心につつき続け、ついには紐が解けてしまった。

 鶏舎は鶏の年齢に応じて3つの部屋に区切られていた。すべての部屋に、いつでも食事ができるエサ場や、角材を組んで作った寝床となる止まり木などがある。安心して卵を産めるようにと産卵箱も設置されていた。

「鶏インフルは心配していない」

 至れり尽くせりの設計だが、鶏舎は多くの野鳥が飛んできそうな川沿いにあり、しかも菌やウイルスが容易に侵入しそうな開放型。鶏インフルエンザの心配はないのか単刀直入に聞くと、「気にはしているが、心配はしていない。健康な鶏だから」との答えが返ってきた。

産みたての新鮮な卵を巣箱から取り出す恒川さん(筆者撮影)
産みたての新鮮な卵を巣箱から取り出す恒川さん(筆者撮影)

 意味を問うと、「ストレスのかからない広々とした環境で、よいエサを食べて暮らす鶏は体力があり、病気にかかりにくい。事実、うちの鶏は病気らしい病気をしたことがなく、そのため、(卵の安全性に影響を及ぼす可能性のある)抗生物質も使ったことがない」と答えた。開放型鶏舎に関しても、空気が絶えず流れるため、むしろ感染症の予防にはよいと感じているという。新型コロナウイルスの感染予防策を思い出すような話だ。

 もともと会社員だった恒川さんが養鶏農家になったのは約2年前。「人と違うことをやりたい」との思いから、周囲では誰もやっていない平飼いを始めた。卵の評判は口コミなどで徐々に拡散。1個あたり82円という平均小売価格の約3倍も高い値段にもかかわらず、「リピーターが増え、注文に出荷が追い付かないこともある」と話す。

1坪あたり6~8羽

 関西地方を中心に有機農産物などの宅配サービスを手掛けるオルターでは、平飼い卵は定番商品の1つだ。オンライン・ショップでは6個入りが税込810円で販売。1個あたり135円になる。やはり一般的な卵と比べてかなり高価だ。だが、西川榮郎代表は「需要がある」と話し、売れ行きの心配はまったくしていない様子だ。

 高価なのは、おはよう農園同様、単位面積あたりの鶏の数が少ない分、生産コストが高くつくため。西川代表によると、オルターが平飼い卵を仕入れている養鶏場の飼育密度は、1坪(3.3平方メートル)あたり6~8羽。平均的な養鶏場に比べて「非常に低い」という。

 飼育密度にこだわるのは、「安全な卵は健康な鶏から」との信念からだ。「高密度飼育は病気を招きやすく、病気になると鶏に抗生物質などの薬を投与することになるので、卵の安全性にとってもよいことではない」と西川代表は説明する。

オルターの仕入れ先の1つ「タナカファーム」の平飼い鶏舎(オルター提供)
オルターの仕入れ先の1つ「タナカファーム」の平飼い鶏舎(オルター提供)

9割以上がケージ飼い

 だが、平飼い卵の流通量は日本ではけっして多くない。現在、国内で流通している卵の9割以上は「ケージ飼い」と呼ばれる飼育法で飼われている鶏の卵だ。

 ケージ飼いでは、鶏は巨大な倉庫のような鶏舎の中で、自由に身動きできないほど狭くて足元も不安定な「バタリーケージ」と呼ばれる檻に入れられ、卵を産み続ける。ケージ飼いの鶏はストレスから免疫力が低下して病気にかかりやすく、抗生物質を投与されたり殺処分になったりする鶏も多いと関係者は指摘する。家畜への抗生物質の過剰投与は、人の生命を脅かす薬剤耐性菌が生まれる原因になると、世界保健機関(WHO)などが警告している。

 このため、アニマルウエルフェア(動物福祉)や薬剤耐性菌対策の観点から、ケージ飼いを止め、平飼いに移行する動きが世界的に広がっている。

世界各国で次々と廃止

 欧州連合(EU)は一早く2012年にバタリーケージの使用を禁止した。さらに、バタリーケージよりも広く巣箱や止まり木などを備えた「エンリッチドケージ」の使用も、27年に禁止する計画だ。養鶏全体に占める平飼いの比率はEU平均ですでに5割を超え、中にはドイツなど9割を超えている国もある。

