里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

「歴史のデマ」振りまく団体を後押しするのか?

2024年01月31日 | 社会・経済

群馬県の追悼碑撤去問題

YAHOOニュース1/31(水)

戦前、日本にやってきて命を落とした朝鮮人の追悼碑は各地にある。そのひとつを群馬県が撤去しようとしている。歴史改ざんを厳しく批判してきたRKB毎日放送の神戸金史解説委員長は群馬県生まれ。1月30日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、デマやフェイクを振りまく歴史修正主義を結果的に後押ししている県の姿勢を問題視した。

群馬県が撤去を開始した追悼碑

今日は、朝日新聞の朝刊に出ていた記事を紹介したいと思います。

『朝鮮人追悼碑、群馬県が撤去開始 「強制性」記述めぐり抗議各地でも』

県立公園の「群馬の森」は26ヘクタールあり、子供の頃は「限りなく広い公園」と思っていました。その「群馬の森」に戦前、事故などで亡くなった朝鮮人労働者を追悼する碑が2004年に建てられましたその追悼碑を撤去する工事が始まったという記事です。

多くの反対運動もある中で、群馬県が踏み切りました。建築の際は、県議会も全会一致で設置に賛同していて、アジアの平和と友好を願う内容を刻んだ碑なのですが、その碑の前での集会で「強制連行の事実を訴えたい」などの発言があったことを問題視した県が、利用を認めないという態度に出て、設置の許可更新を拒んだのです。

これについては裁判があり、1審は県が違法と判断しましたが、控訴審で県が逆転勝訴、最高裁で確定しました。碑の設置許可を更新しなくてもいい、ということになったのです。群馬県の山本一太知事は会見で、運営の仕方に「ルール違反があった」としています。しかし、「碑文の中身に問題はない」とも言っているのです。

毎日新聞1月25日

『群馬知事「歴史認識の問題でない」 朝鮮人労働者追悼碑撤去』

東京では「虐殺なかった」と碑の撤去を主張

実は、こういう朝鮮人追悼碑の撤去を求める人たちの要請活動が日本中で広がっています。関東大震災での朝鮮人虐殺の追悼碑(東京都立横網町公園)について、私は2023年9月1日に取材しました。「虐殺はなかった」というデマを信じてしまっている人たちがいます。「犠牲になった方は233人しかいないんだ」と言って「真実の追悼祭をやるんだ」と主張しました。

朝鮮人を殺したとして刑事事件に問われた日本人がいます。そうした刑事事件の被害者数の集計が233人なのですが、これは全体のごくごく一部にとどまっていることは明らかです。だけど彼らの言い方によると、「233人は日本に対する暴動を起こして、それに対する自衛行為の結果殺されてしまったけれど、それはそれで追悼しようじゃないか」と。ちょっとねじれた形で「虐殺がなかった」と主張する人たちが追悼祭をやっているのです。それで大もめになりました。

実は「群馬の森」の追悼碑についても、同じ団体が撤去を要望しています。群馬県知事は、運用の仕方、ルールに違反していたと言っていますが、結果的には、デマを広めている団体の意見を採用して碑を撤去することになっているのです。

朝日新聞の社説では、「戦前の日本を美化する風潮が強まる中、一部の勢力から抗議を受けた県が、政治的中立を盾に事なかれ主義に陥っているとすれば、歴史改ざんに手を貸すことにもなる。きわめて危うい事態だ」と書かれていました。これは全く同感です。判決は撤去まで求めていないのです。

朝日新聞 1月30日社説

『朝鮮人追悼碑 知事は撤去を中止せよ』

歴史修正主義者の狙いとは

東京都の朝鮮人虐殺慰霊碑前の追悼式典にも抗議が来て、トラブルが起きています。抗議の目的は「慰霊式典自体を中止させ、慰霊碑を撤去させることだ」と、団体も言っています。自分たちが「真実の慰霊祭」をやることによって、本来の慰霊祭とは別にもう一つあるじゃないか、と。「もめているのだったら両方を中止させてしまえ」と東京都が命じることを狙っています。同じ団体が、群馬の碑についてもいろいろな主張をして、県に要請もしているのです。

産経新聞2023年6月16日

『最高裁決定から1年「早く撤去を」 群馬の森・朝鮮人追悼碑前で集会』

 

群馬県が全国の先鞭となる可能性

この件については、韓国でものすごく大きくニュースに取り上げられています。「またか」と思いました。こうやって国と国の関係が乱れてしまう…。撤去を求めている側と、結果的にそれに加担してしまっている知事の立場に私は立てません。

群馬県は私の故郷であり、県庁には同級生がいっぱいいます。この件に関わらされているのではないかと思うと、げんなりしてしまいます。歴史改ざんの流れを後押しするようなことになってしまってはいけません。「友好」について願う碑自体は問題ないと知事が言うのだったら、その碑を存続させて何の問題があるのでしょう。

昔の発言について、その後は何も問題は起こっていないのに、撤去するという知事の決断については、極めて大きな違和感を持っています。何か、故郷が汚されてきているような気がします。

これは「群馬の森」だけの問題ではなく、日本中でこういうことが起こり得ます。先鞭になる可能性があるんです。福岡にも追悼碑はあります。こういったことを認めてはいけないと私は強く思っています。

神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。報道部長、ドキュメンタリーエグゼクティブプロデューサーなどを経て現職。近著に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』の制作過程を詳述した『ドキュメンタリーの現在 九州で足もとを掘る』(共著、石風社)がある。80分の最新ドキュメンタリー『リリアンの揺りかご』は3月30日、TBSドキュメンタリー映画祭・福岡会場で上映予定。


少しづつ少しづつ歴史を改ざんしようとする「勢力」があります。
歴史を変えようとするなど、とんでもないことです。
歴史から学ぶことこそです。


今日は曇り空。
そんなに寒くはありません。
母屋の方は昨日薪をどんどん燃やしたので、きれいさっぱりと雪は落ちていました。納屋の方は今日登って雪落とし。1mくらいでしたが、水分を吸い重くなるので、これで一安心です。


避難所生活の大問題、なんと6割の自治体が「防災部署に女性職員ゼロ」の現実

2024年01月30日 | 生活

生理用品、着替え、性被害…

現代ビジネス2024.01.30

田中 ひかる歴史社会学者

プロフィール

元旦に能登半島を襲った大地震は甚大な被害をもたらし、発災から1ヵ月になろうとする今も、避難所で不便な生活を強いられている方が大勢いる。

トイレ一つ取っても、数が足りない、ドアが壊れている、汚れがひどくて使用できないといった問題が指摘されており、使用する回数を減らすため、水分を控える被災者もいる。極寒の中、平常とは異なる環境で、トイレまで我慢しなければならない状況では、たちまち体調不良に陥ってしまう。

なぜ日本は自然災害大国であるにもかかわらず、いつまで経っても避難所生活がアップデートされないのか。この記事では特に、避難所で女性が直面する問題を取り上げ、解消のための手がかりとしたい。

 

生理についての無理解がもたらす問題

大きな災害が発生するたびに話題になるのが、避難所における生理用品の取り扱いである。東日本大震災の際には、避難所を取り仕切る男性が、支援物資として送られてきた生理用品を「こんな時に不謹慎だ」と受け取らなかったという驚くべき話が広まった。

現在、災害時の支援物資として生理用品が必需品であるという認識は広く共有されるようになったものの、必要な人にスムーズに届いている状況とは言いがたい。避難所の支援物資の配布担当に女性がいないため、生理用品が欲しいと言いづらいという話や、生理用ナプキンが1人に1枚ずつしか配られないという話は、枚挙にいとまがない。

こうした問題は生理に対する無理解から生じるため、避難所運営に女性が関われば容易に解決されるはずだが、そもそも自治体の防災担当の部署に女性職員が少ない。2022年に内閣府男女共同参画局が全国の自治体を対象に行った調査によれば、全体の61.1%にあたる1063の自治体で、防災担当の部署に女性職員が1人もいなかった。こうした自治体では、生理用品などの女性用品や、哺乳瓶やおむつなどの備蓄に遅れが見られた。

生理に対する無理解と言えば、今回、市販の生理用ナプキンの代用品として、布ナプキンを勧める記事が批判を浴びた。布ナプキンは洗濯のための水を必要とし、洗濯後は干さねばならないため、避難所生活には向かない。災害時に布ナプキンが役に立つとすれば、東日本大震災時のように、被災地以外でも生理用品が不足する場合だろう。市販の生理用品は優先的に被災地へ送り、被災地以外の洗濯ができる地域では布ナプキンを使用すれば、ささやかな災害支援になる。

今こそ「段ボール授乳室」を

今回、能登半島のある避難所では、必要な人が自由に持っていけるように、生理用品を他の支援物資と同様に並べていたが、この方法についてSNSでは「人目のあるところで生理用品を手に取るのは恥ずかしいのではないか」という声が上がった。最近では「生理は恥ずかしいことではないのだから、生理用品も隠す必要はない」と考える女性も増えているが、そうでない女性もいる。また、「生理は恥ずかしくはないけれど、自分が生理中であることを他人に知られたくない」と考える女性もいる。したがって、生理用品の配布には配慮が必要である。

この避難所でテレビ局の取材を受けた女性は「何か困っていることはないか」との質問に、遠慮がちに「仕切りがないので、着替えができない」と答えていた。避難所ではこれまでも、着替えているところや授乳しているところをジロジロ見られて不快だったという女性が少なからずおり、盗撮の被害も出ている。今回も、着替えのためだけに半壊した自宅へ帰るという女性がおり、余震が続くなか、命の危険もありうる。したがって、女性が安心して着替えができるようなスペースは必須である。生理用品も女性専用スペースへ置いておけば、手に取りやすい(最も理想的なのは、女性専用のトイレに衛生的に設置することである)。

少し前に島根県内の道の駅に導入され、「安普請だ」と非難を浴びた「段ボール授乳室」をいくつか設置するだけでも、授乳室としてはもちろん、更衣室としても使える。そもそも「段ボール授乳室」は、東日本大震災で被災した女性が考案したもので、すでに活用している避難所もある。

もちろん、女性が安心して休むことのできる部屋が確保できればそれに越したことはない。避難所に限らず、覗きや盗撮、その他の性被害に遭うのは圧倒的に女性であり、これまでも被災地で深刻な性犯罪が多発している。今回の被災地でもすでに、「不同意わいせつ罪」で19歳の男性が逮捕されている。

経血はコントロールできない

1月10日付の産經新聞によれば、「日本衛生材料工業連合会」が国の要請を受けて、8万枚以上の生理用ナプキンを被災地へ送った。被災した自治体からの要請もあるという。こうした動きに対し、SNSでは「生理用品より、水や食料の方が大事だ」という声が上がったが、多くの女性や医師たちから「経血の処置をおざなりにすることは、当の女性の健康を損なうのみならず、避難所全体の衛生問題にも関わる」という反論が殺到した。

また、「女性に生理用品を配るなら、男性にも何か配らないと不公平だ」という意見には、「女性だけが生理にわずらわされることの方が不公平だ」という反論が見られた。生理用品など要らないから、生理自体をなくしてほしいというのが、多くの女性の本音ではないだろうか。最近では、低容量ピルなどで生理をコントロールしている女性も多いが、被災地では薬の入手も難しいだろう。

ところで、生理をコントロールすることは、いわゆる「経血コントロール」とは異なる。「経血コントロール」とは、自分の意志で経血を止めたり(溜めたり)出したりすることを指し、訓練次第でできるようになるとされているが、それは間違いである。こうした誤った認識は、生理用品の軽視や、布ナプキンで事足りるとする考え方につながるため、有害である。

被災者の半数は女性である

今回、支援物資として被災地へ送られている生理用品は、最終的には余る可能性もあるが、無駄にはならない。2021年春頃から「生理の貧困(生理への対処が十分にできない状態)」対策として、全国の自治体が生理用品の無償配布を始めたが、その際、多くの自治体が災害用に備蓄されていた生理用品を活用した。生理用品にも使用期限があるため、備蓄品を定期的に無償配布することは理に適っている。支援物資の生理用品が余った場合も、自治体の判断で「生理の貧困」対策として有効活用することができるのだ。

さて、この記事では、避難所における女性の困りごとについて述べてきた。対策として、自治体の防災担当の部署や避難所の運営に女性を配す、女性専用スペースを設けるといったごく基本的な提案を行った。しかしこれらは、以前から繰り返し主張されていることである。

