(本記事は自ホームページの旧記事をブログ用にリメイクしたものである。)
秋田県の南東端にある虎毛山はずっと未踏だったが、9月16日にやっと登ることが出来た。
この山はとても奥深い山なので山麓や人里からその姿を仰ぐことはほとんど不可能だ
(湯沢市の秋宮温泉入り口付近から一部が見える程度)。
近くの高松岳や神室山などの山頂に立つとその姿は丸見えだが、これらの山自体、そんなに登る機会は無いので、
もしかしたら虎毛山は東北地方の名山では最も姿が見えにくい山かもしれない
(日本百名山では尾瀬の平ヶ岳や日高幌尻岳に匹敵か)。
写真は先週(9月9日)、宮城山形県境の禿岳山頂から見た姿(記録はこちら)。
登山口には朝6時に到着。土曜日なのに私以外は誰も居ない。クマさんがちと心配。
林道のように広い登山道を歩き出すと、ほどなく
浅川マキではないが、今は誰も渡れない赤い橋が見えて来る。
赤倉橋。今は通行止めの旧・国道108号線に架かる橋。
橋をくぐった後は約一時間、川沿いに林道を歩いて行く。
途中から道幅は狭くなるが、平坦でしっかりした道が続く。
赤倉沢の渡渉点
渡渉した途端に道路状況は激変。
ここから標高差600mの急坂がいきなり始まる。階段道の次には木の根っこ道。
道は険悪そうに見えるが、昨年同時期、登った神室山(西ノ又ルート)(こちら)に較べたらずっと歩きやすかった。
登山道はとてもよく整備されており、さすが虎毛山、随所に虎縄が張られていた
(上りの時はほとんど使わなかったが、膝を痛めた下山時にはタイヘンお世話になった)。
急坂は前半がヒノキアスナロ(青森ヒバ)、後半がブナの林。展望も草花もほとんど無かった。
このヒノキアスナロには夫婦松ならぬ夫婦桧と名札があった。 ブナの林
標高1234mと覚えやすい数字の稜線に出るとやっと虎毛山の姿が。
虎毛山
標高が1433mなのに、このように山頂までびっしりと森に覆われている山は北東北では珍しい。
西の方には神室連峰が屏風のように連なる筈だが、
今日は雲がかかっていたり、視程もイマイチであまりよく見えなかった。
神室山(1365m)
今回の登山で一番興味があったのは、皆瀬川源流部の眺めだった。
皆瀬川は秋田県の南半分を潤す雄物川の有力な支流のひとつ。その最初、最高所の一滴はこの虎毛山から始まる。
またこの源流部には全く手つかずの原生林が広がっており、その自然度は世界遺産、白神山地の中核エリアにも匹敵するのではなかろうか。
個人的興味に走り、恐縮だが、例の1234m稜線付近からの北~北東方向の眺めで山座同定を試みた。
1234m稜線付近からの北~北東方向の眺め
山座同定
なお次の写真は昨年秋の写真だが、
高松岳から南の虎毛山方面を眺めたもの。
2016/10/22 高松岳山頂から見た虎毛山。
詳細はこちら。
両方合わせれば、皆瀬川源流部の眺めはほぼ完成。 話を虎毛山に戻して、その山頂部。
山頂に到着。虎毛山は日本一のトラの山と彫ってあった。それ故に阪神ファンの登山が多いとも聞いた。
上りにかかった時間はコースタイムとほぼ同じ3時間45分。
誰一人、追い越すことも追い越されることもなくたった一人の山頂。
山頂標 山頂で偶々会ったfb友人、Y氏(横手高校教諭)と。
と思いきや、その後すぐに登山者が続々と。
湿原を廻って早い昼飯を食べていたら、今度は高校生の団体が押し寄せ、山頂は騒然となった。
その中に知ってる方が一人居た。聞くと、高校生を引率し、避難小屋のペンキ塗りボランティアに来たとのこと。
山頂部は湿原が広がっており、木道を少し歩くと池塘もある。
今までの森林ばかりの急斜面からは想像もつかない平らで広い山頂だ。
仙北市の大白森、大館市の田代岳と並び、秋田の三大フラットと呼びたい。
山頂部の湿原。バックは須金岳。
期待していた湿原越しの栗駒山は雲に隠れて見えなかったが、
その広がりはまさしく「雲上のオアシス」。ただし、今日は ( ̄π ̄; 風が冷たかった。
山頂部の紅葉は始まったばかり。
バックの山々は泥湯三山、左から山伏岳、高松岳、小安岳。
知人と別れ、下山しようと立ち上がったら、右足の異変に気づく。
右足が強張ってしまい、思うように動かせない。無理に動かし、歩くと今度は膝に強い痛みが。
8月27日の焼石下山時(こちら)に始まった右膝故障が再発した。
それでも下り坂では随所に張られた虎縄にしがみつき、四時間半かかって下山出来た。
結局、今回は上りよりも下りの方に時間がかかってしまった。
季節的なものもあるが、今回の虎毛山には花が少なかった。
山頂付近では、湿原でエゾオヤマリンドウ、
エゾオヤマリンドウ
そして登山道脇では身をよじってる変なキノコくらいだった。
サヤナギナタタケだろうか。
山麓の赤倉沢沿いにはまだいろんな花が咲いていた。
ダイモンジソウ
ウメバチソウ ツリフネソウ
写真では分かりにくいが、此処のウメバチソウは異常に花がでかかった(特に大きいものは径4,5センチもあった)。
また此処のツリフネソウは花色の薄いものが多かった。
山によって花はいろいろ変わるものだ。
サラシナショウマ
クロバナヒキオコシ
テンニンソウ ミヤマニガウリ (雄花)
ミヤマニガウリ (実と両全性花)
或る方から、赤倉沢にはオタカラコウ(キク科)が咲いていて、ここはおそらく秋田では唯一の生育地と聞いたが、
今回は残念ながら見出せなかった。
(※この山は2018年夏の集中豪雨で土砂崩れが発生、登山道も崩壊したため、登山できない状況が続いている。)
こちらは遠く離れた秋田市の某踏切。
何故こんなところ(海に近い平地)に虎毛山なのかずっと不思議に思っていた。
虎毛山踏切
しかし今回、友人からの助言が有り、謎は解けた。 ⇒ こちら
該当箇所を抜粋コピーさせて頂く。
「・・・小高い山と言えば、土崎の北方面に相染という地区があり、
そこに「とらけやま」という場所がある。
あったというべきかもしれないが。
現在小高い場所として坂道になってる踏切があり、とらけやま踏み切りとされてる。
なぜ「とらけ」なのか。
「虎毛山」だと思うけど、トラ刈りのトラのように思う。
木がまばらに生えてたとかだろうか。・・・」
秋田県南の虎毛山とは関係なく、この踏切の近くに「虎毛山」という地名がかつて有ったようだ。
以上。
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