週のはじめに考える 見くびられぬために
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◆選挙結果と民意のズレ
◆国民を恐れない政治
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維新もだめです。
「コロナ後の世界」を考える#2
文春オンライン
日本がますます貧乏になり、生産力が低下し、国力が衰退しているのはなぜか? 国力を回復する真の手立てとは何か? 新著『コロナ後の世界』を上梓した思想家・内田樹さんが語る“コモンの再生”のビジョン。
◆◆◆
衰退の一途を辿る日本
――最近のニュースでもOECD諸国と比べた時の日本の平均賃金の安さ、アメリカの約半分で、韓国より低いことが話題になっていました。日本がいま国際競争力から科学技術力まで国力の衰退の一途をたどっている要因はなんでしょうか。
内田 日本の国力が衰微している最大の理由は、多くの人が短期的な自己利益の増大に走って、長期的なタイムスパンの中で、自分と共同体の利益を安定的に確保するためにはどうしたらいいのかを考える習慣を失ったからです。目先の自己利益ばかり考える利己的な人間ばかりになったら、市民社会も国民国家も持ちません。
近代市民社会は、ロックやホッブズやルソーによれば、私権の一部について制限を受け入れ、私有財産の一部を供託して「公共」を立ち上げたことによって成立します。周りの人間をすべて「敵」とみなして、「万人の万人に対する戦い」に心身をすり減らすよりは、短期的には私権の制約、私財の供託を受け入れて、公権力による統治を受け入れた方が長期的には自己利益が多いと人々が判断した。そういう話です。人間は利己的にふるまうはずなので、「短期的な損」を受け入れることで「長期的な得」を取ると考えた。でも、この近代市民社会論では「人間は長期的な自己利益を配慮する」ということが今はもう前提として採用されなくなった。「長期的な自己利益を考える」という知的習慣がなくなってしまったからです。今ここでの目先の利益が得られるなら、「あとは野となれ山となれ」という人たちが統治機構をコントロールして、政策を立案して、ビジネスをやっている。
今の日本はもう近代市民社会の体をなしていません。私権私財を削って、公共に供託するどころか、逆に、公権力を用いて私利私欲を満たし、公共財を奪って私財に付け替えるような人たちばかりがエスタブリッシュメントを形成している。「そういうことができる」ということが権力者なのだ、そのどこが悪い。文句があるなら、まず自分が権力者になってみろ…というタイプのシニカルな権力観を平然と語る人たちが「リアリスト」を名乗っている。
日本は国際社会から敬意を寄せられない国に
――モリカケ問題から五輪利権まで、公の中心を担う人々が小賢しいスキームを考え出しては自己利益を追求しています。
内田 これはシリアスな亡国の兆しだと思います。豊かで安全な社会で暮らしたいと思うなら、公共財を削り取って私腹を肥やすより、わずかであっても公共のため、他者のために、みんなが「貧者の一灯」を持ち寄って、厚みのある公共を構築することが一番効率的なんです。本当に利己的な人間であれば、短期的には非利己的にふるまうはずなんです。その近代市民社会論の出発点まで戻らないといけないと思います。
でも、今の日本人は公共というのは、「みんなが持ち寄ったもの」とは思っていません。海や山のように昔からそこにある「自然物」のようなものだと思っている。だから、公共財をいくら削り取っても、いくら濫用しても、「分配にあずかれる人間」と「分配がない人間」の格差は生まれるけれども、公共財そのものはいくらでも「食い物」にできると思っている。だから、自分の支持者や友人は公権力を使って便宜を図り、公共財を使って優遇することを少しも悪いことだと思っていない。今、多くの日本人が公人は公平で廉潔であるべきだと思っていません。そんなのは「きれいごと」だと鼻先で笑っている。でも、公人が倫理的なインテグリティ(廉直、誠実、高潔)を失ってしまったら、国はもう長くは持ちません。
現に、国内ではまだ偉そうにできるでしょうけれど、日本はもう国際社会から「真率な敬意」を寄せられない国になってしまった。もちろん、日本の金や軍事力を当てにして、にじり寄ってきて、ちやほやするところはあるでしょうけれども、それは別に敬意を抱いてそうしているのではない。利用価値があると思うからそうしているだけです。
今の日本政府が「世界と人類のあるべき姿」を示して、国際社会に指南力を発揮すると期待している人は国際社会にはいません。でも、「他者からの敬意」なしでは人間は生きてゆけない。国だって同じです。「他者からの真率な敬意」という糧を失うと、「生きている気」がしだいに失せてくる。今の日本があらゆる指標で国力が衰微しているのは、そのせいなんです。金がないからでも、軍事力が足りないからでもない。他国の人たちから敬意を抱かれていないからです。
――本当に耳が痛いご指摘です。
最優先は、国民全体が豊かで幸福に暮らせるようにすること
内田 だから、国力を回復するというのも、それほど難しい話じゃないんです。別に大金を儲けたり、軍事力を増強したりする必要なんかない。国際社会から見て「日本はいい国だな。みんな幸せそうに暮らしているな」と思われる国になれば、それでいい。それが敬意を醸成する。だから、とにかく国民全員が豊かで幸福に暮らせるように、制度を整備して、厚みのある、手ざわりの温かい公共を再構築する。
最優先に整備すべきは、行政と医療と教育です。その領域には十分な公的支援を行う。そうすれば、市民たちは安心して暮らし、教育を受け、良質な医療を受けられる。でも、実際には、「民営化」や「稼げる大学」や「稼げる医療」などというビジネスのロジックを持ち込んで、公共セクターがどんどん痩せ細っている。
――行政のアウトソーシング化ですね。
内田 公務員を減らして、その分の仕事を派遣会社に丸投げしていますが、たしかにそうやって非正規職員を増やせば人件費コストは削減できるでしょう。でも、人材派遣会社から送られる非正規職員に、公務員としての責任感や忠誠心を求めることは無理です。労働者が給料分以上の働きをするときの最大のインセンティヴは組織に対する帰属意識と、与えられた使命を全うしようとする責任感です。行政をどんどん民営化して、ドライな雇用関係に置き換えてゆけば、たしかに安い労働者を使い倒すことはできるでしょうけれど、彼らにオーバーアチーブを期待することはできない。しかし、全員が「給料分しか働かない行政組織」が厚みのある、手ざわりのやさしい公共セクターを管理運営できるはずがない。
パイが大きくなっている間は、人間はあまりパイの分配方法については文句を言いません。でも、パイが縮み出すと、急に「どういう基準で分配しているのだ。誰がもらい過ぎているのだ」と言い出す。自分の取り分を増やすためには、隣の人の取り分を減らすしかないと思っている人たちが、どうやって他人の取り分を減らすかばかり考えるようになる。
今の日本で起きているのはそういうことです。全員が他人の取り分を減らす競争をしているわけですから、パイが大きくなるわけもないし、味がよくなるわけもない。ただ、お互いの足を引っ張り合いながら、全員が貧乏になるだけです。
新自由主義は先がないということに気づいてよい頃だ
――それは新自由主義の弊害も大きいのでしょうか。
内田 新自由主義の「選択と集中」というのは、パイが縮んでいるんだから、生産性のないメンバーにはパイをやるな、生産性の高いメンバーにだけパイを食う権利があるという露骨な弱肉強食イデオロギーのことです。それで25年やってきた。そしたら、日本はますます貧乏になり、日本の生産力はますます低下し、人々はますます暗い顔になってきた。もういい加減に「こんなやり方」をしてたら先がないということに気づいてよい頃です。
斎藤幸平さんや白井聡さんのような若い世代から「資本主義はもう先がない」ときっぱり主張する人たちが出てきたのは当然だと思います。短期的な金儲けのことより長期的な視野で地球環境を考えないと、人類全体が致命的な損害をこうむるということは誰が考えても、わかっていることです。でも、そのための政策を若い人たちが必死に訴えて、それからメディアが反応して、それから政治家がいやいや重い腰を上げるというあたりに日本の指導層の構想力の衰えを感じます。
再生の糸口は「人に親切にすること」
――コロナ禍のなかでの気候変動に対する関心と資本主義への懐疑の高まりを見ていると、明らかに風向きが変わってきたように思います。日本再生の糸口はどこにあるのでしょうか。
内田 繰り返し書いてきたことですが、パイが縮んでいるからと言って、隣人の取り分を奪い取ろうとすれば、共倒れになるだけです。今やるべきことはその逆です。さきほど「貧者の一灯」と言いましたけれど、自分がいくら持っているかということは関係ないんです。わずかであっても公共に提供できるものを自分は持っていると感じるなら、その人が最初の贈与者になればいい。みんなが少しずつ私財の一部を公共財に供託して、「コモン」(共有財)として全員がアクセスできる領域を増やしていく。医療や教育が公共財として誰にでもアクセスできるものになれば、僕たちはずいぶん安心して暮らしてゆける。それが社会を豊かにする早道だと僕は思います。なんだか小学校の学級標語みたいで、気の抜けるような話ですけれども、一番大事なのは「人に親切にすること」だと思います。
もちろん、政府や自治体に向かって「格差是正」「弱者への手厚い分配」を求めるのは必要なんですけれども、その時にもあまり強権的な方法を求めるべきではない。格差の是正のために、公権力が富裕者の懐にじかに手を突っ込んで再分配しようとしたケースは過去にうまくいったためしがありません。富裕者からいったん取り上げた財貨を貧者に再分配する前に自分の懐に入れてしまう誘惑に抗うことができた権力者は歴史上まれです。
そういう手荒な方法を試す前に、自分の身銭を切って公共を再構築する方が話が早い。僕はそう思います。「貧者の一灯」は侮れないです。塵も積もれば山です。みんなで米粒一つ持ち寄っても、いつかは食べ物として分かち合えるくらいはたまります。「身銭を切って公共を立ち上げる」というアイディアはそれほど空想的なことではないと思います。
内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。他の著書に、『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学』『サル化する世界』『日本習合論』『コモンの再生』、編著に『人口減少社会の未来学』などがある。
待ったなし 気候変動
日本政府は「躊躇している」とか「待ったしている」とかの状態ではない。積極的に「絶滅」への道を歩いている。毎回受け取る「化石賞」が物語る。
岸田首相も気候変動と人間活動について「科学的検証が前提」などと、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など国連の報告を無視。
科学の分野にしても、音楽の分野にしても海外在住「日本人」が目につく。
選挙報道、総裁選挙より少ないそうだ。
と言っても、この国では約半数の人が選挙に行かないし、おそらく興味もない。
別にそのことを、とやかく言うつもりなどない。私自身がそうだったからだ。選挙や政治のことを本気で意識するようになったのは30代になってから。
20代前半は、どこで選挙がやっているかも知らなかったし、選挙のお知らせが来たところで、すぐになくしていた。そもそもいつが選挙期間中なのかも知らなかった。ただなんとなくうるさい時期で、それは気がつけば終わっていて、選挙なんて「運悪く遭遇した天災」みたいなものだった。
そんな私がいつからガチ勢になったのかというと、はっきりいつと言えるわけではない。ただ、20代の頃、ふと思った。
私はこのまま行けば、政治や社会について真剣に考えることなど一切ないまま死んでいくのではないか、と。
当時は1990年代で、日本はすでに不況だったけれど「平和で豊か」という神話はまだ生きていて、本気で政治のことを考えなくても特に問題なく生きていけそうな、世界で唯一くらいの国だと多くの人から思われていた。そんな国に生まれて、このままだったら半径5メートルのことだけで生きていけそうなのが、ものすごくヤバいような気がした。
そんなこともあって、「可愛い子には旅をさせろ」とばかりに、私は自分自身を過酷な旅にブチ込んだ。右翼団体に入会させ(2年で脱会)、北朝鮮やイラクに行かせたのである。もともと知識もない上に関心がないので、とにかく「興味を持つ」には極端な方法をとるしかなかった。それくらいしなければ、「この女(自分)は社会に目など開かないだろう」という確信があったのだ。
そうして少しずつ開かれていった私の目は、31歳にして、初めて視界がクリアになった。
きっかけは、何度も書いているが2006年に訪れたフリーター労組のメーデー。そこで話されていたことにより、長年の「謎」「もやもや」に答えがもたらされたのだ。
その時、私は物書きデビューして6年目になっていた。ではそれ以前に何をしていたのかと言えば、フリーターだった。19〜24歳の頃だ。
そんなフリーター時代、就職氷河期世代の私の周りにいたのは同じくフリーターか、バブル崩壊後に吹き荒れたリストラで仕事が何倍にも増えた過労の正社員で(時給で割ると最賃を下回るくらいの給料)、なぜかみんながみんな、どんどん心を病んでいった。
ある人は、就職できず、不安定な生活を続けていることを親や周りの大人たちに執拗になじられることで。ある人は、厳しいノルマと長時間労働に身も心も苛まれて。そういう私もフリーター時代はリストカットを繰り返し、薬を大量に飲むオーバードーズをやらかして救急車で運ばれたこともある。筋金入りの自殺志願者だった。
当時、私は自分が生きづらい理由を、自分の生き方が不器用だからなのだと思っていた。
しかし、今の私は自殺願望に取り憑かれていない。それは自分に仕事があり(不安定だけど)、その仕事でそれなりに「人間扱い」されているからだと断言できる。
翻って、フリーター時代の私は「誰にでもできる仕事」を「誰にでもできる」とバカにされながら低賃金で担い、いらなくなったらすぐに放り出されていた。そうして次の職探しに一週間もかかれば、電気やガスが止まった。そんなふうに困窮を極める非正規労働者だったのに、「フリーター」という軽い語感からなぜか「好きでやってる」「働く気がない若者」といった文脈でバッシングばかりされていた。自分でも自分が「貧困」だということに気づかず、リストカットを派手にやってしまうのが、決まってバイトをクビになった日だということにも気づかずにいた。
