川口・祖父母強殺
19歳被告が手紙「貧困児童に関心を」
虐待を繰り返す親と各地を転々とした末、埼玉県川口市で2014年に祖父母を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われている当時17歳の孫の少年(19)=最高裁に上…
(毎日新聞2016年04月30日 12:21)
虐待を繰り返す親と各地を転々とした末、埼玉県川口市で2014年に祖父母を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われている当時17歳の孫の少年(19)=最高裁に上告中=が、現在の心境をまとめた手紙を毎日新聞に寄せた。学校にも通わせてもらえず「居所不明児」となって事件を起こした少年は、自らの過ちを悔いつつ、自分のような貧困児童に「少しでも注意を持ってほしい」などとつづっている。
記者は1審のさいたま地裁判決(14年12月)以降、少年と手紙をやり取りし、面会もしてきた。少年は記者に宛てた今年2月下旬の手紙で、自身の不遇な生い立ちを報じた1審公判中の新聞記事などを読み、「居所不明児や貧困児童等の存在を認識していただいて、普段の暮らしで見かける子供へ少しの注意を持っていただきたくて」取材に応じたと説明した。
殺害された祖父母は演歌やカメラが好きだった。少年は、インターネットを使えば趣味に関する情報も簡単に入手できることを逮捕後に知ったとし、「祖父母にとっても充実した生活が得られるハズだったのかと思う。だから、事件が起きていなければ、起こさなければよかったのに、と思います」と悔いた。
一方で、母親らとラブホテルや公園で暮らす中で生まれた異父妹が将来、親の指示で売春などを始めていたかもしれないとし、「自分はそれを止められたか、あるいは一緒になって始めさせていたか、考えるだけで訳が分からなくなります」と明かした。
弁護側が上告し、裁判は続いている。少年は2審判決に「不満はない」とする一方、「似た境遇の子供たちを少しでも生きやすくするため、(判決が変わる)わずかな可能性を壊したくないと考えた」と説明した。
法廷では「生きていく自信がない」「大人は信用できない」と述べていたが、報道で不遇な境遇を知り、支援を申し出た人たちと交流するようになったことで「自分自身を変えるため、その方々を信用してみないといけない」と思い直したとも書かれていた。
「他人を傷つけず裏切らないように生きていきたい」。少年はそう望み、似たような子供たちのことも考えていきたいという。理由については「『世の中捨てたもんじゃないな』と子供たちに想わせたいからです。それに、自分自身に対しても」と記されていた。
【山寺香】
埼玉・川口市祖父母強盗殺人事件
2014年3月、川口市のアパートで無職男性(当時73歳)と妻(同77歳)が殺害されているのが見つかり、当時17歳だった孫の少年が逮捕、起訴された。1審・さいたま地裁判決によると、少年は母親から「殺してでも」金を借りてくるよう言われ、祖父母宅を訪問。借金を断られ、2人を包丁で刺して殺害した。検察側は無期懲役を求刑したが、さいたま地裁は小学校5年から学校に通わず「居所不明児」として過酷な環境で育った事情を考慮して懲役15年とし、東京高裁もこれを支持した。弁護側が「刑務所でなく、精神的な治療を受ける医療少年院に入れるべきだ」として最高裁に上告した。少年の母は、祖父母に対する強盗を少年に指示したとして、懲役4年6月の実刑が確定している。
小学校5年から学校に通わされず、「社会」から「隔離」された人生を17年間過ごしてきたのだと思う。これからさらに15年はどんな意味があるのだろう。今、彼に必要なことは教育を受けることだと思うのだが。これ以上の「社会」からの「隔離」がどんな意味があるのか極めて疑問だ。