内閣府男女共同参画局が2020年に作成した防災・復興ガイドラインの「避難所チェックシート」にも、「管理責任者には男女両方を配置している」「男女別更衣室、男女別休養スペースがある」「女性専用スペース(女性用品の配置・女性相談)がある」といった項目のほか、「トイレの個室内、トイレまでの経路に夜間照明が設置されている」「就寝場所や女性専用スペース等へ巡回警備が行われている」といった項目もある。

しかし残念ながら、このガイドラインは現実の避難所にほとんど反映されていない。なにしろすでに述べたように、防災担当部署に女性職員が1人もいない自治体が6割を占めているのだ。女性職員をせめて1人配するということが、そんなに難しいことなのだろうか。被災者の半数は女性なのだ。

女性の困りごとに限らず、現状の避難所生活は問題山積である。申し分のないガイドラインは存在する。いざというときにこれを実現できるよう、明日は我が身の思いで、地元の防災対策、避難所運営の方針を確認し、不足があると感じたら、声を上げていくことが重要である。


おもわず笑ってしまいました。
先日もニュースになっていましたよ。
男性担当者が手渡ししていたって。


京都市長選 福山候補 自公松井孝治候補と横一線に

2024年01月29日 | 社会・経済

市民の願いを封じる反共攻撃はね返そう

京都市長選 倉林氏、福山候補応援

「しんぶん赤旗」2024年1月29日

 日本共産党の倉林明子副委員長・参院議員は28日、2月4日投開票の京都市長選で「つなぐ京都2024」の福山和人候補を押し上げようと市内3カ所を駆け回りました。

 福山候補は、返さなくてもよい奨学金の創設や学校でつくった全員制中学校給食などの施策を語り、「ないのはお金ではなく、市長のやる気だ」と強調。他陣営が財源を問うのに対し、「わずか100億円の暮らし応援の財源はあるのかと問いながら、何千億円かかるかわからない北陸新幹線などはお金の有無を問わず前のめりに進める。大型ハコモノ優先で暮らしを後回しにしてきた市政のあり方を抜本的に転換する」と力を込めました。

 倉林氏は「政治とカネの問題」を告発し、「企業献金で政治をゆがめる自民党政治を京都から終わらせよう」と訴え。自民、公明、立民、国民各党が推す松井孝治陣営が、事実無根の反共デマを載せたビラを配布し、「共産市政を許すな」と攻撃していることに反撃しました。

 倉林氏は、日本共産党はこれまで幅広い市民と力を合わせて、景観破壊のポンポン山ゴルフ場建設や鴨川フランス橋をストップさせ、自民党などが「絵にかいたモチ」と反対した子ども医療費の無料化や中学校の全員制給食の実現へ市政を動かしたことに触れ、「『共産市政を許すな』の攻撃は、市民の願いを封じ込めるもの。市民の力ではね返し、福山市長を誕生させよう」と呼びかけました。

 

京都市長選ラストサンデー

原発なくす 子育て支援 福山さん勝利で

2024年1月29日

 京都市長選(2月4日投開票)最後の日曜日となった28日、「つなぐ京都2024」の福山和人候補は市内各地で、保育士、環境活動家、若者たちと街頭演説を行いました。

 京都駅前などでは、環境ジャーナリストのアイリーン美緒子スミスさん、映画「原発を止めた裁判長」で知られる元裁判官の樋口英明さんが駆け付け「原発をなくす市長誕生を」と激励しました。

 スミスさんは「首長が毅然(きぜん)と発言しなければ市民の命は守れないとこの十数年の活動で痛感した。京都で大飯原発差し止め訴訟の原告弁護団として尽力した福山さんで私たちの命とまちを守ろう」と話しました。

 2014年に福井地裁で大飯原発運転差し止め命令を出し、退官後も脱原発へ活動を続ける樋口さんは「日本で稼働する12基の原発のうち7基が福井にある。ひとたび災害などで事故が起きれば、福井と間近にある京都のまちも住めなくなる可能性があり、京都市民にとっても最も重大な問題。市民の生活の基礎を守るべく原発に反対する福山さんを支えよう」と訴えました。

 下京区の西大路七条交差点では、保育士の近江義虎さん(24)が「第2子以降の保育料無償化、削減された保育所への補助金を元に戻すなど、子育て世代を見捨てず支援してくれます。だから福山さんを応援しています」と話しました。

 近江さんは、労働環境は厳しいが、子どもたちの成長する姿を見ると楽しい仕事だと語り、「やりがいと給料をてんびんに掛けることなく、胸を張って『夢は保育士です』と子どもたちが言えるよう、市長選に勝利しなくてはいけません」と話しました。

 演説を聞いていた保育士の男性(44)は「福祉の予算が削られて、補助金カットで現場は悲鳴を上げている。福山さんは、現場に親身になって訴えている。頑張ってほしい」と期待を寄せました。


ぽぽんぷぐにゃんブログより

 京都新聞では、福山和人氏は無党派層の支持が2割超で最多と。門川市政を「全く評価しない」層の4割超の支持。一方の松井孝治氏は無党派層の支持が2割に届いていないと。

 女性の支持は福山和人氏のほうが、松井孝治氏を上回っているとも。女性の支持をもっと集められる可能性も。そして、きょうは共産・田村智子委員長が京都・伏見区にも来る模様。

 

「自民、公明、立民、国民各党が推す松井孝治陣営が、事実無根の反共デマを載せたビラを配布」

立民の姿勢も問われる事態になっている。
両陣営、一線に並んでいるとの調査報道。


京都在住のひまわりさん!
雪深い北国からも応援してますよ。


EUでグリホサート大訴訟がスタート!

2024年01月28日 | 自然・農業・環境問題

 米国の訴訟含めバイエルはより窮地に

 昨年、EUはモンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)の使用を10年再承認した。実際には加盟国の過半数の賛成を得られず、再承認も禁止も過半数にいかなかったため、欧州委員会の判断に任されて、10年の再使用が承認されたということになる。
 
 この決定に対して、農薬問題で活動する6つのヨーロッパのNGOが欧州食品安全機関(EFSA)と欧州化学機関(ECHA)を相手に訴訟を起こした。その名も「グリホサート大訴訟」(The Great Glyphosate Court Case)。その具体的な一歩を踏み出した。
 
 その訴訟を始める理由として農薬行動ネットワーク・ヨーロッパ(PAN Europe)は
1. 科学的見解の無視
2. 新たに発見された発がん性
3. 遺伝毒性
4. 神経毒性
5. マイクロバイオームへの影響
6. 昆虫、鳥、両生類の毒性
7. 添加剤を含む農薬製剤の試験なし

の7点を上げている。
 
 米国でグリホサートによって非ホジキンリンパ腫(血液のがん)になった被害者による5万件に上る訴訟に加えて、このEUでの裁判によって、このグリホサートとの闘いはいよいよグローバルな裁判闘争に入っていくことになる。
 
 もっとも欧米の流通業者では個人向けのラウンドアップ/グリホサートの販売はもうやめているところが少なからずある。ドイツでは鉄道会社が線路に撒くのが最大の使用ケースだったが、それも取りやめたりして、その使用は減少に向かっている。
 
 バイエルの旗色は悪く、その株価は低迷を続けている。
 
 今回の訴訟によって、グリホサートが持つ問題は世界ではさらに注目を浴び、その販売はさらに減少していくことは確実だが、問題なのが日本である。日本は米国で5回連続、グリホサート裁判でバイエルが敗北していることをマスメディアが伝えていないし、今回のEUでの裁判も報道しないだろう。残念なことに今もホームセンターではラウンドアップ/グリホサートは山積みのセールスになっている。その問題を伝える大手メディアは存在しない。日本だけ農薬天国になっているように思えてならない。


除草剤、農家だけでなく一般園芸愛好家にも手軽に使われている現状だ。

今日もいい天気だ。
予報は曇りだったがきれいな青空だ。


能登でも同じことが繰り返された…

2024年01月27日 | 生活

「東日本大震災」から10年以上たってなお変わらない「災害時の大問題」

現代ビジネス2024.01.27

     阿部 恭子

旅館、ホテルを避難所に

    石川県で最大震度7を観測した能登半島地震。避難所の報道を目にし、2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災した立場として、あの経験が全く活かされていない状況に愕然とした。体育館にシートを引いただけのような場所では、朝晩の寒さ対策は不十分であろう。トイレが使用できないなど、衛生環境が劣悪な地域もあるという。東日本大震災では避難所での性加害も問題となったが、仕切りさえなく、被災者のプライバシーに全く配慮されない環境では何が起きてもおかしくない。

    地震大国日本で生きる私たちは、いつどこで被災者になってもおかしくない。それにもかかわらず、同じことが繰り返されているのはなぜなのか。

    仙台弁護士会は、1月5日に「能登半島地震に関する会長談話」を発表し、避難所について、東日本大震災の経験から「被災した県や自治体には、被災者の命を守るため、余震が落ち着き、安全に生活できる環境が整うまでの期間、早急に避難所の環境整備を行うとともに(令和6年1月1日付け内閣府事務連絡「避難所の確保及び生活環境の整備等について」参照)、広域避難やホテル、旅館等の宿泊施設を活用した被災者支援を実施することを求めます。」と提言している。

    2016年4月14日の熊本地震において、避難所運営に関わった経験を持つ熊本大学法学部の岡田行雄教授は、

「今、ドイツでは水害で凄まじい被害が出ています。また、イタリアで地震の被害が起きたこともあります。しかし、どちらにも、体育館に日本のようにプライバシーがない状態で避難させることはありません。仮にホールなどを避難所として利用する場合も、仕切りなどで個室を作り、そこで生活できるようにするのがヨーロッパの避難所なのです」と日本の避難所の在り方に苦言を呈する。

    日本の場合、とりあえず安全な場所に「収容する」だけで、被災者が一定期間、生活するという視点が欠けている。

復興業務を担う人々に無理をさせない

    なかなか焦点が当てられることはないが、お正月から復旧作業に駆り出されている人々の存在を忘れてはならない。復興には時間を要する。長期的な視点で復興を考えるにあたって、復旧に当たる人々の労働環境が守られなければならず、決して無理をさせてはならない。

    大きく取り上げられることはなかったが、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震いずれの被災地でも、復興業務を担当する行政職員が過労やストレスにより休退職が増え、自殺者も出ていると報道されている。

    経済状況が良くない中での「公務員バッシング」と相まって、反論しにくい立場にある行政職員に対し、過剰なクレームが集中しやすい。特に被災者の相談窓口を担当している職員から、不自由な生活を強いられている被災者から各種手続きが進まない苛立ちをぶつけられ、苦しい思いをしたという訴えが数多く報告されていた。ところが行政職員もまた、家族や家を失った「隠れた被災者」であることも多いのである。

    こうした背景には、職員の人員不足が大きく影響している。平時の業務であれば耐えうる問題も、多忙かつ、ひとりで対応しなければならない状況になればストレスが急増するのも無理はない。災害対応業務の担い手の心理的負担については、「心のケア」に丸投げすることなく、人員を増やし、余裕を持って業務を行うことができる体制が整備されるべきである。

    突然発生する災害支援にあたって、法整備が追いつかず、行政で手が回らないところを支援する民間ボランティアの存在は不可欠であり、痒い所に手が届く支援が可能な場合も多い。しかし、国や自治体は、民間ボランティアに依存することなく、本来、行政が行うべき支援なのか否かについて、復旧が進んだ時点で検証されなければならないであろう。

「耐える被災者」を美化すべきでない

    正月を過ぎると、3月11日に向け、「3.11を忘れない」というスローガンのもとに被災地取材が始まる。災害は日々、各地で発生しているにも関わらず、記念日を取り上げるだけのわざとらしい報道に毎年、うんざりしている。忘れない忘れないと繰り返されているわりに、東日本大震災の教訓は今回の震災に十分活かされているとは言い難い。

    震災を乗り越え夢を叶えた健気な被災者たちの美談が伝えられる一方、権利を主張する被災者はバッシングされる。

    しかし、地震大国で暮らす我々にとって「被災者」とは決して他人事ではない。「耐える被災者」を美化してはならない。被災者に対する国の対応は十分なのだろうか、メディアは同情を煽ることより、本質的な問題に迫る姿勢を見せて欲しい.