そんな中、友人知人の多くが自殺という形で命を落とし、またウツになってひきこもった。
そのような私たちの苦境の背景には、非常に大きな政策の転換があったということを、私は06年のメーデーで初めて知った。大きいのは95年に日経連が出した「新時代の日本的経営」だ。これによって、働く人をこれからは三つに分けましょうということになったのだ。
ひとつは「長期蓄積能力活用型」。安定層の正社員。
ふたつめは「高度専門能力活用型」。ものすごくハイスペックで高給取りの派遣社員。
みっつめは「雇用柔軟型」。いつでも使い捨てにできる非正規労働者。
この提言によって労働法制の規制緩和が進み、特に若者が狙い撃ちされるように非正規化、不安定化を始めたのだ。私たちは、まさにそれが直撃した第一世代だった。
「どんなに頑張っても正社員になれないから死にたい」「フリーターでしょっちゅうクビになって、こんな自分は生きてる価値がないから死ぬしかない」
自分の周りにあったそんな言葉たちが、初めて「一部を徹底的に見捨てる政策」と繋がった瞬間だった。私は怒り狂った。これまでに自ら命を絶った人たちの顔が浮かんだ。
同時に浮かんだのが、当時の若者に対して、執拗にバッシングを繰り広げていた人たちの顔である。若者の実態など何も知らないのになぜか断言調で語るテレビの「ご意見番」みたいなタレント。若者バッシングを当然のように展開する、右肩上がりの経済成長の恩恵をたんまり受けた年長世代の人々。
お前らが私の周りの人々を苦しめ、侮辱し、殺したのだ。「一部が犠牲にされる社会」を作ることに加担したくせに、犠牲にされた人々を傷つけまくってきたのだ。「お前らに殺されてたまるか」。そんな怒りが、私が政治に目を見開く大きなきっかけだった。何も知らないのにバッシングをする無知な大人たちを黙らせたい。それが動機だった。
そうして、現在。若者たちを巡る状況は、当時より悪化している。
賃金は上がらず、しかし学費は上がり、しかも奨学金という形で二人に一人の学生が借金を背負わされている。奨学金という名の「国の貧困ビジネス」のカモにされ、結婚に前向きになれないという声をどれほど聞いてきただろう。
そんな中にやってきたコロナ禍だ。借金をしてまかなった学費を払っても、ずっとオンライン授業。バイト先も潰れてしまい、退学を考える学生も多くいる。それなのにこの一年半以上、コロナ感染者が増えるたびに「若者の身勝手な行動が」と槍玉に挙げられ、彼ら彼女らの苦境に目が向けられることはほとんどなかった。
私が政治に関心を持ったのは、「クソな大人を黙らせたい」ということだった。
あなたにそんな大人がいたならば、もしかして、選挙に行くことで、回り回ってその人たちを少しは黙らせられるかもしれない。
少なくとも、今の自民党政権は、不安定雇用を増やし、奨学金地獄を作り出し、結婚、出産したくてもできない社会を作り出し、将来の計画を立てられないほど先が見えない人々を膨大な数、生み出してきた。その上、「どんなに長時間労働をしても倒れない強靭な肉体と、どんなにパワハラを受けても病まない強靭な精神を持った即戦力」以外はすべて使い捨てという地獄のような状況もだ。
私は40代だが、10代でバブルが崩壊し、以降、この国ではずーっと経済的な停滞が続いて中間層が没落してきた。「失われた20年」は「失われた30年」に伸び、ロスジェネ年長世代はすでに出産可能年齢を過ぎつつある。それなのに、19年、麻生太郎氏は言った。
「年をとったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違っている。子どもを産まなかった方が問題なんだ」と。
ここまで書いてきて、つくづく思う。バブル崩壊以降、ほとんどの間の政権を担ってきて、実感として何ひとつ良くなってないって、自民党の人たちってただの無能の集まりなんじゃないの? と。今の若い世代は「右肩下がりしか知らない」というけれど、そんな右肩下がりをここまで放置させてきたのって誰? と。
30年間、日本の賃金だけが上がらず、今や韓国にも平均賃金で追い越されている。これほど停滞が続いてるって、単純に、政権が無能だからだと子どもだって思うだろう。
ちなみに議員として莫大な歳費を得つつも、国会で一度も質問せず、質問主意書も一度も出さず、なんの役職にもついていない議員を「オールゼロ議員」というが、そんな議員のほとんどが自民党だ。
数年前、国会で大量の自民党議員を一度に見る機会があり、知らない顔ばかりだったことに驚いたことがある。参議院で106人、解散前の衆議院で275人もいるわけだが、あなたが顔と名前を知っている自民党議員は何人だろう? まったく知名度がなく、何をしているかもさっぱりわからず、「スーツ姿の警備員?」とその場にいるみんなが勘違いしたほどに、誰にも顔も名前も認識されておらず、次の選挙で自分が当選するための活動くらいしかしていない「仕事をしない議員」に、膨大な血税が支払われている。
民間にたとえると、何年かの有期雇用で、任期中にひとつの実績も上げていないのに契約が更新され、べらぼうな額の報酬をもらう人間がうようよいる政党が自民党というわけである。そんな人間を、一人だって養い続ける余裕も理由も私たちにはない。
もうひとつ、思い出してほしい。
この夏、「自宅療養」という名の自宅放置で、どれほど多くの命が奪われたのかを。
ということで、私は選挙に行く。
国連の気候変動の公式Twitterが日本時間の10月27日夜、1本の動画を投稿した。
映像の舞台は国連本部が置かれるニューヨーク。国連総会が開かれている会議場内に突然、絶滅したはずの恐竜が入ってきて演説を始める。恐竜は何を訴えたのか。
投稿された約2分半の動画は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日から開幕するのを前に気候危機を訴える内容だった。
このまま人を食べてしまうのかと思いきや、1人の男性に向かって「大丈夫か?少し時間が必要か?(Are you OK?You need a minute?)」と呼びかける。
皆さん、よく聞いてほしい。私は絶滅について、1つか2つのことくらいは知っているんだ。だから、あなたに話をさせてくれ。
これは明らかなことだと思うが、絶滅に向かうことは悪いことだ。人間たちは自分たち自身も絶滅させるのか?それは、過去7000万年の間に私が聞いた話の中で、最も馬鹿げている。
少なくとも、私たちは小惑星の直撃を受けた。あなたの言い訳は何なのだ?あなたは気候災害の責任者なんだ。しかしながら、政府は毎年、数千億の化石燃料に公的な助成金を費やしている。巨大な隕石への助成金として年間数千億ドルもの大金を費やすと想像してみたらよい。それが、今あなたたちがしていることなのだ!
それらのお金で出来る他の全てのことに、考えをめぐらしてみてほしい。世界を見渡せば、貧困の中で暮らしている人がいる。(お金の使い道として)彼らを助けることの方が理にかなっていると思わないか。私には分からないが...このまま、人類の絶滅にお金を払っていくのか?
ちょっと真面目に言わせてほしい。あなたは今、経済を立て直し、このパンデミックから立ち直るとても大きな機会を手にしている。これは人類にとって、大きなチャンスなんだ!
だから、私の大胆なアイデアを披露しよう。絶滅を選ぶな。手遅れになる前に種を救おう。あなたたち人間が言い訳をするのをやめ、変わり始める時が来たのだ。ご静聴ありがとう。
恐竜による演説が終わると、聞いていた人々は次々と立ち上がって拍手をした。動画の最後は「it’s now or never(今やるか、やらないか)」というメッセージで締め括られ、国連開発計画の「Don’tChooseExtinction.com」という特設サイトのURLが表示される。
このサイトでは、気候変動の脅威を地球に迫る隕石の姿で示されている。
動画にはTwitterで「シンプルかつ効果的なメッセージだ」「今こそアクションを起こす時ということだね」などと感想が寄せられていた。
国連の気候変動の公式Twitterはこの投稿で、IMF(国際通貨基金)によると、世界政府は温室効果ガスの排出を引き起こす化石燃料を支援するため、1分間に約1100万ドル(12億5000万円相当)を費やしていると綴っていた。
麻生氏発言→専門家「温暖化の影響はほとんどない」と指摘
ハフポスト 2021年10月26日
「暑い年でないと美味しいコメができない、というわけではありません」と専門家。品種改良などの努力が身を結んだ結果と言えそうだ。
「温暖化したおかげで北海道のコメは美味くなった」。
10月25日、北海道小樽市で行われた街頭演説での自民党の麻生太郎・副総裁の発言が波紋を呼んでいる。「農家のおかげですか?農協の力ですか?違います」という内容にはSNSで「品種改良の努力を踏みにじっている」などと批判もあがっている。
そもそも、この主張は正しいのか。
北海道大学農学研究院の専門家は、品種改良に加え、栽培技術や収穫後技術の改善を積み重ねた結果だと指摘。「温暖化の影響はほとんどない。猛暑である必要も、地球温暖化である必要もありません」と話している。
■「農家のおかげ?違います」
問題の発言があったのは10月25日。小樽市で衆院選の自民党公認候補とともに街頭演説に立った麻生氏は「今、北海道は色々な意味であったかくなった。平均気温が2度上がったおかげで北海道のコメは美味しくなった」と切り出した。
そして「昔、北海道のコメは『やっかい道米』と言われるほど売れないコメだった。今はその北海道がやたら美味いコメを作るようになった。農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」と発言した。
さらに「平均気温が2度上がったおかげで北海道のコメは美味しくなった。地球温暖化といえば悪い話しか書いてありませんが、温暖化でいいこともあります」とも話した。
この発言が報じられるとSNSでは、「品種改良の努力を踏みにじっている」などと批判の声が相次いだ。
発言では「おぼろづき」「こちぴかり」という銘柄を挙げ「金賞を取った」ともしているが、「こちぴかり」という銘柄は存在しない。類似の名前で「コシヒカリ」はあるが、北海道では生産されていない。
■温暖化である必要ない
では、「温暖化したおかげで米が美味くなった」とする麻生氏の発言はどの程度、正確と言えるのか。
北海道のコメは、以前は「美味しくない」という印象を持たれていた。「やっかい道米」と揶揄されていたのも事実だ。
この課題に1980年から取り組んできたのが農家や農協、それに農業試験場や研究者らだ。川村さんによると、①品種改良②栽培技術③収穫後技術の3点が、北海道産米の食味向上のポイントだという。
コメは一般に、でんぷんの成分「アミロース」とタンパク質の含有量を適度に下げることが必要になる。粘りがあり柔らかくなるからだ。
「北海道では初めてのコシヒカリ系統となる『きらら397』が1989年にデビューし、やっと美味しいコメが出てきました。さらに『彩(あや)』という遺伝的にアミロースが少ない品種が生まれると、今は同じ低アミロース系統品種の『おぼろづき』『ゆめぴりか』が広く栽培されています」
さらに、タンパク質量についても、原因となる窒素肥料を抑えるなど、栽培技術を向上させることで減らすことに成功した。
コメの収穫後に用いられる技術の進歩も味の向上につながった。例えば収穫後のコメのタンパク質量や成熟した米粒の割合を測る「自動品質判定」や、北海道の冷たい自然の空気をサイロに送り込むことで、籾をマイナス5度からマイナス10度程度まで冷やす技術などを独自に開発した。
こうした過程を踏まえると、麻生氏の「農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」という発言は誤っているとみられる。
一方で、温暖化の影響が考えられるのは、稲の花が咲いてから収穫するまでの登熟期間だ。この期間の気温が高いとアミロースは低下し、粘りがあり柔らかいコメになる。麻生氏も「お米の花が実に変わるあのころの温度が2度上がった」と発言しているが、このことを指している可能性はありそうだ。
しかし川村さんは「暑い年でないと美味しいコメができない、というわけではありません。平年並みでも、過去には冷害年でも『ゆめぴりか』は食味試験で高い評価を得ています。猛暑である必要も、地球温暖化である必要もありません。さらに、高温障害は本州以南で問題になっています」と指摘している。
* * *
2021年10月23日
「何もしなければ政治はこれまでのまま」パタゴニアが衆院選で投票呼びかけ
衆院選を巡り、パタゴニアは「社会構造を大胆かつ公正に変化させようとするリーダーが必要です」と訴えています。
生きるために投票する。
衆院選期間中に、こんなメッセージを掲げている企業がある。
アウトドア用品のパタゴニア日本支社(横浜市)だ。「Vote Our Planet 私たちの地球のために投票しよう」というキャンペーンを展開し、Twitter上でも「#地球のために投票しよう」と呼びかけている。
パタゴニアといえば、従業員が家族や友人らと政治について話し合い、投票に行ってもらおうと、2019年7月の参院選で投開票日に全ての直営店を臨時休業にすると発表して話題になった。
気候危機など課題山積
今回の衆院選でも企業としての考えを明示し、気候危機をはじめ、LGBT法案や男女格差、カーボンニュートラル(脱炭素)など日本が抱える課題を指摘。「社会構造を大胆かつ公正に変化させようとするリーダーが必要です」と訴えている。
Twitter上では「#地球のために投票しよう」という呼びかけに対し、「投票権がせっかくあるのだから、 思いを声にして投票します」「私たちは気候危機を止められる最後の世代と言われている。 今の世代だからできることを着実に進めたい」といった声が寄せられている。
パタゴニアは自社の公式サイトで、こう訴えている。
「私たちが何もしなければ、政治はこれまでのままです。私たちが本当に必要とするこれからの政府をつくり、私たちそれぞれにとって大切な何かとともに生きるために、10月31日、投票しましょう」
バカも連発だ!
これが自民党だ。
こんな老いぼれはさっさと退場させなければ地球の未来はない。
この選挙、自民党に入れようとしているあなた、考え直してほしい。
地球を壊す立場に立たないでほしい。
おねがいだ!地球人よ!
自然を愛する人達よ!
植物を愛する人達よ!
動物を愛するひとたちよ!
人を愛する人達よ!
すべての地球を愛する人達よ!