 米国でも平飼いが急速に増えている。農務省によると、今年2月時点の平飼い比率は37.1%と、10年前の9.7%の約4倍。カリフォルニア州やマサチューセッツ州など、州法でケージ飼いを禁止する州も急速に増えている。

 動きは欧米にとどまらない。ニュージーランドは昨年、バタリーケージの使用を全面禁止した。オーストラリアも36年までにバタリーケージを禁止する計画。台湾は、脱・ケージ飼いの取り組みの一環として、どれが平飼い卵でどれがケージ飼い卵か買い物客が一目見てわかるよう、卵にその旨を表示する仕組みを導入した。消費者が平飼い卵を選ぶことで、生産者に平飼いへの移行を促す狙いだ。同様の取り組みは韓国でも行われているという。

認証制度も登場

 これに対し日本ではケージ飼いが依然主流だ。だが、その日本でも、平飼い卵が注目を浴び始めており、恒川さんのような平飼い農家や、平飼い卵を扱う流通業者が増えている。

 例えば、大手スーパーのイオンは、20年に自社ブランドの平飼い卵を発売。取り扱い店舗数は、昨年11月時点で全国約900店舗にまで増えた。

有機農産物であることを証明する「有機JAS」のような認証制度も登場している。

 有機農産物の認証事業などを手掛ける「エコデザイン認証センター」は、国内初となる平飼い卵の第三者認証制度を作り、昨年6月から運用を開始した。鶏卵業界の自主ルールである「鶏卵の表示に関する公正競争規約」は、「鶏舎内又は屋外において、鶏が床面又は地面を自由に運動できるようにして飼育した場合」、平飼いと表示できると定めている。しかし、それ以上の細かい規定がなく、「何を持って平飼いというのか基準を設けてほしい」という声が消費者や養鶏農家、流通業者などから寄せられていたという。

 同センターの平飼い認証を得るには、鶏が自由に歩き回ったり砂浴びをしたりするための土間や、止まり木、巣箱などの設置のほか、センターが定めた1羽あたりの最低床面積の確保など、多くの規定を満たさなくてはならない。認証の種類は、主に屋外で飼う「放牧平飼い(フリーレンジ)」、鶏舎内で飼う「平飼い(ケージフリー)」、立体型鶏舎で飼う「多段式平飼い(エイビアリー)」の3種類あり、認証マークも別々だ。現在、認証申請者に対する審査を進めているところという。

持続可能な卵とは何か

 日本では、卵は長年、他の食材が次々と値上がりする中でも値段が据え置かれ、「物価の優等生」と言われてきた。日本の食文化にも欠かせない食材の1つだ。しかし、世界的なケージ飼い廃止の流れや鶏インフルエンザの大流行によって、多くの消費者が、図らずも安い値段のからくりやその影響を理解し始めている。平飼い卵の人気がじわじわ広がっているのも、そのためだ。SDGs(持続可能な開発目標)への世論の関心が高まっているだけに、「持続可能な卵とは何か」といった議論が今後、活発化する可能性もありそうだ。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。


ストレスフリーでこそ免疫力は強化されます。
人も同じでしょう。
風も日も当たらない場所で、電照で1日を20時間に設定。

WBC関係で訪日した選手やマスコミ関係。
日本の「安全・安心・安価」な食事を堪能して帰ったそうだ。
プライベートジェットを使用する著名選手も。


昨日からの雪、今日昼過ぎまで降ったりやんだり。

江部乙の庭で桐の木が多分ネズミにやられている。この木は毎年。うまいのか?


「“⼼は⼥”と言えば⼥湯に⼊れる」という根拠なきデマがトランス女性を追い詰め、女性を分断させている

2023年03月17日 | なんだかんだ。

トランスジェンダーの当事者らが記者会見を開き、ネット上に投稿されている差別的な言説が当事者を苦しめていると訴えました

Satoko Yasuda 安田 聡子

 ,Jun Tsuboike 坪池順

ハフポスト2023年03月17日

 

    LGBT差別禁止法などの法整備を求める声が高まる中、ネット上で「“⼼が⼥”だと⾔っただけで⼥湯に⼊れるようになる」など、トランスジェンダー女性をターゲットにしたバッシングが拡散している。

