連続ドラマのプロデューサー。ドラマの撮影期間には現場を離れる事はまず出来ない。
そのドラマの撮影は年末年始を跨いでいた。
さすがに、年末年始の短い期間だけど、脚本打ち合わせ・撮影・編集・MA(音楽等を入れる作業)はお休み。
突然、3日間の休みが取れた。「乗り鉄」の僕は衝動的に鉄道に乗りたいと思った。
東京駅に駆けつけ、秋田新幹線のチケットを取ろうとするが、普通席は満席。奮発して、わずかに売れ残っていたグリーン席を予約。12/30の事だった。
ほとんど乗った事の無いグリーン席はとっても快適だった。東京駅で買ったビール、缶チューハイ、アテを横に置き、出発して上野駅を過ぎた辺りからグビグビ飲む。
混雑している山手線や京浜東北線を横目で見ながら飲む酒は格別に美味しい。
盛岡駅を過ぎ、秋田県に入ると、豪雪地帯に突入。秋田新幹線「こまち」も降り積もる雪の中を静かに走って行く。
夕方、秋田駅に到着。車中、携帯電話で予約済みのホテルにチェックイン。
夜は人通りのほとんど無い秋田の繁華街へと繰り出す。
12/31、大晦日。朝から奥羽本線に乗って、青森駅を目指す。
まだ北海道新幹線が開通していない時代。
青森駅から函館駅までは在来線の「海峡ライナー」。青函トンネルはものすごく長い。
「津軽海峡冬景色」。
この線路の上を強風が常に吹き、荒波と共に強い海流が流れる「津軽海峡」があると考えると、このトンネルの建設に携わった多くの人々の人生を考えてしまう。
大晦日の午後、北海道・函館駅着。今日の深夜、函館駅を出る上野行き寝台特急「北斗星」で東京に帰るので、時間はまだ十分にある。
さすがに大晦日。開いている店も少ない。閑散とした函館の街をぶらぶら。行く当ても無く、路面電車に乗って、函館山に登ったり、喫茶店に入ったり。
やっと暗くなり、夕食タイム。海鮮等をアテに酒を飲む。年末で漁も休みなのか、それほど新鮮では無く、海鮮は普通の味だった。
夕食を食べ終わっても、深夜の「北斗星」の出発時間まではたっぷり時間がある。
居酒屋を出て歩いていたら、大晦日に一軒の「サウナ」が開いていた。速攻で入る。
客は僕の他にはほとんどいない。何故このサウナ、大晦日に営業していたんだろう?
「サウナ」と「水風呂」を往復しながら、「サウナのテレビ」で「紅白歌合戦」をボーッと観ていた。
日常生活のストレスが削ぎ落とされ、「無心」になれる。
「人生」の、今までに起こったいろんな出来事が「走馬灯」の様に流れて行った。
「サウナ」の外に出ると、函館の街はことのほか、寒かった。
深夜の函館駅のホームに立つ。粉雪が空から舞い落ちる。遠くから汽笛が聞こえ、ディーゼル機関車に引かれた寝台特急「北斗星」が入線して来た。
スーツケースを持って、「B寝台」へ。思っていたより、そこそこ広い。札幌から乗って来た乗客は既に寝静まっている。
音を立てぬ様に寝台に寝転び、薄っぺらな布団をかける。
もう直ぐ新年だ。「北斗星」が「青函トンネル」に入った。トンネルの壁面に響く轟音。
「サウナ」に入った疲れで睡魔が襲う。
気が付いたら朝。陽光が眩しい。寝台特急「北斗星」は東京駅に近づいていた。
年が明けて、元旦。2泊3日のプチ「乗り鉄」旅。
連続ドラマの仕事に邁進するエネルギーが湧いて来た。
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