惜しい方が亡くなられた。
核兵器廃絶と被爆者援護の活動に尽力した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の坪井直(すなお)さん。
わたしの青春時代に活を入れてくれた、白土三平氏。
「カムイ伝」、わたしの宝物として本棚にある。
ご冥福をお祈りします。
「コロナ後の世界」を考える#1
文春オンライン
新型コロナウイルスのパンデミックという未曾有の事態は、日本社会をどう変容させたのだろうか。長期にわたる行動制限下で社会に鬱積したもの、危機的状況下で陰謀史観にひかれる危うさとは? 新著『コロナ後の世界』を上梓した思想家・内田樹さんの特別インタビュー。
◆◆◆
コロナ禍によって日本社会の欠点が可視化された
――コロナ後の日本社会を振り返ってみた時、一番変わってしまった点は何でしょうか。
内田 新型コロナウイルスの拡大によって日本社会のあり方が変わったというよりは、もともとから存在した日本社会の欠点が可視化されたんだと思います。すでにあちこちにひびが入っていたシステムの不備が露呈した。
市民の相互監視もその一つです。休業要請が出ているのに開けている飲食店に嫌がらせをしたり、緊急事態宣言中に県外から来た車を傷つけたりする人たちがわらわらと登場してきた。「いまならそういう私的制裁をやっても許される」と思う人たちが暴力的にふるまうことを「世間の空気」が許してしまった。これはほんとうに危険なことだと思います。
――自粛警察による、“不謹慎な”お店や人に対するSNSでのバッシングも非常に多かったですね。
内田 この1年間、Twitterを見ていても、書き込まれる文章がどんどん攻撃的になるのが観察していて分かりました。怒っている人が多い。起きているのは未知のウイルスによる感染症のアウトブレイクという自然現象なんですけれども、それを人為的な「罪」に読み換えて、「諸悪の根源」たる標的を見つけて、そこに憎悪を集中させるということを多くの人たちが当然のように行うようになった。そして、この疾病について自分と違う考え方をする人たちに対して敵意をむき出しにするようになった。感染症についてという科学的な論点なのにもかかわらず、「自分と意見が違う人間はいくら攻撃してもいい」という正当化を多くの人が行った。
僕たちはずいぶん長い間、ふつうの市民が隣人を告発したり、社会から排除することに加担するという風景を見ていません。僕たちの親や教師たちの世代は、戦中派ですから、人間がどれくらい暴力的になったり残虐になったりできるか、戦地で実際に見て知っていました。ふだんは気のいいおじさんや内気なお兄ちゃんが、暴力をふるうことについて大義名分が立つと平然と略奪し、焼き払い、殺し、強姦するということを目の当たりにしてきた。その男たちもまた戦争が終わると、ふつうの顔に戻って、平凡な市民になった。でも、心の中には底知れない邪悪さや暴力性を抱え込んでいる。それを見てきた戦中派は「人間は怖い」ということが骨身にしみていたと思います。だから、ふつうの人たちが自分の攻撃性をリリースする口実を与えないように、法律や良識や「世間の目」や「お天道さま」がいつも見張っているという仕組みを周到に整えてきた。僕たち戦後世代は、幼い頃は、そういう仕組みをずいぶん微温的で偽善的なものだと思ってみくびっていましたけれど、それは僕たちが間違っていたと思います。
僕自身は戦中派に比べるとはるかにスケールは小さいですけれど、学園紛争の時代に、「革命的正義を実行する」という大義名分があると、見も知らぬ他党派の学生の頭に鉄パイプを振り下ろしたり、石で人の頭を殴りつけることができる人間が想像よりはるかにたくさんいることを知りました。
自分の攻撃性や暴力性に対して鈍感な人間が一番怖い
今回のコロナは戦争の時とも学園紛争の時とも違いますけれど、「今なら自分のふだんは抑制されている攻撃性を解放しても、大義名分が立つ」というふうに感じた人たちが出現してきたことは間違いありません。
SNSでの差別的な書き込みとか罵倒とか、ほんとうに目を覆わんばかりですけれども、たぶん書いている人たちは「別に身体的な危害は加えてないからいいじゃないか。ただの言葉なんだから」と言い訳するつもりでしょう。でも、自分の暴力性を他者に向けてリリースすることに「寛大」な人間は、条件さえ揃えば、実際に人を殺すような人間かも知れないと思っておいた方がいい。自分の攻撃性や暴力性に対して鈍感な人間が一番怖いんです。実際に、SNSで執拗な攻撃を受けて、精神的に傷ついて、重篤な病気になる人はいるわけですから、「言葉の暴力」と「身体的暴力」の間に境界線なんかありません。地続きなんです。感染拡大の過程で、「感染抑制に協力しない人間はいくら攻撃してもいい」という空気をメディアを通じて醸成した人たちは、政治家や言論人も、人間性の暗部についてあまりに想像力が足りないと思います。
コロナ禍による社会不安を背景に、アメリカではこの1年間で、殺人件数が前年比の30%も増加したそうです。外に出て人と会えなくなったとか、雇用を失ったとか、そういうような社会条件の変化だけで、人間は簡単に攻撃的になることができる。人間というのはそういう「危険な生き物」だということをよくよく勘定に入れて、社会制度を設計することがコロナ後の大きな課題だと思います。
――日本では、2020年度のDVの相談件数が過去最多の19万件を超え、前年比1.6倍に急増しました。虐待の疑いで警察が児童相談所に通告した子どもの数も過去最多で10万人を超えていますね。
内田 アメリカにおいては殺人の多くが家庭内で起きています。日本では、銃がアメリカのように家庭内にありませんから、その代わりにDVや虐待という形で暴力性が現れている。コロナ禍で長期間にわたり外での社会活動を制約されて、家庭内に閉じ込められてしまうと、「不快な他者との共生」が非常に心理的にはストレスフルなものになってきます。
「他者との共生」の耐え難さは、現実的には確保できる「パーソナルスペース」があるかどうかで変わります。だから、露骨に階層格差が出る。つまり、広い家に住んでいて、十分なパーソナルスペースを保証されている富裕層の家族なら「顔を合わさないで済む」。家族が家にいて、リモートワークをしていても、顔も見えない、声も聞こえないなら、別にストレスにはならない。でも、狭いリビングに家族全員が集まって、その横でディスプレイ相手に仕事をしているということになると、家族たち全員が「自己実現の妨害者」として登場してくる。家族がお互いのことを「目ざわり」だと思うようになる。
残酷な言い方ですけれど、家の中で十分なソーシャルディスタンスが取れるなら家庭内暴力も起きにくいということです。コロナ禍で可視化されたのは、貧しい人たちが感染症に対して最も脆弱であり、それによって最も深く傷ついたということです。
政治もすべてコロナ対策が論点に
――新型コロナウイルスの第5波を受け、家庭内での療養を余儀なくされた感染者はピーク時で全国に13万人以上(9月1日時点、厚労省発表)いました。当事者もケアする側も自宅療養のストレスはただならぬものがあると思います。
内田 凱風館でも感染者が2人出ましたが、保健所も行政も何もケアしてくれませんでした。最初にPCR検査を受けて陽性が出てすぐに保健所に連絡したのですが、「然るべき医療機関での検査でないと陽性者と認定できない」と言われた。医療機関をいくつも断られた末にようやく検査を受けて、結局発熱してから保健所が「コロナ」と認定するまで5日かかりました。その間に重症化していたらと思うとぞっとします。そのあとも医療支援はなくて、ただ自宅で寝ているだけでした。だから、感染者の家に、道場の仲間たちで食べ物や飲み物を差し入れに行きました。国民皆保険制度があるのに、伝染病に罹患しても放置されている。これでは人々が怒り出すのも当然です。
――国民には緊急事態宣言を出して強い制約を課す一方でオリンピックは強行し、感染者が急増してもなんの説明責任も果たさず、医療的支援が満足に受けられない人々が大量に出ました。まるで国からDVを受けているような状況でした。
内田 政治家自身もまたふだん以上に攻撃的な言葉にさらされていると思います。どの政治家もそれぞれに関心の高い分野があります。外交なり安全保障なり財政なり教育なり、専門とする分野があり、そこで自分の能力を発揮するはずだった。ところがコロナ禍においては「感染症対策をどうする?」というシングル・イシューに政治的課題が絞られてしまった。すべての政治家、官僚たちが感染症対策の出来不出来という一点でその能力差を査定され、格付けされるということが起きたわけです。こんなことは、ふつうは起こりません。財政や安全保障や教育なら、どんな政策をとってもその成否がわかるまでにはかなりのタイムラグがあるし、解釈の違いだとか、誤差の範囲だとかいって、失政を糊塗することだってやろうと思えばできる。でも、コロナではその手が使えなかった。感染者数と死者数はリアルな数字ですから。政治家たちもこの1年半、メディアと国民からの査定的なまなざしにさらされ続けた。
警戒すべきは単一の仮想敵を攻撃する陰謀論
こうした状況下で一番警戒すべきは、敵を見つけて一点集中する言説――「この人、この連中さえいなければすべての問題が解決する」といったタイプの陰謀論です。
――パチンコ店、ライブハウス、飲食店、路上飲みの若者たち、医師会……この1年半を振り返ってもやり玉に挙がるターゲットが次々と入れ替わっていきましたね。
内田 まさにそうで、「あいつが敵だ、諸悪の根源だ」と誰か言い出すと、何万人もの人が一斉に同調する。歴史を見れば分かる通り、こういう危機的な状況下では人々はすぐに陰謀論に飛びついて、単一の「敵」を探そうとするんです。
本書の中で、フランス革命後、権力や財産を失った貴族や僧侶たちがフランス革命の「張本人」を探し出そうとして、「ユダヤ人の秘密結社」という陰謀論を作り出していったプロセスを論じましたが、同じことはそれから後も繰り返し、どこでも起きています。
今の感染症による混乱は、革命や戦争の混乱に比べたらスケールは小さいですが、それでも「話を簡単にして、張本人を探し出して、そこに憎悪を集中させる」というタイプの議論は簡単に生まれてきます。十分な警戒心を持つ必要があります。
――こうした切迫した状況で一番大切なことはなんでしょうか。
内田 コロナについて話している人たちの言葉を聴いていると、多くの人がしだいに興奮して、怒声に変わってくるんですね。でも、ことは国民の生命と健康にかかわる医学上の問題です。できるだけクールダウンして、非情緒的な言葉で語るようにしないと、「これだけは確かだ」という客観的事実を共有して、その上で対策を講じるというふつうの手順さえ踏めなくなる。
コロナウイルスはこの後も変異株が連続的に生まれると予測されています。ということは、この先も長期的にこうしたストレスフルな状況が続くということです。だとしたら、感染症が蔓延している状態を「平時」ととらえて、冷静に淡々と対処するしかありません。興奮しっぱなしでは、適切な疫学的対処ができませんから。
感染症そのものはこちらがクールダウンしただけで収まるというものではありませんが、それでも、感染症から派生するさまざまな社会問題、とりわけ国民同士の対立確執は抑制できる。
内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論など。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞、『日本辺境論』で新書大賞を受賞。他の著書に、『ためらいの倫理学』『レヴィナスと愛の現象学』『サル化する世界』『日本習合論』『コモンの再生』、編著に『人口減少社会の未来学』などがある。
今日は朝からミニトマトのジュースを作っていた。先程ようやく帰ってきて夕食を。ブログ更新しなければ・・・・てなわけで、疲れた!
