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「11PM」歌合戦

2023年05月12日 | テレビ番組
「11PM」をやっていた時、毎年恒例の「3つの歌合戦」があった。

1つは秋の行楽シーズンに放送していた「バスガイド歌合戦」。

日本全国の観光地で観光バスに乗務している女性バスガイドさんに集まってもらい、その観光地の写真がスライドで出る前で「観光地にちなんだご当地ソング」を得意の美声で歌ってもらう企画。もちろん、各バス会社の制服姿で。

その当時でも「都市部」で「バスガイド」を見かける事はほぼ無く、僕は「こんな企画、今時有りなんや」と思っていた。

2つ目の「歌合戦」は「上方芸人紅白歌合戦」。

「吉本興業」「松竹芸能」、その他の事務所、関西で活躍する「芸人」と呼ばれる人々を全てと言って良いほど集めて、「紅白」に分かれてやる「歌合戦」。

200人以上の「芸人」が集い、自分の「十八番」や「メドレー」を次々と熱唱していく。

歌の合間に賑やかなトークを挟んで。スタジオに「目立ちたがりの芸人多数」、みんなカメラに映ろうと必死でもがいていた。

しかしながら悲しい事に生放送。番組が始まって早々、TK(タイムキーパー)から「巻き(早く終わらせて欲しいという合図)」が出る。

時間が予定より「押して(スケジュールが遅れて)」来れば、「芸人」が盛り上がっている最中でも冷酷にCMに行ったものだ。でないとこの企画、「生放送」の枠に入らない。放送事故寸前の番組だった。

僕はこの企画でTKをするのが好きだった。どんなに「押して」いても、冷静に番組全体の盛り上がりを予想し、ディレクターに残り時間を伝える事が快感でたまらなかった。

無事生放送が終わった時はストップウォッチを持った手が汗だくだったが充実感は半端ないものがあった。

この「上方芸人紅白歌合戦」はスタッフにとって、何が何か分からないうちに興奮のるつぼに巻き込まれ、生放送が終わってしまう事が毎年の恒例だった。

そして、僕はこの企画で「作曲家にメドレーの編曲を依頼する」ディレクターに同行し、「メドレー」の作り方を学んだ。

3つ目は、「11PM 」(大阪イレブン)で生放送では無く、1年に1回だけ収録する企画、「全国芸者歌祭り」。

放送が正月の為、「完パケ(編集無しで、放送する形そのものの尺で収録する事)」で年末に録画するのだ。

全国各地の温泉地から「芸者」の皆さんに集まってもらい、髪を結い上げ、着物姿で「温泉地にまつわる歌」を披露してもらう。

ある年、この「全国芸者歌祭り」を収録していたら、テレビスタジオの照明の暑さで本番中、芸者さんが倒れた事が有り、肝を冷やしたものだ。

この時は放送時間より2〜3分長めに収録して、編集してOA。

今のテレビでは「芸人」や「タレント」以外の「素人」が生放送の番組で歌う事は皆無に近く、そういう意味でも稀有な番組だったのではないだろうか?

なんか、こうして書いてみると、「テレビ」は「人間が作っていたなぁー」と強烈に感じる。「初々しい」と。

未来に「インターネット」や「スマホ」が出来ると思ってもいない「バスガイド」「芸人」「芸者」の方々。

今なら、本番までの待ち時間があれば、下を向いて周りと会話もせずに「スマホ」を見ているのだろう。

今から30年以上前のあの時代、彼らは本番までの緊張感の中、一体何をして、何を考えていたのだろうか?

全国に流れる「テレビ」の重要性を日々教えられた「11PM」時代の話。

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