指の傷もほぼ癒えたので、一昨日、フィットネスクラブ「コスパ」へ行って、約4週間ぶりに泳いだ。「休憩しながら25mを泳ぐコース」である。
バシャバシャと、下手なクロールで水しぶきを上げる。
25メートルプールを半分まで泳ぎ、途中で立ち止まり、一息入れて残りを泳ぐ。これを繰り返すのであるが、まあ、泳ぐと言っても、となりのレーンで水中を歩いている人とスピードはほぼ同じである。時には歩いている人のほうが早かったりする 。
プールから上がって風呂に行き、いつものようにサウナで汗を流してから体重をはかると、49・85kgであった。これは、11月からこのコスパの体重計ではかってきた中で、一番軽い体重だ。「よし、よし」とほくそ笑む。
しかしそのあと、思いも寄らない事態が発生した。
風呂から上がり、下着パンツ1枚の姿で、タオルとバスタオルと海水パンツを抱え、横のロッカールームへ歩いて行った。パンツ以外の衣類は全部ロッカーの中に入っている。
そこで、重大なことに気がついた。
あれぇ…? ロッカーの鍵がない…
げげっ。
ロッカーの鍵はベルト状になっており、手首に巻いてプールや風呂に入る。
この日も、僕はたしかに鍵を手首に巻いていたはずだ。
でも、今見ると、手首には何もない。
いつの間に、どこで鍵が外れたのだろうか…?
しかし…。そもそも、鍵を手首に巻いたのかどうか…?
あぁ~、それも思い出せない。いよいよボケてきたのか、僕は。
ひょっとして鍵を掛け忘れたか…? と思って自分のロッカー前まで行ったが、ちゃんと施錠されている。やっぱり、どこかで鍵を紛失したのである。
パンツ1枚以外、身に着けるているものは何もない。
とにかく、早くスタッフに来てもらわなければ…。
でも、ローカールームの中にスタッフは一人もいない。みんな外だ。
外はジムになっていて、大勢の人たちがトレーニングをしている。
そんなところへ、パンツ1枚でノコノコ出て行くわけにはいかない。
おまけに、スタッフの大半は若い女性である。あぁ、恥ずかし。
ロッカールームの出口から、亀のように首だけ出して外のジムの様子を窺うが、スタッフの姿は視界に入らなかった。少し寒気がしてきた。なにせ、上半身は裸で、下はパンツ1枚なのだから。
わが人生、最大のピンチである 。
そのとき、着替えを終えた年配の男性がこちらへ歩いてきた。
「すみません」と僕はすがる思いで男性に、
「ロッカーの鍵が見当たらないのです。こんな格好なのでスタッフを呼びに行くことも出来ず困っています」と言ったら、
「あ、そうですか。わかりました。呼んで来ましょう」
ホッと一息。
しばらくして、若い男性スタッフが一人来てくれた。
「まず、貴重品が大丈夫かどうか、確認してください」
と、スタッフはマスターキーを取り出して僕のロッカーを開けてくれた。
荷物はそのままで、貴重品も異常なしであった。
「どこかで落とされても、誰かが拾ってくれているはずですけど」
そう言いながら、そのスタッフのお兄さんは、プールに電話したり、風呂まで鍵を探しに行ってくれたりした。しかし、見つからない。出てこない。
僕は服を着ながら、改めて、プールに入る前にちゃんと鍵を手首に巻いたのか…あるいは風呂に入るときに外さなかったか…などを、懸命に思い出そうとしたが、悲しいことに、やっぱり何も思い出せなかった。
「とりあえずキーが出てくるまでお預かりします」
ということで、鍵の修復代3,150円を渡して、なんとかその場は収まった。
「キーが出てきましたらお電話させてもらいます。きっと出てきますよ」
スタッフのお兄さんは微笑みながらそう言ってくれたのだけど…
その日の午後からも、昨日の火曜日も、連絡はなかった。
どこへ行ったのだ、鍵は…?