まぐまぐニュース!2021.10.22
by 新恭(あらたきょう)
自民党、恐るべきネット支配の実態
ツイッターやブログなどに投稿しているネット右翼、すなわちネトウヨと呼ばれる方々の一部は、自民党や官邸に雇われているのではないか。そんな疑念を抱いている人もいるだろう。
ネット上には、いたずらに敵対的で可燃性の強い意見があふれているが、その割にネトウヨの実数は少ないといわれる。だが、少ない人数でも、個々人が多くのアカウントを持って、投稿回数を増やせば、それらが拡散され、寄り集まって多数意見のように見えることもある。
たとえば、仕事として投稿にかかりっきりになる組織なり個人なりを、大政党が金にあかして大量にかかえることで、世論を操作する力さえ持ちうるかもしれない。
そんな文脈で、このところ名前が挙がっているのが「Dappi」というツイッターのアカウントだ。
Dappi氏によるウソのツイートで名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉の両参院議員が10月13日、東京都内のウェブ関連会社を相手取る訴訟を東京地裁に提起し、同じ日、同党の森ゆうこ議員が参議院本会議で、この件を取り上げた。
両議員が問題にしているのは、このアカウントで2020年10月25日に投稿されたツイートだという。
「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊(つ)るしあげた翌日に自殺」というような内容だったようだ。
むろん、公文書改ざんを命じられ自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんのことだが、杉尾氏、小西氏は赤木さんに面会した事実はない。
つまりDappi氏は、赤木さんの自殺は、当時の佐川理財局長が安倍首相夫妻に忖度して決裁文書の改ざんを命じたこととは無関係で、野党議員に追及されたのが原因だというデマをでっち上げたわけである。
当然、杉尾氏、小西氏は怒りがおさまらない。Dappi氏の正体を突き止める作業に取りかかった。まずは、ツイッター社に対し、投稿に使われたネット回線のプロバイダーを開示するよう求める仮処分を昨年12月に東京地裁に申し立てた。
次に、その結果判明したプロバイダー「NTTコミュニケーションズ」に発信者情報を開示するよう求めて東京地裁に提訴し、地裁は今年9月、開示を命じる判決を下した。
回線の契約者は東京・世田谷区のウェブコンサルティング会社だった。従業員は15人で、取引先は自民党、大手出版社など。自民党東京都支部連合会や小渕優子・元経産相の資金管理団体からホームページ制作などを請け負った実績もある。杉尾氏、小西氏は10月6日、この会社に計880万円の支払いを求める訴訟を起こしている。
「Dappi」は、2019年6月に投稿を始めた。DHCテレビ「虎ノ門ニュース」などの動画を流して野党批判を繰り返し、官邸や自民党には飽くことなく賛辞を送ってきた。投稿はもっぱら平日のオフィスアワーで、土日にはほとんどないことから、個人ではなく企業がからんでいるという見方がかねてよりあった。
もし官邸なり自民党なりが、政治資金を投入してこの会社に投稿業務を請け負わせ、意図的に歪めた情報で世論操作をしようとしているとすれば、由々しきことである。
自民党だったら自民党の名を出して、オープンに野党を批判するのなら、民間業者を使っても、さほど問題はないだろう。だが、Dappiの場合、野党議員による国会質疑の趣旨を意図的に捻じ曲げるケースがあまりにも多く、ステルス性が高い。
こういう類の問題が起きると、内閣情報調査室(内調)の関与を疑いたくなるのが世の常だ。実際に、一般市民が、Dappiに関する文書の有無の確認と開示を内調に請求し、拒否されている。
内調は、公安警察、公安調査庁などと並ぶ情報機関だが、ありていに言えば、官邸のスパイ組織だ。情報操作、世論工作の部門があり、新聞、出版、テレビ、ネットなどのメディアごとに分かれて特命班が存在するといわれる。
安倍首相の親友が経営する加計学園の獣医学部新設疑惑をめぐり、重要な証言者、前川喜平氏が出会い系バーに出入りしていたと報じた読売新聞のネタモトは、前川氏の行動を以前からチェックしていた内調のリークであったらしいこともわかっている。
職務の性質上、われわれ一般人がその活動内容を知ることはできず、すべては推測の域を出ないが、裏を返せば、内調が何をやっていても不思議ではないということになる。
「テラスプレス」というサイトが、内調とのからみで話題になったことがある。2019年夏、参院選前のことだ。このサイトに掲載されている記事をまとめた冊子が自民党本部から党所属国会議員の事務所に大量に配られた。
冊子の標題は「フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」。いわば選挙演説用の参考書としての利用を勧めているらしかった。
中身はというと、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の三章からなり、立憲民主党や共産党、朝日新聞と東京新聞をこっぴどく叩く一方で、当時の安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げていた。安倍氏が毛嫌いする石破茂氏には敵対的であることも特徴的だ。
このサイトへの投稿が始まったのは2018年7月13日だが、同年8月6日の記事では、総裁選への出馬意向を固めた石破氏について、加計学園問題とからめ「獣医師の既得権益を守るために動いた」と批判している。総裁選を安倍氏が有利に戦えるように意図した記事であるのは明白だった。
運営主体をわからないようにし、当然、連絡もとれないようにしているが、総裁選で内調が安倍氏のために活動していたという噂が流れ、内調と「テラスプレス」との関係が疑われた。このアカウントの位置情報から、国会議事堂、首相官邸、霞ヶ関官庁街、自民党本部の周辺に発信源があることだけはわかっている。
万が一、政府機関である内調が、特定の政治家や政党の選挙対策に一役買っていたとすれば、大問題である。
自民党では、「ネット工作」が常態化しているフシがある。河井克行元法務大臣の疑惑は、2020年10月19日、妻、案里氏をめぐる公職選挙法違反事件の公判において検察側が朗読した供述調書で浮上した。
それによると、克行氏は、2019年の参院選で自民党二人目の公認候補として広島選挙区に出馬した案里氏を勝たせるべく、ネット業者に工作を依頼した。ネット業者は、架空の人物を名乗ったブログを運営、案里氏と争っていた自民党現職、溝手顕正氏のイメージを貶める投稿を繰り返した。克行氏が7選を果たした17年の衆院選でも、同様のネット工作が行われた。
以上は、ネトウヨ的言論活動を続ける正体不明のサイトが、政権中枢や政党、政治家の関与する業者によって運営されているのではないかという疑念をもとに書いたものである。
だが、自民党には公式のボランティア組織として、約1万9,000人の会員を有するネット言論集団が存在することも忘れてはならない。
「自民党ネットサポーターズクラブ」、通称「ネトサポ」である。「インターネット等を活用した各種広報活動・情報収集活動・会員相互の交流活動」というのが設立趣旨だが、早い話、野党を批判し、自民党に有利な書き込みをする人々の集団といえるだろう。
自民党は2013年のネット選挙解禁に合わせてネット監視チームを立ち上げた。大手IT企業からソーシャルメディア投稿監視サービスを導入、党職員やIT関連企業のスタッフが24時間体制でネットを監視し、反自民的な書き込みを発見したら、プロバイダーに削除を要求している。しかも、監視チームの情報はネトサポの全会員に流れる仕組みだ。
つまり約1万9,000人もの会員が、自民党の監視チームから、反政府、反自民的な言論の情報を受け取っているのだ。彼らがSNSなどで大量の攻撃をかけているのを想像すれば、ネトウヨ的言説があふれかえるのもうなずける。
個別には、いわばプロフェッショナルである「Dappi」や「テラスプレス」が、ネット工作の世界で目立ってはいる。しかし、それらは氷山の一角にすぎない。「ネトサポ」のようなシロウトの言論集団を組織の一部として組み込み、育成しているのが自民党の恐ろしさだ。あらゆる手段を使い、着々とネット支配の領土を広げている。
新恭(あらたきょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
結構いますよね。氣をつけましょう。(今日はその筋の人?が結構来てます。)
今日もいい天気でした。
明日は最後、ジュースを作ります。
イチイの実がとんでもなくついています。夏の干ばつのせいでしょうか?
エゾリスがやってきました。今日はカモさんも多いようです。
嘘つき自民党は公約以前 大メディアが公約を並べて論じる愚
日刊ゲンダイDIGITAL 2021/10/23
10・31総選挙の投票日まで1週間。自民党が真っ青になっている。
岸田政権の“バケの皮”がはがれる前に解散・総選挙になだれ込んだ自民党は、「これで勝てる」とほくそ笑み、不意を打たれた野党は慌てふためいていた。ところが、いざ選挙戦が始まってみると自民候補と野党候補が各選挙区で接戦をくり広げている。
読売新聞は「自民減 単独過半数の攻防」と伝え、毎日新聞も「自民 議席減の公算大」と報じている。
まさかの状況に焦った自民党は、甘利明幹事長と遠藤利明選対委員長の連名で「急告 情勢緊迫」と題した通達を各陣営に送付。「多くのわが党候補者が当落を争う極めて緊迫した状況にある」と危機感を募らせている。毎日新聞によると、全289選挙区のうち63選挙区で接戦になっているという。
この総選挙の最大のポイントは、選挙結果がまったく見通せないことだ。たとえば、毎日新聞は「自民 議席減の公算大」との見出しは掲げているが、自民の獲得議席を224~284と60議席も幅を持たせて予測している。自民党の大勝も大敗もあるということだ。公示前の276から50以上も減らす224議席だったら惨敗だが、284だと公示前より増え圧勝ということになる。
自民党関係者がこう言う。
「過去2回の総選挙は、序盤から<与党300議席超><自公で3分の2うかがう>と自民圧勝が伝えられ、分かりやすい選挙でした。ところが、この総選挙はまるで読めない。自民苦戦と伝えられていますが、読売新聞の調査によると自民党の比例区の獲得議席は、2014年衆院選の68、17年衆院選の66を上回る70議席台に達するといいます。もし、自民党に逆風が吹いていたら比例で70議席も取れるはずがない。不気味なのは、自民にも野党にも風が吹いておらず、熱気もなく、有権者がなにを求めているかさえ伝わってこないことです。それだけに、岸田首相や甘利幹事長の失言など、ちょっとしたことで投票日の直前にどちらかに雪崩を打つ恐れがある。非常に心配です」
■問われるべきは「未来」ではなく「過去」
自民と野党のどちらに軍配が上がるのか。この先、大手メディアの報道で情勢は大きく変わる。
ところが、公平、中立のつもりなのだろうが、大新聞テレビは、さも重大事のように各党の選挙公約を同列で並べているのだから、カマトトにも程があるというものだ。
もちろん、政策を見て一票を投じるのが大原則だが、日本の場合、選挙公約など、ただのお題目に過ぎないことは有権者の多くが分かっていることだ。そもそも、自民党に公約を語る資格があるのか。これまで自民党が掲げた公約で実現できたものがいくつあるというのか。
前回17年の衆院選の時、「GDP600兆円経済の実現」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」――と夢のような公約をいくつも掲げたが、実現したものはひとつもない。19年度のGDPは550兆円、20年度も530兆円だった。20年の出生率は1・34、19年の特養の入所待ちは29万人に達している。
政権を担っていない野党の選挙公約に耳を傾けるのは必要だが、9年間も政権に就いてきた自民党に問うべきは、選挙公約ではなく過去の実績だろう。
作家の適菜収氏が、本紙のコラムで〈だまされてはいけない。問われているのは未来ではなく過去である。安倍晋三―菅義偉政権の9年間をどう評価するかである〉と指摘していたが、まったくその通りだ。
しかも、岸田首相は「政策」がブレまくっているのだから、国民だって判断のしようがないはずである。総裁選前は「成長だけでは人は幸せになれません」と、分配を重視していたのに、総裁選が終わると「成長を目指すことは極めて重要」と正反対のことを訴えている。主張している「成長と分配の好循環」も、どうやって実現するのか具体的な中身を示そうとしない。看板政策だった「令和版所得倍増」も、いつの間にか消えてしまった。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「昔から自民党にとって選挙公約は、実現できるかどうかは二の次で、初めから“空約束”なのが実態です。なのに大手メディアは、実現できるのかどうか検証もせずに垂れ流しているのだからどうかしています。選挙公約について報じるなら、岸田首相のブレや、過去の実績を検証して国民に伝えなければ、判断材料を提供したことになりませんよ」
自民党の選挙公約をデカデカと報じている大手メディアは、ナンセンスの極みだ。
争点はハッキリしている、“アベ政治”だ
この選挙の争点はハッキリしている。国民生活をぶっ壊した“アベ政治”を続けるのか、それとも決別するのかだ。
この9年間、日本で何が行われたか。
森友事件では公文書が改ざんされ、加計疑惑では“腹心の友”に便宜が図られ、桜疑惑にいたっては、安倍元首相は国会で118回も虚偽答弁をしていた。しかも、いまだ疑念を解消する説明もしない。この9年間で政界に広がったのは「逮捕さえされなければOK」という空気だ。大臣室で50万円を受け取っていた甘利まで復権している。日本の政治は腐り切ってしまった。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「森友も、加計も、桜も真相が解明されないまま、ウヤムヤにされています。自民党の総裁選では、財務省の公文書改ざんについて、候補者4人のうち3人が“再調査はしない”と答えている。この9年間で日本の政治から、当たり前の正義も道徳も自浄作用も消えてしまった。岸田首相は“政治とカネ”の問題を抱える甘利さんを幹事長に起用する始末です。その一方、アベノミクスによって国民の実質賃金は下がり、貧富の格差も拡大してしまった。本当にこのままアベ政治を続けるのか、それこそ総選挙で問われるべきです」
いったい大新聞テレビは、9年間のアベ政治をどう考えているのか。まさか、評価しているわけじゃないだろう。なのに、各党の公約を同列で並べているだけなのだから話にならない。
「日本の大メディアは安倍政権の9年間ですっかり牙を抜かれてしまった。とくに選挙報道は腰が引けている。やはり14年の衆院選の時、自民党から『政治的公平性』を求めるという圧力のような文書を渡され、受け取ってしまったのが大きかった。本来、メディアは、あんな圧力文書は突き返さなければならない。とくに、NHKの権力への忖度は目にあまります。米国のメディアは、トランプ前大統領からどんなに攻撃をされても一歩も引かずファイティングポーズを取り続けた。権力側と対決するのは当然のことです。日本の大メディアは、国民の代表であるという気概を失っているように見えます」(本澤二郎氏=前出)
このまま選挙が終わるまで大手メディアは動かないつもりなのか。
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菅前首相の式典でのあいさつ原稿読み飛ばしを「のり」のせいと報じた共同通信に問い合わせた その回答は
立岩陽一郎InFact編集長
YAHOO!ニュース(個人)10/24(日)
政府は菅義偉前首相が広島市の平和記念式典で挨拶文の一部を読み飛ばしたことに関し、「原因または経緯を調査しない」とする答弁書を持ち回り閣議で決定したという。この問題では挨拶文にのりが付着していたという苦しい言い訳が「政府関係者」の話として報じられた。実はこの問題の深刻さは、それを報じたメディアの側にある。そこで、報じた共同通信に質問を出したのだが、その回答は日本の現状を物語るものだった。
反響を呼んだ「総理の挨拶文」報道
この問題は、8月6日に行われた被爆者慰霊の式典で菅義偉前首相が挨拶の一部を読み飛ばしたものだ。その日のうちに、一部の報道で「政府関係者」の話として、「挨拶文にのりが付着していたために起きたもの」として前首相を擁護する話が報じられた。
これについて広島在住のジャーナリスト、宮崎園子さんが広島市の保管する挨拶文の現物を開示請求して直接見た上で直に挨拶文に触ってのりが付着した痕跡さえ無かった事実を確認。私が編集長を務めるInFactでその事実を「総理の挨拶文」として報じた。
その記事は多くの人に読まれ、加藤勝信前官房長官は記者会見で「のりが付着していたとの話は報道ベースの情報で事実関係は確認されていない」と述べて、「のり付着」の報道を事実上否定した。
問題は確認もせずに報じたメディア
朝日新聞等の報道によると、政府は10月22日、菅前首相が原稿の一部を読み飛ばしたことに関し、「原因または経緯を調査しない」とする答弁書を持ち回り閣議で決定した。 立憲民主党の熊谷裕人参院議員の質問主意書に答えたものだという。答弁書は「のりが付着していた事実の有無について回答は困難だ」としている。
この閣議決定も苦しいのは、現在も広島市が保管している挨拶文を確認すれば「のりが付着していた事実の有無について回答は困難」とはならないからだ。挨拶文の構造上も無理な説明であることを宮崎さんの取材が明かしている。
ただし、この一連の流れで最も問題なのは、誤った情報を流した「政府関係者」ではない。その発言を確認もせずに報じたメディアだ。なぜなら、政府は嘘をつくからだ。それはジャーナリストなら知っている筈のことだ。もし、「政府が嘘をつくわけない」と思っているジャーナリストがいれば、その人は職業を変えた方が良い。
そこで、本題に入る。この「のり付着」の報道を行った1つが共同通信だ。8月6日の21時過ぎに次の記事を配信している。
「政府関係者は6日、菅義偉首相が広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式でのあいさつの一部を読み飛ばした原因について、原稿を貼り合わせる際に使ったのりが予定外の場所に付着し、めくれない状態になっていたためだと明らかにした。『完全に事務方のミスだ』と釈明した。 原稿は複数枚の紙をつなぎ合わせ、蛇腹状にしていた。つなぎ目にはのりを使用しており、蛇腹にして持ち運ぶ際に一部がくっついたとみられ、めくることができない状態になっていたという」
共同通信への質問
この報道について以下の質問を共同通信にメールで送った。
①この「政府関係者」の情報を報じる際に、どのような事実確認をしたのかお教えください。その際、「政府関係者」がどのようにその「事実」を確認したのか、取材の中で確認はされたのでしょうか?もたらされた情報を複数の情報源に確認するというのが基本的な報道に際してのルールですが、そうした確認作業はされたのでしょうか?