 今、世界中から支援の輪が広がっている中で、被災地での窃盗、空き巣、避難所での置引、性犯罪が増えているそうな。防犯カメラ100台が設置されたとニュースになった。 

その一方で辺野古警備費1日2155万円、総額748億円の巨額資金が市民弾圧に使われている。

 今朝は雪かきから解放され、江部乙の畑に行ってきた。


雨宮処凛がゆく!臓器提供で「人の役に立」ち、社会保障費も削減?

2024年01月26日 | 生活

――『安楽死が合法の国で起こっていること』

マガジン9 2024年1月24日

マガジン9 (maga9.jp) 

昨年(2023年)末、京都地裁で元医師の男に懲役2年6ヶ月の判決が下された。

 男が問われていた罪は嘱託殺人罪など。19年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性に薬物を注入して殺害した罪で逮捕されていた。亡くなった女性は生前、SNSに安楽死を望む書き込みをしていたことが確認されている。俗に言う「ALS嘱託殺人事件」だ。

 安楽死。この言葉からあなたが思い浮かべるのはどんなものだろう。

 「堪え難いほどの苦痛があるなら安楽死したい」など、痛みや苦痛からの救済・解放といったポジティブなイメージで捉えている人も多いかもしれない。私もかつてはそうだった。だからこそ、「安楽死反対」なんて声を聞くと随分と残酷な言い分に聞こえたものだ。

 が、今は違う。世界的に安楽死合法化が広がる過程で、それは凄まじい変質を遂げ、今や医療費削減だけでなく、臓器提供の問題とも密接に絡んでいる。その人に「生産性」があるか否かで時に命が選別され、医師に「無益」と判断されれば治療が中止される一一そんな事態が起きていることをどれほどの人が知っているだろう。

 これらのことについて、私も断片的に知る程度だったのだが、このたび、それらの問題を網羅する一冊が出版された。それは児玉真美さんの『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書)。

 本書の帯には、こんな言葉が躍る。

 「末期とはいえない患者に安楽死を提案する医療職」

 「福祉サービスが受けられず安楽死を選択する障害者」

 「安楽死の数分後に臓器を摘出」

 「揺らぐ基準、拡大する対象者 『安楽死先進国』の実状とは」

 23年5月時点で、安楽死が合法化されていると考えられるのは、オランダやベルギー、カナダ、スイス、米国のいくつかの州など22箇所。

 ちなみに世界に先駆けて積極的安楽死を合法化したオランダとベルギーでは、「安楽死者の増加とともに対象者が終末期の人から認知症患者、精神/発達/知的障害者や精神的苦痛のみを理由にした安楽死へと拡大してきた」という。

 また、両国では安楽死は子どもにも拡大

 一方、ぶっちぎりにラディカルなカナダでは、24年には精神障害や精神的な苦痛のみを理由にした安楽死も容認される方向だという。

 それだけではない。福祉の代替策にされている節さえあるというのだ。

 本書には、実際に安楽死をした51歳の女性の事例が紹介されている。

 化学物質過敏症に苦しんでいたという女性は、コロナ禍でアパート住民たちの在宅時間が増えたことにより、換気口から入るタバコやマリファナの煙で症状が急速に悪化。カナダには、障害がある人に安全で家賃も安い住まいを助成する福祉制度があるため、2年間も担当部署に訴えたが、かなわなかったという。そんな時、安楽死の要件が緩和されたため、自分も対象になると申請。そのまま安楽死となった。

 同じ病気で困窮しつつも助かった人もいる。この女性は7年前から助成金の出る住まいに移ることを希望して申請していたものの、対応されないまま時間だけが過ぎていたという。そんな中、安楽死を申請。幸い、支援者たちのインターネット募金が成功してホテルに移ることができ、安楽死をしないで済んだ。が、安全な住まいに移るための申請と比較して、安楽死の申請手続きは驚くほど簡単だったという。

 安楽死は福祉だけでなく、医療の現場にこそダイレクトに影響を与える。

 著者が危惧するのは、安楽死が容認される指標が「救命できるかどうか」から「QOL(生活の質)の低さ」へと変質しているように思えることだ。

 最初は「もうどう手を尽くしても救命することができない」ことと「堪え難い苦痛がある」ことが指標だったはずなのに、いつのまにか「QOLが低い」ことが指標となっていく。さらには、「一定の障害があってQOLが低い生には尊厳がない」「他者のケアに依存して生きることには尊厳がない」「そういう状態は生きるに値しない」といった価値観が浸透し、「すべり坂」を引き起こしていると指摘するのだ。

 そんな中、ベルギーでは、がん患者やうつ病患者に医師が安楽死を提案するような事態すら起きているという。病気の治療をし、必死に生きようとする過程で、または病気ゆえ希死念慮に苛まれる中で医師からそんな提案をされたら一一。私だったら、あっさり心が折れるかもしれない。

 それだけではない。恐ろしいのは、安楽死には社会保障費削減策としての議論がつきまとうことだ。

 カナダでは、安楽死が合法化された直後、医師らが医学雑誌で、毎年1万人がMAID(医療的臨死介助)で死ぬと予測した上で、1億3000ドルの医療費が削減できるとの試算を報告したという。

 著者は、ベルギーの医療職ら9人が、安楽死をめぐって医療現場では何か起きているかを詳述した共著『Euthanasia』を紹介する。この本には、以下のように書かれているという。

 「経費削減が必要だ、医療はカネがかかる、というメッセージが政治からは繰り返し送られてくる」

 「病院の中で忙しすぎる部署では、治療が長引いている最終段階の患者はスタッフからお荷物視されたり、医療を『本当に必要としている』患者のためにベッドがすぐにも入り用なのに、と問題そのものとみなされたりしていることもある」

 このように経済的な圧のかかった現場で、安楽死の日常化が進んだら一一。

 さらに恐ろしいのは、そんな安楽死はすでに臓器移植と直結しているということだ。それを「安楽死後臓器提供」という。ベルギー、オランダ、カナダ、スペインですでに合法化され、行われているそうだ。誰がどこで死ぬかあらかじめわかっていて、新鮮な臓器が得られる安楽死後臓器提供。しかし、当然大きな懸念がある。米国テネシー州で大学病院の移植プログラムの責任者を務めた人物は、3つの疑問を投げかけている。そのうちのひとつが以下だ。

 「スティグマと社会的軽視を経験してきた障害者に、邪魔者は臓器でも提供して人の役に立てという誘導となるのではないか?」

 生産性や効率ばかりが良しとされる風潮の中、肩身が狭い思いをしている人たちへの「役に立て」というメッセージとして機能してしまうかもしれない安楽死と臓器提供というセット。

 「このように海外の実態を詳細に知れば知るほど、人口調整、社会保障縮減、人体の資源化と有効活用などなど、制度化された安楽死の背景には政治経済上の思惑が蠢いていることが案じられてならない。そこには、カナダの化学物質過敏症の女性たちの事例にみられるように、高齢者や障害のある人、生きづらさを抱えた人、貧しい人たちを死へと追いやっていく政治的な装置として安楽死が機能する『すべり坂』が透けて見えはしないだろうか」

 著者の懸念に、私は深く頷くばかりだ。

 何かと言えば「財源がない」と社会保障費が削られ、弱い立場にいる人たちが切り捨てられてきたこの国で、「それ」が合法化されてしまったらどんな光景が出現するか一一。

 詳しくは本書を読んでほしいが、知れば知るほど、安易に「安楽死、いいんじゃない?」などとは言えなくなってくる一冊。

 今、世界で何が起きているか、ぜひ多くの人に読んでほしい。


恐ろしい社会になりつつある。


北原みのり おんなの話はありがたい 松本人志さんの件

2024年01月25日 | 事件

「イヤならイヤと言え」性被害の声あげた人を叩く女たちの“被害者フォビア”は胸が痛い 

ERAdot 2024/01/24

 

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は松本人志さんの件で考えた、被害の声をあげた女性を女性が激しく叩くことについて。

*    *  *

 遠い知人の話である。

 今は50代の女性だが、30年以上前には芸能界を目指していた時期があり、実際にテレビや雑誌に出たこともあった。ちょうど売り出し中の頃、同じ番組に出演していた某男性大物芸能人に「食事に行かない?」と誘われたことがあるそうだ。そんなチャンスはめったにないと思い、彼女は「もちろんです!」と答え食事に行った。食事が終わると、今度はその男性に「二人きりにならない?」と言われ、躊躇はしたが、将来につながるかもしれないと思い、誘われるままホテルに行き性交したという。もちろんだからといって彼女の芸能活動に、そのことは全く何の影響も与えず、彼女はしばらくして芸能活動を諦めることになる。

 そんな彼女は今回の松本人志さんを巡る報道に、モヤモヤするのだという。「女にも、下心があったはずだ。被害者ぶるのは、ずるい。イヤならイヤと、その時に言えばいいんだ」と。

 胸の痛い話である。

 性被害の声をあげた人に対し、「目的は何だ?」と疑いの目を向け、「何で今になって騒ぐのだ?」と声をあげた時期を問い、「イヤなら断るべきだった」と行為の責任を問うことなどを「セカンドレイプ」と呼ぶと定着はしてきたけれど、それでも、彼女のように、客観的にみれば性的搾取にあっているとしか思えない女性が、同じような目にあった女性を激しく叩くことを、何と呼ぶのだろう。もしかしたら専門的な言葉があるのではないかと思われるほどに、あまりにもよくある話である。

 女子プロレスラーのジャガー横田さんYouTubeチャンネルを観た。「松本○志は悪くない!!」と動画にテロップをつけ、「(女性が)ヤダって言えばいいじゃん」「お前が断れよ」などと述べた。ジャガーさんは、肩を組んでくる男性ファンには「私は結婚しているので、やめてください」とキッパリ断るのだとも言ってた。このように「私は断れる」と言い切り、「なぜ断れないのか?」と性的被害を訴えた女性を責めるのも、「強い女性」によく見られる傾向だ。

 こういう現象=女が性被害の声をあげた女を叩く現象のことをなんて言うのだろうと考えていたのだが、「被害者フォビア」というのが、ぴったりではないかと思う。フォビアには嫌悪や恐れという意味があるが、被害者になることを恥じて恐れるあまりに、自らが被害者になってもそれを認めることができず、さらに被害を訴える人に対する嫌悪をぶつけてしまう心理状態だ。特に性暴力や性搾取に関して、「被害者フォビア」としか言いようがない女性たちは少なくない。いったい、なぜなのだろう。

 古い話だが、小説家の松浦理英子さんが1992年に「朝日ジャーナル」に寄稿した、「嘲笑せよ、強姦者は女を侮辱できない」というエッセーがある。今となっては忘れられたテキストだが、長い間、日本のフェミニストに読み継がれてきた。

 簡単にまとめれば、“性暴力が女への侮辱だと捉えること自体が性加害者の思うつぼである”だからこそ「レイプなんて何でもない」とレイピストを嘲笑すべき”ということが、「強姦ごとき」というような強い言葉を使い、激しい口調で記されていた。もちろん、性被害者を攻撃する意図はなく、性暴力抗議として書かれたものではあるが、当時、かなり物議を醸したものだ。

 当時、このエッセーを誰よりも評価したのが上野千鶴子さんだった。だからこそ、大学生だった私も、意味わかんなーいと頭を抱えながらも何度も読んだものである。

 上野さんは松浦さんのこの寄稿文を権威ある『新編日本のフェミニズム』(岩波書店2009年)の「セクシュアリティ」巻に収め、「私でなければ誰も採用しなかったと思う。彼女の発言は、空前絶後、追随者がいない」「(いまだに)性暴力に関しては、『性暴力で女は傷つく』っていうポリティカル・コレクトな言説しか、言うことを許されてない」(『毒婦たち』河出書房新社、2013年)と話している。実際、多くの有名どころのフェミニストは、この松浦さんのテキストを肯定的に引用し本を書いたり発言したりしてきたものだ。

冷静になってみれば、なんか昔のフェミニズムって乱暴でしたよね……とため息一つ……というテキストである。まさにこれが「被害者フォビア」なのだとも思う。

「レイプごときで苦しむなんて加害者の思うつぼよ。性加害者を嘲笑しなさい」と言われたところで、被害者には地獄が深まるばかりだ。たぶん、このテキストを知的に読み込んで性暴力問題の言説を解体しましょう〜!というフェミニストの試み自体が、この国で、性暴力問題から性被害当事者の声が置き去りにされてきた現実を表しているのだろう。実際この社会で#MeTooの声をあげ、性暴力問題の正面に立ち、性犯罪刑法を改正するまで社会を変えたのは、権威あるフェミニストたちではなく、市井の女性たち、性被害当事者の声だったことからも明らかだろう。

