「幕末青春グラフィティ 坂本竜馬」(日本テレビ・1982)というスペシャルドラマがあった。
脚本・主演は坂本竜馬の事を尊敬してやまない武田鉄矢。
このドラマのもう一つの大きな特徴がドラマ全編にあの「ザ・ビートルズ」の曲をかけた事だ。
幕末の革命児・坂本竜馬と音楽界の革命児ザ・ビートルズのコラボレーションは凄まじかった。観ていて鳥肌が立った。
ザ・ビートルズあってのドラマだったが、それゆえ一度も再放送もDVD化(ソフト化)もされていない。
バラエティー番組は音楽が替わってもそんなに気にならない事が多いが、ドラマは音楽次第で全然別の作品になってしまう。
2000年前後、僕がプロデューサーを務めた連続ドラマでもスウェーデンやアイルランドの音楽家を使った事があった。
まだテレビ局そのものに「二次使用が大事だという概念」が薄く、「権利処理」の窓口は当時おじさんたった1人でやっていた。今はたくさんの人が関わっているが。
だから、あの頃の連続ドラマで再放送が出来ないものは多いのかも知れない。
「放送」で流す時はある取り決められた使用料を払えば良いが、ビデオ化・DVD化する場合、映像ソフトに「音楽」を「固定」する必要がある。これを「固定権」という。
このお金が「放送」で使用するよりもかなり高い。
映画のエンドロールで、「劇中歌」のタイトルが次々と出て来る事がある。「劇中歌」がお金を払ってその映画に「固定」されているという事だ。
「音楽」を「著作権フリーの曲」に差し替えたりする作業をする事もある。
本当に「OA」と同じ音楽が付いたDVDを保存したければ、「OA」を直接録画してDVDに残すしか手が無い。
「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ・1977〜1998)。僕の大好き番組だ。この番組を見て、テレビの仕事をやりたいと思った。
しかし、この番組、CSで一部が再放送された以外、地上波での再放送は無い。
他局なので、ここからは推測の範囲を出ないのだが、たくさん出ている参加者の「個人情報」の問題は大きいのでは無いだろうか?
「顔」も「個人情報」である。
今のバラエティー番組の街頭インタビューであれば、必ず「取材VTR」が「放送」以外に「二次使用」(DVD化などを含む)の許可も取っている。
インタビューされた人に書類を渡して、「個人情報(顔など)」使用許諾書を書いてもらうのである。
「アメリカ横断ウルトラクイズ」が放送された時代、後楽園球場や東京ドームに集まった何万人もの人々の「顔」を「放送」以外で使う許諾書を取っていたとは思えない。だから、DVD化なども出来ないのだろう。
大阪で「朝の連続ドラマ」をやっていた時代、ロケに行き、エキストラが突然必要になると、助監督の僕はロケ場所周辺にいる人々を拝み倒して出てもらった事もある。
しかし、今の時代、ドラマは「画像に映っている人全員」が俳優かエキストラである。
「顔」が「個人情報」。
DVD化や海外に販売するドラマは全ての権利処理が必要だ。
「インターネット」の台頭で将来を見据えると、「地上波放送」だけでは「テレビ局」もやっていけなくなって行くだろう。
「テレビドラマ」には「脚本家」「演出家」「音楽」「出演者」等、様々な「権利」が絡み合っている。
それを一本一本紐解いて行く部署が今、とても大切になって来ている。