「そこも行きたい!あそこも行きたい!楽しいわ、ディズニーランド!」
その国民的大歌手はそう言いながら、東京ディズニーランドを速足で駆け回っていた。
島倉千代子さんである。番組は「遠くへ行きたい」。
「東京ディズニーランドに行けるなら、番組に出ます」
そんな話を聞き、出演が決まり、ロケが実現したのだ。
カメラは島倉さんが目立たない様に、プロが使っているカメラでは無く、普通の人も使っている小さなビデオカメラ。
カメラが島倉さんを追いかけるが、彼女は「東京ディズニーランド」に来た事に興奮して、取材である事を完全に忘れている様だ。彼女の早足にカメラが追いつけない。
僕はこの時、番組のプロデューサーだった。島倉千代子さんのケアと「番組宣伝」の文章を書く為にロケに同行したのだ。
子どもの様にはしゃぐ島倉さん。本当に純粋で良い人だと思った。
ロケが終わって、「シンデレラ城」をバックに島倉さんを囲んでスタッフ全員で記念撮影。この写真は僕の一生の宝物だ。
「遠くへ行きたい」は1970年10月(大阪万博があった年)、放送開始。今年、放送53年目になる長寿番組。
当時TBSから出た有志が日本で初めて作った独立系制作会社「テレビマンユニオン」。
その「テレビマンユニオン」が初めて作った番組が「遠くへ行きたい」だ。
始まった時は、放送作家の永六輔さんが小型ロケカメラを引き連れて、毎週ロケに行っていた。
しかし、それではスケジュールがハマらなくなり、いろんな「旅人」がロケに行く様になった。
現在はこの「テレビマンユニオン」と、月1回「田園工房」が制作に当たっている。
「テレビマンユニオン」の制作形態は他の「旅番組」とは違う。
「旅人(タレント)」と「スタッフ」が3泊4日で「旅」をする事。だから、「マネージャー」は同行せず、「旅人」が食事も「スタッフ」と一緒に食べ、酒を酌み交わす。
そうする事で「旅人」はあたかも「実際に旅をしている気分」になっていく。
この事が「遠くへ行きたい」という「旅番組」を長寿番組にしている一つの要因だと思う。
ナレーションは「ディレクター」自らが書き、「旅人」がナレーションを読む。この「ナレーション録り」の時も「ディレクター」と「旅人」はディスカッションする。
最近のテレビ番組は「ナレーション過多」だと思うし、「タレントが喋ったコメントをほぼ全てスーパーで出す事」も如何なものかなぁーと僕は思っている。
テレビが「離乳食」になっている。視聴者が「咀嚼しなくていい」様になっているのだ。
これでは、テレビを観ても「想像力」はつかない。
先日亡くなった上岡龍太郎さんが言っていた。
「テレビ」を観ている暇があったら、「本」を読みなさいと。
僕も言いたい!
「スマホ」を見ている暇があったら、「本」を読みなさいと。
「スマホ」をめぐって、14歳の少女がカッとなって、実の母親を刺殺してしまった事件。
高級宝石店を杜撰な手口で襲う10代の少年たち。
最近、今までには考えられなかった事件が頻発している。
そんな事をしたら、どうなるか?
「想像力」が著しく欠如している様に思えてしょうがない。
誰でもが憧れる「旅」。そんなシンプルな事に視聴者の「想像力」を掻き立てて来た番組が「遠くへ行きたい」だと思う。
何か「衝動的」に行動する前に、立ち止まって、自分の中に蓄えられた「想像力」を使ってみよう。
きっと、「新たな人生」が開けるから。
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