    そもそもは、岸田文雄首相の秘書官が、LGBTQ当事者について「見るのも嫌だ」などの差別発言をしたことで、再び高まった差別禁止や理解増進の法整備の議論。

それが「LGBT差別禁止法ができると、“心が女”と言えば女湯や女子トイレを利用できる」という根拠なき主張にすり替えられ、女性の恐怖を煽っている。

    この問題について、トランスジェンダー当事者や弁護士らが3月16日に記者会見を開き、差別的な言説はトランスジェンダー女性を追い詰めるだけでなく、女性の分断を生むと訴えた。

SNSのデマは「現実の暴力につながる」

    LGBT法連合会顧問で、トランス女性の野宮亜紀さんは、中傷やデマがトランスジェンダーの人たちを追い詰め、生きる場所を奪っていると話す。

    野宮さんは、1990年代からLGBTQの人たちの権利擁護活動に携わっており、宗教右派や保守派政治家によるバックラッシュを見てきた。

近年、その攻撃の矛先が向かっているのがトランスジェンダーだという。

    野宮さんは、SNSには「俺が変態なら、性自認が女性って言って、男性器を出して女湯に入る」など、女性を恐怖に陥れるような投稿のほか、思い込みによるトランス批判も投稿されている、と話す。

    トランスジェンダーの中には、学校や職場でいじめを受けたり、家族から絶縁されたりして、インターネットで繋がっている友人にしか心を許せないという人たちもいる。

    そういった当事者から「ネットのデマを見て、自分が安心して生きられる場所はこの国にはないと感じた」「トランスジェンダーを犯罪者扱いするようなツイートを目にして、スマホを開くことさえ怖くなった」といった絶望の声が支援団体に寄せられているという。

    また、海外ではトランスジェンダーの人たちをターゲットにしたヘイトクライムや殺人事件が起きており、野宮さんは「SNS上の偏見は、現実の暴力につながる」「ヘイトクライムが日本で起きないという保証はありません」と強調する。

中傷は「トランスジェンダーの人たちの居場所を奪っている」

    「Rainbow Tokyo 北区」代表の時枝穂さんもトランスジェンダー女性で、高校を卒業する頃から少しずつ性別移行(自認する性別にあわせて、外見などを変えること)を始めた。

ただ、法律上の性別は変更しておらず、「見た目と戸籍の性別が合わないことで、本当にたくさんの苦労がありました」と話す。

職場で「男性として扱ってほしくない」と伝えた時には「余計なトラブルなどを起こさないでほしい」と言われたこともあるという。

男子トイレに入るのは苦痛だったものの、女子トイレを使用することはできず、多目的トイレを探しに別のフロアまで行かなければいけなかった。

周りからの否定や偏見に苦しんできた時枝さんも「ヘイトはトランスジェンダーの人たちの居場所を奪う」と訴える。

「インターネットの中に自分の居場所を求める人も少なくありません。そうした方たちがヘイトでものすごく傷ついていて、外出するのも怖い、トイレにも行けない、仕事がない。どうやって暮らしていったらいいんだろうと思います」

「“心が女”だと言っただけで女湯に入れるようになる」は誤り

    LGBT差別禁止法に反対する人たちが持ち出す、「“心が女”だと言っただけで女湯に入れるようになる、断れば差別と言われかねない」という主張。

弁護⼠の⽴⽯結夏さんは、その主張は誤りだと指摘する。

    厚生労働省の定めた「公衆浴場における衛生管理要領」では、公衆浴場を男女別にすることが求められている。

    立石さんによると、この「男女」の基準は、外見上の体のつくりだ。そしてどのようなサービスを提供するかは、公衆浴場の管理者の判断になるという。

    トランスジェンダーの人たちの中には、性別適合手術を受けている人も受けていない人もおり、人それぞれの状況は異なる。

    立石さんは、「性別適合手術を受けて、自認する性別と全裸になった外見から判断される性別が一致している場合は、自認する性別の浴場を利用しても問題はないだろう」と説明する。