②InFactの取材でその「政府関係者」の情報は誤りの可能性が高く、加えてInFactの報道を受けた加藤勝信前官房長官が「のりが付着していたとの話は報道ベースの情報で事実関係は確認されていない」と話して共同通信の記事を事実上、否定しています。これについて共同通信は記者に再度取材の内容を確認されたでしょうか?また、それについて記者はどう答えたのでしょうか?
③共同通信は現在も8月6日の御社の記事が正しく、InFactの記事や加藤前官房長官の会見が事実ではないと考えているのでしょうか?
④結果的に共同通信の記事は政府のフェイクニュースの拡散に加担するものになったと言えるかと思いますが、如何お考えでしょうか?
⑤「政府関係者」という極めて曖昧且つ無責任なクレジットで政府の見解を報じることの危うさはかねてより指摘されてきました。こうした「政府関係者」などというクレジットの利用について再考する考えは有りませんでしょうか?
「お答えはできない」
送ったのは10月6日。feed-back@kyodonews.jpに送った。これは共同通信が設定している問い合わせ先のメールだ。ところが何の「フィードバック」も無いので直接問い合わせの電話をしたのは一週間後の10月12日。対応した編集局幹部が「質問状が見つからない」と言うので口頭で説明した上で「質問状を再送する」と伝えると、受け取りを断った上で次の様に話した。
「記事に書かれた内容以上にお答えはできない」
それはコメントかと問うと、「そうです」と言った。「これだけフェイクニュースの問題が指摘されている中で、その回答で良いのか?」と問うたが、回答は変わらなかった。
恐らく共同通信はこの「のり付着」の報道を誤報ともフェイクニュースとも認識していない。官房長官が否定し、誤報の可能性が極めて高いにも関わらず。それはなぜか?「政府関係者」が語ったという事実が有るからという理解になる。平たく言えば、「我々は『政府関係者』が語った内容を伝えただけだ」ということになる。つまり、「政府関係者」が仮に嘘を言った場合でも、それをそのまま流すことは全く問題無いという認識だ。
これでは独裁国家と変わらない・・・とは考えないのだろう。それが日本を代表する主要メディアの見解ということだ。
宮崎さんの報じた「総理の挨拶文」を多くの人が様々な思いを持って読んだ。私の問題意識は一面的かもしれない。しかし政府の嘘をそのまま流すメディアの存在は、私たちにこの国が既に健全な民主主義社会でないことを語っている。
勿論、このままで良いわけはない。私を含めて多くの仲間がファクトチェックの取り組みを進めているのは、この共同通信の回答のような姿勢を問題にしているからだ。得られた情報をそのまま流すのではなく、情報の真偽を検証する。それが今、求められている。
きょう(10月24日)の午後3時から総選挙での各党党首の発言を検証するファクトチェックのイベントを開催する。主要メディアは勿論、一般の人も是非関心を持って参加して欲しい。
反共攻撃がますます盛んである。一昔前はある程度効き目もあったかも知れないが、今はブーメランで自分に跳ね返ってくる。
こんな嘘つき政治、身内政治、金権政治、腐った政治はもうたくさんだ。
こちらのほうがメインです。是非見てください。
こんな政治をいつまでやらせるのか?!
総選挙の争点③どうするエネルギー EVと原発(古賀茂明×飯田哲也×山田厚史)20211019
孫崎享外交評論家
日刊ゲンダイ 2021/10/22
総選挙に向かって各党はさまざまな政策を打ち出している。
自民党の岸田首相は安倍・菅両首相のマイナスを引きずらないよう、新しい政策を出すのが肝要になる。それが経済成長と所得の再分配を両立させることを目指す「新しい資本主義」構想だ。
政府は、岸田首相を本部長とする「新しい資本主義実現本部」を設置し、読売新聞によると、有識者として、経団連会長の十倉雅和氏や三村明夫・日本商工会議所会頭、連合会長の芳野友子氏がメンバーに入った、と報じていたが、これには驚いた。
経団連会長や日本商工会議所会頭が総選挙の自民党の目玉構想に参画するのは理解できるとしても、なぜ、労働者側の視点に立っている連合の会長が加わったのか。
こうした動きは偶然ではない。芳野氏は会長就任時の会見で、「共産の閣外協力はあり得ない」と発言しているが、これは、自民党の戦略とピタリ一致している。
甘利幹事長は「衆院選争点は自由民主主義か、共産主義が入ってくる政権か」などと言っていた。つまり、芳野会長と甘利幹事長の発言は裏表のようなものなのだ。
芳野会長は「共産の閣外協力はあり得ない」と言ったが、それは野党が次の「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」に合意しているからだろう。
野党共通政策とは、①憲法に基づく政治の回復②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化③格差と貧困を是正する④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現⑥権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する――であり、これは国民の望む政策である。
「共産主義国家の設立に努力する」といった合意はどこにもない。それなのになぜ、野党合意の実現を目指すことが問題だと言うのだろうか。
甘利幹事長は「小選挙区は厳しい戦いだ」と言っていた。つまり、選挙動向は極めて流動的だということだ。その時、連合の会長が自民党“寄り”の発言をする意味がどこにあるのか。
私のツイートには、こんな引用リツイートがあった。
<なんだ連合って自民党支持じゃん!>
連合は組織として芳野会長の言動について、正確に解説するべきだ。
孫崎享外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
まずはじめに「反共」ありき。「反自民」はない「半自民」。これが「連合」だ。新しい体制になって少し変わるかと期待はしているが遠い希望なのか?
「労働組合」は思想信条の違いを超えて団結して労働者の権利を守る組織だ。その組織が「反共」を表看板にしてはならない。労働者の権利を守らない、闘わない労組の組織率は下がる一方だ。
ついに氷点下。
日中は陽が差しハウス内は久々に30℃超え。
一時雨も降って不安定な天気。
最後の作物ヤーコン。
今夜また雨の予報。明日掘れるかな?
園地のようす。
何をもって政権と対峙するのか、対立軸はできているか
朝日新聞デジタル 「論座」 2021年10月20日
「ひとりでもだれでもはいれる労働組合」をスローガンに掲げる「全国ユニオン」には、パートや派遣、雇用契約のない人や外国人労働者を含め、たったひとりで長時間労働やハラスメントに苦しんでいる人が入ってきます。
連合の中では主流とはいえない組織ですが、全国ユニオン会長の鈴木剛さんは今回の連合会長選に、立候補を模索しました。どんな思いからだったのか。連合に何を望むのか。政治学者の木下ちがやさんが、鈴木さんにインタビューしました。
連合は非正規、未組織労働者に大胆にアプローチする必要がある。新自由主義社会を転換するために政権交代が必要という大きいテーゼをたてるべきだ。連合が求める経済社会を前面にたてて衆院解散・総選挙に挑んでほしい……。
鈴木さんはそう訴えています。
(論座編集部)
鈴木 剛(すずきたけし)
1968年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。学生時代は無党派学生運動と早大雄弁会に関わる。仕事起こしの協同組合である労働者協同組合センター事業団を経て、2000年代に若年非正規労働に取り組むフリーター全般労働組合に関わる。2008年末の「年越し派遣村」の取り組みを経て、2009年より東京管理職ユニオン専従書記。現在、同執行委員長。全国ユニオン会長。著書に「中高年正社員が危ない」(小学館101新書)、「解雇最前線PIP襲来」(旬報社)、「社員切りに負けない」(自由国民社)。
はじまりは下町の組合。下請け工場の労働者を地域ぐるみで組織
木下 鈴木さんが会長を務める全国ユニオン(全国コミュニティ・ユニオン連合会)とはどのような組合なのでしょうか。一般的に連合は、大企業系と公務員の組合が中心といわれるわけですが、全国ユニオンはそのなかでも異色の存在と言われています。どのような人を組織し、どのような活動をしているのでしょうか。
鈴木 全国ユニオンは連合が結成された1989年よりあとの、2003年に加盟しました。いわゆる「コミュニティ・ユニオン」と呼ばれる労働組合運動のなかでは比較的新しい潮流から構成されています。
1980年代、高度成長が終わり、雇用の非正規化がすすみ、女性のパート労働や外国人労働者が増加していました。当時の労働組合運動が正規の労働者しか組織化の対象を想定しなかったなかで、正規労働者ではなくても誰でも加入できる組合として出発しました。1984年に結成された「江戸川ユニオン」という下町の組合がそのはじまりでした。東京の下町にあるたくさんの下請け工場などパートや零細企業の労働者を、地域ぐるみで組織していったのです。その後コミュニティ・ユニオンの取り組みが広がるなかで、日本人男性正社員中心の従来の労働組合から見離された外国人や女性の労働者が加入してきました。
日本の労働法制は戦争直後の占領下で制定されましたが、そこに規定された権利はアメリカ合衆国とは著しく異なりました。アメリカの場合、組合は職場の過半数代表をとっていないと団体交渉権がありませんが、日本の場合は一人でも団体交渉ができます。ですからコミュニティ運動が広がる前にも、総評時代から合同労組というものがあり、未組織だった膨大な中小企業労働者を、「全国一般運動」というかたちでオルグを配置し組織していました。これもコミュニティ・ユニオン運動の源流といえます。
さらに総評が各都道府県に配置していた、地域単位の組合のセンターである「地区労」があり、これが地域ぐるみで中小企業労働者の組織化を支えていました。ですから私たちのコミュニティ・ユニオン運動はまったく新しくでてきたわけではありません。私が所属する全国ユニオンは、このコミュニティ・ユニオンが発展したものです。
派遣、パート、外国人、名ばかり管理職……最近では「非雇用」も
鈴木 全国ユニオンはネットワーク型の組織である「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」がベースになっています。このベースになっているネットワークは1989年に第1回全国交流集会ではじまり、同年に結成された連合のなかに加わって、ディセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)や均等待遇を求めていくことを志向したユニオンが全国ユニオンを2002年に結成し、2003年の連合加盟に繋がりました。
連合も同時期の2001年に「ニュー連合」として、均等待遇やパート・有期・派遣労働者に関する立法化など「社会的労働運動」推進を方針に掲げ、2003年には「連合評価委員会最終報告」の答申がだされ、「企業別組合の限界を突破し、社会運動としての自立を」と提言しました。そのこともあり私たちは2003年に連合に加盟しました。
全国ユニオンの特徴はもちろん非正規労働者を組織しているということです。派遣労働者、パート有期契約の労働者、外国人労働者、さらには「名ばかり管理職」などの正社員だが組合に入れなかった人たち、最近ではウーバーイーツのような「非雇用」の人たちを組織しています。「ひとりでもだれでもはいれる労働組合」というのがスローガンです。もちろん支部を結成したり、職場の多数派をつくる試みもやっていますが、基本は職場でたったひとりでたったひとりの職場で 長時間労働やハラスメントに苦しんでいる人が入ってきます。
木下 全国ユニオンの組合員数は3000人くらいでしょうか。
鈴木 そうですが、さきほど話した「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」は80団体2万人を組織しています。そのうち連合に加盟する全国ユニオンに属しているのが約3000人ということです。
派遣法改悪にリーマンショック……労働運動に飛び込む
木下 では、鈴木さんはどのような経緯で労働運動に入ったのでしょうか。2005年には連合会長選に全国ユニオン初代会長の鴨桃代さんが出馬し大健闘しましたよね。
鈴木 私は80年代終わり頃に早稲田大学で無党派の学生運動をやっていまして、早稲田大学雄弁会にもいました。社会科学部は当時夜間部でしたので、在学中に短い期間ですが作家の立松和平さんが株主の会社でテレビの仕事をやり、「ザ・スクープ」などの制作にかかわっていました。そのあと15年ほど、昨年2020年に法制化された労働者協同組合(ワーカーズコープ)で仕事起こしなどをやっていました。
きっかけになったのは2001年の9・11同時多発テロとアフガン・イラク戦争でした。世界的に反戦平和運動がひろがったときに、学生時代の仲間や新たに出会った人たちと反戦運動をやった。その運動のなかで非正規雇用問題への関心が高まっていったのです。小泉内閣で行われた派遣法改悪などをうけて、2003年頃から自発的に「フリーター全般労組」が結成され、「自由と生存のメーデー」という独自の集会とデモをやるようになりました。
「自由と生存のメーデー」で、日雇い派遣の若者たちもデモ行進した=2008年5月3日、東京都新宿区
この「自由と生存のメーデー」に講師として参加要請したのが鴨桃代さんだったのです。連合会長選で106票をとった鴨さんをわたしたちのメーデーに呼ぼうという話になったからです。結局鴨さんは都合でこられませんでしたが、全国ユニオンのオルグの方が講師で来てくれた。それがつながりになり、私は2008年に全国ユニオンに加盟している「東京管理職ユニオン」の執行委員になり、2009年から専従になりました。
木下 ちょうど2008年のリーマンショックの直後ですよね。
鈴木 まさにそうです。すでに2006、7年頃には、人材派遣会社グッドウィルの違法行為が問題になっていました。破綻したリーマン・ブラザース系の投資会社に約60億円の負債を抱え出資していて 一方的に廃業を宣告した京品ホテルの労働者たちの自主営業を支援したりもしました。もちろん2009年末の「年越し派遣村」にもボランティアのひとりとして参加しました。このような時代情勢のなかで、安定的な仕事をなげうって労働組合運動に参加しようと決めました。
リーマン・ブラザーズ系投資会社に約60億円の負債を抱えて廃業した京品ホテルで、雇用継続などを求めて自主営業を続けていた元従業員らを東京地裁が強制排除。阻止しようと元従業員や支援者らがスクラムを組んだ=2009年1月25日、東京都港区
「パート女性が職場に行きたくない日は?」 鴨桃代さんの問いのインパクト
木下 鴨桃代さんが連合会長選に出馬して、負けたけれども非正規問題を連合がとりくむきっかけになった。そうした流れができたときにリーマンショックがあったわけですが、その時の印象として「連合は変わった」という印象は受けましたか。
鈴木 2005年に鴨さんが連合会長選に出馬したとき、僕は会場にはいませんでしたが、投票権は構成組合員の数できまりますから、そもそも全国ユニオンは1票しかないわけですよ。今年の連合会長選が行われていたとしたら、投票総数は501票です。そのうち最大産別のUIゼンセンは125票を占めます。あのときもだいたい同じで、鴨さんは500対1で負けて当然だった。でも106票を獲り、棄権も50票くらいありました。参加者によると投票結果発表のとき会場はどよめいたそうです。
