僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

 「三浦和義事件」

2008年02月26日 | ニュース・時事

「ロス疑惑」の三浦和義氏が、米のサイパンで「一美さん銃撃事件」の容疑で逮捕されたニュースには本当に驚いた。26年以上も前に起きた事件である。三浦氏は「銃撃事件」については最高裁で無罪が確定しているのに、なんで今ごろになって米当局に逮捕されたのか…? 

昨日の新聞によると、FBIが新たな証拠を握ったと発表したそうである。
しかし、今朝のニュースでは、ロス市警は会見で、
「新証拠があるかないかは話せない。根拠は88年発布の逮捕状だ」
というだけで、何だか釈然としない。

証拠が出たとしたら、果たしてどんな証拠なのか、一刻も早く知りたい。

僕は、この事件に関しては、ある時に島田荘司「三浦和義事件」という長編のノンフィクションを読んでから、それまでの見方が180度変わった。つまり、少なくとも銃撃事件に関しては、三浦和義氏は無罪である…という見方をするようになった。そして今でもそう思っている。読書の影響というものは恐ろしい。

僕がこの本を読んだのは、正確には思い出せないが、6~7年前ではなかっただろうか? なぜなら、それから1~2年経って、最高裁で三浦氏の無罪が確定し、そのとき、「やっぱり無罪か。やっぱりなぁ…」という感想を抱いたことを覚えているからだ。最高裁での無罪確定は、今から約5年前だった。

この島田荘司著「三浦和義事件」は、三部に分けて構成されている。
一部はマスコミのことである。
当時のマスコミの加熱ぶりは、知る人ぞ知るである。

まだ三浦氏が逮捕される前から、新聞、雑誌、テレビは、一美さん銃撃事件は夫の三浦氏の謀略だったと決め付けたかのように、まことにセンセーショナルな調子で過激な報道をお茶の間に送り続けた。あるテレビ局は夜のゴールデンタイムに特番を組み、キャスターが三浦家の玄関に立って、
「三浦さん、三浦さん。今、このテレビをご覧になっておられますか? あなたが真犯人でなければ、今すぐ、お家から出てきて私たちに語りかけてください!」
とカメラに向かい、絶叫していた。またある番組では、三浦家の人が買い物に出かけるとマスコミが追いかけて行き、買ったものを克明にチェックし、「今夜の三浦家の夕食の献立は何々です」というような、事件と何の関係があるのかと思われるようなことを声を弾ませてしゃべっていた。

三浦氏がそこまで疑惑を持たれ、マスコミから袋叩きに遭ったのは、疑わしい行動が山ほどあったことに加え、著者の島田荘司がこの本で書いているように「女性と遊びすぎ、美女を次々と妻にし、ベンツに乗る長身の美青年」といったタイプは、世間で最も嫌われるタイプであり、マスコミはそういう人物をいくら叩いても人々から非難を浴びないことをよく知っていたからだ。三浦氏は、派手好きで、目立ちたがりで、言うことが芝居がかっていて、行動が不可解な二重人格者で、いかにも虫が好かない男…という印象を、あの頃のほとんどの国民が持っていたと思う。まあ、三浦氏は実際に、そういう気質の持ち主であったようにも見える。人は「日ごろの言動」で評価されるのだ。おまけに、情況証拠は、すべて三浦氏に不利な材料が揃っていた。疑われても仕方がなかった。しかしそれを差し引いたとしても、あのマスコミの騒ぎようは正気の沙汰ではなかった。

本の第二部は、三浦氏の生い立ちなどが紹介され、彼の視点から見た事件の一部始終が描かれている。このあたりから、いよいよ読むのを止められなくなる。

三浦氏は女優の水の江瀧子の甥であり、水の江瀧子と言えば、石原裕次郎をデビュー前から自宅に下宿をさせて面倒を見ていた人である。だから三浦氏は少年の頃から石原裕次郎がすぐそばにいて、ずっと遊んでもらっていた、という。つまり彼は普通の平凡な家庭に育った人でなく、特殊な環境で成長してきたことが、あの独特な人格形成に影響を及ぼしているのではないかと想像できる。

そして第三部は、警察での取調べの様子、裁判の経過などが詳細に語られている。

ロスの事件現場が眺望できる高い建物(水道局)の窓から、事件時の様子を見ていた局員たちの証言部分は、読んでいてもハラハラドキドキする。その人たちの証言、たとえば「白色の車」を見たという証言と、三浦氏自身の「緑色の車」証言の食い違い部分に、別の客観的事実が割り込んでくると、驚くべき別の新事実が浮かんでくるのである。そのことが、三浦氏無罪説につながることになる。

…この先は複雑に込み入った話になってくるので、これ以上知りたい人は、本を読んでもらうほかはない。出版社からお金をもらってるわけじゃないけど、いま「ロス疑惑」が再燃したのを機会に、この本を読んでみるのも悪くないと思う。

