すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

STORY.33 風色の景色

2010-01-25 21:35:16 | 小説
お待たせ、しました。
やっと出来ました。

長かったなーーーー。

少々、前書きを。

このお話のもとになってるのは、「cinematic」です。
ご依頼を頂いたから、というのもありますが、
これを歌うすばるの、やわらかな優しい声が、大好きだったから。
それこそ、いろんなシーンを妄想してました。

いろんなシチュエーションで、彼が私を愛してくれたから、
だから、すぐに小説にできる、と思ったんです。
最初は。

なのに、途中で、
彼が、ぱたりと、動かなくなりました。

それこそ、手も足も、身動き一つとれない状況になってしまいました。

ここまで時間が必要だとは、思ってなかった私。

でもどうにか彼が決心してくれて、こういうお話になりました。

読んでいただけたら、嬉しいです。

あ。
ヤプログさんがリニューアルして分かったことのひとつですが。

ここ、携帯からご覧の方が多いみたいなので、注意事項を。

小説、という形態上、ページ数が多くなってますので、申し訳ありません。

出来れば、飽きずに最後までお付き合いください。





お気に召しましたら、

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STORY.33 風色の景色




ひとつ、
ふたつ、みっつ。

小さな寝息がかかる。

俺の左の腕の中、安心しきったように眠る彼女の温もりを抱いて、
闇に目をこらす。

ぼんやりと灯るナイトランプの、オレンジ色の光が、
うっすらと、彼女の横顔を浮かびあがらせる。

起こさないように、そっと、俺は彼女の頬を撫でる。

柔らかくて、なめらかな彼女の肌を、俺の指先が滑ってゆく。

髪が揺れて、彼女の香りがたつ。

彼女の体温と交じって、それは、いっそう俺の中に流れ込んでくる。

愛しきもの。
愛すべきもの。

昔やったら、
若いころやったら、

邪魔くさくてしかたなかった、
頼られる、という責任感。

それが、大切なことやって気づいたんは、
気づかせてくれたんは、
この温もりやったんやなと、想う。

無条件に、俺だけを頼ってくる、
無条件に、俺だけを信じてる、
無条件に、俺だけを見つめてる。

ここに辿り着くまでに、

何度もケンカして、
何度も不満を言いあって、
何度も互いの気持ちをすりよせて、

互いの好きなもん、嫌いなもん、
許しあえるもん、
どうやっても許せへんもん、
確かめ合ってきた。

その時間だけは、俺らを裏切らへんから、
ここからも、繋がっていけると信じられる。

それを、どうやって伝えたら、ええ?

こうやって抱き合うだけやなくて、
ここからの時間もずっと、お前だけ信じてると告げるには。

ロマンティックなシチュエーションを演出せな、あかんのかな?