鴨さんは会場での演説で「みなさん、パート女性が1年で一番職場に行きたくない日を知ってますか? ボーナスの日です。正社員が朝からワクワクしている中で、パートは、同じ仕事をしているのにと心が揺れるのです。パートだから賃金が低くて当たり前なのですか? ボーナスがなくて当たり前なのですか?」と訴えた。
この演説は大きなインパクトがあり、その場で心動かされて鴨さんに投票した代議員もいたそうです。
「なのはなユニオン」の事務所で労働者からの電話相談に応じる鴨桃代・全国ユニオン会長=2005年11月5日、千葉市中央区
党派を超えて取り組んだ貧困問題、政権交代に結びつく
鈴木 これは連合の運動史でも大事なモメントで、非正規雇用センターの設置や反貧困運動につながることになります。さきほど紹介した2002年の連合の「連合評価委員会最終報告」 の内容は大変重要で、いまでも通用するものです。それを棚上げにしてはいけないという思いがありました。
そして鴨さんと会長の座を争った高木剛会長(UIゼンセン・2005~2009年会長)も、ひろく社会運動にコミットして、新自由主義社会を転換させ、非正規労働者の組織化を重視する方向に大きく舵を切りましたし、政治との関わりでもかなり踏み込んで、2009年の民主党の政権交代に大きく貢献しました。
木下 そうですね。当時は全労連や全労協など他のナショナルセンターも「年越し派遣村」を支えたり、貧困問題を一緒に取り組むという動きが党派をこえてありましたよね。そしてそれが民主党政権につながっていく。
鈴木 まさにそうですよね。そうした運動の積み重ねが政治の動きと結びついて政権交代が起こった。
迷走した民主党政権、政治にも連合にも不一致や誤り
木下 小泉構造改革以前の民主党は、自民党以上に新自由主義的と言われていたわけで、労働組合側からしても民主党の議員というのは公務員バッシングをやるような存在だった。みんな民営化を唱えていた。しかしその民主党が政権交代の段になったら「国民の生活が第一」に転換した。でも政権をとったもののなかなかうまくいかず、迷走することになりました。これは労働運動にどういう影響を与えたんでしょうか。
鈴木 負のスパイラルに陥りましたよね。まず、民主党政権じしんが新自由主義に対決するというところで一致できなかった。周知のとおり「仕分け」をやりはじめた。いまも公務員系の労働組合の人も、「なんで自分たちをうまく使ってくれなかったのか」と怒りを抱いています。政権内に民営化、新自由主義をより推進しようとする勢力がいたからですが、もっと専門家のひとたちを尊重してほしかった。
他方で連合のありかたも問題でした。「支援している民主党が政権に就いたのだから、圧力をかける対象にはならない」という姿勢をとった。それで交渉ではなく「協議型」に転換してしまった。
これにはいろんな意見がありましたが、わたしは誤りであったと思います。たとえ支持政党であったとしても、労働運動は自立性をもつべきで、政治と経済には相対的な差異があるわけだから、政権を担うことでいろいろ調整しなければならないにしても、是々非々で政権に対して労働組合のナショナルセンターとして要求し、行動で示すことは必要だったはずです。もちろん政労使の協議は大切ですが、それ一本にしたのはよくなかったと思います。
木下 民主党政権も半ばになったころに3・11の東日本大震災と原発事故がありました。以後、反原発や反安保法制の運動のなかから大規模なデモンストレーションが台頭しましたが、僕の印象は、それ以前はむしろ労働組合がそうした活動をやっていたというものです。それが入れ替わった感じがしますね。
鈴木 後退していく。もちろん2015年に神津里季生さんが会長に就任し、そうした試みはなされましたが、十分にはやりきれなかった。
安倍政権下でもテーブルを蹴れない~政労使協議の隘路
木下 民主党への失望から生まれた安倍政権は、国民的な支持が高いわけでもありませんでしたが、8年以上つづいてしまった。この安倍政権下での労働運動はどのようなものだったのか。さらに安倍政権末期からコロナ危機がはじまります。これが労働者にどのような影響をもたらしているのでしょうか。
鈴木 民主党政権政権で連合が協議型に転じたのも問題でしたが、下野した段階で「要求と行動」という方針に戻るべきでした。しかし戻らなかった。協議型のまま維持してしまって、結局政労使協議の隘路におちこんでしまいました。それが今回の私の連合会長選立候補の模索につながりました。
たとえば高度プロフェッショナル制度の導入についても、政労使協議で危うくボス交渉になりかけていました。 テーブルを蹴るということができないんですよね。「その枠組みから外れたらまずい」となって、つい譲歩案、譲歩案と流れてしまう。これまで連合は、「高プロは容認できない」というコンセンサスをつくっていたわけで、それを適正な手続きを経ないで覆すのは許せないと、全国ユニオンは政治生命を賭けてすべての産別に声明を送りました。それもあって連合中央執行委員会でも議論になり、相当数の地方組織や大きな産別からも高プロで譲歩するのはまずいという声があがり、食い止めることができました。こうした危うさが連合にはあるといわざるをえません。
拡大高度プロフェッショナル制度を条件つきで「容認」しようとした連合への抗議デモには100人ほどが集まった=2017年7月19日、東京都千代田区の連合本部前
安倍政権は投票率も低く、支持が高かったわけではない。それに対してどのような対抗する塊をつくるのかが課題なわけです。野党共闘がまさにそうですが、柔軟な対応が必要だった。連合も時期によっては、たとえば厚労省前行動などでも、ナショナルセンターの違い、潮流の違い等で一緒にできないにしても、時間差でずらしてやるとかを、交渉役が汗をかいてやってきました。そうやって事実上運動を連動させてやるような経験はあるわけです。そうした経験を生かす政治的な能力や技術は、著しく低下したといわざるをえません。こうしたことが安倍政権の独走を許してしまった。
そして安倍政権は、運動側の弱さもあり、保健所をはじめ公衆衛生の民営化をすすめ、ないがしろにし、直近にいらないものは切るというやり方が、この新型コロナ下での破綻をもたらしたわけです。これに対して連合は何をもって対峙するのでしょうか。「働くことを軸とした安心社会」という、北欧型の社会民主主義的スローガンを掲げているわけですから、それに沿った政権との対立軸をつくらなければならない。それができているのかがいま問われています。
労働者の8割が未組織。そこが無法地帯になり、貧困状態に
木下 新型コロナ危機のもと、新自由主義的な政策や民営化はまずかったという世論が高まりつつあります。リーマンショックのあともそうでしたが、「小さな政府」はうけなくなってきています。他方で、昨年「エッセンシャルワーカー」という言葉が流行はしたのに、言葉だけでなにも対処されていません。結局自民党政権は、GOTOしかり、利権政治の範囲内でしかお金をまわさない。そしてシングルマザーやウーバーイーツのような新産業部門の労働者は置き去りになっている。全国ユニオンはそういうところに切り込んできましたよね。
鈴木 全国ユニオンは厚生労働省折衝を毎年二回やっていますが、この1年半、新型コロナについては、雇用調整助成金などの取り扱いや範囲を広げるたたかいをかなりやってきました。
全国ユニオンに加盟する「派遣ユニオン」の事例で言うと、プリンスホテルの交渉があります。コロナ8業種といわれる、ホテルや交通産業などはいま大打撃を受けている。ホテル業界には、「フリーシフト」という形で毎月毎月の出勤が不安定に変更となる労働者が多くいます。そういうひとたちに営繕などをやらせている実態があります。プリンスホテルだけでも3000人が「フリーシフト」で雇われている。こうした人たちは、コロナでシフトが入らなくなり、無収入になった。ところが、基本出勤日が定まってないということで政府の雇用調整助成金の「対象外」ということになる。
派遣ユニオンに相談に来たプリンスホテルでフリーシフトで働いている方は、18年働き家族を養っています。経営側はこの人たちをまったくの無給で「自宅待機」にしてしまう。解雇もしないから解雇予告手当も受けられない。こんな状態が一年間もつづいていたのをうけて、全国ユニオンは厚労省折衝やプリンスホテル側との団体交渉をやり、厚労省に実質的な労働者と認めさせ、雇用調整助成金を適用させました。
プリンスホテルは従業員規模が大企業並みで、中小対象の雇用調整助成金はあてはまらないという厄介さもありました。こうした2重3重の困難が新型コロナ下ではあります。
大企業に働いているとはいっても、実際にはこのように不安定な地位に置かれているわけです。連合の構成産別の労働者を守るのも大事ですが、いまの日本の組合組織率は16%程度です。8割は未組織で、そこが無法地帯になり貧困状態が生まれている。それに対してナショナルセンターがどのように取り組むのかが大切なのではないでしょうか。
劣悪なアマゾンの労働環境、日本でも問題化
鈴木 逆にウーバーイーツやアマゾンは、コロナ下でものすごい業績をあげている。しかし労働者の条件をよくする気はなく、常に一定数を解雇する人事政策を世界的にとっています。
アマゾンは2009年のリーマンショックのときに、正当な理由がなく解雇を通告し、職場から締め出す「ロックアウト解雇」を世界各国で相当やっていました。さらにPIP(業務改善計画)という手法をとった。これは売上などの指標ではなく、協調性がないとか消極的といった抽象的な理由で従業員に改善を求めるというものです。通常の業務の他に課題が課されるため長時間労働になり、退職に追い込む手法としても使われます。このようなリストラ手法を編み出したのは、GEといわれていますが、私たちの下にはアマゾンで働く労働者からの相談が多く来ました。
アマゾンは、毎年6%は辞めさせるというシステムをつくりあげました。2015年にニューヨークタイムスの一面で「アマゾンの非人間的労働」という特集が組まれました。ここにアマゾンの現役、退職者100人の労働者の記事が掲載された。そのなかには癌サバイバーの女性が就労拒否されたり、倉庫の仕事でストップウォッチでトイレの時間をはかっているなどの実態が暴露されました。アメリカ本社が世界中のアマゾンに指示をしてそれをやるので、日本でも同じようにやられる。それが日本でのアマゾン組合の結成のきっかけでした。
拡大アマゾン日本法人の労働組合が所属する東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長(左)らが記者会見を開いて、労働環境の改善を訴えた=2015年11月4日、東京都千代田区
アマゾン日本法人の弁護士事務所は最初はリベラルなところで、そこは交渉に応じるし協約もむすび、「日本の労働法制はアメリカと違う」などとアメリカ本社を説得もしていた。ですからトラブルはいったんは収まったのです。収まると組織化が止まるのですが、アマゾンはその法律事務所を解約したのです。そして2018年から19年ごろにかけて問題が再燃し、相談数が増えていきました。
簡単に切られる派遣労働者、日本では組織化に壁
鈴木 アマゾンはコロナ下での莫大な収益向上で自信をもったわけですが、それに対して世界中の労働組合もアマゾンで働く人たちに戦略的オルグを展開している。
アメリカでもナショナルセンターAFL-CIOに影響力を持つグループ「レイバーノーツ」などがオルグを展開し、保守的なアラバマ州でも組合結成選挙で接戦に持ち込むという成果をあげています。アマゾン社内では宣伝ができないので、組合活動家は会社をでたところにある信号待ちの時に社員にオルグするわけですが、当局はなんと赤信号の時間を短くしてまで阻止しようとしました。さらにはニューヨークの組合のリーダー二人を解雇しました。
いまは世界的な連携ができます。日本のアマゾン組合員たちは英語が堪能なので、SNSを使い、各国の活動家と連絡をとりあっています。ただ、日本の場合はアマゾンの倉庫では多くの現業労働者が派遣会社から派遣されていて、すごく組織化をしにくい。これは連合の課題でもありますが、日本では派遣労働者は派遣元との雇用関係にあるので、簡単に切られてしまう。アメリカやヨーロッパだと組織化に成功し、職場の過半数をとれれば倉庫で働く100人、1000人単位で組織化できます。しかし日本はなかなかうまくいっていなくて、倉庫で働く労働者よりもどちらかといえばホワイトカラーの人が加盟してくる。こうした課題が日本の労働運動にはあります。
非正規が4割なのに労組役員は……。反映できない現場の実態
木下 昨年論座に「新型コロナ危機が開く労働組合と政治のあらたな関係」という論文を書きましたが、日本では労働組合の集団的な声やデータを政治に吸い上げる力が弱い。連合もやってはいるが回路が弱い。そうなるとコロナ下での労働者の状態を政府が把握できない、対処もできないという悲劇を生んでいます。
鈴木 労働組合はボトムアップで、困難な労働者の状況や声やデータを吸い上げていかなければならない。ナショナルセンターも、もう非正規労働者が全労働者の4割を占めているのだから、役員だって4割じゃなきゃいけないはず。そうじゃなければ正確な声は反映されないわけですから。もちろん連合内部の役員構成でそこまでやるのは無理としても、運動のなかでそういう実態を反映させていかなければならないと思います。
社会に発信できない連合に危機感。会長選挙はその好機
木下 連合は転機にあります。政治でも労働界でも注目されています。神津会長は3期6年の長期政権の最後の2年間で、はっきりと「命と暮らしの政治」をうちだし、新自由主義に対抗するという姿勢を強めてきました。さらに神津会長の任期当初の2015年から野党共闘がはじまったものの、2017年には希望の党騒動で民進党が割れてしまいました。しかし2020年にはそれを修復して立憲民主党と国民民主党の合同に貢献しました。神津会長は労働運動が塊になって政治を支え、新自由主義に対抗していくことをはっきり示そうとした。しかし次期会長人事がなかなか決まらなくて、そこで鈴木さんが立候補しようとした。なぜそうしようと思ったのでしょうか。
鈴木 1989年の連合結成以来、会長選挙の立候補期間を延ばすというのははじめての事態です。これは組織的な弱まりの結果です。
私自身はいろいろ批判もあったが連合加盟を選択したのはよかったと思っています。分裂は望ましくなく、一致団結して積み上げてきたこれまでの方針を支持しています。たとえばエネルギー政策についても、ちゃんと読んでもらえれば「原発に頼らない社会をつくる」ということは電力総連も含めて確認しています。
ただ、これまでなら有力な産別のリーダーが会長に名乗りを上げるのは当たり前でした。しかも菅政権は、コロナ患者を自宅で放置しているような状態のなかで有効な手がうてず、国民の支持が低下している。そんななかで、新自由主義を決別することを掲げる連合が発信をしなければならないのに、それができない状態にあることに危機感をもったから、連合会長選に立候補しようとしました。
木下 連合の問題のひとつは発信力の弱さですよね。もちろんデマや無理解もありますが、自分たちの存在意義や活動を社会に発信していく努力が足りていません。ですから僕は、今回会長選に鈴木さんが出馬し、勝ち負けはともかく論戦を交わすことで世の中にひらいていくのは望ましいとおもいました。
