例えば「既存」という単語を普段どのように読んでいるでしょうか? 僕は「きそん」と濁音なしで発音していますが、時折この発音に違和感を感じたような顔をされる方がいらっしゃいます。「既存」以外にも清音か濁音かで意見が分かれる単語がありますね。清音と濁音のどちらが正しいかと言うことはさておき、今回は「免れる」を題材として、どちらの発音を主としているか、手持ちの辞書で確認してみたいと思います。
まずは三省堂が誇る中型国語辞典『大辞林』。僕が使っているのは紙媒体のものではなくmacOSにバンドルされている「辞書」アプリ内の『スーパー大辞林』ですが、コンテンツは恐らく同じでしょう。OSに中型事典がバンドルされているなんて、本当に親切ですよね。これだけでもMacを買って良かったと思ってしまうくらいです。
閑話休題。早速「免れる」を検索すると、『スーパー大辞林』は「まぬかれる」が見出し語になっており、解説の中で「『まぬがれる』とも」と補足されています。『スーパー大辞林』は清音派でした。
名前が似ているので僕の中では『大辞林』と双璧をなすのが『大辞泉』です。こちらは小学館が誇る同じく中型国語辞典ですね。『大辞泉』を引いてみると、こちらは「まぬがれる」が見出し語で、『スーパー大辞林』とは逆に「『まぬがれる』とも」と語釈の中で補足していました。『大辞泉』は濁音派だったので、清音と濁音は今のところ1対1です。
三省堂が清音派である可能性もありますよね。そこで『三省堂国語辞典』で「免れる」を引いてみました。が、同社の社名を冠した『三省堂国語辞典』では「まぬがれる」が見出し語になっていました。解説の中で
古くは「まぬかる」と清音で、今でも「まぬかれる」と言う。一方、江戸時代の版本に「まぬがる」とあり、濁音形も長く使われている。
と書いてありました。『三省堂国語辞典』は見出し語は濁音派ですが、清音も認めているようです。その語がいつ頃どのように使われていたかといった情報が豊富なところは、僕が『三省堂国語辞典』を好きになった理由の一つでもあります。清音と濁音はこれで1対2になりました。
三省堂と言えば忘れてはならないもう一つの辞書、『新明解国語辞典』があります。こちらで「免れる」を引くと、見出し語は「まぬかれる」とあり、語釈の中に「『まぬがれる』とも」と書かれていました。同じ出版社にも拘わらず『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』で正反対なあたりは、面白いですよね。
4冊の辞書にあたり、清音と濁音は2対2の引き分けとなりました。結果として出版社が三省堂の辞書ばかりになっても拮抗する結果となったことからも、清音なのか濁音なのかはなかなか白黒つかない問題なのだと感じました。皆さんはどちら派ですか?
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