1983年、入社した社屋(開局した当時の社屋)にはスタジオが2つ、サブ(副調整室・・・ディレクター等がいて、スタジオに指示を与える部屋)が1つだった。サブが1つという事は、同時に2つのスタジオを使う事は出来ない。
それと、いちばんの問題は「タレント控室」が2つしか無かった事。
「11PM」の司会者・藤本義一さんには控室が無く、いつもメイク室の鏡の前で、原稿用紙を斜めにしてモンブランの万年筆で原稿を書いておられた。
入社して、4〜5年が経ち、新しい社屋の建設が進んでいた。
ある日、「新社屋の見学会」があり、僕も参加した。
見学が終わった後、新社屋建設委員会のお偉いさんを前にして、質疑応答が行われた。
「怒らないから、どんな事でも質問して下さい!」
その言葉を信じて、僕は質問した。
「スタジオが3つあるのに、タレント控室が5つ。全然足らないんじゃ無いですか?」
「バカもん!足りる様に設計しておる!」
とお偉いさん。彼は番組制作現場を知らない人だった。
物凄く激怒されて、呆気に取られた僕。
建設中の社屋には3つのスタジオがあり、3つのサブがあった。
という事は、「3つの番組の本番」が同時に行なえるという事。
実際、社屋が建って、いちばん広い「第1スタジオ」では「朝の連続ドラマ」の収録。「第2スタジオ」では、「鶴瓶・上岡のパペポTV」の収録や「ざまぁKANKAN!」「ミヤネ屋」の生放送。第3スタジオでは、「11PM」の生放送が行われた。
5つのタレント控室では、「朝ドラ」だけでも足りない。ミヤコ蝶々さん、中村珠緒さん、野際陽子さんら大女優を相部屋には絶対出来ない。
「リハーサル室」をパーテーションで区切って、ヒロイン・渡辺典子さんの二畳くらいの広さの控室を作ったり、無理言って、複数の男優さんに1つの控室に入ってもらった。かなり、苦言を呈されたが。
何故か、この社屋には、「床山(時代劇で使うカツラ専用の部屋)」があったりしたので、そこも「控室」に転用した。
「ミヤネ屋」のMC・宮根誠司さんの控室として使われた事もあった。
各番組の控室調整をしていた制作管理部のMさんと日々相談しながら、頭を悩ませ、控室を決めていった。
そして、数年前に建った、僕から見れば、「新々社屋(現社屋)」。「タレント控室」の数は20。3つのスタジオでこれだけあれば十分だろう。本当に羨ましいかぎりである。
うちの会社、東京にドラマ専用スタジオを持っていた事がある。京王堀之内にあった「多摩スタジオ」。スタジオは2つ、「タレント控室」は24。数としては十分。
ここで連続ドラマの収録をし、他社にもレンタルしていた。
フジテレビ・浅野温子主演の連続ドラマ「沙粧妙子・最後の事件」なども「多摩スタジオ」の廊下を「捜査一課の廊下」として使っている。
「タレント控室」がたくさんあり、ロケ車両を駐車できる駐車場も完備していたから。
日本テレビ・生田スタジオでもそうだが、よくテレビドラマに出てくる「病院」や「警察」の廊下や階段はスタジオ館内にあるものを使う事が多い。テレビドラマのスタジオはそんな事も考えて、設計されている。
スタジオ内で館内ロケをやれば、「タレント控室」の心配をする必要は無い。ロケ車両を出す事も無くなる。
「タレント控室」はテレビ番組の制作に不可欠でとてもとても重要なものなのである。
「タレント控室」に関しての悲喜交々。
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