 性被害者が「心が痛い」と叫び、「性」暴力だからこそつらいのだと怒り、何年後になっても声をあげることを諦めないと思える社会を、私は良い社会だと思う。なぜならば、被害者が「私は被害者である」と声をあげるのは、「加害者」の存在を浮かび上がらせるためだからだ。被害者を嫌悪し、恥と感じ、蔑むような、そんな苦痛から、女たちが自由になればよいのにと思う。私たちは手をつなげるのだと、信じられればよいのに。


あなたの「話はありがたい」。
ほんと、そう思います。

風はピークを過ぎたようですが、雪は朝まで続くようです。


能登半島地震で原発は「警戒事態」だった…

2024年01月24日 | 自然・農業・環境問題

政府と自治体の対応を振り返る 指針に書かれた「避難の準備」は

「東京新聞」2024年1月24日 
 
 能登半島地震では北陸電力志賀原発を巡る危機も看過できない。実は今回、立地する石川県志賀町で震度6弱以上を記録したため、国の原子力災害対策指針が定める緊急事態区分の一つ「警戒事態」に当たると原子力規制庁は判断していた。関連情報の周知や避難の準備が求められたが、震災対応に追われた地元自治体は手が回ったのか。複合災害に対応できるのか。(曽田晋太郎、西田直晃)

◆自治体職員も多くが被災して登庁ができない大混乱

 「阪神大震災の経験が生きなかった。経験を生かす以前の話だった」
 
 そう話すのは神戸市危機管理室の課長、渡辺智明さん(58)。6日から11日にかけて能登半島先端にある石川県珠洲市役所に入り、避難所運営のニーズ調査を担った。都市部で起きた阪神大震災とは異なる混乱ぶりがあったという。
 珠洲市は地方の過疎地。人口は約1万2000人。職員数も神戸が2万人だったのに対して400人ほど。3〜4割は被災して市役所に来られない状況だった。
 渡辺さんが現地入りした段階でも被害の全体像がつかめておらず、避難所の数や避難者数も不明だった。情報発信もままならず、飲料水などの物資が必要量以上に届く事態に陥った。
 「珠洲市は人手不足で満身創痍(そうい)だった。体系的に動けておらず、機能不全の状態だった。初動の局面からなかなか先に進めない状況になっていた」

◆震度6弱以上で「警戒事態」 原子力災害対策指針

 震災対応で大混乱した今回の地震。原子力災害でも重要な局面が迫っていた。
 
 志賀原発は停止中だったものの、立地する志賀町では元日に震度7、6日に6弱を記録した。その一方、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策指針では「原発所在市町村で、震度6弱以上の地震が発生した場合」などを「警戒事態」と判断する基準の一つに定めている。
 警戒事態は事故対応の初期段階に当たる。住民対応を円滑に進める名目で規制庁や自治体は少なくない業務を強いられる。指針などによれば、職員の参集、関連情報の収集や周知のほか、環境モニタリングや避難の準備が必要になる。
 避難の準備で対象になるのが、原発の5キロ圏の高齢者や妊婦ら。搬送先や輸送手段の確保も求められる。

◆警戒本部を約5時間半で「廃止」 何を急いだのか

 
 規制庁によると、警戒事態に該当するかの判断は同庁が行う。今回のケースでは、志賀町で震度6弱以上を観測した2回とも警戒事態に認定し、原子力規制委員会・内閣府原子力事故合同警戒本部が設置された。
 ただ警戒本部は1日が約5時間半、6日が約40分で廃止された。この間、原子炉の「止める・冷やす・閉じ込める」の機能や使用済み核燃料の冷却状態を確認したという。
 富山大の林衛准教授(科学技術社会論)は「志賀原発に異常はないとしつつ、変圧器の油漏れや電源喪失などの情報がどんどん出てきた。規制庁は異常の把握を途中でやめ、『大丈夫でしょう』と決めたように見える。なぜ本部を急いで廃止したのか。信頼性を失う判断ではなかったか」と疑問を呈する。
 「情報が錯綜(さくそう)すれば自治体の混乱を招きかねない。不具合の原因が究明できていないので、いつ危険な状態になるか分からない。規制庁はきちんと地震の影響をチェックすべきだった」

◆石川県「国からの指示が特になかった」

大きく崩落した道路=石川県志賀町

大きく崩落した道路=石川県志賀町

 国もさることながら気になるのが、志賀原発を巡る地元自治体の動き、特に石川県の対応だ。
 志賀町出身で社民党県連代表の盛本芳久県議は「県は北陸電力の発表を追認するだけで、原発に関する独自の情報発信がほとんどない」と不信感を示した上で「タブー視されているかのようで、県の動きが見えないことに不安を感じている」と嘆く。
 実際のところ、県はどのように動いたか。
 県原子力安全対策室によると、元日の地震発生の約45分後、「事故現地警戒本部」の設置を国から文書で要請される直前、県独自の判断で拠点の志賀オフサイトセンターに職員2人を派遣した。地域防災計画では震度5以上なら全職員登庁と定め、担当者は「すぐに県庁の受け入れ態勢をとった」と説明する。
 その後、北電から安全性の情報提供を受けながら、周辺の空間放射線量を測る緊急時モニタリングの準備を整えたが、道路の陥没や隆起が相次ぐ中で様子見に徹した。担当者は「初動の迅速さ」を強調し、原子力災害対策指針が定めた通りの対応を説明。「規制庁と相談しながら対応を判断していた」とのことだった。
 ただ、5キロ圏の高齢者や妊婦らの避難準備は、立地町の志賀町に呼びかけていない。「国からの指示が特になかった」(県危機対策課の担当者)ためという。

◆地震に原子力災害が加わると「対処できるレベルをはるかに超える」

 志賀町によると、警戒事態で避難準備する対象者は少なくとも233人(2023年11月時点)が該当し、5キロ圏で生活する住民の約7%を占めている。実際に避難となると、震災対応と並行した動きが求められる。
地割れした道路=2日、石川県志賀町

地割れした道路=2日、石川県志賀町

 今回の地震でこうした原発対応に追われた県と志賀町に対し、盛本氏は「災害対応は本当に大変だった」とねぎらいつつ「原発の様子が気になる県民は多い。余震の際には『原発は大丈夫か』と不安が募る。もっと情報を集約してほしかった」と注文する。
 警戒事態からさらに状況が悪化すると、自治体などの負担がはるかに増す。
 避難を強いられた住民の誘導、避難者の体に付着した汚染の程度を調べるスクリーニング、甲状腺被ばくを軽減する安定ヨウ素剤の配布なども必要に。目の前の災害対応の中、対処しきれない事態が待ち受けている可能性が高い。
 新潟国際情報大の佐々木寛教授(政治学)は「能登半島地震では、水道破裂や道路陥没、電気不通が相次いだが、そこに原子力災害が加わると、単一の自治体が対処できるレベルをはるかに超える」と指摘する。
県道23号の片側一車線をふさぐ土砂崩れ=3日、石川県志賀町

県道23号の片側一車線をふさぐ土砂崩れ=3日、石川県志賀町

 「原発事故は十中八九、地震や津波と併発する複合災害。どの自治体も人員、物資ともに不足する」

◆国民を守るための方策が「簡略化」される懸念

 さらに佐々木氏は「原発事故の対応に手が回らないという理由を付け、防護策の簡略化に向かうのが怖い」とも警戒する。
 5キロ圏を例に取れば、今の指針では警戒事態よりも深刻な「施設敷地緊急事態」や「全面緊急事態」で避難の開始を想定するが、労力の問題から「5キロ圏でも屋内退避になってしまうかもしれない」と見通す。
 5キロ圏外でも「頑丈な建物に退避」が原発対応の基本とされかねない一方、今回の地震で建物の損壊リスクが明らかになっている。そんな中、屋内退避で難を免れるのに限界があるのは明白だ。飛散した放射性物質にさらされたり、体内に取り込んだりすることで、被ばくを強いられる可能性が高くなってしまう。
 佐々木氏は「原発が重大な事態に至らなくとも近くに住む人は不安を抱え、外に逃げてもいいか、屋内にとどまるべきか、迷いを生じさせる。それほど原発は厄介な存在だ」と訴える。

◆デスクメモ

 地震や津波の対応に奔走する自治体には頭が下がる。自身や身内が被災した例もあるだろう。彼らに原発対応まで求めるのは申し訳ない。災害時に負担を強い、疲弊を加速させるのが原発という存在。佐々木さんの言うように厄介であり、罪深くもある。そんな原発は本当に必要なのか。 (榊)

明日は札幌の孫の合格祝いの予定だが、今夜から大荒れの天気になるらしい。
延期したほうがよさそうだ。


家族を引き裂く非人道的な入管行政…

2024年01月23日 | 生活

いまだに46年前の「マクリーン判決」が根拠 このままでいいの?

「東京新聞」2024年1月21日 
 
 日本で外国人との共生を阻む要因という批判が集まる判例がある。外国人は基本的人権も在留資格制度によって制限されるとの見方を示した「マクリーン判決」だ。46年前に出たにもかかわらず、裁判所はいまだに基準として重視し、出入国在留管理庁(入管庁)の強大な権限と外国人への過酷な処分にお墨付きを与えている。元最高裁判事から「早く見直さないと世界から取り残される」の声が出ている。(池尾伸一)

◆一家4人の中に3つの国籍、父は強制送還に…

 「パパがいなくなっちゃうなんて絶対いやだ」。茨城県に住む小学2年の少年(8)は涙ぐむ。
 少年と母はフィリピン国籍で、父はインド国籍。高2の兄は日本国籍という。
インド国籍の父親に強制送還が通告された家族=家族提供(一部画像処理)

インド国籍の父親に強制送還が通告された家族=家族提供(一部画像処理)

 日本人の前夫と死別した母が兄を連れて父と再婚。生まれたのが少年だ。4人で暮らしてきたが、入管庁は超過滞在(オーバーステイ)の父に強制送還を通告。家族は父の在留資格を認めるよう東京地裁に求めたが、昨年10月に敗訴した。家族はいま、父がインドに送られる不安におびえる。
 家族が一緒に暮らす願いを地裁がはねつける根拠として引用したのが、最高裁が1978年に出した「マクリーン判決」だ。

◆在留資格がなければ基本的人権が保障されない

 米国への退去を命じられた米国人マクリーン氏の訴えを退けた司法判断。外国人の在留資格・期間は「外交関係や国内の労働市場など様々な要素を考慮しないとならないので法務大臣に幅広い裁量がある」として、入管庁の命令はよほどの事実誤認がない限り、優先されると判断したのだ。
 法相の権限を最大限に重視するマクリーン判決は、その裏腹で外国人の人権について「外国人在留制度の枠内で与えられているだけだ」と指摘した。
後に「マクリーン判決」と呼ばれる最高裁判決を報じる当時の東京新聞

後に「マクリーン判決」と呼ばれる最高裁判決を報じる当時の東京新聞

 入管庁の退去命令や在留許可の取り消し処分によって、憲法が保障する「表現の自由」や幸福に生きる権利などを外国人が日本で主張できなくなってもやむを得ないという論理だ。在留資格がなければ基本的人権が保障されないとも解釈できる表現。家族状況を考慮しない入管庁の処分が正当化される根拠になってきた。

◆マクリーン判決が基準である限り入管庁は負けない

 2008年の東京地裁判決は超過滞在のフィリピン人一家の強制送還を追認した。その後、入管庁が中学生の長女だけ在留資格を認めたため、親子が分離して暮らすことに。19年の名古屋地裁判決は別の家族について、長男だけ在留を認めた結果、その父や母の出身国を含めた3カ国で家族は暮らすことを求められた。
 「1965年に刊行された元入管庁幹部の本に『外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由』とあった。同庁はこの意識のまま。裁判所がマクリーン判決を重視する限り、非人道的な入管行政は変わらない」。入管関係の裁判を多く手がける児玉晃一弁護士は言う。
 在留資格を巡る判決は2022年に154件あったが同庁の敗訴はわずか7件。元入管職員で行政書士の木下洋一氏も「マクリーン判決が基準である限り、入管庁はまず負けない。権力維持できるありがたい判決」と話す。

