このところの「コロナ禍」で開かれなかったドラマが大多数だと思うが、連続ドラマには「打ち上げ」というものがある。
撮影に8ヶ月かかり、放送が半年続く「朝ドラ」の場合、撮影半ばで「中打ち上げ」をやる事もあった。
「中打ち上げ」はスタジオの駐車場で、焼肉パーティーをやる事が多かった。
京都の映画のスタッフもいたので、京都で安い肉を調達して来てもらい、野菜などを買い足して、食材とした。
お酒類は、俳優さんの事務所やスタッフの所属している会社から頂いたビールなどを大放出。
どちらかというと、「スタッフ中心の慰労会」が目的だった。嬉しさのあまり興奮して花火を両耳に差して走り回る助監督の姿を今でも忘れない。
「打ち上げ」。まずは会場押さえ。
大阪でドラマをやっている時は「スタジオ近くのホテルの宴会場」か「局の一階にあるホール」でやっていた。
連日、早朝から深夜までスタジオやロケで撮影が続く連続ドラマ。かかるストレスはバラエティー番組の比ではない。
会場を押さえたら、各俳優事務所やスタッフの会社、脚本家、音楽の担当者、主題歌を歌った歌手等、漏れのない様に「打ち上げの招待状」を送る。
当日。
まずは「俳優陣」が座る席をどこにするかを決める。監督やプロデューサー、脚本家の席はその横。
あとは「各部署毎」に決めていく。会場は俳優さんでもスタッフでも自由に移動して、いろんな人と飲んだり食べたり出来るのが必須条件。ドラマ制作の過程にはいろんな人が関わっているので、「打ち上げ」で初対面という人もいるからだ。
東京はドラマや映画の「打ち上げ」が多いので、それ用に使える「専用の打ち上げパーティー会場」も多い。
食事はビュッフェスタイル。お酒も自分で取りに行く形式。費用は予算もあるのでグロスで決める。
始まると、まず最初は制作局長の挨拶。もちろん、事前に誰にお願いするか、プロデューサーが根回ししておく。
僕のプロデューサーデビュー作「八月のラブソング」(1996年)の時は僕が最初の挨拶をする事になった。
主演の葉月里緒奈さんはまだ会場に到着していなかったが、緒形拳さんは挨拶する僕の目の前に座っていた。
僕は緊張で心臓がバクバク!
そして話し始めた。
「緒形拳さんが演じられた高級中華料理店のオーナーシェフが料理を作るシーンで画面に『仙台のもやし業者の箱』が映っていたんです。そしたら先日、スタッフルームに大量のもやしが送られて来て、大変な目に遭いました」
緒形さんが笑ってくれた。
僕はホッとして挨拶を終える事が出来た。
チーフプロデューサーの乾杯の発声。一度歓談に入る。
次は俳優の皆さんの御挨拶。挨拶順も調整して決めておく。
そして、脚本家、監督、音楽、主題歌の歌手の挨拶。時には主題歌をギターひとつで歌ってくれる事もあった。贅沢な時間。聞き慣れたメロディーが心に響く。
最後はビンゴ大会。
ビンゴの賞品は俳優さんの事務所やスタッフの会社、テレビ局の関係した各部署から集める。
賞品のリストも「打ち上げ」が始まる前、「受付」で作る。
いちばん高額な賞品は主演の俳優さんから提供される事が多い。
「海外旅行の旅行券」だったり、「高級自転車」だったり、色々。
「朝ドラ」で石原プロの俳優Mさんと御一緒した際、聞いた話だが、石原プロの製作するドラマのいちばん高額の賞品は「車1台」だったそうだ。桁違い!
ビンゴ大会は、いちばん苦労した「撮影現場の若手スタッフ」にいい賞品が当たると皆んなで盛り上がれる。
「打ち上げ」が終わると、会場の出口で、事前に用意した「二次会」の案内チラシが配られる。
「二次会」に「俳優陣」が参加してもらえると、スタッフは大喜び。
大体、「二次会」までが、プロデューサーの仕切りだ。
8ヶ月間に及ぶ撮影をしていた「朝ドラ」のスタッフの場合、「五次会」「六次会」と朝まで飲み明かしたそうだ。
こうやってドラマは終わる。
キャスト・スタッフそれぞれが違う新しい撮影現場に行く。
「打ち上げ」はドラマのゴールでもあり、新たなスタートでもある。
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