三菱重工など 岸田大軍拡で株価急騰
「しんぶん赤旗」2024年7月17日
公的年金の積立金を市場運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国内外の軍事産業に巨額の投資をしていることが本紙の調べで分かりました。GPIFが2023年度末に保有していた軍事企業の株式時価総額は、防衛省の23年度の契約額(中央契約)上位20社だけで6兆632億円に上りました。(佐久間亮)
GPIFが保有する20社の株式数は22年度比で8・5%も減ったのに、保有株式の時価総額は1兆9965億円も増えています(株式分割した企業の株式は分割前の比率に戻して試算)。22年度と比べた20社の株価が1・63倍に上昇したためです。日経平均の1・43倍を上回る上昇率です。
背景には岸田文雄政権の大軍拡路線があります。防衛省の契約額トップの三菱重工業の株価は1年間で約3倍化。防衛省の契約額は3652億円(22年度)から1兆6803億円(23年度)に4・6倍に増えました。同社は決算説明資料で「日本政府の防衛力の抜本的強化の方針を受けて、23年度はスタンド・オフ防衛能力に関する案件をはじめ、複数の大型案件を受注」したことが大幅な売上増につながったと強調します。
GPIFは23年度に45兆円の運用益を出しましたが、岸田政権による軍拡特需も収益押し上げの一因となった形です。
GPIFは国内軍事企業に限らず、米国の核兵器関連企業であるハネウェル・インターナショナル(1239億円)、レイセオン・テクノロジーズ(1200億円)、ロッキード・マーティン(1027億円)、ノースロップ・グラマン(571億円)、ジェネラル・ダイナミクス(503億円)、ジェイコブス・ソリューションズ(159億円)の株式にも巨額の投資をしています。
世界では環境や社会に配慮したESG投資の流れが強まっています。国内でも、りそなホールディングスは核兵器や対人地雷・クラスター弾などの開発・製造先への融資を禁じる方針を発表しています。
GPIFもESG投資の指針を示していますが、軍事に関する指針はありません。国民と企業の納めた保険料を原資とした年金積立金を軍事産業に投資するのは問題です。
--------------------------------------------
源泉は労働者からの搾取
元衆院議員 佐々木憲昭さん
GPIFは大企業との対話を通じて、配当金などで株主に利益を還元するよう求めてきました。巨額の運用益の源泉は、企業が労働者から搾取した剰余価値だということが最大の問題です。
株主還元に拍車をかけたのは第2次安倍晋三政権です。機関投資家と企業との対話や、株主を意識した企業統治を強調し、GPIFの資産のうち株式で運用する割合を20%から50%に高めました。
GPIFは運用を委託しているファンドや資産管理会社に3年間で1079億円も手数料を支払っています。しかも、支払い先の55%、597億円は外資です。国民の共有財産である年金積立金を市場運用し、外資が巨額の利益を手にしているのです。
日経平均株価が過去最高を更新するなど株価上昇が話題になる一方で、実質賃金も年金支給水準も下がり続けています。富裕層はますます豊かに、国民の多くはますます貧しくなっています。
GPIFの運用は株主至上主義、利益至上主義の方向へ大企業の経営を駆り立てる役割を果たしています。
今こそ、この仕組みを抜本的に見直すことが必要です。