俺は、部屋の片隅に置いた自分のバッグの中身を、思い浮かべた。

前にぶらっと二人で歩いた街角の、
彼女がふと足を止めたショーウィンドウの中で、
それは、ひときわ華やかな輝きを放ってた。

「欲しいんか?」って訊いた俺に、
「いつかは、ね」って返した彼女。

それきり忘れてしまってもいいような、他愛のない会話。

あの時、すんなり買って渡してやったら、
今、こんな風にもどかしいカンジになることもなかったんやろけど。

赤いリボンをかけてもらった、小さな白い小箱。

あれをこいつに渡すタイミング。

自然なカンジで渡したいから。
気負わずに、さらっと受け取って欲しいから。

何気ない時間を、これからも、このまま続けたいから。

俺はぼんやりと天井を見つめる。

次第に俺を覆い尽くす、静寂な闇。

朝が来たら、
日が昇ったら、
そしたら・・・・・・。



枕もとの携帯が、軽やかに鳴り続けてる。

ぼんやりとした意識の奥で、俺は、それを聞いた。

『時間・・・? なんの?』

彼女がかけたアラームの音。

『こいつ、今日、仕事やったっけ?』

隣の彼女が、ゆっくりと手を伸ばして、音を止めた。

「おはよう」

俺の顔を覗き込む彼女の顔。

「んんん・・・なんでぇ?」

「朝、だもん」

待てって、おい。

「もうちっと、寝ようや」

俺の顔の上にある彼女の唇を引き寄せる。

「んん…」

柔らかくて、温かな感触。
指にからみつく細い絹の髪が、俺の頬をくすぐる。

そのままもたれかかってくる香りが、
ひととき俺の肌に馴染んで、ひときわ強い芳香を放つ。

ゆるやかに、互いをいたわり合う時間。
波立つ欲望の淵で、声なき声が求め合う。

俺は彼女の中に、俺を見つける。
彼女は俺の中で、彼女を取り戻す。

この瞬間に、言葉は、いらない。

いらないんだ、言葉は。

ただ、二人、抱きあうだけで、
繋がるだけで、
いいんだ。




カシャン、

カツン、

ガ、ガガ、ガガガッ、

シャー、

キュッ、

ポタン、

カチャッ、

・・・いつのまに、また眠ったんやろう。

小さすぎるほどのカウンターキッチンから聞こえる、さまざまな音が、
俺を眠りから呼び起こした。

窓から差し込んでいる暖かな光と、
彼女が立てる音に混じって、やがて香ってくる、苦い香り。

一人暮らしの、ロクに台所用具すらない、あのキッチンに、
二人で最初に選んだんは、
今、彼女が使ってるコーヒーメーカーやったっけ。



彼女が近づいてくる音がする。

俺は、また、目を閉じる。


「まだ、寝てるの?」

ベッドの端に腰かけた彼女を、すばやく抱きよせる。

「キャッ」

小さな悲鳴を上げた彼女が、俺に倒れこんでくる。

「おはよ」

俺は彼女のおでこに、軽く、口付ける。

彼女が俺を見上げて、

「おはよう。・・・っていっても、もう、お昼に近いけどね」

そう言って、微笑った。

こいつの、こういう表情、
奥に恥ずかしさを隠した、
はにかんだような、テレ隠しの笑顔、
好き、なんだよな。

「起きるでしょ? コーヒー、入ってるよ」

「ん・・・」

身体を起こした俺の目に映り込んだのは・・・。




白いソファに、俺。
低めのテーブルに、二つのマグカップ。
向かい合う形の彼女は、ラグの上に置かれたクッションにもたれる。

大きめの、赤い赤いカバーのかかった、ビーズ入りのクッションは、
シンプルに仕立てた部屋の中で、ひときわ鮮やかに色を添える。

俺はリモコンを手にとって、コンポのスイッチを入れた。

小さな小さな音で、流れだす音楽。

ロックナンバーにしては、少しスローなテンポで、
聞き取れないくらいにかすかな声のボーカルが、響いてる。

楽器としての声、
出しゃばらない、かといって紛れこみもしない、