    実際、性別適合手術を受けたトランスジェンダー女性が、女性用の浴室を利用して何の混乱もなかったと認定された判例もある。

    一方、立石さんは「全裸になった時の外見と自認する性別が異なる場合は、施設の管理者との調整なしに自認する性別の浴場に入れることはない」と指摘。

そのため「男性的な身体に見える人が『心が女性だ』と言って女湯に入れる、というのは誤りだ」と話す。

また、立石さんは「トランスジェンダーのふりをして女湯に入ってくる人がいるかもしれないと言われることがあるようですけれども、“心が女性”だと言いさえすればトランスジェンダー女性になれるものではない」とも語った。

「トランスジェンダーかどうかは、生育歴や通院歴、家族への聞き取りなどによってすぐにわかることですから、トランスジェンダーのふりをして、性犯罪から言い逃れるのは極めて難しいことです」

さらに、性犯罪や性暴力、迷惑行為は当然許されず取り締まるべきものだが、「それは性暴力を取り締まる、ということでトランスジェンダーを取り締まることにはならない」と強調した。

差別的な発言は、女性を守るためのものではない

    トランスジェンダーを排除する言説は、女性を守るためのようにも見える。しかし野宮さんは「実際は分断を生み、女性を危険にさらすものだ」と話す。

「トランスジェンダーの排除を煽動する人々は、体が男性の人が新たに施設を使うようになる、そのような人々がルールの変更を迫っているというイメージを強調して、女性が危険に晒されると主張します」

「そういう主張は、一見女性を守るという正しい主張に沿っているようですが、実際は守られるべき女性と、守られなくて良い女性の区別を生みます」

「性暴力の被害を受けたトランス女性の中には、トランスであることが明らかになるのを恐れて、警察に訴えることができない人たちもいます。トランス女性を他の女性から区別して排除しようとすることは、本当に女性を守るものと言えるのでしょうか」

立石さんも、法務省の性犯罪に関する刑事法の検討会で問題になっているのは、トランスジェンダーの性犯罪被害者であって加害者ではない、と説明。

トランス女性のふりをした男性が女性スペースに入ってくるという主張について、「トランスフォビアをあおる材料」であり「トランスジェンダー女性とシスジェンダー女性が対立しているかのような議論は、いたずらに社会の分断を進める」と話す。

    東京レインボープライド共同代表の杉⼭⽂野さんも、「これはトランスジェンダーにまつわる問題ではなく、男女があまりにも不平等に扱われてきたからこそ引き起こしてしまっている問題なのではないか」と語った。

トランスジェンダー男性の杉山さんは、性別移行を始めた後に、男性から「男なら相手に嫌がられても、無理やり触るくらいしなければ」と言われたこともあったという。

一方、女性として過ごしていた高校時代、杉山さんや同級生は日常的に電車で痴漢の被害にあっていた、と振り返る。しかし周りの大人たちから、「スカートを短くしている本人が悪い」「抵抗しなかった自分の責任だ」と被害者である女性たちが非難された。

「女性」「男性」として全く違う景色を見てきた杉山さんは「トランスジェンダーヘイトのほとんどが、トランス女性に対するものであるということが、この問題を象徴しているように感じる」と話す。

「トランスジェンダー女性を守る法律ができると、シスジェンダー女性の安全なスペースが脅かされるのではないかと不安に感じられる方が多いのは、トランスジェンダー女性の問題ではなく、またシスジェンダー女性の問題でもなく、いつまでたっても男女不平等なこの日本社会の構造に原因があります」

「本来であればこの差別的な構造に共に声を上げることができるはずのシスジェンダー女性とトランスジェンダー女性を、その不安に漬け込み、さらに不安を煽るような悪質なデマで対立させて、どちらも改善に向けて進まなくさせようとしている気がしてなりません」


 社会的な対応が遅れていることも事実でしょう。「国」が十分な対応を怠っていることが重大です。

 今日はまた冬に逆戻り。先日まいた融雪剤も見えなくなりました。


割り箸が熱い!今世界と国内で起きていること

2023年03月16日 | 自然・農業・環境問題

田中淳夫森林ジャーナリスト

YAHOOニュース 3/13(月) 

 

 今、割り箸が世界中で静かな盛り上がりを見せている。

 と言っても、身近なところでは気付かないだろう。むしろ割り箸を見ることは少なくなり、プラスチック箸が増えている。何が起きているのだろうか。

 実は世界中の市場およびビジネス動向を調査する大手マーケティング会社IMARCグループが、2022年の世界の割り箸の市場規模は181億ドル(約2兆4000億円)に達すると発表したのだ。そして23年から28年までに5.30%の成長率が見込まれ、268億5000万ドル(約3兆000億円)に達するだろうと予測を出している。

