2020/04/09 本記事は自ホームページの旧記事をブログ用にリメイクしたものである。
2023/01/12 再アップ。
秋田県大館市にある長走(ながばしり)風穴は標高160~180m程度の低地なのに、
高山植物が群生している不思議な処。
大館市には(当時)本業でたびたび行く機会が有ったが、2010年は何故か数回にわたって風穴を訪ねていた。
折角なのでそのまとめレポートを作成してみた。
まずは春、五月中旬の様子。
今咲いてる黄色花はバラ科のコキンバイ。この花は高山植物ではない。
低山のブナ林でときどき見かけるが、こんなにいっぱい咲いている所は他では見たことが無い。
それではどのような高山植物があるのか。
例えばゴゼンタチバナ、コケモモ、ベニバナイチヤクソウなどは
通常、亜高山帯~高山帯に生育する植物で、
秋田のような北日本でも標高1000~1400mくらいの高さまで登らなければ見られない。
またナンブソウやオオタカネイバラに至っては、秋田県内では実質ここでしか見られない。
それらが何故このような低地、しかも幹線国道7号線からわずか十数歩のところに生えているのか。
ここ(長走風穴)では真夏、外気温が30℃を越えるような時でも、
5~6℃の冷気が吹き出している。
その吹き出し口付近では寒すぎて普通の植物は生育できないが、高山植物なら耐えられる。
この場所は、かつて寒冷な時代に低地まで降下した高山植物、北方系植物の
残留基地、シェルターとなっている。
この風穴の成り立ちだが、長走風穴の案内ホームページ(2010年当時)によると、
「崩壊した岩石が堆積して出来た風穴の為、内部に無数の隙間があり、
冬の間、山の下から、上に冷たい外気が送り込まれ、氷を作り、夏に冷えた空気が下に流れ出ている」
と言う説が有力だ。
五月中旬。 春はサクラとツツジから。
ムラサキヤシオツツジ
林の縁にスミレのマットを見つけた。
たぶんタチツボスミレの仲間だろう。
(○´ε`〇) こんな場所でオニギリを食いたい。
しかしここはヘビがよく日向ぼっこしてる場所なので要注意。
風穴とは関係ないが、この地のエンレイソウには白い花弁のあるものが多い。
ミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)
はるか昔、来た時はオキナグサやヤマシャクヤクも見たが、今回は会えなかった。
たぶん盗掘されたんだろう。
6月上旬に訪ねたら、花は少なくなっていたが、この時期にだけ咲く貴重な花が有る。
ゴゼンタチバナとナンブソウ
ナンブソウ Achlys japonica (メギ科)は日本特産で、
しかも北海道と東北地方北部のごく限られた場所にしか産しないと言う貴重な植物
(ただし近縁種は北米西部に産する)。
花は花弁もがくも無く、見栄えはしないが、三つに割れた葉はユニークでわかりやすい。
他に見た花。
スズラン これは巨大スズラン、いやオオナルコユリだろうか。
野生のスズランは秋田では極めて珍しい。
六月中旬に来たら、名花オオタカネイバラが咲いていた。
オオタカネイバラの花は思ったよりも小ぶりで疎らだった。
風穴倉庫
風穴倉庫とは市の案内ページによると、
「風穴現象を利用した倉庫で、天然のクーラーとして利用し、現在の冷蔵庫や保冷庫のような使われ方をしていた。」、
また「昔は7個ほどの風穴倉庫を、主に農作物の保管などに利用。」とのこと。
実際入ってみると、真夏以外は {{{゚◇゚;}}}ガクガク 寒すぎ。クーラー冷えの感あり。
地味な花だが、重要な高山植物を幾つか。
コケモモとスノキの仲間(ウスノキかオオバスノキのいずれか。実がならないと識別困難)
ミネヤナギ(ミヤマヤナギ)
ヤマオダマキ。これは高山植物ではない。
六月下旬にも寄ってみた。
高山植物エリアの様子は上旬来た時と変わっていない。
風穴の冷気で植物の老化がフリーズしてるような感じだった。
ゴゼンタチバナ
ベニバナイチヤクソウ クモキリソウ
オオナルコユリ(?)は私の背丈よりでかくなっていた。
ι(´Д`υ)アツィー真夏こそ、風穴がその真価を発揮すべき時。
真夏の長走風穴は、涼を求める人たちで大賑わいだが、
それも「長走風穴館」や隣接する風穴倉庫まで。
花を見るため、額に汗して、いや全身汗まみれになって斜面を登る人は稀と言える。
この時期、確かに花は少ない。しかし時たま咲いているのはみごとな花ばかり。
7月下旬。ヤマユリ。
濃い緑の中、よく目立つ朱色はクルマユリ。
クルマユリもヤマユリも風穴に特有な花ではない。
が、この場所には比較的多かった。草刈りの際、残すよう指示されているのだろうか。
8月中旬に訪ねたら、見慣れぬ樹の花と実に出くわす。
左上はけっこう綺麗なツツジ科だった。
当初、ミヤマホツツジ Cladothamunus bracteatus かと思ったが、
花柱(めしべ)があまり曲がらないことから、低山性のホツツジ Elliottia paniculata としておく。
右上は先に「スノキの仲間(ウスノキかオオバスノキのいずれか。実がならないと識別困難)」としておいたが、
今回、赤い実が確認できたので、ウスノキ Vaccinium smallii と確定。
こちらはオオタカネバラの実。
花はハマナスに似ているが、実の形は随分と違う。この後、実はもっと赤くなる。
上の方に行ったら、早くも秋の気配が・・・
左上はエゾリンドウ。
他の低山では9月以降に咲くが、ここでは高山同様、開花が早い。
右上はヤナギラン。開花している株はごく少数だった。
長走風穴は秋田でヤナギランの見られる数少ない場所のひとつだが、今年は暑すぎるのか花はさっぱりだった。
以上。
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