音の一翼を担ってる声。

自分が、どんなCDを持ってるかさえ、
もうわからんようになるくらいに、雑多なジャンルと数やけど。
そん中でも、これは・・・

「これ、この曲、好きだな」

コーヒーを冷ますように、ふうっとカップを吹きながら、彼女が言った。

「音がどうとか、コードがどうとか、難しいこと、わかんないけど」

「うん・・・」

「好きか嫌いか、って言ったら、好き」

「そんでええよ」

音楽なんて、そんなもんや。
好きか嫌いか。
すんなり耳に馴染むかどうか、だけや。

それは男と女にもいえることやろ。

肌に馴染むかどうか、
心に馴染むかどうか。

必要なんは、そんなシンプルなことだけや。
ごちゃごちゃ飾り立てたって、しゃあない。

俺は、彼女が淹れたコーヒーを口に運ぶ。

ひとくち、また、ひとくち。

ゆっくりと、身体に沁みて広がってくるコーヒーの苦さ。

彼女が淹れてくれるコーヒーは、
いっつもちょっとだけ、アメリカンっぽい。

ミルクも砂糖も入れんと飲む俺には、物足りなくもあって。
だから、つい、
もう一杯、って思ってまうのかな。

湯気の向こう側で、
彼女が、窓の外に視線をそらした。

カーテンを揺らす風が、かすかな音楽になって、部屋を舞う。

俺の目に映るのは、
青い青い空に、掃いたような白い雲が、ひとすじ。

たぶん、彼女の目に映るのも、同じ景色。

こうして、同じ景色の記憶を、
ゆっくりとひとつずつ増やしていきたいと思えるのは、
相手が彼女やから、やんな。

他の誰にも代わりはきかん。

俺と、
彼女と、
ふたりだけの。

筋書きのない、風の通り道。




「ほんなら、これは?」

俺は、赤いリボンの小箱をぽんっとテーブルに置く。

「なに?これ」

「開けてみたらええやん」

彼女は、カップをテーブルに置くと、その小箱を手に取った。

「開けてもいいの?」

「ん」

彼女の手で、スルリ、と、ほどけたリボン。
箱を開けた彼女の手が止まる。

彼女の目が、箱の中の一点を見つめて、
それからゆっくりと、こっちを向いた。

「本気?」

「嘘は、キライやねん。知ってるやろ?」

「うん」

言いながら、彼女はまた、小箱の中身に目を落とした。


俺は、おそるおそる、彼女の横顔に訊いてみる。


「好き?それとも・・・キライ?」


ひととき、風が揺れる。


俺を見上げた彼女の顔が、静かに表情を変えた。

俺の大好きな、あの表情に。




FIN.


STORY.32 漆黒の刃

2009-11-19 08:00:43 | 小説
早朝よりお目汚しですが、
またしても真夜中の妄想をひとつ。

どうしてこんなこと。
よっぽど淋しいのかしら、私。

浮かんだたった一つの情景は、読んでいただけたらすぐに分かると思います。

お引き受けした情景から紡いだお話ではないので、あらかじめ。
というか、
そこへ繋がっていたらいいな、という思いで書いてはありますが。

(ごめんね、はるさん。そちらは、鋭意、言葉をため込んでる状況です)

短くて、意味もない、
お話、にすらなってないのかもしれません。

この話は、このまま、手の施しようがなくなってしまったので、
恥を承知で、UPさせました。

それでも、お付き合いいただけるかたは、続きから、でお願いします。

いつものように、お話の最後にはランキング先が貼りつけてあります。
よろしければ、ご協力くださいませ。










STORY.32 漆黒の刃





薄い月あかりに浮かび上がる、彼の横顔。

伸びた髪、
ゆるくうねる毛先。

遠くを見つめる瞳が映しているのは、何?

指に挟んだ、細身のシガレット。
ゆらめく紫煙。

苦い香りとともに吐き出されるのは、何?