 箸、とくに割り箸の利用は日本だけでは? そう思いがちだ。

 そもそも箸という細い棒2本だけで、食材をつかみ、切り、すくう……という真似ができるのは日本人だけ、という思い込みもある。だから箸が使われるのは、日本以外では韓国や中国、台湾、それに欧米の日本食レストランで使われる程度では。それなのに? だが、どうやら時代は大きく動いているらしい。

 まず欧米人も、かなり頻繁に箸を使うようになってきた。私も、たまたま欧米人の食事風景を目にしたとき、器用に箸を使っていて、一昔前のおぼつかない箸の握り方とは違うことに気付いた。日本食が広がるとともに、箸の使い方に習熟した人が増えているのだ。日本食だけでなく麺類など箸を使うアジア料理全般の嗜好が高まっていることも影響しているのだろう。

 加えて割り箸はSDGsに合致する、という認識が広まってきた。今、欧米ではプラスチック製のカトラリー(スプーンやフォークなど)の使用をなくしつつある。その代替に木製や紙製のカトラリーが使われるが、木製カトラリーの原点のような割り箸にも目を向けたようなのだ。

 木材は生分解性で、使用後に焼却しても有毒ガスも二酸化炭素も理論上出さない、そして堆肥化も可能という点からだ。また耐水性や耐久性なども十分にある。

 加えて最近は、箸の効用も知られだした。箸を使うことで指先を動かすと脳を刺激して記憶力を高めるだけでなく、食品のグリセミック指数(血糖値の上昇度合いを食品ごとに示す数値)を低下させるという研究が出ている。

 さらに割り箸はコストパフォーマンスが高くデザイン性もあるので、飲食店向きで、とくにファーストフード系のチェーン店で割り箸の普及が進んでいるというのである。

 ほんの少し前まで、割り箸は一度の使用で使い捨てられるから森林を破壊すると言われた。ところが今では、木材を無駄なく使う木工品だから環境負荷が少ないとされるのだ。このような消費者意識の変化が、海外の割り箸市場を成長させたらしい。

 一方で、日本国内の状況をかいま見ると、むしろ割り箸利用は漸減傾向が続いている。近年の割り箸消費量は、約140億膳。約20年前は250億膳だったのだから激減している。これはコロナ禍の影響で外食が避けられた影響もあるが、プラ箸への転換が進んだことも大きい。

 しかし衛生面で大騒ぎしたコロナ禍にこそ、割り箸は使われるべきではなかったのか。繰り返し利用するプラ箸は、傷がつき細菌が繁殖しやすくなるから消毒が必要となるが、割り箸は安全性が高い。加えて環境面でも、割り箸は林業を支え、その収益が森林整備にも役立つという指摘されている。

 ところで日本の割り箸市場で人気を呼んでいるのは、高級割り箸だ。

超高級な手づくり吉野杉割り箸(筆者撮影)

 国内でもっとも割り箸生産業者の多い奈良県吉野地方では、近頃もっとも売れるのは、最高級割り箸の「らんちゅう」だという(吉野杉箸商工業協同組合)。これは食べるときに割るのではなく、最初から1本ずつに分かれており、それを紙の帯で止めたものだ。主に高級和食店などで供されてきたものが、一般にも人気が高まってきた。さらに土産需要が結構あるという。とくに外国人には日本土産、奈良土産として喜ばれている。

 また手作業でスギの赤い心材を削りだした夫婦箸も、高価(2000円以上)なのに、よく売れるそうだ。もはや使い捨ての品ではなく、高級木工品として認められたのだろう。

 また福島県いわき市の磐城高箸でつくられる高級な杉柾目利久箸は、ノベルティや贈答品、販促品などにも人気だ。こちらは箸袋なども含めたデザインにこだわる商品群を売り物にしている。

 なおこれら高級割り箸は、一度きりの使い捨てではなく、持ち帰って自宅で何度でも使ってくださいと呼びかけている。

磐城高箸のオシャレな箸袋入り杉利久箸(磐城高箸提供)

