小諸 布引便り

信州の大自然に囲まれて、風を感じ、枝を眺めて、徒然に、社会戯評する日帰り温泉の湯治客です。愛犬の介護が終了しました。

<唐牛伝>を読む:

2019年08月15日 | 書評・絵本

<唐牛伝>を読む:

敗者の戦後漂流、60年安保のカリスマが何者でもない死を遂げるまで、、、、

左目の白内障手術の後、視力が戻り、霧が晴れたことで、ハッキリと文字が読めるようになった。これまで、途中で、未読を余儀なくされていた何冊かの大作をサクサクと読めることは、大きな喜びであり、楽しみの一つとなった。

イデオロギーを論じる解説本では無くして、どちらかというと、泥臭い、男女関係も含めた交遊録というか、人脈ネットワークを、その唐牛健太郎の軌跡を忠実に追跡することで、或いは、その交遊録に関わった周辺の人々も含めて、ルポルタージュ風に、纏めたものである。

人生、ところてん風に、時間と共に、押し出されてゆく運命であるとは言いながらも、ここに登場する人物達の関係性は、誠に、ドロッとしていて、既に鬼籍に入ってしまった人達が大半なれども、自死(自決)・病死・事故死も含めて、若くして、或いは、老年でも、確固たる<矜持と信念>を持ち合わせつつ、<転向>とか、<変節>などと言う軽い言葉では、語り尽くせぬ、もっと理解不能な<生き方様>を、それぞれ、見せていることを知り得ただけでも、救われる思いがする。

<言葉は腐るから気をつけろ>という、唐牛の言葉は、確かに、その行動に懸けたことであろうが、寺山修司の<言葉を腐らせるな>と詩に懸けたことと、筆者が説明している如く、対極をなすようであるものの、どこかで、クロスするところがあるのかもしれない。昨年、’18.78歳で、自死した西部邁によれば、出生から来るであろうと想像される<生来からの内在性的な無頼>を、払拭できずに、<無頼になり切るには、知的すぎ、知的になり切るには、無頼に過ぎるという二律背反に挟撃されているそれが、唐牛の実相である>と述べている。<社会の庶子になること>であったのであろうか?

今日、ハンシャ勢力との付き合いが、社会的な、或いは、組織的にも、受け入れられない社会的なコンプライアンス重視の中で、財界の今里広記はじめ、山口組の田岡一雄、内閣調査室とも間違いなく関わっていたであろう中野学校出身の草間孝次なども、含めて、演劇界、女優、文学界など、今日の尺度では、到底読み解けないような、<清濁併せ飲むような人物の器と度量>という言葉だけでは、済まされないそんな何かが、あるような気がしてならない。<稀代の人たらし>では済まされないものがあろう。日本人初のノーベル経済学賞に一番近い候補と称された青木昌彦:(姫岡玲治)とも、後に沖縄で精神科医として働き、今やALSの徳田虎雄を紹介することになる島成郎や、更に、後年、保守論客となる西部遭にしても、ペンシルバニア大で、火事で客死した生田浩二も、ひとそれぞれの<その後の>人生の生き方、苦悩が、あったことを窺わせる。

60年安保世代も、そして、その10年後の60年代後半・70年安保・全共闘世代も含めて、既に、棺桶に脚を半分くらい踏み入れ始めた時代に、改めて、往時の関係者の人生を、振り返るときに、その人生とは、何たるかを、自分に照らし合わせて、考えることは、意義深いし、おおいに、考えさせられる。

 

主だって登場する人物を順不同で列記してみたい:

唐牛健太郎(‘84.47歳)島成郎(’00.69歳)青木昌彦(‘15.77歳):(姫岡玲治)

西部遭(’18.78歳)清水丈夫 北小路敏(‘10.74歳)篠原浩一郎 東原吉伸 小島弘(’66.33歳)藤本敏夫(’02.58歳) 加藤登紀子 桐島洋子 樺俊雄・光子 樺美智子(’60.22歳) 吉行和子 石田早苗 堤清二 安東仁兵衛  徳田虎雄(徳州会)  堀江謙一 渡邊恒雄 氏家齊一郎 堤清二 網野善彦 今里広記 香山健一 森田実 岩見隆夫 吉本隆明(‘12.87歳)清水幾多郎 村上一郎 谷川雁 柄谷行人 寺山修司 福田恒存 大江健三郎 江藤淳 埴生雄高 野坂昭如 丸谷才一 長谷日出雄 式川武大 深沢七郎 井上光晴 大島渚 澁澤龍彦 野間宏 大岡昇平 高橋和己(’71.39歳) 武田泰淳 三島由紀夫(’70.45歳) 石原慎太郎 鶴見俊輔 長崎浩 山本義隆 秋田明大 田村正敏(’98.51歳) 奥浩平(’65.21歳):(青春の墓標)

山口二矢 田中清玄 田岡一雄 児玉誉士夫 一水会:鈴木邦夫 草間孝次 陸軍中野学校 SEALDS ジラード事件57年 コザ暴動70年 内ゲバ 連合赤軍事件 三里塚闘争 宮本顕治 岸 信介 佐藤栄作 三木武夫 河野一郎 池田勇人 田中角栄 二階堂進 橋本登美三郎 赤木宗徳 宇都宮徳馬 川島正次郎 屋良朝苗 安部晋三 八百板正 山口敏夫 保岡興治 加藤紘一 西岡武夫 菅直人 江田五月