隣にいるのに、
ここにいない、あなたの、

横顔。



「ん?」

気づいて振り向いたあなたの、無邪気な顔。

「寒くないか?」

私の肩を引き寄せて、自らの腕の中に入れてくれるあなた。

あなたの腕の中は、暖かくて、
わずかにかかるあなたの息が、苦しい。

「明日、どこ、行く?」

「どこにも行きたくない」

「またそんなこと言うて。今しか休み取れへんねんから、いっぱい遊ぼうや」

「ううん、いい」

「なんでや。どこでも、ええぞ。あ、テーマパーク、行く?」

「そんな人の多いところ、いや」

「おかしなヤツやな」

「あなたと、二人きりでいたいの」

嘘じゃない。
雑踏にまぎれて、あなたを見失うのが、怖いから。

広い空間で、
心を飛ばしていくあなたの隣にいるのは、つらいから。

つなぎとめていたいの。

あなたの体温の中で、
あなたの香りに溶けて、ひとつになっていたい。

きらめく朝の光の中でも、
あたたかな昼下がりのひだまりの中でも、
たよりなく遠い星の瞬きの中でも、

私の中の、あなたをカンジていたい。


私の首すじに口付けて、あなたが囁く。

「それも、悪うないな」

低く流れる音。
あなたから流れる、音。

私を包み込んでゆく。

この瞬間が、好き、だわ。





何を不安がってるんやろ。
何を怖がってるんやろ。
何に怯えてるんやろ。

俺とおるときのこいつは、いっつも哀しそうな瞳をする。

そばにおるのに、まるきり、俺を見とらへんような、
気にさえなってくる。

俺は、ここやで。

それを伝えたくて、俺は彼女を抱きよせる。

抱き締めたら、ちゃんと反応すんねん。

俺に寄りかかってくる甘い香り。

石鹸の匂いでもない、シャンプーのにおいでもない、
ましてや
香水みたいな、人工的なキツイ香りやない、

彼女が奏でる体臭。
入り混じる体温。

温かいのに、
なんで、
こんなに遠くにおる気がすんねやろ。

こいつは、誰を見てるんやろ。

俺の、独りよがりの一方通行なんかな。
また、すれ違うんかな。

言葉だけでは届かへん。
温もりだけでは伝わらへん。
大事なんは、バランスやって。

そんなことくらいは、わかってるのに、
なかなか出来へんもんやな。

『愛し合う』って、ムズカシイもんやって、
今更ながらに、思い知らされるわ。



闇に紛れ、溶け込んだ互いの影を、見失うまいとして目を凝らす二人。

手繰り寄せる互いの息遣い。

研ぎ澄まされた漆黒の刃が、二人を別たぬように、
ただ強く抱きあう。

『ふたり、ここに、いる』

それだけがすべてで、
それだけを確かめ合うために。


Fin.






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STORY.31 約束

2009-11-04 08:06:31 | 小説
言い訳、します。

深夜の妄想です。

新曲のカップリングになってる2曲めと3曲めを聴いてるうちに、
浮かんでしまったとあるフレーズを使いたくて、

一晩で一気に書き上げていました。

日をおくと、恥ずかしさに書き直したくなるので、
さしたる手直しもせずに、UPさせます。

こんな恋を、彼が選択するとは思わないけれど、

彼と恋をしたら、こんな夜もあるのかもしれない、と、
思いつつ、
ここで、彼に不器用なほど愛される女性になってみたくて仕方ない私です。


お付き合いくださる方は、続きからお願いします。

小説の最後には、いつものようにランキングへのリンクが貼ってあります。
ご協力いただけるかたは、ぽちん、と投票して頂けると幸いです。




STORY.31  約束





ふたつの鼓動が重なる。

静寂に吐息がこぼれて、鮮やかな華が咲く。

闇が揺れて、軋む。


深く淀んだ澱の中から、這い上がろうとする獣。


吸いつくように形を変える、
白く柔らかなぬくもりの奥に潜む、怯えた獲物。


湿った風が、吹き抜ける。


「イヤ、こんなのは、イヤ・・・」

うわごとのように繰り返しこぼれる言葉とはうらはらに、
次第に熱さを増していく身体が、
俺を受け入れる。

濡れていく、
溢れていく、

互いに抱えた、せつないまでの激流。

わかってる。
わかってんねん。

こんなことに、なんの意味もないってことくらい。

せやけど、

こうすること以外、
彼女に、俺の想いを伝えるすべが見つからんのも、事実やから。

千のプレゼントより、
万の言葉より、

たった一回、肌を合わせることで伝わるもの。


そばにいたい。
そばにおってやりたい。

それが許されるなら、
こんなにも、愚かな炎に身を焼きつくすこともなかったんやな。

身勝手な、
子供じみた、
俺のわがままの果てを、

彼女は、
それでも受け入れてくれた。


俺だけの女性には、なられへん。


たったひとつの、小さな制約。

大きすぎる代償を支払ってまで、俺には溺れられへんという彼女を、
それでも、
こんなにも欲してる自分に、腹がたつ。

女やったら、どこにでもおるのに。

言い寄ってくる、
求められる、
一晩だけの、
欲望を処理するだけの、そんな関係やったら、
ラクやったのに。

どこで間違えた?
どこからやり直したら、ええ?

