朝青龍が引退した。本来ならクビである。クビ宣告をされる前に、自ら引退をした…という形を取るほうが、見た目にもいいし、何よりも億単位の養老金や功労金などが支給される。事件をうやむやにして「円満」に「解決」するためには、この方法しかなかったのだろう。
これまで世論を無視あるいは軽視し続けてきた相撲協会も、さすがに今回のことは放置できなかったようだ。朝青龍に甘い人間の多かった横綱審議委員会も、世間を気にしてか、初めて引退勧告なるものを出した。
この件をきっかけにして、朝青龍の狼藉ぶりは、別の件にまで及んでいる。大阪北新地のホステスを暴行したり、元夫人に、前歯を折るほどの暴力をふるったりしていたことが、次々と暴露され始めた。いくらでもボロが出てくるわけだから、これにフタをするためにも、自分で辞めるしかない…ということであろう。結局、今回の「殴打事件」は、本人が会見で、「メディアに流れたことと実際にあったこととは違う」と言うばかりで、何がどう違うのかを聞かれたら、自分は去る人間だから話すことは控える、と言い、最後まで正直に話そうとはせず、灰色のままで終わりそうである。
彼が会見で見せた涙は、過剰な自己愛から出た悔し涙であろう。彼の中では、自分だけが可愛くて、他人は全てその引き立て役に過ぎない。
決して「涙の記者会見」などと美化されるものではないし、引退したからと言ってこれまでの行動がすべて白紙に戻るわけでもないし、マスコミなどが急に朝青龍に同情的になるのもおかしい。
朝日新聞のある記者は、以前、朝青龍の記者会見で責任の取り方など2、3の質問をしたら、後日当人から「しつこい質問をしやがって」と悪態をつかれた…と今朝の記事に書いている。昨日の比較的穏やかだった応答が、うわべだけだったのは、目に見えている。
一部の評論家は「引退はいさぎよい判断」と言ったりしているが、詰め腹を切らされてしぶしぶ辞める人間の、どこがいさぎよいのか…?
昨日の記者会見は、精一杯見栄を張っていたものであろう。
引退会見のあと、ある記者から、自分の何が悪かったと思うのか?と問われた朝青龍は、「いいじゃないか、終わったことじゃん」と答えたそうだ。
最後まで人を舐めた態度を改めないまま、土俵を去る朝青龍であった。
それにしても、朝青龍の親方 → 高砂親方は、形ばかりの降格だけのようだけど、こちらのほうの責任の取り方はどうなるのだろうか…?