◆「マクリーン判決を引用し続けるのは裁判所の怠慢」

 入管収容のあり方についても同判決をもとに「入管庁の裁量」とした判決があり、期限も定めず何年も収容される状況を助長。適切な医療を受けられず死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんなど施設内の病死や自死が続く遠因になる。
 「いつまでもマクリーン判決を引用し続けるのは裁判所の怠慢だ」と批判するのが元最高裁判事で弁護士の泉徳治氏(84)だ。
マクリーン判決の誤りを指摘する泉徳治元最高裁判事=東京都港区で

マクリーン判決の誤りを指摘する泉徳治元最高裁判事=東京都港区で

 米国人青年のマクリーン氏は日本文化に憧れ、1969年に来日。英語教師の傍ら、琵琶と琴の修業を続けた。1年たって英語教師としての在留期間を更新しようとすると、入管に拒否され、帰国を命じられた。
 当時は米国がベトナムに軍事介入し、世界中の若者が反戦運動をしていたさなか。マクリーン氏も日本で抗議デモに参加した。入管庁は期間更新を拒んだ理由として、同氏の行動が「日米関係に悪影響を与えると警戒した」と証言した。

◆裁判所が半世紀近くも基準を維持し続けていることに問題

 泉氏は「国への批判を許容するのは民主主義の柱。入管の処分は表現の自由を保障する憲法に明らかに違反しており、最高裁判決がそれを容認したのは今考えれば完全な誤り」と話す。
 泉氏はマクリーン氏が来日した69年、裁判所から米ハーバード大に留学していたが、反戦デモに何回も自由に参加したという。
 さらに泉氏が批判するのは、裁判所が半世紀近くも「よほど事実誤認がない限り入管庁の処分は尊重される」という同判決の基準を維持し続けていることだ。

◆条約に反し「子どもの権利」を侵害している

 判決後、日本は重要な国際人権条約を結んだ。79年に批准したのが、家族が一緒に住む権利を保障する国連の「自由権規約」。94年に批准した「子どもの権利条約」は子どもの最善の利益を尊重し「児童は両親の意思に反して分離されるべきでない」と定める。
 
 泉氏は「家族を分断するような入管庁の命令は、これらの条約に反し家族や子どもの権利を侵害している。裁判所は厳しく審査し、ケースによっては家族全員が日本に住み続けられるような判決も出すべきなのに、行政に安易に追随している」と指摘する。
 国連の自由権規約委員会は2014年の総括所見で、国際条約で保障される権利が「日本では裁判で守られることが少ない」と勧告している。

◆日本は外国人抜きで成り立たない構造に向かっている

 なぜ、裁判所は外国人の人権擁護に消極的なのか。泉氏は「少数者の権利を守る裁判所の役割を最高裁はじめ裁判所自体がよく分かっていない」と分析する。
 民主主義は国会の多数決で法律をつくるが、多数決原理だけでは救われない人たちがいる。LGBTQや障害者など「少数派」の人々で、投票権すらない外国人もそうだ。「憲法や条約に照らし、少数派の人権侵害があれば救済するのが、裁判所の重要な役割なのに、今の裁判所は役割を果たしていない」という。
 改善策として泉氏がまず強調するのは裁判官に国際人権条約を研修し、重要性を認識させること。さらに国連の「個人通報制度」の導入も有効とみる。人権侵害の被害者自身が国連に通報、国連傘下の委員会が調査し、政府に見解を送付する仕組み。実際、オーストラリアなどでは家族分断につながる送還命令が委員会の見解で撤回されている。
 ただ、同制度については政府は長年にわたり「検討中」のままだ。
 国立社会保障・人口問題研究所は、外国人が2070年に今の3.4倍の約940万人まで増え、人口の1割を占めると予測。日本社会は外国人抜きで成り立たない構造に向かう。泉氏は「裁判所も行政も国際水準に合わせて人権を尊重しないと、日本は世界の人々から見放される」と語る。

◆デスクメモ

 家族の形はそれぞれある。「一緒に」と押しつけられるのは違和感も。ただ、大切な人と暮らしたいという、当たり前の思いを一方的にないがしろにするのはどうか。子どもの成長を考えたとき、やすやすと家族を分離させていいか。世界から問われずとも、自らの頭で考えてほしい。(榊)


夕方からは、晴れ間も出てきた。
朝は20㎝ほど積もり、雪かきをしていたが吹雪状態になり、途中でやめ昼を食べて、雪が止んでからまたトライ。
天気予報が当たらないので困ってしまう。

発効3年 核禁条約の現在地

2024年01月22日 | 社会・経済

大阪大学名誉教授(軍縮論) 黒澤満さん

「しんぶん赤旗」2024年1月22日

締約国が「核抑止」を徹底批判 規範力増し保有国追い詰める

 核兵器禁止条約が発効して3年がたちました。昨年末には第2回締約国会議が開催され、核兵器のない世界に向けた議論が進みました。禁止条約発効の意義と締約国会議の特徴について、核不拡散条約(NPT)再検討会議日本政府代表顧問を務めた黒澤満大阪大学名誉教授(軍縮論)に聞きました。(聞き手 加來恵子)

 ―禁止条約が発効した後の世界情勢をどう見ていますか。

 核兵器禁止条約発効後、ロシアがウクライナ侵略を行い、核威嚇を繰り返し行っています。イスラエルのガザ攻撃や北朝鮮のミサイル発射など、核軍縮に逆行する動きがあります。大国間の話し合いや協力はなく、力で抑えつけようとしており、キューバ危機以来の危機にあります。

 そのなかで、核兵器禁止条約が良い方向に前進しています。禁止条約への署名は93カ国、批准が70カ国、国連加盟国の3分の1に広がっており、こうした国が核保有国に対抗して動いている状況にあります。

 2000年のNPT再検討会議で合意した第6条の「自国の核軍備の完全廃絶の明確な約束」の再確認は2010年以降行われず、第6条を補完するかたちで禁止条約ができました。

 NPT再検討会議と禁止条約締約国会議の違いは、より民主的な運営が行われているということにあります。

 NPT再検討会議は約1カ月かけて議論し、1カ国でも反対すれば決裂します。

 締約国会議は、次の会議までの期間、継続的に複数の作業部会がそれぞれ調査・報告しているため、会期が短くても会議がスムーズに行われています。また、市民社会が参加し、主役になれるのも大きな違いです。

 ―第2回締約国会議の議論はどんな特徴があるでしょうか。

 第1回締約国会議のウィーン宣言を具体化する政治宣言が出されました。宣言には、「核兵器を違法化し、悪の烙印(らくいん)を押し、完全に廃絶する不屈の決意をかつてなく固めている」とあり、核兵器のタブー化と禁止条約の普遍化の強化をうたっています。

 第2回締約国会議では、国家の安全保障ではなく、人類の安全保障の観点から、多くの国々が「核抑止」論を批判しました。核兵器による威嚇は国際法違反だという前提に立って議論されたことは大きな成果です。

 これまで、アメリカなどの大国は、国家至上主義のうえに国の安全保障を掲げてきました。国家の安全保障を考えれば、核実験被害者や被爆者は救済されません。そのため、「人間の安全保障」や「人類の安全保障」の概念をもって、これに照らして使用した国の責任を問うことを追求しています。

 核兵器の使用は国境を越え、人類と環境に重大な影響を与えることを示すために、禁止条約第6条、第7条の核被害者救済と環境修復に光を当てました。核実験被害者や被爆者が証言し、核兵器の非人道性を明らかにしました。「核抑止」に対し、核兵器による影響の科学的証拠を示し、理論的に説得力を持って対峙(たいじ)しようとしています。

 オーストリアが中心となり、安全保障に関する協議プロセスを設置することが決まり、2025年の次の締約国会議までに科学的知見をふまえ、核被害者や専門家を含めて「核抑止」の危険を明らかにする報告書を作成することになっています。核被害者支援と環境修復に向けた「国際信託基金」の設立に向けた指針作りも決まりました。

 ―禁止条約は核保有国にどのような影響を与えていますか。

 現在、非核兵器地帯に110カ国以上が含まれています。これらの国は禁止条約に参加しても新たな義務を負うことはありません。

 これらの国々に対し、アメリカなど核保有国が安全保障や経済支援の打ち切りなどをちらつかせて、禁止条約参加を妨害しています。

 核保有国は表向きには禁止条約を無視しながら、その裏で妨害しているのです。

 逆に言うと、核保有国は、これ以上禁止条約参加国が増えることを危惧していると言えます。締約国が100カ国を超えれば、同条約が世界的規範力を増し、保有国はさらに追い詰められることになります。締約国を増やすことが重要です。

 ―日本政府はオブザーバー参加さえもしませんでした。唯一の戦争被爆国として禁止条約に参加する政府にするにはどうすればいいでしょうか。

 「赤旗」の昨年12月4日付の主張「情勢切り開く核兵器禁止条約―高まる実効性と規範力・日本政府は参加決断せよ」には100%賛成しています。

 アメリカの同盟国であるドイツやノルウェーが締約国会議にオブザーバー参加しました。日本は唯一の被爆国と言いながら、アメリカの「核抑止力」に依存し、昨年広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で岸田首相は「核抑止」強化を宣言しました。

 日本政府は「禁止条約は出口」と言いながら入り口であるオブザーバー参加さえしない。核兵器国が参加していないことを理由にしていますが、それは理由になりません。

 締約国になれないなかでも、会議に参加し、第6条、第7条の核被害者支援や環境修復で貢献することは可能ですが、それもしない。

 締約国会議で、ギニアから「被爆者を治療したノウハウを持っているのに、なぜ日本政府はこないのか」との意見が出され、日本政府が出席していないため、広島県知事が回答する場面がありました。岸田首相は「やっている感」だけで、何もやっていないのです。

 同じアメリカの同盟国である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国よりもさらに悪い。唯一の戦争被爆国なのだから、せめてヨーロッパの同盟国と同等、あるいはその先をいかないといけない。国際社会はそれを日本に求めています。

 自民党政治のもとではアメリカの「核抑止力」から抜けることはなく、禁止条約に参加することはないでしょう。日本で、「核抑止」より禁止条約参加を求める世論を増やし、政府を変えればこの条約に参加できます。野党が連帯してこの運動をすすめれば参加の方向に変えられますし、そうなってほしいと期待しています。

 

 くろさわ・みつる 1945年生まれ。大阪大学名誉教授、大阪女学院大学名誉教授。日本軍縮学会初代会長。『核不拡散条約50年と核軍縮の進展』など著書多数

⁂     ⁂     ⁂

“核の傘”の考え捨てて

ICAN事務局長講演 日本に条約参加促す

 核兵器禁止条約発効から22日で3年を迎えるにあたり来日している核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長は21日、長崎市の長崎原爆資料館ホールで講演しました。被爆者や若者など、200人以上の市民が聞き入りました。

 主催は「核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会」など。

 「核兵器のない世界へ、私たちにできること」と題して講演したパーク氏は「被爆者たちは、自らの証言を繰り返し語ることで、人類と核とは共存できないという、シンプルだが深いメッセージを勇気をもって発信してきた」と語り、来場している被爆者や市民の活動に感謝の言葉を述べました。

 「多くの国で核兵器に関する教育がほとんど存在しない。被爆者の声を中心に据えたカリキュラムが必要だ」と指摘し、教育の重要性を強調しました。

 さらに、「日本は今こそ“核の傘”という誤った考えを捨て、核兵器禁止条約に加わるべきだ。それにより日本の安全が強化されるだけではなく、戦時に原爆を経験した唯一の国として、この問題について強い道徳的権威をもって語ることが可能になる」と指摘。米国の同盟国として核兵器を安全保障政策として捉えている限り、核軍縮をリードすることはできないと批判しました。

⁂     ⁂     ⁂

核禁条約参加求め674議会

発効3年 約4割の自治体で意見書

2024年1月22日

 核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効して3年を迎えました。同条約が実効力・規範力を高めるなか、唯一の戦争被爆国である日本政府は米国の「核の傘」のもとで署名も批准もしていません。日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める地方議会の意見書(趣旨採択を含む)が674に達し、全1788議会の約38%となったことが、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の調べで21日までにわかりました。