俺の腕の中で啼く彼女が、こんなにも愛しいのに、
なんで、
泣かすことしか出来へんねん。

間違えたんは、俺か?
彼女か?

その答えは、どこにあるん?

いや・・・
どこにもない答えを、俺はいつまで探して歩くんや?



蒼い炎が、俺の中で、燃え盛る。

冷たくて、
熱い。

熱いほどに、冷たい。

炎にさらされて、硬く己を誇示し始めるモノの行きつく先は、
どこにあんねん。

「きて・・・」

かすかに、でも確かに、
俺自身を呼ぶ声。

満たされぬ思いを、ひとときの快楽で埋めようとする彼女の、
その姿が、いじらしい。

誰かの代わりだと知って、
それでもいいと覚悟して、

俺は彼女を手に入れた。

そうしてまで、この身に欲しいと望んだ女やから。

やがて、いつか、終わりは来るんかもしれん。

彼女が望むものが、彼女の手に戻ることやってあるだろう。
唐突に、俺の気が変わることやって、あるやもしれん。

せやけど、今は、
今、この時間だけは、

ここに彼女を抱きしめて、離したくなくて、
俺だけを見てて欲しくて、
求めて欲しくて。


力まかせに抱く以外の方法があるんやったら、
誰か、俺に、教えてくれ!!


闇が悲鳴をあげる。

彼女の爪が俺の背中に、突き刺さり、
紅くにじんだ痛みが、さらに俺を高みへいざなう。

彼女に訪れる恍惚の刹那。
解き放つように、銀の閃光が俺を突き抜けていく。

この一瞬、
この一瞬だけが、

俺と彼女に与えられた、至福の刻。


ええわ。
ほかに、なんもなくても。

普通の恋人同士やったら、あたりまえの風景、

たとえば、
輝く空も、木々も、
甘い夢も、
限りない時間も、
未来さえも引き換えにしたって、ええ。


ここに、
この腕に彼女を。

この一瞬を、約束させてくれ。





FIN.




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STORY.30 乾いた・花

2009-10-24 00:01:48 | 小説
やっと出来ました。

今回のは、少々、出来あがりに時間がかかりました。

言葉が降りてきて、一晩ないしは2日もあれば書きあがってしまう小説がある一方で、
不意に浮かんだエピソードが、いつまでたっても動き出さずに、
そのままお蔵入りになってしまうこともあるんです。

