ドラマには「タイトルバック」という映像がある。
ドラマの、どちらかというと冒頭で出て来て、「出演者」「スタッフ」のテロップが載る映像の事である。
TBSやフジテレビのドラマでは、「タイトルバック」をチーフ・ディレクターが撮る事が多い。
外注した「タイトルバック」で多くの人の記憶に残っているのは、「警部補 古畑任三郎」(1994〜2004年・途中放送の無い期間有り)の「タイトルバック」であろう。
これは「ケネックジャパン」(現在は解散して会社は存在しない)の岩下みどりさんがデザイン・制作したもの。
ウチのドラマの「タイトルバック」で思い出深いのは、連続ドラマ「オンリーユー 愛されて」(日本テレビ系・読売テレビ制作・1996)の「タイトルバック」だ。
このドラマの時、僕はAPだった。
主題歌であった「Original Love」の「プライマル」という歌のテープを「タイトルバック」演出の「ケネックジャパン」笹川さんに渡して、「絵コンテ」を挙げてもらい、それをプロデューサーがチェックし、意見を言う。構想がまとまったら、出演者の撮影スケジュールの調整、機材の発注等、実作業に入る。
主演の鈴木京香さん始め、大沢たかおさん、稲森いずみさんなど、メインの出演者が出る「タイトルバック」だったので、プロデューサーから言われて、「タイトルバック」の撮影現場に立ち会うべく、湘南海岸へ早朝から向かった。
撮影は「ビデオ」では無く、「白黒のフィルム」。「フィルム」での撮影は費用がかかり、多分「タイトルバック」制作の総予算は数百万円だった様に思う。
笹川さんは、凍てつく様な冬の寒さの中、海から吹いて来る強い風をものともせず、海岸の砂の中をモニターと現場の間を何往復もして、早朝、陽が出てすぐから夕方まで、何テイクも撮影しながら、粘りに粘って撮り終えた。
撮影が終わると、笹川さんは「編集室」に籠る。
この「編集室」の「編集システム」の名前が「インフェルノ」。あのパニック映画の名作「タワーリング・インフェルノ」(1974年)の「インフェルノ」だ。
この「編集システム」、やたらとお金がかかる。
プロデューサーを予算面で「地獄(インフェルノ)に叩き落とす」とプロデューサー達は苦笑いしながら言っていた。
笹川さんが作り上げた「タイトルバック」に主題歌「プライマル」を当ててみると鳥肌が立つくらいにいい。プロの実力を見た気がした。
現在のドラマ。「秒単位の視聴率」を測って作っているので、エンディングの「次週の予告編の映像」に主題歌がかかるケースが非常に多い。
「タイトルバック」を入れると、そこだけ視聴率が下がってしまう傾向にあるからだ。
でも、今年に入って、再放送で僕が観た「東京ラブストーリー」(フジテレビ・1991年)、「101回目のプロポーズ」(フジテレビ・1991年)、「男女7人夏物語」(TBS・1986年)など、かつての名作には、「忘れられないタイトルバック」がある。
「視聴率」にこだわる事が悪いとは言わないが、「いよいよ観たかったドラマが始まる感」がある「タイトルバック」の魅力をもう一度見直して欲しいと思う今日この頃。
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