彼に近づいて、寝顔を見る。
安心しきったかのように、無防備な寝顔、半開きの口。
アイドルが仕事とは思われへん。
「ねえ、もう、お肉、焼けるって」
そっと、声をかけながら、肩に触る。
「あ・・・」
寝ぼけたかのような声で、目を開けた彼は、開口一番、
「まのん、舞音は?」
「大丈夫。あっちで、ちゃんと他の人に抱っこされてるから」
体勢を整えた彼が、私の指さした方を見る。
「ああ、そうか。抱っこ、好きやからな、母親と一緒で」
もう! 寝起きで、なに、言うてんの。
本当なら、自分が面倒みなアカンとこやのに。
「怒ったらあかん。せっかくの可愛い顔、台無しやで」
言うが早いか、彼が私に、軽くキスをした。
「あーっ! 小っさいおっちゃんら、キスしてる」
メンバーの家の男の子が、目ざとく見つけて、はやしたてた。
「羨ましかったら、おまえも、早よ、嫁さん見つけろ」
だから。
子供相手に、なに言うてんの。
「そしたら、舞音ちゃん、嫁はんにする!」
ほら、逆襲に合うた。
「あかん、あかん。舞音は嫁にはやらん。俺のそばにずっと置いとくねん」
「そんなん、舞音ちゃんに聞くわ。舞音ちゃーん・・・」
「あ、待て! こら」
「舞音ちゃん、僕の嫁はんになる?」
「お。いきなりプロポーズか? 気ィ早いなあ」
舞音をずっと抱いてたメンバーが、舞音を降ろして言った。
キョトン、としてる舞音。
「抱っこ、したるで」
その男の子が、手を差し出した。
「待て、こら。舞音は渡さへんで。舞音、お父ちゃんとこ、おいで」
男の子の隣で、おんなじように、舞音に向かって手を差し出す。
にこォっと、笑った舞音。
迷わず、男の子の手を選んだ。
「ええーっ! なんでぇ?」
あーあ、ショック受けてるわ。
「おい、今からそんなんで、舞音ちゃん、嫁に行く時、どないすんねん」
「あーあ、これは、オトナになったら、男心をもて遊ぶなあ」
落ち込む彼を尻目に、舞音は、男の子に抱っこされて、ニコニコやん。
ちょっと、危なっかしい手つきやけどな。
落とさんとってや。
「あかん、フラレた・・・・・・」
落ち込みすぎでしょ。
「もう、これは飲むしかない! ヤケ酒やぁ!」
彼が叫ぶ。
それまでニコニコの舞音が言うた。
「ママ、パパに抱っこ」
は? なんて?
「ママと一緒、抱っこ」
おいおい。
周りがニヤニヤしてる。
「そうかあ、舞音ちゃんのパパとママ、ラブラブなんや」
「舞音ちゃん、羨ましかったんや」
「真似っこのつもりかあ」
たまに放つ一言も、父親そっくりのタイミングやん。
さすが親子。
違う、感心してる場合とちゃうわ。恥ずかしい。
顔、赤くなってきた。
彼が、男の子の手から、舞音を奪うように抱き上げた。
「舞音、ええか、覚えとけよ。
抱っこはな、大スキな人としか、したらあかんねんぞ」
「チュウは? パパ、ママ、チュウでしょ。 まのんは?」
舞音ちゃーん? お母さん、恥ずかしいんですけどォ。
「チュウも、や。大スキな人とだけやで。
お父ちゃん、舞音のこと大スキやからな。チュウしよか」
「うん」
CHU!
あーあ、もう。皆、笑ってるやん。
「ああもう、めんどくさい、めんどくさい。 さあ、食うぞ」
舞音を抱いた彼が、私を手招きした。
「やっぱり、血は争えんな。舞音、おまえに似て、俺の心掴むの、上手いわー」
舞音は。
彼の腕に抱かれて、眠たそうに、目をこすってる。
「おまえも後で抱っこしたるからな」
彼がいたずらっ子のように、横顔で笑った。
さっきの、舞音のにこォっとした顔とおんなじやん。
「ええなあ、俺も早よ結婚しよっと」
まだ独身のメンバーが、大きな声で宣言した。
その場にいた皆が、笑顔になる。
彼の腕の中で、いつのまに寝息を立て始めた舞音の、その寝顔は、
うたた寝していた彼に、そっくり、だった。
そんな何でもない、当たり前の小さなことが、
なんだかとても嬉しい、夏の一日・・・。
Fin.
続きは、あとがきです。
お付き合い、ありがとうございました。
妄想の種は、お気づきのとおり、ヨコちょの撮ったBBQの写真、あの小さなワンショットです。
できれば最初は女の子がいいなって、すばる君のコメント、10月号のヲタ誌にありましたけど、
このお話ができたのは、それが出るより前でした。
自分の姪っ子にすら、デレデレメロメロなすばるくん。実の子だったら、どうなるんでしょう?