今日お届けするお話は、どういうわけか、とてものんびりしていて、
一文ずつ、ゆっくりと繋がっていく感じで仕上がりました。

久しぶりに、
毒にも薬にもならない、いたってフツーな、甘々なカンジになってます。

よろしければ、続きからお付き合いください。

お願いするようで、心苦しいのですが、
もしお気に召したら、小説最後にランキングボタンをぽちっとしていただけると、
とっても嬉しかったりします。







STORY.30 乾いた・花





その夜、外は、何年かぶりの嵐だった。

交通機関は乱れたまんまやし、
街路樹は、強風にさらされて、轟々と音をたてている。

横殴りの雨に、傘はなんの役にもたたず、
俺は、びしょぬれの姿で、どうにか部屋に戻った。


冷たくなった身体を温めようと、
俺はバスルームに向かった。

バスタブに湯を張りながら、俺は濡れたシャツを脱ぐ。

鏡に映った俺。

細い腕。
薄い胸。
もう少し、筋肉があってもええよな。

ここんとこの仕事は、俺には、ハードなシーンが続く。
食べても食べても、動く量には追い付かん。

身体が疲れてる、というより、
連日の緊張感が、俺の神経を昂ぶらせる。

歌うんは、なんでもない。
演じるんも、イヤやない。
ここを抜けたら、また一歩、俺は階段を上がるんやと思う。

ただ、時折、
風が吹き抜けていく気がしてるだけ、や。


うんざりしながら、伸びた髪をかきあげる。

雨に濡れた髪は、重くてわずらわしい。

これ、
この髪、
いつになったら、切れるんやろう。

ちょっと、伸び過ぎたんとちゃうかな。
ちょっとくらい切ってもええかな。

明日は休演日やから、切ってもうたろかな。

「なんで切ったん? 長いほうがええって、言うたのに」

誰かの声が聞こえる気がするな。
もうしばらくは、このままにしとかんと、アカンかな。



湯気のたったバスルームをあとにする。

火照って上気した身体をタオルで包んで、
俺はやっと、深く息をつく。

このままベッドに倒れこんだら、
きっと睡魔が俺を連れ去るだろう。

絶対、風邪ひくけどな。

手近にあったTシャツに袖を通し、
リビングに戻った俺の目に、
携帯の着信を告げる光が、飛び込んできた。

小さな間接照明の中、
それは、
ぽつん、ぽつんと、儚げに瞬いていた。

誰や、こんな夜に。
なんの用やねん。

そう思いながら、俺は携帯を手に取る。

メールの相手は、彼女だった。

『怖い』

たった、ひとこと。

外はものすごい風と雨やからな。
窓閉めてたって、聞こえるやろ。
せやけど、『怖い』って。
大げさなんちゃうん。

どう返事を返したら、安心させられるんか、が、わからへん。

すぐにでも駆けつけて、
そばにおって欲しいんやろけど、
そんなん無理やん。

あいつかて、わかってるはずやのに。

わかってて、ほんでも、このメールなんやったら、
俺、
どないしたらええ?

あいつが望むことやったら、
俺に出来ることやったら、
そら、
叶えてやりたいとは思うてる。

ほんでも。

無理は出来ん。
それだけは、したらアカン。



手づまりのまんま、
ぼんやりとメール画面を見つめてるとこに、
来客を告げるインターホン。

こんな日の、
こんな時間に、客?

ありえへん。

風の悪戯か?

いや、それはないか。

マンション入口は、ちゃんと風除けになってるしな。


「誰?」


小さな画面の向こうに、ずぶ濡れの・・・

待てや、嘘やん。

振り返って窓に目をやる。

遠目にもはっきりと、
窓ガラスを伝うしずくが群れをなす。

俺の指が、慌ててロックを外す。

「早よ、上がって来いッ!」

考えるより先に、叫んでた。

俺の頭ん中では、いろんな疑問符が押し寄せる。

なんでこんなとこにおるん?
どうやって、ここまで?
このメール、いつ、届いたやつや?
『怖い』んとちゃうんかい。

なんぼなんでも・・・!!

無性に腹立たしくなってきてたんを振り切るようにして、
俺は、乾いたバスタオルを手にした。

チャイムを待たずに玄関を出る。

吹き付ける風が、洗ったばかりの俺の髪を乱して視界を遮る。


あかん! やっぱり長いわッ!!!


髪を掻きあげた俺の目に、
たった今、エレベーターホールに辿り着いた彼女の姿が映った。

俺の姿を見て、一瞬だけ、
彼女の身体の動きが止まった。

見え隠れする、躊躇。

それを振り切るかのように、
俺の首すじに抱きつくように手を伸ばし、飛び込んできた。

「おまえは・・・! 何してんねんッ!!」

手にしたタオルで彼女を包みこみながら、俺の語気が荒くなる。

かすかに、小刻みに震える肩。

寒いんか?
それとも・・・?