 昨年10月5日に全会一致で可決した長崎県諫早市の意見書は「核兵器のない世界の実現という被爆者の切なる願いを、唯一の戦争被爆国である日本政府は真摯(しんし)に受け止め」、「核兵器禁止条約の実効性を高めるために主導的役割を果たされるよう強く要望する」とのべ、核兵器禁止条約を早期に署名・批准することを求めています。

 昨年9月14日に賛成多数で可決した栃木県高根沢町の意見書は、歴史的な核兵器禁止条約が「被爆国、被害国の国民の声に応えるものとなっています」と高く評価。「日本は、『唯一の戦争被爆国』として核兵器全面禁止のために真剣に努力する証として、核兵器禁止条約に参加、調印、批准することを求めます」としています。

 意見書は核兵器禁止条約が国連会議で採択された17年7月7日以降のものです。岩手、長野、三重、沖縄の4県議会が可決し、鳥取県議会が陳情を趣旨採択。区市町村議会は31の趣旨採択を含めて1区290市302町76村となっています。

 岩手県は県議会と全33市町村議会で可決。県・区市町村議会を合わせて7割を超えたのは秋田、新潟、長野、鳥取、岡山、広島、徳島の7県です。


今の自公政権には何の希望も持てません。
早く無くなってくれることを望むだけです。

今日はまた雪です。
気温は落ち着いたようです。


政治家も経済界も「賃上げ」を叫ぶばかりで現実は実質マイナス、なぜなのか

2024年01月21日 | 生活

弁護士ドットコム 2024年01月21日

    厚生労働省が1月10日に発表した、2023年11月の「毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)」によると、物価を考慮した1人あたりの実質賃金は前年同月比3.0%減でした。実質賃金は、20カ月連続でマイナスになっています。

    安倍政権、菅政権、岸田政権、いずれも賃金上昇の必要性を強く訴えてきましたが、企業の反応は「暖簾に腕押し」という感じで、賃金上昇には結びつきませんでした。

    最近になって、急激な物価上昇により賃金上昇圧力も強くなり、企業でも賃上げの動きが見られるようになってきましたが、物価上昇のスピードには追いつかず、実質賃金は依然として低いままです。日本ではなぜ実質賃金が上がらないのでしょうか。(ライター・岩下爽)

  • 企業の利益剰余金は11年連続で増加

    アベノミクスでは、異次元の金融緩和によって市場にマネーを供給して、潤沢な資金を元に景気回復するシナリオを描きました。結果として投資マネーが増え、株価は上がり、低金利政策により円安が進行し、輸出企業を中心に最高益を出すなど一定の効果がありました。

    経済の理論からすると、企業の利益が増えれば賃金が上がり、消費も増え、物価が上がることになりますが、実際には企業は儲かっても従業員の賃金を上げず、内部留保を続けたため景気の好循環には至らず、デフレが続きました。

    結局、アベノミクスで恩恵が得られたのは、企業と株の保有者だけでした。企業献金を受け取り、富裕層と強い繋がりがある自民党総裁としては、十分満足の得られる結果だったのかもしれません。

    その後の菅政権は、最低賃金を全国平均で28円引き上げましたが、約1年と短期間だったため、大きな賃上げには繋がりませんでした。岸田政権は、「新しい資本主義」と題して、①構造的賃上げの実現、②国内投資の活性化、③デジタル社会への移行、の3つを掲げています。

    賃上げの具体的政策としては、リスキリングによる能力向上や成長分野への労働移動の円滑化が掲げられていますが、これもすぐに賃上げの効果が出るものではありません。

    岸田首相は、経済3団体共催の「2024年新年会」で、「この令和6年は極めて重要な1年となります」と述べ、賃上げについても後戻りさせないようあらゆる手だてを尽くすと決意を示し、経済界に対し強い賃上げへの協力を要請しました。

    これを受け、経団連の十倉雅和会長は、「日本経済がデフレからの完全脱却を果たすうえで、非常に重要な勝負の年である。実現に向けては、『成長と分配の好循環』を確かなものとする必要がある。千載一遇のチャンスを逃すことのないよう、構造的な賃金引上げの実現や、全世代型社会保障制度改革に全力で取り組んでいく」と意欲を示しています。

    政府も経団連も賃上げについて強い決意を述べているように思われますが、どこまで本気なのかはわかりません。十倉会長の年頭挨拶を遡って見ても、前年の2023年、前々年の2022年の年頭の挨拶でも賃上げの重要性について述べているからです。つまり、年頭挨拶での賃上げの決意表明は恒例行事のようになっているということです。

    実際、賃上げの決意表明にもかかわらず2022年も2023年も実質賃金は低いままです。それに対し、財務省の「法人企業統計」(令和4年度)」によると、企業が蓄えた内部留保に当たる「利益剰余金」は、前年度比7.4%増の554兆7777億円でした。利益剰余金の額は、11年連続で増加を続けており、過去最高を更新しています。

    つまり、企業経営者は、表面上は賃上げすると言いつつ、相変わらず内部留保を増やし続け、わずかばかりの名目賃金を上げて、実質賃金は依然として低いままという状態なのです。

  • 賃金が上がりにくい「非正規雇用」が4割近くを占めている

    日本の賃金を押し下げる要因として非正規労働者の賃金が低いことがあります。厚生労働省の資料「『非正規雇用』の現状と課題」によると、非正規雇用の割合は、2022年度で36.9%になっています 。約4割の人が非正規労働者ということです。この4割の人の賃金が低いため賃金の平均値が低くなっています。また、安い非正規労働者がいることで、正規労働者の賃金も上がりづらいという構造になっています。

    非正規雇用は、多様な働き方という点では良い面もあるものの、賃金に関しては極めて不利な状況におかれています。有期雇用社員の多くは1年契約で、更新されるかは企業次第なので、賃上げの交渉などできる状況にはありません。そのため、正規社員と同等の労働をしても、正規社員に比べ低い賃金に設定されています。

    現行法に「同一労働同一賃金」の規定はありますが、罰則規定がないため、法律が遵守されていないのが実態です。法律を改正し、労働基準法にも明記し、罰則を設けるなどして規制を強化していくことが必要だと思います。

     パート社員についても、「106万円の壁」や「130万円の壁」によって、収入を増やそうと思っても増やせない制度になっています。そのため、わざとシフトを減らすなどして収入を抑えている人がたくさんいます。これも賃金を押し下げている要因の一つです。

    政府は、「年収の壁・支援強化パッケージ」という措置で年収の壁の緩和を図ろうとしていますが、時限的な措置であり、一時的なものに過ぎません。この点についても、抜本的な法律の見直しが必要だと言えます。

  • ストライキをしない労働組合、消極的な労働者側の動き

    企業が賃金を上げようとするのは、賃金を上げなければ従業員が辞めてしまう、あるいは現在の賃金水準では人を採用できないという状況が発生した場合です。経営者からすれば、コストはできるだけ安い方が良いわけで、人件費というのは固定費として大きなウエイトを占めるので、経営者が給与をできるだけ低く抑えたいと考えることは当然のことです。

    「利益が出ているのに、従業員に還元しないのはけしからん」という意見を言う人もいますが、従業員から「給料を上げろ」と主張もしないで自動的に給与が上がると考える方がおかしいと言えます。もちろん、従業員から積極的な賃上げの要求がなくても従業員のモチベーションを上げるために経営戦略的に給与を上げることはあるかもしれませんが、それはレアなケースと言えます。

    アメリカは、高い給与水準 を維持していますが、賃上げのためのストライキをたくさんしています。ストライキをしても賃上げに応じなければ、従業員らは会社を辞めてしまいます。そのため、企業は賃上げに応じざるを得ないわけです。賃上げを自分たちの力で勝ち取っているわけです。

    賃上げの要求をしたり、ストライキをしたりすることは大変な労力を要します。しかし、それをやらなければ残念ながら賃金は上がりません。今の組合はストライキもせず、実効性のない組織だと思われているので、組合への加入率が年々下がっています。賃上げの機運が高まっている今こそ組合が積極的に動く時です。

    日本最大の労働組合の全国組織「連合」は、2023年春闘で「30年ぶりの高水準となる賃上げを実現した」と胸を張っていますが、実質賃金が低いままでは何の意味もありません。実質賃金が上がる水準まで強く賃上げを要求することが必要です。自民党と仲良くすることも結構ですが、それならもっと与党に働きかけをして政治を動かしていくべきです。

  • 日銀の動きに注目

現在の日本の物価上昇は、世界的な物価上昇の影響を受けており、円安によりさらに負担が増えているという状況にあります。実質賃金は物価を考慮するため、物価の上昇が抑えられれば、実質賃金は上がりやすくなります。

 日銀は、春闘での賃上げの状況を見極めた上で、金融緩和を解除するかどうかを判断するので、春闘の結果が出るまではどうなるかわかりませんが、もし金融緩和が解除されて円高になれば、コスト上昇による物価高は緩和されます。幸い、名目賃金は上昇傾向にあることから、円高が進めば、実質賃金の上昇につながるかもしれません。

  • まとめ:組合を中心として、積極的な活動を行うことが重要

 実質賃金の上昇のためには、物価という外的要因の影響があるので、それを見越して賃上げをしていく必要があります。企業経営者はなるべくコストを抑制したいと考えるのが自然であり、政府の動きも期待できません。

 結局、実質賃金を上げられるかどうかは自分たち次第であり、自分たちで動くかどうかにかかってきます。今は、急激な物価上昇があるため、賃上げを求めやすい環境になっています。この機会を逃せば、賃上げを要求することは難しくなります。

 組合が中心となって、積極的な活動を行っていくことが重要であり、各所でそのような動きが見られるようになれば、企業経営者も重い腰を上げざるを得なくなります。春闘に向け大事な時期になってきますので、実質賃金の上昇に向けて頑張ってもらいたいと思います。


 以前の労働組合は様々な分野に影響力を発揮していた。政府の政治姿勢や、個々の政策に対する闘いがあった。ニッポンをこんな国にした責任の一端、いや大きな部分で連合にある。今の「連合」は、政府に寄り添うばかり。それを構成しているのは「労働者国民」なのだが。

寒い日が続いています。
夜から-20℃ほどに、朝方の最低は-25℃。
露天風呂の湯船の外はツルッツル。
洗った髪はカチンコチン。


新しい外交を切り拓く 軍事緊張が高まる東アジア 米側陣営の強化は平和をもたらすのか

2024年01月20日 | 社会・経済

猿田佐世(新外交イニシアティブ代表)

Imidas連載コラム 2024/01/17

 北朝鮮とロシアが関係を深めている。

 2024年が明けてすぐ飛び込んできたニュースは、北朝鮮から供与された弾道ミサイルをロシアがウクライナ戦争で使用しているとの懸念、というものであり、1月中旬には、モスクワで露朝外相会談が行われた。

 露朝の関係深化は昨年後半から加速している。昨年9月に極東ロシアで行われた北朝鮮の金正恩総書記とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談は世界の耳目を集めた。金総書記がロシアの宇宙基地を訪問し、ロケットの組み立て工場や発射場を視察するなど、両国は軍事的な結束を世界にアピールした。その後、11月には、北朝鮮が軍事偵察衛星の打ち上げに成功したが、過去数回の失敗を経ての打ち上げの成功はロシアの技術協力により可能になったとも評されている。

 日本の安全保障関係者は露朝の結束強化に強い懸念を示している。確かに、これらの動きは東アジア地域の緊張をさらに高める要因になるものとして注視しなければならない。しかし、ここで忘れてはならないのは、この露朝の関係強化は、「米側陣営」の連携強化へのリアクションでもあるということである。

「安全保障のジレンマ」がすでに起きている

 近年、米側陣営は、FOIP(「自由で開かれたインド太平洋」構想)に始まり、QUAD(日米豪印の協力枠組み)、AUKUS(米英豪の安全保障枠組み)と軍事的な結束を強めてきた。露朝首脳会談の1カ月前の昨年8月、日米韓首脳会談で、3カ国は、今後の首脳・閣僚級会談や3カ国軍事演習の定例化を決定した。9月に露朝首脳会談が行われると、日米韓は協議を行い、露朝間の協力が国連安保理決議の違反につながる可能性があるとし、違反に対しては明確な対価が伴うように協力し、米国の「拡大抑止」を強化するという方針を確認している。

 そもそも米側陣営が東アジアにおいて結束を強化し、軍事力を高めているのは、中国の拡張主義的政策に対応し、また、中国と協力関係にあるとされるロシア・北朝鮮を抑止するためである。日本でも、台湾有事の可能性が語られる中で、軍事予算の倍増や敵基地攻撃能力の保有が決定され、軍事力の強化が進められてきた。

