公的保育制度の解体 「子ども・子育て新システム」
●区市町村の保育実施責任をなくし市場の流れに任せる(保育は「儲け」にシフト)
●保護者が自己責任で保育所を探し直接契約する(保育所探しに駆けずり回る)
●料金は利用時間に応じた応益負担になる(料金がアップ)
そもそもわが国の保育制度は
①児童福祉法に基づいた認可保育園が基本になっている。 認可外保育園もあるが、認可保育園の基準が全体の基本になっている
②保育が必要な子どもの保育に国と自治体が責任を持ち、自治体が保育所入所を調整する
③保育料は保護者の所得に応じた応能負担で「お金がないから入れない」ことがないようになている
一言でいうと保育費用の公費負担で保育を必要とするすべての子どもに平等に保育を保障する仕組みで、世界でも高い評価を得ています。
この「公的保育制度」は、認可外の保育所(認証や小規模、など直接契約で応益負担)が増え見えづらくなって来ていますが、制度は維持され役割を果たしています。
これに対して政府は昨年6月、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」を発表しました。その後ワーキングチームで具体化を進め、2013年度からの実施をめざしています。
子育て施策のほとんどを再編成して「包括的・一元的な制度」にするとのことですが、一言で言うと公的保育制度の解体とも言うべき改変です。
幼稚園と保育園を「子ども園」に一体化
保育所と幼稚園は「子ども園」に一体化され「幼保一体給付」の対象になります。子ども園以外にも現在の認可外保育施設(認証・小規模など)保育ママなどの「多様な保育サービス」も対象にし、株式会社などの事業者の大幅な参入を進めようとしています。
区市町村の保育実施責任をなくす
(1)一番の問題は区市町村の保育実施責任をなくしてしまうことです。
現行の保育制度では、憲法の理念や児童福祉法に基づいて、区市町村に保育の実施責任があります。
児童福祉法第24条は「児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない」と明記しています。
そのため市町村は公立保育所を作ったり、または私立の認可保育所に委託して保育を提供しなければなりません。
そして運営費の国庫負担制度と保育所最低基準によって、国と自治体が保育の保障と保育水準の確保、保育費用の負担に責任を持つ仕組みとなっているのです。
新システムでは保護者の仕事などの状況から保育の必要度を認定することと、「幼保一体給付」という補助金を支払うことが中心となります。
このままだまっていたら、新システムによって保育制度がどんどん改悪されてしまいます。
制度を変えなくても、予算を増やして保育園を作れば待機児童問題は解決します。
新システムはいりません