鈴木 社会に発信するチャンスですよね。
芳野連合新体制に期待すること
木下 でもそれが功を奏したのか、JAM(ものづくり産業労働組合)の芳野友子さんが会長に名乗りをあげました。
鈴木 JAMは移住労働者外国人問題もよくやっていますよね。
木下 連合新会長が女性であることも画期的ですが、JAMは中小企業の労働者を組織しています。そして1999年に旧総評系の全国金属と旧同盟系のゼンキン連合が合同し結成された産別です。まさに連合の象徴のような産別であり、かつ政党では立憲民主党に軸足をおいています。
鈴木 JAMの安河内さんという若い会長は、2020年末に私たち全国ユニオンが開催した「年越し支援・コロナ被害相談村」にもきて相談員をやってくれましたよ。
連合の新体制が発足。(左から)清水秀行事務局長、芳野友子会長、松浦昭彦会長代行、川本淳会長代行=2021年10月7日、東京都千代田区
木下 芳野友子さんの会長選出によって、女性の組合員からも喜びの声があがっているそうです。鈴木さんは芳野連合新体制になにを期待したいでしょうか。
鈴木 連合において初の女性会長となる芳野さんが中小企業での組織化に取り組むJAMから選出されたことは歓迎しています。いまの経済社会は自公政権にズタズタにされました。連合はこれに対抗する必要があります。非正規労働者は40%いますが、連合はまだまだ組織できていません。非正規、そして8割の未組織労働者に大胆にアプローチする必要があります。
新型コロナ下では派遣法などの問題が明らかになっています。社会運動のなかでの労働運動をさらに育てなければならない。そのためにも地域にめくばせをしなければならない。
今、地方に配置しているアドバイザーが電話一本で労働相談を受けられるようにしていますが、それを中央に集めようという動きがあります。その相談の一次処理をAIでやろうとする動きがある。私はそれだけではだめだとおもう。確かに多言語対応や基本的なQ&AについてAI処理できることは良い点です。しかし、切迫して複雑な労働相談は、AIでは無理です。また、組織化できそうな相談だけをピックアップしかねず、困難な個別事案を置き去りにする心配があります。
いまの新型コロナ下の貧困、労働問題は複雑骨折のようなものです。「コロナ被害相談村」のとりくみで明らかになったように、労働問題の専門家だけでは対応できない。医療や、場合によってはただちに生活保護の申請が必要になります。ソーシャルワーカーや法律家の助けもいるし、仕事が欲しい場合にはワーカーズコープなどとの連携も必要です。女性の場合はDVやシェルターの問題もある。そういう横の連携がいまは必要で、そして地方は地方で課題があるわけだから、中央集権ではなく地域で蓄積しているネットワークや経験を生かしていく必要がある。
公園の出入り口に掲げられた「年越し支援・コロナ被害相談村」の幕=2020年12月29日、東京都新宿区
もう一度ナショナルセンターとして、「要求と行動」の原則に立ち返るべきです。自公政権に対峙し、労働者の実態を突き付けることができるのは連合だけですから、対決型の大衆行動や国会前の行動、厚労省前の行動や各都道府県でのアクションを展開すべきだし、政治においても新自由主義社会を転換させる、そのために政権交代が必要であるという大きいテーゼをたてるべきです。連合が求めている経済社会を前面にたてて総選挙に挑んでほしい。
ボトムアップ型で、自立性をもって政治にコミットを
木下 労働組合は政治の道具ではない。あくまで働く要求が一致点で、思想信条いろいろな考えの人が組織されている。要求を実現していくうえで政治がなぜ必要なのかを改めて問うならば、あの希望の党騒動のような政界再編劇を繰り返してはならない。だからこそ野党は働く人たちの声を聞いて前を向いて闘わなければいけないとおもいます。
鈴木 実態、政策、あるべき社会像、これらを掲げ、ボトムアップ型で相対的な自立性をもって政治にコミットしなければならない。変な権謀術数にはまってはならないと思います。
木下 連合のなかでのそれぞれの時代のいい部分を継承しながら発展させていく。「命と暮らしを守る政治」をやっていくことが必要ですね。
木下ちがや(きのした・ちがや) 政治学者
1971年徳島県生まれ。一橋大学社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。現在、工学院大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員。著書に『「社会を変えよう」といわれたら」(大月書店)、『ポピュリズムと「民意」の政治学』(大月書店)、『国家と治安』(青土社)、訳書にD.グレーバー『デモクラシー・プロジェクト』(航思社)、N.チョムスキー『チョムスキーの「アナキズム論」』(明石書店)ほか。
またまた長い記事になってしまい申し訳ないです。この記事は(上)(下)になっていたのですが選挙戦も始まり明日はどのような注目記事が出てくるかわからないので、今日まとめてアップさせていただきました。
衆院選を前にして、発足わずかの岸田内閣がさっそくボロボロだ。
10月8日の所信表明演説では「分配なくして次の成長なし」とブチ上げていたのに、その3日後にはなぜかそのフレーズが「成長なくして分配なし」に変化。
また「新自由主義からの転換」という巨大花火も打ち上げていたのに、金融所得課税強化は見送り。
そうして選択的夫婦別姓は、いつのまにか検討すらしない方向のようだ。
そんな岸田首相に関して、非常に腑に落ちる言葉に出会った。「週刊金曜日」10月15日号の中島岳志氏と山本太郎氏の対談だ。ここで中島氏は、岸田首相を「彼が一貫しているのは、ぶれることのみ」と評している。
「目の前にいる人に合わせるっていうだけの人で、それで嫌われないということによって出世していく」
確かにまったくその通りで、そんな処世術によってとうとう総理大臣にまで登りつめたのだから、なんだか今の時代を象徴しているようである。
さて、そんな「ブレる男」岸田首相、所信表明演説で「人生百年時代の不安解消」や「働く人への分配機能の強化」「中間層の拡大」「少子化対策」などと言っているが、その一番の近道は、誰が考えても安定した雇用ではないだろうか。
最近、国税庁が2020年の「民間給与実態統計調査」の結果を発表したが、それによると、正社員の平均年収は496万円であるのに対し、非正規は176万円。男女別で見ると、非正規男性は228万円、非正規女性は153万円。強調したいのは、今や働く人の4割が非正規であり、女性は半分以上が非正規ということ。2000万人を超える人々が、平均すれば100万円台の年収しか得ていないことである。
「少子化が問題だ」と言うのであれば、岸田首相はこの額で子育てできるかどうか、考えてみればいいだけのことだ。
ちなみに40代、ロスジェネの私は、同世代の非正規の人々から「正社員として長く働けるなら、結婚や出産について前向きになれる」という言葉をもう、うんざりするほど聞いてきた。仕事さえ安定していたら、1年後、5年後、10年後を予想してライフプランを立てることができる。
しかし、ロスジェネの中には、20年以上前の90年代から今に至るまで、ずーっと「3ヶ月先の生活がまったく不明」という人が多く存在する。非正規化によって生み出された層だが、「たかが雇用形態」が結婚や出産という人生の選択肢に大きな影響を及ぼしていることを政治はこれまで完全に放置してきた。
それだけではない。非正規ゆえ、ローンが組めない、賃貸物件の入居審査に落ちるなど、もはや「身分制度」のようになっていることをどう考えているのか。非正規は、もはや雇用だけの問題ではまったくないのだ。だからこそ、「中間層の拡大」とか言うのであれば、ここに目を向けてほしいのだ。というか、自民党政治が長年かけてここまで非正規を増やし続けてきたのだ。誤った政策の犠牲者に対して「自己責任」と言い続けるだけで放置してきた罪は、絶対に問われなければならないと思う。
さて、私がこの一年半目撃しているのは、そんな非正規層の中からコロナが「トドメの一撃」となり、深刻な貧困状態に陥ったり、住まいを失ったりしている人が続出していることだ。
「新型コロナ災害緊急アクション」に「ホームレスになった」「所持金が尽きた」とSOSメールをくれるほとんどが、非正規。ついでフリーランスや自営業。
しかし、支援団体に出会えた人はまだ幸福と言える。そのような情報にたどり着けず、自ら命を絶っている人は確実に存在するし、ひっそりと路上に出て、空腹から窃盗などをして捕まる人も出ている。コロナによる貧困ゆえに起きた事件。思えばこの一年半、そんな事件を多く見聞きしてきた。
例えば20年4月には横浜で不動産業者の女性を刺し、バッグを奪ったとして20代男性が逮捕されている。男性は新型コロナの影響で仕事がなくなり、ネットカフェにも泊まれなくなり路上生活になっていた。
20年8月には、福岡で30歳の女性が恐喝未遂で逮捕されている。真珠販売店でカッターナイフを店員に向け、現金を脅しとろうとした容疑だ。女性はコロナでうどん屋の仕事を失い、たちまち家賃を払えなくなり、公園で寝泊まりする日々に。紙に「食べ物をください」と書いて路上に立つこともあったという。事件を起こした時の所持金はわずか257円だった。
20年11月には熊本県で53歳の男性が、本屋でコミック一冊を万引きして交番に自首、逮捕されている。男性は5月まで機械製造会社で派遣で働いていたもののコロナによる不景気で契約を打ち切られ、「家と食べ物に困っていて、警察に捕まりたかった」と話したという。
一方、昨年にはコロナで生活苦に陥ったベトナム人実習生を風俗で働かせたとして経営者が逮捕されているし、家畜窃盗に関与した疑いで外国人が逮捕された事件もあった。
どれもこれも、「公助」がマトモに機能していたら、決して起こらなかった事件だろう。
ちなみに、コロナ禍で犯罪自体は減少している。20年の犯罪は17.9%減。特に「窃盗」は21.6%も減っている。外出の機会が減ったことで、犯罪そのものも減ったようである。
3・11の時、暴動や略奪が起こらなかったことが世界から驚かれたように、この国では、どんなに生活が厳しい人が増えても、途端に盗みが増えて治安が悪くなることはなかった。
しかし、このまま放置しておけば、そんな「日本の神話」だって崩れかねないだろう。そうして一度悪くなってしまった治安をもとに戻すには、膨大なコストがかかる。
だからこそ、公助が必要なのだ。今のように「若いから」と追い返されたり時に人格を否定されるのではなく、助けを求めたら「大変でしたね」と手が差し伸べられるような、そんな福祉が必要だと思うのだ。
この一年半、住まいも仕事も所持金も失った人たちの声に、相談会などで耳を傾けてきた。彼ら彼女らの言葉を要約すると、「餓死か自殺かホームレスか刑務所か」という「最悪の四択」になる。この中で、もっとも「公的」っぽいのは刑務所だ。そんな社会は、はっきり言って終わっている。
さて、衆院選公示の前日、厚労省で「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」の記者会見をした。
昨年4月に始まったこの相談会は、10月23日で10回目を迎える。2ヶ月ごとに開催される相談会では私もずっと相談員をしてきた。相談会ではこれまで1万人以上の悲鳴を受けとめてきたのだが、コロナ禍が始まってから時間が経てば経つほど労働相談は減り、生活苦の相談が増えている。同時に増えているのは相談者における無職者の割合だ。
そんな相談会に寄せられる相談を、昨年8月から「貧困研究会」が分析をしているのだが、事態の悪化が如実に表れているのは預貯金額だ。例えば昨年8月に電話してきた人の預貯金額は、平均値で232万円。しかし、直近の今年8月には、平均額が67万円まで下がっていた。中央値は昨年8月で16万円。今年8月で0円。
また、今年8月に電話をくれた中で、預貯金額について回答があった226人のうち、54.9%の124人が預貯金・手持ち金が0円。10万円までが全体の71%を占めている。
この電話相談では国の対策についての評価を聞いているのだが、今年8月、「全く評価しない」が43.3%で過去最高となった。「評価しない」は25.4%。実に7割近くが国の対策を評価していないのだ。
一方、最近目立つのは、緊急小口資金、総合支援資金などの貸付金をすべて借り切ってしまい、どうにもならないという相談だ。例えば以下のようなもの。
「緊急小口も総合支援資金も利用し、合計155万円。年を越せない。餓死か泥棒しかない」(男性)
貸付金を借り切った人には「生活困窮者自立支援金」という制度があるにはあるが、支給額は一人世帯で6万円が最大3ヶ月。はっきり言って焼け石に水だし、支給要件が厳しいことから以下のような声もある。
「緊急小口、総合支援資金で200万円借りたが生活できない。自立支援金は要件満たず。派遣で働いているが、もうすぐ期間3年で終了となる」(女性)
そもそも困窮者に給付ではなく貸付をするという支援策自体、最初から無理があることは多くの人が指摘していたことだ。一方、8月と言えば第5波の真っ只中だったので、コロナに感染した人からの相談もあった。
「コロナに感染した。症状が治れば働いていいと言われているが、家賃が払えない」
「一人親方。コロナにかかって今日で12日目。ホテルに空きがなく自宅療養。酸素飽和度は一時90にまで下がった。昨年一時仕事が半減し、その後復調していたが、コロナに罹患して今は無収入。収入減った際に、特例貸付を枠いっぱい借り、サラ金等から合計200万円の借金がある。毎月の保険料も払えない」
このような事例が報告された記者会見の場で、700件以上の駆けつけ支援をしている「新型コロナ災害緊急アクション」の瀬戸大作さんは、最近の傾向に触れた。
7〜9月にかけて、「住まいがない」「所持金が尽きた」などSOSメールをくれる人の65%が20代と若年化していること。生活保護申請同行に至っては、4割が女性であること。シェアハウスからの追い出しも見られること。また、一年前に支援し、生活保護に繋げた人たちの多くが、今も仕事が見つかっていないこと。正社員になっている人はゼロであること。また、ここに来て生活保護の申請を追い返す「水際作戦」が増えていること。
そうして、厳しい生活の中、やむにやまれず万引きをしてしまい、捕まる人が出ていることについても触れた。
もちろん、罪は償わなければならない。しかし、経済的に追い詰められて万引きすれば「前科者」となり、生活再建はさらに茨の道となってしまう。万引きを考えるくらいなら役所に行って助けを求めればいいと思うが、役所の中には助けを求める手を振り払うところもある。ある意味、刑務所より役所の窓口の方がハードルが高くなってしまっているなら、それはセーフティネットが機能しているとは到底、言えない。
このような限界状態の支援の現場を、どれほどの政治家が知っているだろうか。
さて、そんなコロナ禍で始まった衆院選。
なんとかして、岸田政権に大きな打撃を与えたい。
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10月23日(土)10:00〜22:00
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なんと、困ってるひとの多いこと、困ったひとも多いけど・・・・
変えよう!チェンジ!
