(本記事は自ホームページの旧記事をブログ用にリメイクしてアップ。その後、内容を少し改め、再アップしたものである。)
(本頁は「早坂高原、アヤメの次はノハナショウブ。(2011年7月16日)」の続きです。)
>この高原、この次はどんな花風景を見せてくれるのだろう。
7月下旬は、新しい夏花が次々と咲き出す予感がした。
一花も逃してはならんと、(7月)23日、31日と立て続けに通ってみた。
するとノハナショウブはまだ健在だったが、別場所ではヤナギランが咲き出していた。
2011/07/23 ノハナショウブ群生
ヤナギラン群生
ヤナギラン クガイソウ
クガイソウ群生
(7月)23日の天気は晴れだったが、
31日は濃霧で遠方は見渡せず、草叢についた水滴で下半身はびしょ濡れ、その余波でゴム長の中は水でジャボジャボになった。
しかし写真撮影には比較的良いコンディションだった。
ほとんど無風だったので、ピントを合わせ易かったし、ピーカン時のように強い光で花の色が飛ぶこともなく、
しっとりとした花色を捉えられたのではないかと思う。
この時期、某高原では、ヤナギラン、クガイソウだけでなく、穂咲きとなる花が数多く見られた。
クガイソウ。左手前と奥にチダケサシ。 チダケサシ(ユキノシタ科)
これはトリアシショウマだろう。
トリアシショウマ(ユキノシタ科) トリアシショウマの葉のアップ。
チダケサシとトリアシショウマはともにユキノシタ科チダケサシ属 Astilbe に属し、よく似ている。
両方を同じ場所で見る機会はそう多くない。折角の機会なので、今回、その識別を行ってみた。
手持ちの植物図鑑によると、
チダケサシの「花序は細長く、側枝は短く斜上し・・・」に対し、
トリアシショウマの「花序は円錐形、または広円錐形で、側枝は長く開出し・・・」とある。
花序の形が後者によく似たアカショウマやアワモリショウマは東北には分布してないようなので、
ここではトリアシショウマ(北海道と本州中部以北に分布)とした。
トリアシショウマは
「小葉は広卵形、頂小葉は時に卵円形となって大きく、基部はいちじるしく心形となる。花序の枝はいちじるしく分枝する」とあった。
あまり良い見本ではないが、葉部分をアップしたものを↑右に添付してみる。
「基部はいちじるしく心形となる」点は必ずしも当たっていないが、それ以外の特徴はおおむね当たっているようだ。
この高原では、チダケサシは日当たりの良い草原に、トリアシショウマは林縁や明るい林内でよく見かけたが、
場所によっては、混生しているところもあり、一筋縄では行かない。
なお園芸植物のアスチルベは、元々日本や中国に自生していたアスチルベの仲間が、
それらの生えていないヨーロッパに持ち込まれ、品種改良されたものだそうだ。
この穂花はオカトラノオ。
オカトラノオ属 Lysimachia がもう一種類有った。 クサレダマだ。
クサレダマの花は少しくすんだ黄色。 黄色つながりで、咲いたばかりのオミナエシ(オミナエシ科)
オミナエシと来たら、キキョウ。
蕾モードのキキョウ。 いち早く開花した株。
本州では稀少植物になっているホザキシモツケも咲き出していた。
ホザキシモツケの群生地。 濃霧の影響でワタアメ状になったホザキシモツケの穂花。
この植物とのエピソードは、以前作成したホームページのこちらで報告済みであるが、
今回の一連の訪問で7月中旬から開花することが判明した。
夏場の林の中は薄暗く、笹や低木が生い茂り、花はほとんど咲いていない。
おまけにやぶ蚊も多く、あまり行きたくない場所になってしまうが、この高原のシラカバ林だと少し事情が違う。
まずは林の中が明るい。笹刈りが行われている場所では、周囲の草原の草花が下草として侵入しており、
花の種類も意外と多かった。
オオバギボウシの花アップ。
オオバギボウシとトリアシショウマ オカトラノオとトリアシショウマ
トリアシショウマは草原よりも林縁や明るい林の中に多い。
林の中が暗いとこのような花風景は見かけなくなる。
トリアシショウマと同じような分布パターンは、オカトラノオやヌスビトハギなどにも見られる。
ヌスビトハギ
手持ち書籍によると、林の周辺に多く、林縁を塞ぐように生える植物群落は『ソデ群落』と呼ばれ、
これに蔓草が多く加わると、『マント群落』と呼ばれるそうだ。
写真ではいちいち紹介しないが、
この高原では、ほかにオオイタドリ、ヨツバヒヨドリ、オオヨモギ、ノイバラ、モミジイチゴ、
イケマ、ヤマブドウなどが多かった。
これら植物がびっしり茂ると、我々ニンゲンが林の中に入る時、しこたま難儀するが、
森林の側からすれば、森の縁を強い風や直射日光から守ってくれるグッドな植物カバーとの見方も出来る。
こちらは・・・
クルマバツクバネソウ
6月にイッパイ咲いていたスズランはその後どうなった。
スズラン(実) タマガワホトトギス
この高原、この次はどんな花風景を見せてくれるのだろう。
以上。