 一方でまったく別の路線を選んでいるのが、岐阜県郡上市の郡上割り箸だ。

 こちらは元禄箸と呼ぶ、通常見かける安価な割り箸である(もっとも中国産と比べると価格は4~5倍する)。ただし地元のスギにこだわって製造されている。

 この箸を元に展開しているのが、「カッコいい大人の割箸プロジェクト」だ。

 仕掛け人は、一般社団法人カッコいい大人の志。大阪の飲食店で、国産割り箸を1膳20円で買ってくれるように呼びかけているのだ。原価4~5円の箸を4倍以上で販売することになる。

 そして収益の一部は、母子支援施設や養護施設へ寄付している。現在は年間150万~200万円だが、ゆくゆくは森林保全に供することもめざしている。それによって使用客に心の豊かさを提供しようという発想だ。

 めざすのは「箸1膳からの社会貢献」である。社会貢献には興味があっても、機会がない、時間もないという人に、外食の際に少し割り箸にお金をかけることで子どもたちの未来、そして森林保全に協力しませんか、と呼びかけるわけだ。それを「カッコいい大人」としている。店のスタッフが国産割り箸を使う意義を説明して賛同した人に購入してもらう。

 国産割り箸を購入することで単に寄付するだけではなく、世間に子どもたちの貧困が広がっていることや、放置されて森が劣化していく問題を知ってもらうきっかけになればというわけだ。

 レジ袋の有料化を通して脱炭素の必要性を知ってもらうのと同じように、身近な割り箸を使って日本の諸問題を考えてもらいたいという。

 私も外食時にはプラ箸ではなく、割り箸を求めるようにしている。店になければ、自分の鞄からマイ割り箸を出す(笑)。割り箸を欲する客もいるのだよ、という意思表示だ。

 割り箸は、安価で使い捨て商品の象徴のように扱われてきた。しかし時代は、割り箸こそ環境保全につながり、その購入が社会貢献になろうとしている。

 海外の割り箸ブームとともに、割り箸は高級な木工芸品であり、社会に役立つ付加価値もあるという新たな展開が到来したのかもしれない。

田中淳夫  森林ジャーナリスト

日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴の「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで活動中。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、そして自然界と科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然だけではなく、人だけでもない、両者の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『絶望の林業』(新泉社)『獣害列島』(イースト新書)など。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』。最新刊は森の常識に異論を突きつけた『虚構の森』(新泉社)。


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木工的芸術品だ。

ところで、Colaboに対する結論が出た。
不正はなかった。
賠償も求めないというものだった。
更に、Colaboへの接近・妨害を禁止する仮処分 東京地裁から出された。
Colaboへの接近や妨害活動を禁止し、カフェが開催される夜、バスの停車位置の半径600メートル以内での妨害行為やColaboの事務所への立ち入り、関係者への電話や面会強要を禁じた。

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女性差別の逆流許すな

白石都議 Colabo妨害を追及

「しんぶん赤旗」2023年3月16日

 日本共産党の白石たみお東京都議は14日の都議会厚生委員会で、虐待や性被害に遭う若い女性に寄り添う「若年被害女性等支援事業」の受託団体Colabo(コラボ)の支援活動に対する妨害の実態を告発しました。

 白石氏は、福祉保健局の再調査で、委託料の過払いも不正もなかったと確認。事業の重要性について、コラボにつながった17歳の少女の「体目的の男の人しか自分に関心を持たず、頼れるのはその人だけだった」という言葉を紹介し、実態を知っているか質問。福祉保健局の奈良部瑞枝少子社会対策部長は「十分承知している」と答えました。

 白石氏は「少女たちに必要なのは、困ったときに相談できる、信頼できるおとなとの関係性だ」と強調し、夜の買春者があふれる街で、コラボがバスとテントを設置し、少女らに食事や物品を無料提供し、支援につなげる活動を紹介。バスをのぞき込んで撮影したり、参加者や当事者を取り囲み暴言を吐いたりする妨害で活動が困難になっていると告発しました。

 支援事業の重要性を問われた西山智之局長は「今後も困難を抱える若年女性を支援していく」と答弁。白石氏は「女性差別の社会を続けたい逆流に毅然(きぜん)と立ち向かうことが必要だ」と強調しました。