コロナ対応やオリンピックで税金を多く使ったイメージがあるのですが、どのように回収するつもりでしょうか? 20代前半ですが、税金が増えているのに給料は下がる一方でこれからがすごく不安です。(20〜29歳、女性、茨城県)
コロナで学校が休校になったり、子どもも大人と同じように政治に振り回されています。「18歳未満の国民の生活」を豊かにするために各政党はどんなアプローチを考えていますか?(18〜19歳、女性、鹿児島県)
岸田文雄首相は、この選挙を「未来選択選挙」だと言います。そうであるならば、これからの「未来」を生きる若者たちこそが、この選挙の中心にいてもいいはずです。
でも、若者の「声」は政治に届いているでしょうか?
政治は若者にしっかりと向き合っているでしょうか?
ハフポスト日本版は、U30社外編集委員でNO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さんと一緒に、「選挙アップデートfor U30」というプロジェクトを始めます。
選挙のたびに「投票率が低い」ことがニュースになる日本。
前回2017年の衆院選では、全体の投票率が53.68%と低い中でも、20代33.85%と10代40.49%と、U30世代の投票率の低さが際立ちました。
若い世代の投票率の低さはかねてから指摘されていますが、そもそも国会議員にU30世代が1人もいないのです。
列国議会同盟(IPU)が2021年に公開したレポートには、2020年時点の各国の下院議員における“若者”の比率が比較されています。
日本の衆院議員はU30は0%。U40は8.39%(110カ国中96位)。国民を代表するはずの国会でジェンダーのアンバランスがあることはよく知られていますが、世代別にみてももかなり歪な構造になっているのです。
「選挙アップデートfor U30」では、ただでさえU30世代の声が届きにくい政治や選挙の仕組みそのものについて問題提起するとともに、U30世代の声や視点を可視化し、政治に届けていくための場づくりに取り組んでまいります。
プロジェクトのローンチに先立ち、ハフポスト日本版と一般社団法人NO YOUTH NO JAPANは、「選挙アップデートfor U30 衆院選アンケート」を行いました。
9月9日〜10月9日までに、オンラインで全国から9536件(U30は3613件)の回答がありました。
U30世代が、衆院選で自分が投票する候補者・政党に特に積極的に取り組んでほしいと思う社会課題(3つまで複数回答可)のトップは、「ジェンダー平等(選択的夫婦別姓など)」です。
特に選択的夫婦別姓に対しては、導入を求める声が圧倒的多数を占めました。同性婚の法制化を求める声も多く、30代以上の世代と比べ、多様性を尊重する政策を重視する傾向がうかがえます。
自由記述欄には、「将来不安」を訴える声も多数寄せられました。
ランキングでは「妊娠・出産・子育て」や「格差・貧困」などが上位に挙がっていますが、こうしたカテゴリーを超えた、イシュー横断型のコメントも多く見られました。
また、「経済成長・成長戦略」というテーマについては、こんなコメントも。
昨今では脱成長という考え方についても少しずつ浸透しつつある。海外でもサーキュラーエコノミーなどの考え方、社会の動きが注目されるが以上の点について各政党の意見や考えをお聞きしたい。
(20〜29歳、Xジェンダー、埼玉県)
「どう成長するか」ではなく「成長路線」そのものを問う声が見られたことも、大きな特徴です。
選挙といえば、恒例行事のようにメディアが「政党アンケート」や「政策討論会」を企画します。
ところが、今回の選挙では、メディアの内外で若者の視点や声を政治に届けようという試みも多数生まれているように思います。
私たちはこの流れの中をさらに加速させるべく、本当の意味で若者と政治が会話する場をつくります。
私たちも主要9政党に行った「アンケート」は、U30の皆さまからいただいた貴重な意見をもとに作成しました。
また、U30の声を少しでも直接的に政治に届けるべく、プロジェクト第一弾として、10月21日午後9時から「U30のための公開討論ライブ」を生配信します。
能條さんらU30世代と私たちメディアが協力して、ゼロから企画を作った、まったく新しい「政党討論会」です。
各政党のキーパーソンに質問をするのは、能條さんをはじめとした20代の若者たち。アンケートやSNSに寄せられた質問やコメントも、できる限り紹介していきます。
10月25日からは、四夜連続ハフライブ「Vote for Change」も配信します。
毎月、SDGsを様々な切り口で語り合うトーク番組「ハフライブ」の選挙特番です。
各回、多彩なU30ゲストのみなさんとともに、アンケートで関心が高かった「ジェンダー平等」や「将来不安」「気候変動」などについて議論を深めていきます。
政治が若者に対等に向き合い、若者が政治についてカジュアルに会話することができる社会の空気を作りたい。
そして、私たちが生きていく「未来」を選ぶために、投票に行くことが当たり前になるようにーー。
能條桃子・U30社外編集委員とともに取り組むハフポスト日本版の「選挙アップデート for U30」プロジェクトに、ぜひご期待ください!
『選挙アップデート for U30』のラインナップは以下の通りです。
・政党アンケート(後日記事化)
・「U30のための公開討論ライブ」 10月21日午後9時〜生配信
・4夜連続ハフライブ特番「Vote for Change」 10月25日〜28日午後9時〜配信
・あと◯日…「選挙に行かなきゃ」カウントダウンmini 動画 10月25日〜31日
・このほか、記事多数
ぜひ、プロジェクトにご賛同、応援をいただけますと嬉しいです。
政党や候補者に聞きたいこと、政治に伝えたいメッセージなど、質問やご意見をお待ちしています!
👉👉「選挙アップデート for U30」アンケート
https://forms.gle/iuNMjfty19xtimiWA
昨日の初雪につぎ、今朝は薄っすらと霜が降りてます。被害は殆どありませんがミニトマトが低温のため割れています。
小菊が咲き始めています。
「東京新聞」<社説> 2021年10月15日
衆院が解散された。総選挙は十九日公示、三十一日投開票の日程で行われる。コロナ禍で傷ついた暮らしの立て直しに加え、長期にわたる「安倍・菅」政権で危機的状況に陥った民主主義の再生が厳しく問われる選挙となる。
衆院選は二〇一七年十月以来、四年ぶり。この間、首相は安倍晋三氏から菅義偉氏、先月の自民党総裁選を経て岸田文雄氏に交代した。問われるべきは岸田政権が打ち出した政策にとどまらず、自民党の政権復帰後、九年近くの「安倍・菅政治」そのものである。
安倍元首相と、それを支え、後を継いだ菅前首相の政権が進めた政治の特徴は、敵か味方かに分けて、敵は徹底的に退け、味方には便宜を図る「分断政治」である。
合意形成の努力をせず、反対意見には耳を傾けず、説明をも拒む「独善的な政治」である。
◆主権者軽視する政治
政治主導に名を借りて、権力や権限を振りかざす「力の政治」、国会や政府内での議論の積み重ねを大事にせず、憲法や法律を軽んじる政治、国民の代表である国会を大事にしない政治、突き詰めて言えば、主権者を軽んじる「国民軽視の政治」である。
そうした政治は官僚に政権中枢への忖度(そんたく)を強い、森友・加計両学園や「桜を見る会」を巡る問題、財務官僚による公文書改ざんを引き起こした。歴代内閣が継承する「集団的自衛権の行使」を違憲とする政府解釈を勝手に変え、安全保障関連法の成立を強行した。
日本学術会議の会員人事では、政権に批判的な学者の任命を拒否して理由を説明していない。
野党が憲法に基づいて臨時国会の召集を要求しても拒み続けた。
岸田氏は「政治の根幹である国民の信頼が崩れている。わが国の民主主義が危機に瀕(ひん)している」と訴え、総裁・首相に就いた。「丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたい」と語るのも、安倍・菅政治が民主主義を傷つけ、その転換が必要だと考えたからだろう。
その問題意識は私たちも共有する。民主主義の危機を訴えた岸田氏の首相就任は、分断政治の転換を図る契機になるはずだった。
しかし、現状では落胆を禁じ得ない。岸田氏は首相就任後「民主主義の危機」に言及せず、民主主義を危機に陥らせたはずの決定は放置し、再調査にも消極的だからだ。これでは安倍・菅「亜流」とみられても仕方がない。
岸田氏は国民との対話を積み重ねると言うが、民主主義を大きく傷つけた根源的な問題に迫り、改善策を講じなければ、危機を克服できないのではないか。
選挙戦では各党、候補者が、民主主義をどう立て直すのかを競い合い、有権者に判断を仰ぐしか、再生の道はあるまい。
経済政策も同様である。安倍・菅政権は大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つの矢からなる「アベノミクス」を進めた。
しかし、2%の物価目標を達成できず、経済格差を拡大させ、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済情勢の悪化にも、機動的に対応できなかった。
◆「分配」も重要争点に
岸田氏が掲げた「新しい資本主義」は重要な問題提起と受け止めたい。一部の大企業や富裕層だけが潤い、国民生活を疲弊させた新自由主義的な経済政策の転換に異論はない。ただ、問われるべきはどんな経済社会をつくるのか、それをどう実現するのかである。
選挙戦では経済立て直しはもちろん、格差是正のための「分配」政策を重要争点に位置付けたい。暮らしに困窮しないことは、基本的人権を保障することであり、民主主義の基盤だからだ。
立憲民主党は「分配なくして成長なし」と分配を優先し、自民党は「成長なくして分配なし」と成長の成果を分配に充てるとする。同じような主張に見えても、優先順位には明確な違いがある。
各党や候補者が練り上げ、公表した公約や主張は膨大かつ多岐にわたり、違いを見極めるのは忍耐を要する作業ではある。
しかし、政権の枠組みを決めるのは政界の実力者や一部の政党支持者ではなく、私たち自身にほかならない。そして私たち新聞は、有権者の選択に資する情報提供に努めたいと思う。独善的な政権の再登場を許さず、私たちの民主主義を再生するために。
初雪。昨日の記事にしようと思っていたが忘れてしまった。まだ霜が降りていないのに雪が先になってしまった。「出勤」途中、近くの山も薄っすらと白くなっていたのでもう近いなあ、と思っていたらその日に降ってきた。まだ積もるような量ではない。
山ぶどうを収穫。
今年は少ない。昨年の半分だ。干ばつの影響だろう。粒も小さい。
園内のようす。
ハフポスト 2021年10月16日
衆院選(10月19日公示、31日投開票)を前に、芸能人らが投票を呼びかける動画が10月16日、YouTubeなどに突如公開された。動画には俳優の小栗旬さんや菅田将暉さん、橋本環奈さん、二階堂ふみさん、ローラさんなど、多くの人気芸能人が出演している。
動画は、「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」とするYouTubeチャンネルが、10月16日に公開した。
それぞれが投票への思いを語り、「投票します」と宣言している。
約3分半にわたる動画は、滝藤賢一さんの「僕たちの投票への思いを話します」などの言葉から始まる。
冒頭では、Takaさんが「政治のことなんて興味なかったし、それだけ僕はすごく幸せな環境で生きてることができたんだなっていうのを今になって実感しますけど」と率直な思いを語る場面もあった。
コムアイさんは、「とにかく若者の私たちの世代の投票率がすごく低い」と指摘。菅田将暉さんが「そんなに少ないんだみたいなことは驚いたし、その中の1人でもあるよな、俺みたいな」と語り、橋本環奈さんが「まず意思を示さないと」と呼びかけた。
その後も、ローラさんが「無関心っていう気持ちをまず一歩踏み出して、行動にする。自分にも責任があるんだっていう気持ちを持って、足を踏み出すことがすごく大切なのではないのかな」と話したり、小栗旬さんが「僕らのできる第一歩みたいなものが投票だよなと思っている」と語ったりするシーンが続いていく。
動画の終盤、滝藤さんは「僕は投票に行っている人が格好いいと思います。だから僕は投票に行きます」と表明。出演者が「投票します」と次々と宣言し、幕を閉じる。
同日には、TwitterとInstagramにもアカウントが開設された。ツイートには「#わたしも投票します」というハッシュタグがつけられ、「投票は、あなたの声です。それは、届けるべき声です」とつづられている。
芸能人の政治的な発言には批判が起きることも多い。
アメリカでは、芸能人が政治的なテーマについて発言をすることは頻繁に見られるが、日本の芸能界からは積極的な発信は少ない。
そうした背景がある中で、多くの人気芸能人が一斉に投票を呼びかけるのは珍しい。ツイートには、多くの反響が寄せられている。
わたし達が今求めているのは「チェンジ」(政権交代)です。
あまりにも今の政治がひどい。
山口さん、ツトムくん、そう想いませんか?
ウソはもう嫌なのです。
ウソのない政治、ウソのない社会を目指します。
ウソによって一人の命がなくなりました。
ウソを正当化する社会でいいのでしょうか?
再調査しなくてもいいのでしょうか?
国民一人ひとりを大切にするそんな政治がほしいのです。
国民一人ひとりが自由に羽ばたける社会にしたいのです。
どうか皆さん!
「チェンジ」に協力してください。
「どうせ変わらない」
ではなく、今度こそ変えましょう!