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シナン:夢枕漠の小説


地上デジタルへの移行により保有しているHDDレコーダでは、
テレビ番組の録画が出来なくなり、空いた時間を有効に利用する手段が少なくなった。
そんなとき、夢枕漠の小説「シナン」を読むことができた。
この物語は、スレイマン帝時代のオスマントルコの建築家を主人公としたもの。

7世紀にアラビア半島で生まれたイスラム。
8世紀、イスラムの西欧進攻。
11世紀、十字軍遠征。
15世紀、オスマン帝国、東ローマ帝国を滅ぼす。
19~20世紀、西欧はイスラム諸国を植民地下にする。
イスラムと西欧との対立という図式で、物事をとらえがちな身としては、
ドイツにもトルコ系の住民が多いという事実を忘れがち。

個人的には、なじみのないイスラム世界を舞台にした物語は、
どこか不可思議で幻想的でもありながら、圧倒するような生活観が感じられる。
小説だけに脚色や創作は加えられているのですが、
主人公であるシナンは、実在の人物。
イスラムに関して、ほとんど無知だったので・・・。
「俗物的な認識とは、異なり、ハレムは躾や厳しいルールによって存在した空間」
・・・と言ったことでも、新鮮に感じる。
比較的、読みやすいので、物語としてだけでなく、
イスラムを理解するための入門書になりそうです。
(宗教的にではなくて、ね)

蛇足:
この物語を読み終えて、
夢枕漠の初期の短編「遥かなる巨神」を思い出してしまいました。
シナンは、若年層にもお薦めの物語ですけど。
同じ作家さんだからと言っても、作品によっては、
かなり刺激的な表現をしたものもあります。
・・・と言うのも、夢枕漠は、人が素手で引きちぎられるようなバイオレンスや
ヤクザに中年サラリーマンがボコボコに殴られるような小説も書いたりしています。
もちろん、そのなかにも、お薦めはあるのですけど。
それは、また別の機会にです、ね(?)






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