 もっとも、FOIP、QUAD、日米韓協力といった枠組みは、中国や北朝鮮に対して一定の抑止力として機能したかもしれないが、「対立の緩和」「衝突の回避」とは逆の効果も生み出してきた。米側の軍事協力が急速に強化された結果、中露は日本を取り囲む形で共同軍事演習を行うようになり、さらには中露と北朝鮮の3カ国で軍事演習を行う提案までも、ロシアから北朝鮮に対してなされている。

「安全保障のジレンマ(自国の安全を高めるために軍事力を増強することでかえって他国との緊張が高まること)」が、すでにこの東アジアで起きている。

米側陣営とグローバルサウス

 米国は「民主主義vs権威主義の戦い」として、米中対立における米側陣営の強化を図ってきた。

 他方、近年、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国で、ウクライナ戦争や米中対立に対して中立的な立場を示す国が次々と現れている。それらの国々は、軍事紛争に巻き込まれること、そして、直接的に戦火にさらされなくとも対立や紛争によって生じる経済的な悪影響を受けることを絶対に避けたいと考えている。この「グローバルサウス」は、人口においても国の数においても世界の過半を占め、近年「物申す」存在として急速に力をつけてきた。「米側陣営が結束すれば、世界秩序の方向性を決することができる」という時代は終わりを迎えつつある。

 民主主義や人権、法の支配といった米側陣営の概念が多くの国に根づき、国際的なスタンダードとなることは望ましい。しかしそれは、強制や踏み絵によって実現するものではない。まさに米バイデン大統領が就任直後に繰り返し述べていた通り、「leading by example(模範を示して牽引する)」ということでしか、他国にそれらを広げるすべはないだろう。

 日本でも、途上国などの軍隊に防衛装備品を供与する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の制度が設けられ、各国の防衛力強化を図るべく支援先を広げられている。しかし、日本もグローバルサウス各国と接する際、彼らを自陣営に取り組み、自陣営の軍事力強化を狙うための援助ではなく、各国のニーズに基づいた援助をすべきである。それによって各国が発展し、その結果、大国に振り回されることなく自立した決断ができる国になるような支援が求められている。米側陣営強化の視点からの援助が広がれば、ブロック化がさらに進んで地域対立が先鋭化し、紛争の可能性が高まっていけば、結果、人権や民主主義、法の支配の発展の障害にすらなってしまう。

日本外交に求められる「安心供与」

 西側陣営と権威主義陣営の対立がさらに深まり、軍事力増強が両陣営で進めば、ふとしたきっかけにより軍事衝突が起き、エスカレートして大戦争となりかねない。また、対立が続けば、気候変動など地球規模で取り組むべき課題についての対策を取ることもできなくなってしまう。「対立の緩和」こそが、日本を含む各国の主要命題でなければならない。

「対立の緩和」を求める声は日本の中に根強くある。朝日新聞の世論調査(2023年5月2日配信)によれば、回答者の8割が台湾有事に巻き込まれることを懸念しており、7割が日本の安全保障を考える上で中国に対しては防衛力強化よりも外交や経済での日中関係の深化を望んでいる。そして、新聞通信調査会の世論調査(2022年11月12日発表)では、台湾有事が起きた際に自衛隊を派兵することに対して、約75%に上る人が反対している。

 日本は、米国との関係を良好に維持しながらも、「陣営の強化」のみに偏りすぎない努力が必要であり、特に軍事的協力の強化には対立を深めないようにする慎重さが求められている。

 軍事力を拡大するだけでは緊張が高まるのみである。軍事力強化を求める人々が声高に叫ぶ「抑止力」すら、ただ軍事力を拡大するのみでは機能しない。抑止力を機能させるには、「武力に訴えなくても核心的利益が脅かされない」と相手に考えさせる余地を残すこと、即ち「安心供与(reassurance)」が不可欠だ。そして、安心供与のためには、外交が欠かせないのである。

 従来の外交チャンネルを拡大し、テーマも質も広げた充実した外交が重要だ。日中関係においては、政府の各レベルで対話ルートを構築し制度化することが喫緊の課題である。また露朝とも、たとえ困難であろうとも、直接対話の努力を欠かしてはならない。中露朝とは、安全保障以外のテーマでの多国間外交をも重視し、対話と協力関係を模索し続けるべきである。

 東アジアでの戦争は何としても避けなければならない。そのために、日本は外交努力を尽くしつつ、グローバルサウスやその他多くの国々と共に「米中対立の緩和」を米中それぞれに対して呼びかけていく必要がある。


今日は札幌で新年会がありますので早めの投稿となりました。
18日も地元の老人会の新年会でした。
25日には、また札幌で子どもたちと孫の入学を祝う焼肉の会。
2番目にビンゴで幸先の良い1年となるか?
景品はこちら。


昨夜の冷え込みは今季最低で-21℃まで下がりました。
明日も似たような感じです。
では、行ってきます。


「ファミマのボイコットも」

2024年01月19日 | 社会・経済

学生団体が憤り―伊藤忠側の大暴言「(虐殺への加担)恥ずかしくない」

 
志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

 昨年10月から続くイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの猛攻撃。現地住民の犠牲は増える一方で、本稿執筆時点で、約2万4000人、その大部分が女性や子ども等の非戦闘員です。もはや、イスラエルのガザ攻撃は、ジェノサイド(民族等の全部或いはその一部のそれ自体を滅ぼす目的で行われる非人道行為)であると国際的にも批判が高まっています。

 そうした中、そのガザ攻撃に深く関わるイスラエルの軍事企業エルビット・システムズと伊藤忠商事等の日本企業との関係が物議を醸しています。この件で、今月15日、市民団体が会見を開き、日本企業に対し、エルビット・システムズとの関係を解消するよう、求めました。

*本記事は、theLetter に掲載した記事に若干の加筆し転載したものです。

https://reishiva.theletter.jp

〇イスラエル"最凶"軍事企業エルビット・システムズ

 エルビット・システムズは、イスラエルの軍事企業の中でも最大手で、同国陸軍の装備及び、空軍のドローン(無人攻撃機)の8割以上を供給。昨年10月以降、24時間体制で工場を稼働させるなど、ガザ攻撃にも深く関わっています(関連記事)。

 エルビット・システムズの製品を含むイスラエル製ドローンは、今回のみならず、過去にもガザでの民間人殺害に使用されてきました。

写真の少年は、停戦中に外で遊んでいたところ、イスラエルのドローンによる対人ミサイル攻撃を受け、全身に大やけどを負った。一緒にいた友人達は死亡したという。2014年7月パレスチナ自治区ガザにて筆者撮影
写真の少年は、停戦中に外で遊んでいたところ、イスラエルのドローンによる対人ミサイル攻撃を受け、全身に大やけどを負った。一緒にいた友人達は死亡したという。2014年7月パレスチナ自治区ガザにて筆者撮影

〇イスラエル大使立ち合いの下で協力関係を約束

 このエルビット・システムズと相互協力を促進するための戦略的協力覚書(MOU)を昨年3月、締結したのが、伊藤忠アビエーション(伊藤忠商事の100%子会社)と日本エヤークラフトサプライ((NAS))です。本件をスクープした毎日新聞の記事によると、MOU締結は、千葉県の幕張メッセで開催された武器見本市「DSEIジャパン2023」で行われ、イスラエル大使の立ち合いの下、各社の担当者はシャンパンで乾杯したそうです(関連記事)。

 これに対し、複数の市民団体による共同キャンペーン「STOP大軍拡アクション」や「〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会」(以下、「有志の会」)は、伊藤忠アビエーション日本エヤークラフトサプライに対し「"死の商人"エルビット・システムズとの契約を破棄して下さい!」として、両社への抗議活動を行ってきました。

 また上記の2社に対し、「有志の会」は、エルビット・システムズとの関係を断つよう、署名活動を開始。同会は今月15日に、衆議院議員会館(東京都千代田区)で会見を開き、昨年12月21日の署名開始から、今月15日の間に、約2万5000筆もの署名が集まったことを報告しました。

 会見では、「有志の会」の皆本夏樹さんが、伊藤忠とNASに署名を提出しに行ったことを報告。NASは対面で受け取ったものの、伊藤忠は「セキュリティ上の理由」から対面での署名の受け取りを拒否したとのことでした。

〇「(虐殺への加担は)恥ずかしくない」と伊藤忠担当者

 会見で発言した杉原浩司さん(武器取引反対ネットワーク/STOP大軍拡アクション)は、これまで幾度も伊藤忠の本社前で抗議を行った中で、同社はガザ攻撃に伊藤忠は加担しているのではないかと問いただしたそうですが、これに対し伊藤忠の担当者は「(虐殺への加担は)恥ずかしくなんかないよ」と言い放ったのだそうです。

 なお、筆者は伊藤忠とNAS両社に問い合わせ、2万5000筆以上の署名をどう受け止めるのか、一般市民を大勢殺しているイスラエルのガザ攻撃に対しどのような見解を持っているのか、質問しましたが、NAS側は「お答えできない」と回答を拒否。伊藤忠も期限までに回答してきませんでした。

 会見では、今野泰三・中京大学教授が国際的に広がるイスラエルに対する「不買」「投資引き上げ」「経済制裁」を行うBDS運動について、無印良品がイスラエル進出を取りやめ、最近では独スポーツ用品大手のプーマがイスラエル・サッカー境界(協会?)のスポンサー撤退を決定したと解説。「エルビット・システムズは、イスラエルの人種差別体制と大量虐殺を支える企業である」「この提携をやめるということが、結果的に暴力による解決は許さないという日本からイスラエル及び世界に向けたメッセージになる」と語りました。

伊藤忠本社前での抗議 筆者撮影
伊藤忠本社前での抗議 筆者撮影

〇在日パレスチナ人からのメッセージ

 本件には在日パレスチナ人でガザ出身のハニン・シアムさんもメッセージを寄せ、伊藤忠本社前や会見の場で代読されました。ハニンさんは「何人虐殺されれば 私たちに血が通っていて夢があって希望ある人間であると証明できるでしょうか」と嘆き、伊藤忠等に対し、「何も複雑なことではありません。抑圧、植民地主義、ジェノサイドの側につくのか、人間性のある側、自由と解放のある側のどちらにつくのか、あなたの今の決断が歴史の正しい側に立てるかを左右するでしょう」と呼びかけたのでした。

〇ファミリーマート関連商品等がボイコット対象に 

 今後の方針として、「有志の会」など市民団体側は、彼らの求めに伊藤忠が応じない場合、伊藤忠の子会社でコンビニチェーンのファミリーマートに対するボイコット、具体的には、おにぎりやお弁当、冷凍食品等のファミリーマートブランド商品「ファミマル」に対するボイコット運動を行うことも示唆。また、同じく伊藤忠系の、ジーンズブランドのEDWINやプリマハム等も、その対象になるとのことです。

 海外では、イスラエル兵士に無料で商品を提供したマクドナルド、スターバックス等、「イスラエル支援企業」とされる企業の商品に対する強烈なボイコット運動が展開されています。日本でも、伊藤忠本社の対応次第では、ファミリーマート等、伊藤忠の関連事業のイメージに大きく影響することになるかもしれません。

(了)


 「停戦」の兆しが見えない今、「不買」「投資引き上げ」「経済制裁」のBDS運動は効果を引き出すのではないだろうか。
金のためには何でもする「死」の商人である。


石川県「能登でM8.1」試算を知りながら防災計画は「M7.0」想定 知事は「震災少ない」と企業誘致に熱

2024年01月18日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」こちら特報部 2024年1月18日 

 気象庁がマグニチュード(M)7.6と発表した能登半島地震。過去をたどると不可解な点が浮かぶ。地元の石川県は2012年、今回の震源地の能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると試算したが、家屋倒壊などの被害想定を示さず、地震対策の議論を先送りした。当時から住宅の耐震化などを進めていれば「救えた命」がなかったか。「地震リスクが周知されず」で済ませていいか。(西田直晃、木原育子)