「怖かった・・・怖かったの。 独りは、イヤなの」

こんな雨風の中、ここまで来る方が怖いやろ。

そう思わんでもなかったが、
とにかく今は、彼女の不安を消してやるんが先か?

震える彼女を抱くようにして、俺は玄関へと彼女を迎えいれた。



風に押されたドアが、大きな音をたてて閉まった。

彼女の体が、おびえたように硬くなる。

バスタオルで彼女の髪を拭いてやりながら、
俺は彼女の体を、俺から離した。

「こんなに濡れて・・・風邪ひいたら、どないすんねん」

彼女の顔を上げさせる。

「俺がおらんかったら、どうするつもりやってん」

「え・・・?」

初めてそれに気づいたかのような彼女の瞳が、俺を見つめた。

気づいて、
彼女の表情が、戸惑っていくのがわかる。

ほんまに、気づかへんかったんやな。

「まあ、ええわ」

俺は彼女をきつく抱き締める。

冷たい彼女の身体の奥に、俺の体温を移してやりたかった。

このまま抱きあって、互いの温もり確かめあうんも、悪くはない。
けど・・・。

俺の胸に顔をうずめる形で、彼女は、安心したように大きく息をした。

「風呂、入って、ちょっとあったまったらええやん。話、それからにしよ」

「いや」

「おい、なんでや。べたついてるやろ、身体」

「離れたくないの、このままがいい。やっと、やっと・・・」

言い淀んだ彼女。

「・・・会えたのに」

俺に抱きつく腕に、決して俺を離すまいとするかのように、力がこもる。

この仕事が始まってからは、確かに忙しいばっかりで、
ろくに会えもせんかったからな。

無理もない、っちゃ、無理もないねんけど。

普段は、さして不満も言わんと、
凛と、自分で自分を支えてる彼女がみせた、小さな、小さなわがまま。

愛しさのかたまりに、出会えた気がして、
俺の中に、ふわりと柔らかな光が差し込んでくる。

風に吹かれて、ささくれ乾いた心に、
温かで穏やかに、差し込む光の渦。

そこで咲く、一輪の花。

俺は、なおも強く彼女を抱きよせて、
彼女の耳元に囁く。

「一緒に、入ろ」

顔をあげた彼女に浮かぶ、とまどいの色。

「そんなん、恥ずかしい・・・」

「よう言うわ。ええやん、たまには」

「でも、着替えもなにも、ないもの」

「大丈夫。洗って乾燥機入れといたら、すぐ乾くわ」

「その間、どうするのよ」

「服、いらへんやろ?」

「え・・・」

「俺が抱いててやるから」

彼女の顔に羞恥の色が浮かぶ。

「怖い、んやろ? ずっと抱いて、傍におったる。
明日の朝には、雨も風も治まってるやろ。
それまで、俺の腕ん中におったらええわ」

「本当に、いいの? 仕事は?」

「そんな心配するくらいなら、来んなや」

「ご、ごめんなさい」

「ええから。怒ったんちゃうって。明日は、休みやから、ええねん」

休み、と聞いて、彼女の顔がほころぶ。

「ずっと、離さないでね。そばにいてね」

「わかってるよ。怖がりやな」

彼女の髪を優しく撫でてやる。
次第に彼女の身体が、俺の腕に、ほどけていった。



風が彼女をさらっていかないように、
俺の腕の中に彼女を、しまいこむ。

雨の音が、彼女の耳に聞こえぬように、
俺は、彼女にささやきつづける。

闇が彼女を襲わぬように、何も考えず眠れるように、

俺の鼓動で、魔法をかけよう。

朝の光が、ふたりを包むまで。




FIN.