女の人に、この人の子供を生みたいって、種としての本能があるように、
男の人にも、無意識に自分の遺伝子を残そうとして子供を欲する時期はあるようで。
今現在、∞のメンバーたちも、その途中にあるようなコメント続出してますよね。
いつかはみんな結婚して家庭を持つんでしょうけど、それまでは、夢のなかだけでも、夫でいてね。
安心しきったかのように、無防備な寝顔、半開きの口。
アイドルが仕事とは思われへん。
「ねえ、もう、お肉、焼けるって」
そっと、声をかけながら、肩に触る。
「あ・・・」
寝ぼけたかのような声で、目を開けた彼は、開口一番、
「まのん、舞音は?」
「大丈夫。あっちで、ちゃんと他の人に抱っこされてるから」
体勢を整えた彼が、私の指さした方を見る。
「ああ、そうか。抱っこ、好きやからな、母親と一緒で」
もう! 寝起きで、なに、言うてんの。
本当なら、自分が面倒みなアカンとこやのに。
「怒ったらあかん。せっかくの可愛い顔、台無しやで」
言うが早いか、彼が私に、軽くキスをした。
「あーっ! 小っさいおっちゃんら、キスしてる」
メンバーの家の男の子が、目ざとく見つけて、はやしたてた。
「羨ましかったら、おまえも、早よ、嫁さん見つけろ」
だから。
子供相手に、なに言うてんの。
「そしたら、舞音ちゃん、嫁はんにする!」
ほら、逆襲に合うた。
「あかん、あかん。舞音は嫁にはやらん。俺のそばにずっと置いとくねん」
「そんなん、舞音ちゃんに聞くわ。舞音ちゃーん・・・」
「あ、待て! こら」
「舞音ちゃん、僕の嫁はんになる?」
「お。いきなりプロポーズか? 気ィ早いなあ」
舞音をずっと抱いてたメンバーが、舞音を降ろして言った。
キョトン、としてる舞音。
「抱っこ、したるで」
その男の子が、手を差し出した。
「待て、こら。舞音は渡さへんで。舞音、お父ちゃんとこ、おいで」
男の子の隣で、おんなじように、舞音に向かって手を差し出す。
にこォっと、笑った舞音。
迷わず、男の子の手を選んだ。
「ええーっ! なんでぇ?」
あーあ、ショック受けてるわ。
「おい、今からそんなんで、舞音ちゃん、嫁に行く時、どないすんねん」
「あーあ、これは、オトナになったら、男心をもて遊ぶなあ」
落ち込む彼を尻目に、舞音は、男の子に抱っこされて、ニコニコやん。
ちょっと、危なっかしい手つきやけどな。
落とさんとってや。
「あかん、フラレた・・・・・・」
落ち込みすぎでしょ。
「もう、これは飲むしかない! ヤケ酒やぁ!」
彼が叫ぶ。
それまでニコニコの舞音が言うた。
「ママ、パパに抱っこ」
は? なんて?
「ママと一緒、抱っこ」
おいおい。
周りがニヤニヤしてる。
「そうかあ、舞音ちゃんのパパとママ、ラブラブなんや」
「舞音ちゃん、羨ましかったんや」
「真似っこのつもりかあ」
たまに放つ一言も、父親そっくりのタイミングやん。
さすが親子。
違う、感心してる場合とちゃうわ。恥ずかしい。
顔、赤くなってきた。
彼が、男の子の手から、舞音を奪うように抱き上げた。
「舞音、ええか、覚えとけよ。
抱っこはな、大スキな人としか、したらあかんねんぞ」
「チュウは? パパ、ママ、チュウでしょ。 まのんは?」
舞音ちゃーん? お母さん、恥ずかしいんですけどォ。
「チュウも、や。大スキな人とだけやで。
お父ちゃん、舞音のこと大スキやからな。チュウしよか」
「うん」
CHU!
あーあ、もう。皆、笑ってるやん。
「ああもう、めんどくさい、めんどくさい。 さあ、食うぞ」
舞音を抱いた彼が、私を手招きした。
「やっぱり、血は争えんな。舞音、おまえに似て、俺の心掴むの、上手いわー」
舞音は。
彼の腕に抱かれて、眠たそうに、目をこすってる。
「おまえも後で抱っこしたるからな」
彼がいたずらっ子のように、横顔で笑った。
さっきの、舞音のにこォっとした顔とおんなじやん。
「ええなあ、俺も早よ結婚しよっと」
まだ独身のメンバーが、大きな声で宣言した。
その場にいた皆が、笑顔になる。
彼の腕の中で、いつのまに寝息を立て始めた舞音の、その寝顔は、
うたた寝していた彼に、そっくり、だった。
そんな何でもない、当たり前の小さなことが、
なんだかとても嬉しい、夏の一日・・・。
Fin.
続きは、あとがきです。
お付き合い、ありがとうございました。
妄想の種は、お気づきのとおり、ヨコちょの撮ったBBQの写真、あの小さなワンショットです。
できれば最初は女の子がいいなって、すばる君のコメント、10月号のヲタ誌にありましたけど、
このお話ができたのは、それが出るより前でした。
自分の姪っ子にすら、デレデレメロメロなすばるくん。実の子だったら、どうなるんでしょう?
女の人に、この人の子供を生みたいって、種としての本能があるように、
男の人にも、無意識に自分の遺伝子を残そうとして子供を欲する時期はあるようで。
今現在、∞のメンバーたちも、その途中にあるようなコメント続出してますよね。
いつかはみんな結婚して家庭を持つんでしょうけど、それまでは、夢のなかだけでも、夫でいてね。
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