◆多数の家屋が倒壊して被害が拡大

 「住まいを追われたお年寄りたちは、農業用テントで身を寄せ合いながら暮らしていた。孤立した集落に行き場はどこにもない」

 そう声を落としたのは、地震発生翌日の2日夜に被災地入りしたジャーナリストの堀潤氏だ。

 今回の地震で目を見張るのが、倒壊家屋の多さだ。

 石川県によると、17日午後2時現在の判明分(全半壊、一部破損)で2万2000余の住宅に被害が出た。能登半島の先端にある珠洲市、西隣の輪島市は集計困難として除かれており、実際の数はさらに多くなる。県が17日までに氏名を公表した犠牲者59人のうち、9割が家屋倒壊で亡くなった。

 堀氏は「畜産用の牛舎の倒壊も激しく、生業を維持できない。古い木造家屋は壊滅的だ」と語る。

 耐震化の遅れは、被害の拡大を招いたとみられる。現在の耐震基準を満たす住宅の割合(耐震化率)は、全国平均の87%(2018年度)に対し、珠洲市は51%(同)、輪島市は46.1%(22年度)にとどまる。

◆「多分連動するような断層の配置」「考慮して当然」

 これらの甚大な被害は想定外と言えるのか。

 震源地は能登半島の北側辺りとされる。政府の地震調査委員会は、能登半島沖の北東から南西にある複数の活断層が連動し、大きな揺れを引き起こした可能性に言及している。

 能登半島の北方沖では、かねて複数の活断層の存在が指摘されていた。国の研究機関「産業技術総合研究所」の岡村行信氏らは10年の「能登半島北部周辺20万分の1海域地質図説明書」で四つの活断層を記載した。産総研によると、半島北岸の5〜10キロ沖で海岸と平行に逆断層が分布し、一つ当たり20キロ前後の長さで四つに区分される。

 12年3月にあった経済産業省原子力安全・保安院の「地震・津波に関する意見聴取会(活断層関係)」では、北陸電力志賀原発(志賀町)の審査に際し、岡村氏が委員として出席。四つの活断層が連動する可能性に触れた。議事録には「多分連動するような断層の配置」「考慮して当然」といった岡村氏の発言が残る。

◆石川県の資料に確かに「M8.1」と

 これを受け、北電は「約95キロ区間の連動を考慮すると、マグニチュード8.1相当になる」という試算を報告した。岡村氏は取材に「原発の安全性審査のためには、最大クラスの地震規模を想定することが必要だった」と当時を回想した。

 北電の試算と同じ月には、県が「平成23年度石川県津波浸水想定調査」の報告書をまとめ、能登半島の北方沖で活断層が95キロにわたって動く場合の地震規模を見積もった。

 翌月の12年4月の説明資料には、M8.1という試算結果が記されている。地震波の最大振れ幅を踏まえる気象庁の算出方式に基づいた値で、震源断層のずれの大きさから計算する「モーメントマグニチュード(Mw)」は7.66。同月にあった県防災会議の震災対策部会で県の試算が報告され、北陸中日新聞などで報じられた。

◆その後、地域防災計画は見直しに

 地域に合った対策を定めるのが県の役目だ。災害対策基本法によれば、住民の命や財産を災害から保護するために都道府県が取る対策は、地域防災計画に盛り込むことになっている。

 県は「能登半島北方沖でM8.1」の試算後、地域防災計画の津波災害対策編に反映させた。12年5月のことだ。各地の津波高や到達時間を出し、津波ハザードマップの作成や避難路の整備などの対策も示した。

 14年9月に政府の有識者会議「日本海における大規模地震に関する調査検討会」が報告書をまとめ、「能登半島北方沖でMw7.6」の地震を見立てると、県はこの報告書を考慮し、地域防災計画の津波災害対策編を見直した。

◆なぜか地震想定を小さく据え置いていた 

 不可解なのが、県の地震対応だ。地域防災計画の地震災害対策編では「能登半島北方沖でM8.1」を盛り込まず、1997年度公表の想定を据え置いた。記載した地震の規模は「北方沖でM7.0」。地震による被害も「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とし、死者は7人、建物全壊は120棟、避難者数は約2780人と見積もった。

 こうした想定は備えを鈍らせなかったか。本来は多数の家屋倒壊や道路の損壊といった地震の被害を念頭に置き、耐震化の予算を付け、孤立対策などを準備すべきだったのではないか。

 科学ジャーナリストの添田孝史氏は「これだけ何もしてこなかったのは理解を超えるレベルだ。被害想定ができていなかったために初動も遅れ、正確な情報も集まらず、自衛隊の救援も含めて人手確保ができないまま全てが後手に回ったのではないか」と話す。

 金沢大の平松良浩教授(地震学)も「あんなに更新されていない地域防災計画は実効性がない。自治体は住民の命と財産を守るのが根本。喫緊の課題だったが、県の動きは鈍かったと言わざるを得ない」と語る。

◆7期28年の谷本県政 当時は北陸新幹線開通を控えた時期

 M8.1の試算は、1994年から7期28年にわたって知事を務めた谷本正憲氏の在任中に行われた。しかし谷本県政では、地域防災計画の地震災害対策編に反映されなかった。

 試算が出た2012年は東日本大震災の翌年。県議会の会議録によれば、谷本氏は「震災が少ない地域」とアピールしながら企業誘致に力を入れ、北陸新幹線の金沢開業を控えて誘客に躍起になっていた。

 そんな中、県が地震の被害想定を据え置いたのはなぜか。県危機対策課の南良一課長によれば、政府の方針が関係しているという。

 政府の地震調査委が発表する主要な活断層の「長期評価」は17年から海底活断層も加えて調査しているが、能登半島沖は検討が始まったばかり。南課長は「本県から働きかけて国に調査をしてもらった手前、それを待たずして先行するのはどうか。県としては国の調査結果をずっと待っていた」と述べる。

 現知事の馳浩氏が就任した2カ月後の22年5月、地域防災計画の地震災害対策編を見直すと決めた。ただ、早ければ25年度の公表という作業工程で、今回の地震には間に合わなかった。

◆「災害は政治的な現象がよく現れる」

 「国を待つ」姿勢だけで本当に良かったのか。

 東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「国の支援に頼りきるのではなく、ある程度、県や市が幾分か自力でできる力を付け、地域にその力を持たせていく必要があった。ところが今回、状況も全容もつかめず、国の激甚災害に指定されたのも10日後だった」と述べ、こう訴える。

 「災害は政治的な現象がよく現れる。地域防災計画を早く見直し、それに合わせて被害予想を得ていれば、被害を最小限にできた。改めて地方の防災力がないことを浮き彫りにした。災害は想定外で起きることを絶対に忘れてはならない

◆デスクメモ

 文中の岡村氏は福島原発事故の2年前、869年の貞観地震を踏まえ、大津波襲来の危険性を訴えた。だが備えに至らず事故に。その同氏が問題視した能登半島北方沖の活断層群。至らぬ備えがまたあらわに。何とかしたかった。M8.1試算を12年前に報じた身として自責の念が募る。(榊)


「地方の防災力がない」のはなぜなのか?
が問われなければならない。
国の原発推進県においては顕著であろう。

雪かきのない朝を迎えた。
しかし、夕方からまたもや吹雪模様。


阪神大震災から29年 防災減災を考える日に

2024年01月17日 | 生活

「東京新聞」社説 2024年1月17日 

 阪神・淡路大震災からきょうで29年になります。元日には激しい揺れと甚大な被害を思い起こさせる能登半島地震(M7・6)が起きました。発生から2週間以上たった今も被害の全容は把握できず、道路や水道などインフラ回復のめども立ちません。

 大変につらい状況ですが、その中でも阪神大震災の教訓がいくつも生きています。

 大震災後に組織された災害派遣医療チーム(DMAT)が能登にも駆けつけました。大震災では倒壊建物から救出後に容体が急変する「クラッシュ症候群」が多発し、50人が亡くなりました。下敷きになると圧迫された部分に毒素がたまり、救出後に毒素が体を巡って悪影響を与えるのです。

 石川県珠洲市で倒壊建物から124時間ぶりに救出された90歳代の女性は、あらかじめ点滴を打つなどクラッシュ症候群に配慮しながら病院に運ばれました。

◆海域活断層知らされず

 多くの住宅が倒壊しましたが、教訓が生かされた部分もありました。9日に開かれた土木学会の速報会では「2000年以降に建ったと思われる住宅は被害が軽微」と発表されました。阪神大震災で住宅の損傷が大きかったことから同年以降、木造住宅の耐震基準が厳しくなったからです。

 一方、教訓が生かされたとは言えない大きな問題も残りました。海域の活断層の存在が広く知らされていなかったことです。

 阪神大震災は多くの住民には不意打ちの地震。被災者から聞き取りをした災害情報の専門家は、関西には大地震は来ないとの「安全神話」があったと指摘します。

 しかし、学者の考えは異なっていました。国の研究所や大学の研究者で組織する地震予知連絡会は1978年、地震の観測を強化すべき場所として全国8カ所を「特定観測地域」、2カ所を「観測強化地域」に指定し、神戸市も特定観測地域に入っていたのです。

 活断層が多く、直下型地震の発生が懸念されたためですが、広く知らされてはいませんでした。

 周知されていれば家具を固定して備えるなど、被害がより小さくなっていただろうことは想像に難くありません。知らなかった、知らせていなかった。どちらの側にも痛恨の出来事でした。

 そうした反省から、阪神大震災後に政府の地震調査研究推進本部と地震調査委員会が設けられました。地震研究を統括し、研究成果を社会に役立てるためです。

 今回、能登半島地震を起こした可能性が高い海域の活断層は既に知られていました。2013年からの国の調査プロジェクトでは、この断層がM7級の地震を起こす可能性があるとされ、北陸電力志賀原発の安全評価でも影響が議論されていました。ただ、広くは説明されていません。

 地震調査委は17年から、日本海沿岸の活断層が地震を起こす確率計算を順次進めていますが、計算には時間がかかる上、存在が分かっている断層も計算終了まで確率は公表されません。能登半島沖の活断層は公表が間に合わず、結果的に阪神大震災と同じ轍(てつ)を踏むこととなりました。

◆被害小さくするために

 地震調査委が公表する活断層の地震発生確率は、例えば「30年以内に20%程度」のように、30年が基本です。同委では、人生設計を考える期間として30年が適当だからと説明しています。確かに30年もたてば世代も代わります。

 阪神大震災の教訓を継承するために設立された「人と防災未来センター」(神戸市)は昨年、震災を語り継ぐ人たちの世代交代を見据えた「語り継ぎ探究サロン」を5回シリーズで開きました。

 震災の記憶がない第2世代の語り部を招いたり、被災者の手記を基に朗読したり、東日本大震災の語り部活動と連携したり、語り継ぎの新しい方向を探りました。

 確率計算に固執する地震調査委の活断層評価と公表のあり方には地震学者や防災教育の研究者からも疑問の声が根強くあります。

 来年は阪神大震災30年。発生当時の思いに立ち戻り、推進本部も調査委も、探究サロンのように新しい方向を探るべきです。

 きょうは多くの人が大震災当時を思い出し、亡くなった人たちに思いを巡らせることでしょう。

 同時に、これから起こる地震の被害を少しでも小さくするためには何ができるのか、深く考える日でもあるべきです。能登半島地震の被害の大きさを目の当たりにしてその思いを強くしています。


大阪万博“ムダの象徴”木造リングは仮設住宅4000戸分 高まる「リソースを被災地に」の声

「日刊ゲンダイ」2024/01/16

という声にも納得です。

 今回の能登地震における初期対応の遅れが指摘されていますが、「志賀原発」の重大事故につながる直前にあったのかもしれません。ドローン空撮も禁止されました。「原発」敷地内のようすが明らかになるのを恐れたのかもしれません。さらに「来るな」です。

「国土交通省は2日に「令和5年度緊急用務空域公示第5号」を出し、石川県の能登半島全域で、ドローンやラジコンなど無人航空機の飛行を原則禁止にした。 5日には「-公示第6号」を出し、禁止空域を北緯37度線以北の能登半島全域の陸地に指定。」

 地震発生直後、テレビは「安全上の問題は確認されていない」という政府や北陸電力の発表をそのまま伝えてきました。
本当でしょうか!
 14日のTBS系「サンデーモーニング」は、「志賀原発でトラブルも」とパネルを使って、「“想定を上回る”揺れ」「敷地に亀裂も」「一部の変圧器が壊れ、約2万リットルの油漏れ」と紹介。

「かなりヤバいところまで来ていて、動けなかった」のかもしれません。

久々の太陽です。
でも昼過ぎからまた雪がチラホラと。