事件の詳細を知るのに、この本は格好の材料になる。

そして、(これは僕の推測に過ぎませんが)、たいていの人は、この本を読めば三浦氏は銃撃事件の真犯人ではない、と感じるようになるだろう。それだけの強烈な説得力が、この本にはある。
しかし本著は、一方的に三浦氏の肩を持つような生ぬるい本ではなく、三浦側と反三浦側の両側から、公平かつ冷静に描かれていることも付け加えておきたい。

  …………………………………………………………………………

これが文庫版の「三浦和義事件」です。

かなり長いですけど、その分読み応えは十分です。
三浦氏が無罪なのか有罪なのか…。
むろん、ノンフィクションと言えども、著者の推理は入っています。

これを読めば、自分なりの推論を立て、自分なりの判断ができます。
驚くほど綿密な取材と調査に基づいて書かれていますので、この本を読めば、事件についてめっぽう詳しくなりますし、その他に付随するいろいろなことを学ぶこともできます。僕がこの本を読んだときは、三浦氏はほとんど世間から忘れかけられていた頃でしたが、これから受けた衝撃と影響は、かなり大きなものでした。

また、作品はわが国の事件報道のあり方についても、改めて考えさせてくれます。
マスコミが「三浦氏の犯行」の脚本を書き、演出をし、視聴者に披露する…。
結果として三浦氏が有罪か無罪かはともかく、これは恐ろしいことです。

今回の米当局による「逮捕」は、どの程度の証拠に基づくのでしょうか?

冒頭にも書きましたが、「新しい証拠」がどういうものか非常に関心があります。27年ぶりに明らかになる新証拠…。なんだろう…?
当分はこの関連報道から目が離せません。

それによって、また僕のこの事件に対する見方が変わるかもしれないから。


 

 

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4 コメント

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へえ…そうなんですね。 (ちひろ)
2008-02-26 13:14:03
実はあまりよく覚えていないんです、ロス疑惑。
5.6歳だったので…。
無罪になったときにwebでちょっと調べて、
へーそういう事件だったんだぁ、って感じでした。
当時のマスコミはそんな騒ぎだったんですね。

島田荘司は御手洗潔シリーズを何冊か読んだことがありますが、
ノンフィクションも書いていたことは知りませんでした。
機会があったら読んでみようかな…。
アメリカでの行方の決着がついてからのほうがいいかな?
でも、いつか必ず読んでみようと思いました。
教えてくださってありがとうございます。
返信する
解らない人物ですよね。 (のこたん)
2008-02-27 20:00:43
 テレビに映っているかぎりで見るならば、三浦和義という人は、よく解らない人物ですね。

 ノラリクラリとした受け答え、マスコミの前に出たがっている素振り、私にはトウテイ理解出来ない人物です。

 でも、今も昔もマスコミの報道はおかしいです。
 自分達が正義とでも言うような取材の仕方・・。

 今、問題になっているイージス艦のことにしてもしかり・・・。
 近頃は、ニュース番組も見る気がなくなりました。
返信する
謎が謎を呼ぶ (ちひろさんへ)
2008-03-05 06:33:50
ちひろさん、おはようございます。
お返事遅れてすみませんでした。

ロス疑惑の頃はちひろさんは5,6歳でしたか?
まだ幼い頃だったのですね…。
僕のロス疑惑の頃と言えば、ちょうど今のちひろさんの年齢の頃でした。
ど~も、ど~も。

日本の長い事件史の中でも、謎が謎を呼ぶこの事件の話題性は突出していました。
それが、また27年ぶりに三浦氏がアメリカで再逮捕という劇的な展開となり、
いよいよ「ロス疑惑」は、空前絶後の筋書きが描かれようとしています。
もっとも、これは長引きそうで、そのうちマスコミも飽きてくると思いますが…。
返信する
叩くなら中国を叩け! (のこたんさんへ)
2008-03-05 06:48:15
のこたんさん、お久しぶりです。
コメントをいただいたままで、すみませんでした。

中国産の冷凍ギョーザ事件から、三浦事件、そして今は連日イージス艦と、ニュースの材料は後を絶ちませんが、イージス艦関連の報道は、もう、うんざりするほどしつこい感じがします。
「自分たちが正義」という感覚は本当にそのとおりだと思います。

それより中国の毒入り食品のことはどうなっているんだ、と言いたいですね。
国民の生命に関わる問題ですからね。

いまは日本のマスコミがこぞってイージス艦を叩くことに熱中し、そのドサクサにまぎれて中国は毒入り食品は日本国内で行われたことで、わが国は関係ない、という姿勢を出し始めています。
こういう中国の姿勢に対して、激しい怒りの声を上げるのが日本のマスコミの役目だと思いますが、情けないことにイージス艦で自国の閣僚を責めるだけ。
中国は、そんな日本のマスコミの「飽きっぽさ」を知っているので、あんなことを言い始めているのです。日本のマスコミは、中国からもバカにされているのでしょう。

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