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STORY.27 無限の星

2009-07-28 00:18:35 | 小説
すみません。深夜の更新になりました。

何度考えても、
どう考えても、

私にとっては、8個のピース。
8個めは、消えてなくなったわけじゃない。

だからこそ、
無限につながる∞erがいられるのだとしか・・・。



そんなこんなで、
言い訳のようなかたちの前書きですが。

一気に書き上げた独り言。

お付き合いくださる方は、続きから。



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STORY. 27  無限の星





仕事帰り、空を見上げた。

ビルの隙間から見えたのは漆黒の闇だったけれど、
ネオンの灯りにかき消されるように、
そこに、やっぱり、小さく星は輝いていた。





どれが、なんという名の星か、オレには皆目、見当もつかんけど、
きっと、あの一個一個に名前があって、
いくつか繋いだら、星座ってもんに、なるんやろなあ。

どれがどれや?

もっと、勉強しといたら、わかったんかな。
そういうのんが好きな人には、一発で、わかるんやろな。



例えて言うなら、俺らもおんなしやな、きっと。



雑踏の中。

分かる人にはわかるけど、
分からん人には、気付かれもせん。

俺らは、小さな小さな星。
寄り添って並んでただけの星。

明るい太陽のもとでは、存在すらわからん。
月夜になって、はじめて、
ようやく存在がわかる程度の、かすかな光。

それをつなげて、
8個でひとつの星座にしたんは、誰やったんやろ。

1個欠けてしまったら・・・

ああ、ちゃうわ。
欠けたんちゃう。
弱くなっただけや、か細うなっただけや。

見える人には、見えてんねん。

見えてない人に、いっくら説明したかて、
言葉ではわかってもらわれへん。

星が、輝きを増すしかない。


始まりは、たったの8個。


誰が繋げたか、わからんけども、
それが自然やったんかもわからんけども、

8個やないとあかんかった理由が、
どっかにあるはずやねん。

その8個が、
俺らやないとあかんかった理由が。



ずっと、
オレには、わからんかった。

わからへんかったんや。

堪忍やで?

こんなこと、今更言うてたら、
どっかの誰かに、頭どつかれるかもわからへんけども。

なんで、オレ、なんか。
なんで、この仕事してんのか。
なんで、辞められへんのか。

なにが不満なのか。
なにが楽しいのか。
なにが嬉しいのか。

どう、なりたいのか。

過ぎていく日々の中で、
オレがオレであるための方法が、わからんかった。

歌も、
踊りも、
芝居も、
バラエティも。

どこか、オレを素通りしていった。

何かを捕まえたくて、
でも、この手には、なにもなくて。

ただ、
がむしゃらにあがく自分だけが、いた。

そんなとき、
いきなり、バランスが崩れた。

考えるより先に、
必死にならざるをえない環境に追い込まれた。

今から思えば、それが、
続けていくための力になった。

続けていくことだけが、
オレの力になった。

未完成のまま、
ことを放り出すのだけは、
出来ん。

この先、ずっと、未完成なら、そんでもええ。

完成したもんに、価値を見出すために、
俺らは、続けてるんとちゃうし。

完成したら、ある意味、それは、夢の残骸なんかもわからんし。

でも、
投げ出すことだけは、したらアカンねん。

投げ出したら、
残骸にすらならん。

ただの、塵芥とおんなじや。

そうならんためにも。

今、俺らが出来ることから、やる。
俺らが、やらなアカンことやから、やる。

そんだけのことやねん。



今やから、分かる。

待ってるんは、苦しいよな。

見えたり隠れたりする光を、
目を凝らして、探すんは、
シンドイ作業やんな。

ほんでも、
ちゃんと、光ってんねんで。

「ここに、おる」、言うて、
ニッコニコの顔で、笑うてるわ、いっつも。


せやから、な。


見えん人には、7個の星、言うといたらええねん。

ほんまは、8個やって知ってる人がおったら、
そんでええねん。

俺らの輝きは、無限や。
輝きを探してくれる人も、無限や。

俺らは、無限で、繋がる。

・・・あたりまえや。
何言うてるんかな、オレは。

忘れたり、せェへんわ。



俺ら自身が、無限やってこと。







FIN.